パンと言っても,米と同じく少し広義に粉モノ一般って感じでまいります。
士林夜市で立ち寄った原上海生煎包。
肉包を2個,高麗菜包を1個買ってみました。各10元。計100円しないって安さ。──後で後悔する。もっと買い込みゃよかった…。
バランスがいい!
中の具は,油どびゅっとかニンニクむんむんとか肉汁ぐっちょんぐっちょんとかじゃなくて,ごくアッサリ。高麗菜包も,キムチってより薄味の唐辛子を染みさせてるだけ。それを包む皮ってゆーか,これはもう肉まん的な厚みの饅頭生地ですが,これで食わせてくれる。
饅頭生地が楽しめるから,わしはどっちかってゆーと菜包の方が美味かった…って,やっぱしもっと買えば良かったぞ!10元だぞ10元!
まあケチ臭い話はともかく。饅頭の生地って,素のまんまでも結構イケるもんなんだな。って感覚を初めて持った食体験だったわけです。
▲ 正宗福州胡椒餅
MRT隻連駅前の角地に,いつもバンバンに売れてる半露天の店がありました。
脇の蒸し器からもうもうと湯気が上がり,次々と蒸篭が出てくんだけど,蒸し上がった端からがんがん売れてく様は一種小気味がいい。
店の看板には正宗福州胡椒餅って掲げてある。まあ恐らくこれが売れ放題に売れてるブツの名称でもあるんでしょう。写真の上の物体です。ちなみに下のは前章で触れた彌月油飯。
一塊が40元。紙コップに切れ端を詰めたのは20元でした。
他の客と同じく40元出したらとりあえず買えた。買えたはいーけど?コレ一体何だ?薄く茶色がかった柔らか気な塊,けど質感は饅頭とも日本の餅とも違うみたい。
食ったら蒸しパンでした。
何だあ,蒸しパンかあ?蒸しパンって,何かスカスカしててキライなんだよな…。とか思いつつ食ってたら?
間違いなく…蒸しパン…蒸しパンなんだけど…これ,ムチャクチャに旨い!
初めの食感は日本の蒸しパンと同じスカスカから始まる。かなり粗末な口当たり。それが徐々に,何かヌメヌメした官能的なトロミを帯びてきて,恐らくは黒糖っぽい深みある甘味を漂わせながら,最後はサラサラしたスイーツ感に転じて喉に滑り落ち,食事パンとケーキの食後感を掛け合わせたよな後味を残していくわけで──
で!?何なんだこれ?
そもそも胡椒餅って,前回食ったとこでも調べたとこでも,胡椒ギンギンのミンチの入ったパリパリの揚げ生煎なんじゃないの?福州胡椒餅で検索しても,同じ台北でやっぱりそんな感じのを売ってるらしいし…それに今食った蒸しパンからはあんまり胡椒の味の形跡はないし…!?
だから結局謎のまんま。少なし,いわゆる胡椒餅じゃないと思いますけど。
とにかく,中華の広義のパン文化って,西欧と完全に違うのはもちろん,その広がりもかなりのもんらしい。
中国圏の朝と言えば中華早飯。
隻連の士紀豆ジョウ大王って店が賑わってたから入ってみました。…今回こんな飛び込みパターンが多い。舌の確かな人間の国では,グルメ本なんかよりどーもこれが一番確実!
シエン豆ジョウ 20元
菜包 15元
久しぶりの塩辛い豆乳粥,やっぱりコレ美味い。けど…どしたんだろ?それにも増して,菜包が異様に旨い!
野菜がシャキシャキしたままで,ラージャオの辛さもビシッと心地良い。饅頭生地の実直な味わいを,このメリハリ効いた具が引き立ててる。
ああそうか。
イタリアンサラダを知って野菜さえありゃ飯になる食生活に移って以降,初めての中華圏なんだな。肉包より菜包に魅了される素地が,わしの方に出来てしまってるらしい。
だから…うーん。ここの菜包が旨いってより,今は菜包なら何でも旨いんかもしれんね。だからあんまり信用せずにお付き合いください…(突然気弱)。
▲HYSHENG一之軒 時尚[火共]焙 総店のパンと,永豊盛 手工包子・饅頭・[米羊/心]餅専売店の饅頭
師大夜市の外れの道路側。恐らくこの辺が,大学生の生活ゾーンなんでしょう。
HYSHENG一之軒 時尚[火共]焙って店が流行ってた。総店って表示だったから,チェーン店の本店だと思う。店の名前は理解できんけど,「時尚」が流行のって感じ,[火共]焙は焼き上げてますって感じの語感でしょか?
中華パンが独自進化してんなら,西欧風の,日本で言うパンはどうなん?
ってことで買ってみましたけど…漢字の名称はまるっきり,何のこっちゃです。(写真上側2点)
海塩法国芝麻 18元
金牛角波羅 28元
海塩法国芝麻はきっと…海のお塩で味付けたゴマ入りフランスパン?けど金牛角波羅になると…「角」の漢字が尖った形を表現してんだろけど…?「金」は色が黄色って意味か?
本店で,かつ動けないほどの客足なんだから台湾じゃあ上質ではあるんだろけど…味はまあまあレベルやな,台湾の西欧パン。
日本のハードパンのブームがそのうち影響して来るかもしれません。
さてその並びに,「永豊盛 手工包子・饅頭・[米羊/心]餅専売店」って店名を掲げる小店がありました。
通りすがりの雰囲気,常に行列っぽかった。しかし,経済発展前の中国ならともかく,台湾でマントウ専門店なんて?
皆さん,2つから5つ位の一食単位で購入されてるみたいだったんで,一応チェックしてみることに。…って程度で買ってみたわけさあ。(写真下の2点)
手工黒糖饅頭 15元
手工高麗菜包 20元
帰って食うと。
ウンメ~!!
何だこれ!ただの肉まんの皮の顔してとんでもないぞ!
小麦の香りも歯応えも,これ以上求めようがない。ほわほわのむきむきなんである。噛み締めた味覚がたまらんのである。蒸しパンでもなく西欧パンでもない,紛れもない中華饅頭なんであるよ。
これに菜包の軽やかな具がジョイントすりゃアンタ,饅頭生地が美味いからちょうどよくキマッてきて…えも言われない。
やっぱりここには,西欧パン以前に中華パンの伝統が脈々とあるんだな。西欧パンが発達しないのも頷ける。発達する必要がないんだと思う。外から入れなくても,中華世界にはこんな美味いパン文化が既にあるんだから。
殺風景な中正記念堂付近の光景と,えらい対照的なコントラストで賑わう盛園豆ジャン店。
これもある事情かららしいけど,豆ジャンがやってなかったから仕方なく,
菜包 15元
だけにした。店内の客も心なしか少なめ。
でもやっぱし…野菜の具が旨いぞ!
おそらく,かなり強めにきかせてあるニンニクがポイントになってんだろう。残念ながら今回はこれでよしとしよう。
帰りかけて,道路の向かいの新鮮豆ジャンって店が気になった。こっちは豆ジャンやってたんで,以前盛園で食った同じメニューを試してみました。
シエン豆ジャン 20元
焼餅 15元
と…とろける~。やっぱ台湾の朝はコレだわコレ!
シエン豆ジャン。口に入れた途端,少し焼いたネギと胡麻油の香り。半ばは,豆ジャンのふくよかな豆の味覚。後味に残る磯臭い出汁,これはおそらくイリコか何かの乾物でしょうか。
そして──焼餅です。繰り返しだけど「シャオビン」であって「ヤキモチ」ではない。日本の何にも似てない。あえて言えば全く甘くないデニッシュ。でもデニッシュともう一点違うのは,噛み締めるとふんわり味が深みを帯びて広がること!拡散する麦の味わいとふっくらした食感はやはり焼餅独特のものみたいです。
西洋パンなら,フランスのシューのみ食う奴が近いけどあれよりさらに食事系でガツンと重い。恐らくその名の通り,小麦をやや荒く焼いた香りがシブくキマッてるんだと思います。
ここのメニューでも豆ジャンの次に油条が来て次が焼餅,米[米口>専]と続く。焼餅は,3人に一人くらいがオーダーしてた。かなりメジャーなわけだけど,なぜか日本には皆無ですよね。
西門で[イ五]師博車輪餅ってのを見かけた。
今川焼のことらしい。円いから車輪焼…ってこりゃまた安易。
帰国間際,明星西面包店で例の白い奴(非合法なものではない…はず)を150元で買った。これはスイーツ…マシュマロに近いけど,一種の菓子パンみたいな感じもある。ふわふわでキュンとした甘味がいい。
この時ついでに買ったのが
ケーキの切れ端(蛋[食ソ/王]片)40元
サンドイッチみたいにパックに詰めてある。何となくうまそうだったし,明らかにお得だし,前のおばちゃんがゲットしたもんだからつい釣られて…。
これも美味かった…。クリームとパンがぐちゃぐちゃな感じが,かえってよろしかった。
台湾パン,まだまだわしの知らん奥の手を持ってそうです。
※後日談:中華圏のパンが凄い!という実感を持った最初の体験でした。この後,香港や大陸のパンにじわじわとはまっていきます。