外伝07(≧∇≦)高知パンの3月

 香美市土佐山田町。
 郊外の韓国料理店・景福宮(キョンポックン)目当てで通うようになったこの町――まさか宿泊する日が来るとは思わんかった。
 岡山でのんびりしたんで,土佐山田駅に降りたのは,夕方の早め位の時間になってしまった。土佐山田駅東すぐの某ビジホにチェックイン。
 宿泊カード書きながら,カウンターにレンタサイクルの表示を見つける。無料だったんで,自転車にまたがって…いざ!さくらベーカリーへ!!
 完璧!歩くとかなり距離感のあるこのお店にも,自転車なら楽勝だぜ!わはははは…。
 唯一の誤算は!?金土は定休日だったぜ!わはははは…。

 もうパン食う腹になってたんで,駅前のヒジリへ。
クロワッサン
六穀物パン(クロワッサンのサンドイッチ)
ブリオッシュタルト
と購入。
 さらに駅裏のファンベックにも回って,サンドイッチと,定番もちもちパンを買い溜める。
 しかし,久しぶりに乗ると自転車って気持ちいー!駅裏,北側の通りをがんがん飛ばして走ってたら,いい感じのスーパーを見つける。
 地産地消がテーマの店らしい。覗いてみたら,「何とかさんから届いた徳谷トマト!」みたいなコーナーがあちこちにある店。野菜とトマトをちょっと買って,宿に帰還。

 その日の晩飯は,も~素晴らしかった!
 ヒジリとファンベックのパンはもちろん言うことなし!2つの店の得意分野も見えてきた。どっちもパンそのものより惣菜系の捻り技に秀でる。けど,あえて言えばヒジリはやや日本風惣菜,ファンベックは欧風サンドイッチ系らしい。
 スーパー買いのも驚きの旨さ。
 初めて食ったのが「すりみ」。変わってたんで安いパックをほんの試しに買ってみただけだったんだけど…これはもうクリーム!
 おそらく…じゃこ天の揚げる前の状態だろう。口どけの滑らかさに加え,後味に残る淡い蒲鉾臭さもいい。堅豆腐にもサニーレタスにも,ビシッと相性抜群で食わせる食わせる!
 土佐の魚食文化,まだまだ奥行きありそう。
 夜須トマトって表示のトマトにも凄みを感じた。
 野菜の味がするトマト!ギラギラと甘い。フルーツトマトだから糖度は高いんだろけど,それプラスアルファで野菜のムワッと来るエグさをどっしりと持ってる。
 早速検索してみたら――夜須のフルーツトマト,知名度もあるけど,それ以上にとにかくこだわりの品らしい。
 土佐香美農協の園芸部フルーツトマト部会が手がける生産活動。硬さ・糖度・酸度を含む食味にこだわった徹底した品質管理と選別を実施。外箱には産地と生産者を表示させ,生産者全員に農薬の安全使用についての誓約書を提出させてんだと。出荷時期は12月中旬~6月下旬。

 翌朝,高知行きの列車に乗る。でもまだ高知には行かない。高知編の最終回なのにゴメンゴメン。
 ってことで御免でなはり線に乗り換え。安芸へ向かう。
 安芸着。まずは腹ごしらえに駅前のフジムラへ。
 ここのパンモーニングの仕組みを今回はちゃんと使った。3個までならドリンク+1個50円。
ボンティケージョ
カレーパン
いちじく天然酵母パン
 高知で流行ってんのか,ボンティケージョはあちこちの店に置いてるみたい。むっちり感覚はともかく,フジムラのはスコーン的な厚い味覚まである?本場の味がどうなんか知らんから何とも言えないけど…ヨーロッパとは違うパン文化が南米にもあるんだろか?
 カレーパンは普通かな…と思えたのは外のパン部分のみ。カレールーが極めて個性的で…スパイスよりも野菜と肉のコトコト煮込み味で食わせる和風カレー系,小麦のつなぎがないのかやけにさらさらしてる。
 でも,そんな汁だけのシャバシャバな作りじゃパンに染みちゃうはずなのに,どう作ってんだろ?この口当たりは,片栗粉で粘りを出してんだろか?
 肉は,スジ肉か?トロトロに溶けてるのにまだ形は保ってる,微妙な段階でカレールーと交互に押し寄せてくる肉味。これ,意図的なんか?
 これ,カレーライスにしちゃドロドロでベチャベチャ過ぎるはず。かと言ってカレーうどんなら肉と野菜の出汁が強過ぎて食えないような。
 つまり…?これは徹底的に丁寧に作られたカレーパン用カレーなんだと思われるわけで――そこまでやるか,フジムラ?なんちゅーカレー作ってんねん!

 気がつくと,予定以上にフジムラで時間を食ってた。慌てて,安芸ぢばさん市場へ。
 なはり線,便数が少ないから,次の高知行きは逃せない…と感覚で購入して列車に飛び乗る。
 雑多な感じの陳列の店だけど,商品データ管理は完璧らしい。ちゃんとレシートに商品名が表示されてる。考えてみりゃ,活性剤とか添加物を使えないから在庫管理は完璧が求められて当然なわけです。
 購入一覧。
北川村しょいのみ 470円
びわの種茶 180円
深層水刺身蒟蒻 140円
(冷)3071ゆず皮佃煮 100円
3195フカ塩干し 250円
(冷)3435キムチ 150円
安岡久志/トマト 100円
合計     1390円

 さて今度こそ高知行きです。
 車内,ぢばさん市場で買った「びわの葉茶」を飲む。
 独特の甘味です。添加物は保存料として安息香酸ナトリウムのみ。カロリーは…えっ!この甘さでゼロカロリー?癖はあるけど小豆以上にトロリと甘いぞ?
 よく出来た茶です。
 ちなみにパッケージがまた味があります。
「開花の季節に びわの種茶 楽しいお付き合い…前後の1本は又格別 株式会社オーエスケー室戸マリンフーズ」
「本品の特徴 本品は,びわ種子,びわ葉,びわの種子エキスを室戸深層水(逆浸透製ろ過水及び濃縮水)で仕立てたびわの種子茶です。開花の季節や楽しいお付き合いの前後には格別です。」
 何度も出てくる「楽しいお付き合い」ってのは何なんだろう?

 高知駅から桟橋通り2丁目に直行してみた。
 パン・ケーキの店 Tuji。
ボーシパンのみみ
もちもちパン
(ボンティケージョ)
マロンデニッシュ
 ハードパンは完全にないらしいが客足はかなりある。高知名物ボーシパンのみみだけとか,とにかく遊んでる感覚は面白い。
 ボンティケージョはここにもあった。もちもち感は一番あったかも知れません。

▲Tujiのボンティケージョ

 今月もスパゲティハウス マッキーへ来てしまう。
ランチ 1100円
茄子とベーコンのミートソース
サラダ,パン,コーヒー付き
 あえて一番オーソドックスなミートソースを選んでみた。この店の旨さ,他のイタリアンの店からは推し量れないもんがあって,その辺を試してみる気でした。
 見かけ,ごく当たり前のミートソース。給食にでも出そうな外見で。
 一口。
 …何だ?このチクチクした,トゲのある無気味な刺激は?
 唐辛子も肉も,とろけた野菜までもだ。異様に,強い。当たり前の料理だからこそ,それが明瞭に出てきてる。味つけが濃いとか肉汁むんむんとかじゃなく,素材の声が大きいとゆーか…。サイケデリックなミートソースとゆーか?
 美味い!他と全く違う美味さです。
 何をどーしたらこうなる?マッキーの謎は深まるばかり。
 レジを済ますと正午を回ってた。駐車場を見たら…げげっ満車かよ?少なくともこの界隈の住宅地は,このマッキーを支持してる。
 他の地域なら?この難解な店を,市民は支持しただろか?

 帯屋町に帰って歩いてたら,すれ違ったおばちゃん2人連れの会話が耳に入る。
「お昼はクサヤが美味しいんやけどね」
「でもね,ちょっと遠いき」
 クサヤ?八丈島のあの臭い奴?じゃないよな?何か…聞いたことあるぞ?
※後日談:高知に毎月,一年通ってここを知らなかった音痴ぶりにも呆れるけど,この嘘のような情報獲得パターンも,この時以外に二度とありません。
 喫茶店ランプに入ってキリマンジャロ飲みながら,どーも気になってケータイで検索してみる。何やら…メチャクチャ美味いっぽい地元プログ多数。つい最近市内に新装開店?「草やのごはん」って本まで出てる?あッ…その本を書店で見たことあるんだ!てことは?エラい高級店なんちゃうの?
 2時LOらしい。まだギリギリ間に合う!とにかく行ってみようや!
 場所は鷹匠町2丁目,県庁の南側に少し行ったとこ。店名は正しくは「草や」。
 門構えの立派な武家屋敷みたいなお家に靴を脱いで上がり込むお店。一瞬,躊躇する。
 だけど?戸口に掲示してある手書きのメニューは,お昼の定食のみだけど800円。妙に庶民的みたいなんだよな。いーや,こりゃあ,とにかく入っちゃえ!

 靴を脱いで上がり込む。畳敷。旅館の食堂みたいな居間に入る。
 「ごめんなさい」とまずお断りが来る。「芋ご飯がキレたんです。白ご飯になりますけど…いーですか?」
 仕方ない。するとさらに「スミマセン,ぶりもキレてて…」
 主力2品を欠き沈没寸前!でもコレが返ってラッキーでした。来たお膳は――
ご飯
漬け物4種(人参,胡瓜,大根,水菜)
クレソンのからしマヨネーズあえ
ふきと土筆の煮物
茄子の煮物
鯖塩
味噌汁

▲草やの昼定食

「このご飯…」
「はい?」
「高知の米ですか」
「ええ,西〇サンって野菜ソムリエの方が作ってるお米で」
「台湾とか東南アジアみたいで…凄い香りのご飯ですね」
 しみじみ!モワッと香りが口中に放散される!!これがとんでもなく芳しい,夢見心地になる香りなんです!しかも台湾とも違って,コシヒカリ的な澱粉質の甘い後味もちゃんと宿してる。コシヒカリのようなドスの効いた甘味ではないけど,極めて上品な淡くほの暗いファンタジックな甘味です。
 それと,漬け物!
 特に刮目すべきは人参!…バカ旨!
 素のエグめの甘めな味覚が,素晴らしく高貴なぬかの匂いにパーフェクトに絡みついて…とても人参とは思えない,でも人参でしか出せない抜群のエフェクト。
 他の漬け物も凄い!京都と別世界の田舎っぽい芳香!高知の漬け物です。
「うちのぬか床,1960年代に始めてます」
 わしの生まれる前からの床か?
 あとの料理も胡瓜が最高。青臭い香りがぬかにやっぱし絶品に絡みついてます。
 ふきや土筆,鯖に付いてきたワラビも,全然そこらのと別次元。
 全てが香り立つんである!ああ~最終回でこの店に出会うとは!

 池澤鮮魚で,今回は買い食いしてみた。
かつおのたたき 550円
ホッキサラダ 300円
 あと,とり丑という肉屋の街頭売りで
スジ肉
中華マリネ
 各200円から300円だったと思う。店内のショーケースで生肉を売る横手で購入。

▲池澤鮮魚&とり丑の買い食い夕食

 その日の夕食は…まさに完璧!
A  B

  D
A中華マリネ(とり丑)
Bホッキサラダ(池澤鮮魚)
Cスジ肉(とり丑)
Dかつおのたたき(池澤鮮魚)

▲朝市買い食いの朝食

 翌朝。12回目の高知日曜市。
 胡瓜の丸かじり,酢味噌あえとからし漬けをおかずに,赤飯と栗・銀杏ご飯を食う。デザートは今川焼き。
 何か物凄く満たされた一食。別章を待て!

 絶対に高知県内のみヴァージョンのテレビCM。
「AUでえいゆうで!」(和訳:いいと思うぞ!)
 麻植胃腸院。「おえ」と振りがな。自然に「あさうえ」と読めば穏便に済むのに…。万一の際にも,ここで胃カメラとかだけは飲みたくないです。
 やっぱり高知は面白い。何かしら変てこでいい!とか思いやりつつ桂浜方面行きの東側を通る種崎線って路線に,はりまや橋BTから乗り込む。西側は一度通ったけど東側は初めて…ってゆーか未だに桂浜には足を入れてません。
 目指したのは仁井田,チーズとパンの店Orange。
 …全然発見できん。該当住所にはかなり以前に撤去された気配の空き家。だけど,そんな人気店が廃店?
 それで初めてネットで調べてみる。あらら…移転先が判明。高知市内だけど――高知市八反町1丁目。半端に郊外だなこりゃ。
※後日談:この紆余曲折の探索で見つけたorangeに,この後,ほぼ10年通いつめることになります。殊にクリスマスのシュトーレンはここでないともう……。
 意地になってきた。帰りのバスがちょうど愛宕経由だったんで,二丁目で降りて徒歩で向かってみる。
 該当住所にたどり着くも,やっぱりかなり迷う。え?通りの裏か?目の前に来るまで分からんだろ!
 けど,イタリアの田舎の街角パン屋っぽい,いい佇まい。この分かりにくさに関わらず,客足が絶えることがない。
バンドカンパーニュ
本日のチーズバン
フォカッチャ
の3点購入。

 近くのPatioってイタリアンの店で昼食。
プッタネスカ 1050円
 いわゆる「娼婦のパスタ」。高知のイタリアンってやっぱマニアックね!

 高知を発つ。
 でも,土佐山田で途中下車。
 さくらベーカリーである!三度目の正直,ついに買えました!
フォカッチャ
クロワッサン
栗のデニッシュ

▲Orange&さくらベーカリーのパン6種

A  B
 C
    D
E F

Orange
Dバンドカンパーニュ
E本日のチーズバン
Cフォカッチャ
さくらベーカリー
Aフォカッチャ
Fクロワッサン
B栗のデニッシュ

 広島に着いた夜の食卓。
 なべて言えば──Orangeのパンは小麦の深みが凄い!
 対してさくらベーカリーのパンは味覚が素晴らしく厚い!
 チーズとパンの店を名乗るだけあって,Orangeのチーズパンは凄い香り。強烈ってんじゃなく,程よい華やかな芳香がふくよかな小麦臭とトロけ合い口中に広がる。
 カンパーニュはうっかり食うと普通なんだけど,さりげない深さを宿す。ほの暗い麦の香りが,味わえば味わうほど絶妙。
 最高だったのはフォカッチャ!マジでトスカーナパンそのもの。味付けはほとんどないのに,いやないからこそパン生地のみでダイレクトに旨い!
 幾つかの例外を除き,日本で売ってるフォカッチャってただのパンケーキだったが,これで安心。Orangeのはまさに,イタリアの田舎パンそのもの。

 さて。これほどのパンに,さすがに拮抗するレベルだったのが,噂のさくらベーカリー!
 フォカッチャにしても,イタリアでもフランスでもドイツでもない。今まで食べたことのない重み。
 だけど,どうもデニッシュ系で実力が出るらしい。マロンのデニッシュなんて,普通は食後の軽いお菓子だろけど,さくらのは完全にメインにできる重量感。
 今回は,いつも買ってる米粉パンはあえて避けたのにだ。粉の使い方が根本的に違うみたい。
 白眉はクロワッサン。「卵も砂糖も使ってない本格派」との表示通り!ここの米粉のクロワッサンは経験済で,あれはあれでスゴかったけど,今日のは米粉なしだから食感は軽い。にも関わらず!――生地の迫力で食わせるクロワッサン。噛めば噛むほど深みが滲み出る。しかも…何だこの粘りつく歯触り?タイプは違うけど,イタリア現地並みに食事パンとして食える…ってゆーかこのクロワッサンとエスプレッソの朝食なんて最高だろな!ちなみにわしは夜食ったんだけど…完璧な夕食でした。
 最終回,も少し続きます。