外伝07(≧∇≦)いの汁の2月

 やっぱ奈半利線の車窓は絶景やき!
 高知。冬。朝の海。
 広島の呉線,三原から竹原辺りもほんの海際をかすめて走るけど,奈半利線から見えるのは完全無欠の水平線。圧巻の大平洋!
 で…なんで奈半利線かっつーと。
 完全にハマってしまってるわけです,安芸ぢばさん市場。…って日曜市レポートじゃねーのか?本格的に方向ズレてきてんぞ?いーのか?
 いーのじゃ!美味けりゃいーのじゃ!
 安芸駅前着。
 安芸じばさん市場にて購入した今月の6品は──
朝鮮漬
湯炊きこんにゃく 理由あり
カリフラワー
ゆず果汁((酢)と表示有)
もずく煮込
しょいのみ

▲朝鮮漬のサラダ

 やはりどれも味わい深い。けどそれ以上に,発見が多い。
 まず朝鮮漬。
 ウェブで見ても,「キムチの昔の呼び名」ほどに扱ってることが多いらしい。
 ぢばさん市場には複数の「朝鮮漬」が並ぶけど,一口食ったら分かった。
 日本の漬け物だ。
 日本の唐辛子漬。ただのキムチの出来損ないじゃなく,これはこれで完成されてる!
 辛さが中途半端かっつーと…とんでもない!きっちり唐辛子辛い。ただスッキリした辛さ。
 ニンニクの強さもあるかも知れんけど,浅漬けなの。白菜とかの塩漬けの代わりに唐辛子を使ってる。浅漬けキムチ,和風キムチとも呼ばれるらしい。
 つまり,韓国のキムチとの違いは乳酸発酵の有無。韓国のは乳酸発酵が行われ,特に時間を置くと発酵が進んで酸味が強くなる。日本の朝鮮漬にはこの酸味がない。あくまで浅漬けだからあっさりしてる。
 歴史的には多少浅いんだろか?ただこの形で定着はしてる。日本の唐辛子文化,これが確かに存在する…。
 考えてみりゃキンピラなんてその際たるもの。韓国のチゲもインドの辛いカリーも近世に新大陸から伝わって以降の唐辛子文化なわけで,日本に唐辛子文化があって,それが他のユーラシアの食文化並みに完成されてても全く不思議はないわけで。

▲しょいのみでカリフラワーを頂きました

 しょいのみ。
 その名の通り醤油の実。麦こうじと大豆を煎って蒸し,もろみ麹を作り醤油を入れて熟成させる。
 これにより醤油の旨味が凝縮される。昔はいりこやしょうがなども入れて手造りする家庭も多かった。熟成した味噌の素朴で濃厚な味わいがご飯と相性抜群という。
 地域によって「そいの実」「しょいの実」とも。
 あと,中岡慎太郎の好物だったんだってさ。
 とりあえずこの夜は,カリフラワーを付けて食ってみた。大豆のツブツブ感の残るゲル状で,塩辛い味噌って第一印象。けど塩味の後ろに広がる味噌と醤油の味覚の,この深々とした振動感はどうだ?
 …豆の味覚の残響が凄い。
 広島に帰ってから,卵かけご飯の醤油のかわりに混ぜてみたら,これがまた最高!醤油だとあくまで卵の味付けだけど,卵黄のまったり感としょいのみの豆味の深みががっぷり四つに響き合って…。
 何でこんなもんが,地方にしか無くなってしまってるんだ?

 ぢばさん市場の中にあるパン屋のモッティも,かなり売れてます。
 店イチ押しっぽい山型食パンを買ってみた。
 食感は普通の食パン。けど!?小麦の味わいが深い。しかも自然に深い。特に耳は,ムアッと広がる旨味ってゆーか甘味ってゆーか,ナチュラルな凄みがが濃ゆく拡散していく感じ。
 こんなん食ったことない!
 ついでに買ったボンテケージョってミニパンがまた…。
 チーズとタピオカの澱粉で作るブラジルの伝統的な菓子って表示。これ…もっちり感がたまりません!
 …でも?高知のパン?そんなん有名でも何でもないけど?

 駅前のBekkery Cafe フジムラへさらに入ってみた。前回どーも気になったパン屋さんです。
 旨さには半信半疑だったんで,とりあえずプチクロワッサンとあん入りのフランスパンを1つずつ,ブレンドコーヒーと一緒に頼んでイートインコーナーで頂いてみました。
 ──このバケット…ウメエ!
 小麦味もさることながら,塩味が素晴らしく滋味豊か。
 この複雑な塩味が,小倉あんの素朴な甘味とばっちしマッチしてしまう!背景に広がるバターの風味がまた物凄い!どーも素晴らしく上質なバターみたい。
 ブリオッシュも,プチにして後悔した。
 麦の味わいが深過ぎる!甘味に頼らない,素晴らしい満足感をもたらすブリオッシュ!感覚的にはイタリア本国に似てるけど…本場の味に似せてるってより,ナチュラルな旨味の引き出しに徹してるスタンスって方が近い。

▲ヒジリのパン

 帰り道,また御免乗換で土佐山田駅に寄ってしまった。
 駅から北側徒歩5分,ヒジリってパン屋。またパン屋!
 さくらベーカリーを検索してたらヒットしたお店です。
ブリオッシュのサンドイッチ
あんフランス
ライ麦パン
豆乳プリン
 伊,仏,独,中の各分野を試してみた。さてどれが得意分野か?
 …ブリオッシュでした!
 フジムラと同じ方向なの!味覚の豊さがずんどこ!しかもナチュラルにイケてる!サンドイッチだったけど,この生地のせいだろか,サンドした野菜がバカみたいに美味い!
 ライ麦パンとあんフランスはまずまずか?ハードパンよりデニッシュ系らしい。
 豆乳プリンは素晴らしかった。フルーツも入ってると書いてあったけど…この複雑な甘味,何か凄いぞ?
 前回寄ったFinbecにも行ってみた。
豆パン5個
カスクート
クイニーアマン
ゆずジャム
 前回ビックリした豆パン。これ,ボンティケージョの独自発展したもんみたい。
 クイニーも甘味控えめでシットリ食わすけど…特筆すべきはカスクート!京都並みに絶妙の食事サンドでした。ここ食事パンが得意技みたい。
 それとゆずジャム…やたら水っぽい。少量をじばさん市場の食パンやヒジリのライ麦パンに塗って食うと…!ぷうんと香る高貴な芳香がパンに染みる。
 安芸だけじゃない。どうなってんだこの地域のパン?

▲ファンベックのパン

 ひろめ市場に続く大橋通りに,昔気質っぽく,モロ魚屋!ってオーラの魚屋さんがある。
 池澤鮮魚。
 グルメ情報的には全く知らない。けど「店内でご飯食べられます」みたいな表示が出てて,カウンター席で食ってる客が見えてて,客には結構学生も混じってて…だもんで気になってて,ついに入っちゃいました。
 昼下がり。4席しかないカウンターに独り居座る。
 昼飯の選択肢はあんまないみたい。ランチ的なのは海鮮丼か鰻丼のみで,後は一品料理。かつおやうつぼのたたきが千円以下。…しまった,芋引いたか!?
海鮮丼 880円
 をとにかく注文し,しばし待つ。
 「お待ちイ!」ドスのきいた大将が突き出した丼に呆然。「一杯入ってますでしょ!お得ですよ」
 お得って…カニ,ヒラメ,マグロ,イカ,イクラ…十種類は入っとんちゃう?刺身だけじゃない,マヨネーズ和えのホッキ貝とかまで。2千円しても不思議はないど?
 しかも──バ,バ,バカ旨!!
 どれもピチピチのトレトレのプリップリ!!
 これまでの高知の魚体験って…カツオのたたきとかひろめ市場レベルに満足してたけど,もちろんそれはそれでかなりハイレベルなんだけど。
 こ…これが!!高知の魚の真の実力かあッ!
 魚だけじゃない。上からかけたわさび醤油が染みた下の少量のご飯。上の具が多様だからスゴく複雑な,場所ごとに全然別の出汁が染みて渡って。
 何て味わいじゃ!
 この池澤さん,店頭でもパック魚を売ってます。カツオやウツボのたたきも!今度からは日曜市での魚はここで買お!

 その夜ははりまや市場でも,さくらベーカリーの米粉クロワッサンを買ったんで,都合5食目のパン!半分以上は広島持ち帰りになっちゃいました。
 はりまや市場では他に,
きし豆ほうじ茶
かったし かぼちゃのアイス(有限会社安芸グループふぁーむ)
四万十紅茶
を購入。
 紅茶やきし豆の旨さは既に味をしめてます。
 しかし,「ふぁーむ」のアイス,何食っても正解じゃ。今月のかぼちゃも自然においしー!

 翌日,日曜の朝。
 高知日曜市,11回目,冬真っ盛りのレポートであります。
 予想はしてたけど11回目なのに全然飽きん。季節感に加え,やっぱこの店の多さだからなー。
 4丁目南の筒井さんは244番。初めての店か?
 販売品種は野菜,原木椎茸,ハブ茶,梅漬け,手もみ茶とシブい。吾川郡いの町小川柳野の生産者。
 前回感激した蒟蒻の流れで買った
木灰で作った手作りこんにゃく 100円
 これも何やモロ芋芋しい味で最高のおかずでした。蒟蒻ってやっぱり芋だから,ちゃんと甘味があるのね。その癖のある甘味と木灰のほろ苦さが,こんなにスンゴク合うとは。
 見かけはただの蒟蒻。でも全く未知のマッチングでした。

▲木灰で作った手作りこんにゃく(上)

 4丁目北の吉村さん(273番)とこで,本日は
ふきのとう 100円
菜花 50円
を買いました。
 これに222番,4丁目南に開店の松木さんとこの
トマト キズ 200円
を高知にはいつも持参してるクッキング鋏,ってゆーか旅行携帯用の普通の鋏でジョキジョキやって食う。
 あ~至福!高知で食うべきは即席サラダと名店のパン!
 あと,同じ松木さんとこで購入したキンカン甘露煮(250円)。
 ゆず皮とは違ったキンカンのアクの強い酸味が,こっちにも渋くキマッてます。舌が痺れる感じはなく,爽やかに苦甘い味。

 故意か?
 店番号が隠れて見えん?
 店頭で,でかい鍋がぐつぐつに煮立ってる。値段表示は「いの汁400円」。
 この季節の高知です。おそらく…いのししだろな。
「寒い時はこれがいちばんやきに」
「ほんまですねえ」といー加減に返答。
 しかしこの肉…柔らかでコリコリ!
「肉,柔らこなってる?」
「ええちょうどええです」ってか──これ最高ですわ!
 薄泥色の汁の中には,肉だけじゃない,人参,牛蒡,椎茸,長葱,小芋と具だくさん。どれもアチコーコーに煮詰まって…ほんまにあったまりますわ!
 そんでこれが…脂っこくも,さして濃味でもないのに,満腹感が凄い!肉汁と野菜出汁のミックス…ってそれだけなんだろか?とんでもなく密度の濃い味。
 さらにオッサンのサービス!
「お兄さん,芋一個入れたげよか」
「あ,おーきに」

 東山フリークぶりはやっぱり続いてます。
 3丁目南の176番のおばあちゃんから
天干 東山美味 300円
って表示の東山購入。
 1丁目南の岡本さん(36番)とこで
おいしい東山 干し芋 500円
表示の東山を買う。
 東山の季節ももう終わりやな…。もちろん美味でおいしいんだけど,今月は名残惜しさがピリリとスパイス。
 いやあ今年も満喫いたしました!
 何や,関東では茨城の干し芋って有名らしいッスね。ああッ東京住んでた時…食ってなかった!いつか──。

 206番,3丁目北の大崎さんの店。市内の円行寺から御出店のお店で
ふき佃煮 200円
 188番,同じく3丁目北,裏で作業してはった耳の遠いお婆ちゃんが「はいはい」と出てこられたお店にて
からしな ピリッとする 100円
かぶ あっさりした新漬けです 100円
 こーゆー野菜類を高知が加工したら,何でこんなに丁度よくキマるんでしょ?京都の技巧的なバランス,博多のB級的なバランスとまた一味違うバランス感覚。

 106番の隣,108番だと思う。2丁目南の店。
 塩干物,かます,あじ,メヒカリ,ちりめんをメインにしてる魚屋。今まで通り過ぎてたタイプの店です。
ちりめん海藻入り 200円
 他は300円の中に200円の値札シールがある?聞くと「200円よ!200円にしちゅう」とのこと。ついでに
塩ふぐ 350円
も買ってみた。プリプリして美味そな干物。
「これおいしーよ!」おやっさんが太鼓判押したとーり…広島に帰って炙って食うと,どっちもホクホクのムチムチで素晴らしかった!
 高知の魚,かつおだけじゃない!その他諸々最高!

 池川自然農園(122番)にまた寄ってしまった。
しっとりきび刺身こんにゃく 140円
 先月からにわかに蒟蒻づいてます。京都でも一時,近江の赤蒟蒻にハマったけど,京都の普通の蒟蒻には特に感慨はなかった。でもこれ…。
 蒟蒻とキビダンゴの中間…って,想像できます?
 伝統的なもんなんか,池上農園の新規開発なのかすら分からんけど…とにかく身近にありそうで,全く未知の食感。そして,キビと蒟蒻という,地味だけど個性的な香りを掛け合わせた,得体の知れない後味。でもどこか懐かしいような,安心できる満足感。
 まだまだ謎の食いもんがあるもんじゃ!!

▲しっとりきび刺身こんにゃく(下)

しょうゆのみ 150円
 これも先月のフラッシュバック。49番,1丁目南開店の園川さんの店のしょいのみです。やっぱり…これ凄い一品だとわしは思うんやけど,滅びかけてる食品だし,やはりわしがヘンなんでしょか?
 そんでシメは──もうガチガチにハマって出られないって状況です。
あわせしょうが 100円
 これなんか,普通のニッポンじゃあ昭和30年代か40年代に滅びた飲み物でしょ…。
 こーゆー飲食に,この平成の御代,高知まで来てハマりまくっとる自分が怖いッス。
 一応この日曜市シリーズ,来月がラストなんやけど…ここへ来てハマり方が尋常じゃなくなってるからな~。
 こんなんで卒業できるんでしょーか…高知。