外伝09♪~θ(^1^ )HK-File05:香港スイーツ2

 俄然,第二部参ります!

▲[ロ査][ロ乍]紫[米需]米(熱)

 木[米康][舌甘]品屋。湾[イ子]の地下鉄駅北側辺りの謝斐道。
 昼時に来てしまった。「[舌甘]品屋」なんだからネーミングは明らかにスイーツ店なんだけど,他の方はみんなランチの真っ最中。
 うーん。香港の食事のTPOって結構微妙やね…。とか思いつつ,小声でスイーツだけオーダー。まあ外国人だし!
[ロ査][ロ乍]紫[米需]米(熱)19HK$
 香港でも台湾でも上海でも食ったことのない複雑な甘味。甘さが図太いってゆーか,ハーモニックとゆーか。
 素材は芋と米と豆。
 芋をかじると,サツマイモには違いないのに妙なバターじみた香りがある。ただ油っこくはないから,バター漬けってことでもないみたい。何かの一次加工がしてあるんだが想像つかん。
 碗の底に,米に加えてナッツが各3種類位は溜まってました。紫米やピーナッツは分かったけど,後は全く認知できん種類。
 こいつらの複合した甘味です。スープそのものは,言ってみれば芋粥。…想像つかんでしょ?
 複雑な甘味と香味のコングロマリット。ホント表現し難い味覚なんだけど,完成度の高さだけはハッキリ理解できる。
 と…帰りがけに改めて後悔する。この錬金術的な複合味の完成度…もしかして定食の方もムチャクチャ旨いんとちゃう?ひょっとして,この店でスイーツ食ってる奴って,南倍南風に言う…ド素人?

 香港最終夜。
 バーっと行ってみよう!ってことで,中国三大珍味の白眉,燕の巣を食ったんである。
 なお,知らない人のために解説してあげよう。中国三大珍味とは,アワビ,フカヒレ,燕の素。ちなみに,日本三大珍味はコノワタ,ウニ,カラスミ。世界三大珍味はキャビア,トリュフ,フォアグラである。私は燕の巣以外は体験済である。どうだ参ったか。
 どれもこれも素晴らしい!!!…のでしょう,きっと。どれ食ったのも半減前の無味覚時代だったし,味良く分からんかったですし,でも食ったことには間違いないし。
 そーゆーの食ったって言うんか,少なし無駄に食っただけじゃない?といった穿った見解も世の中にはある,とゆーか一般的だと聞いておりますが,まあここは大人の寛容さが必要というか見逃してやってほしいというか,ええい,だからこうやって食い直しとんやないか,あー悔しい!
 てことで燕の巣を食ったんです。許してください。

▲燕巣鮮[イ十]果西米[テヘン+火火/労]

 超高級食材,燕の巣。その全貌が,ついに明らかに!
 足を踏み入れたのは佐敦の許留山。
 前書きが長かった割にはチェーン店だ。香港で恐らく最メジャーのスイーツ屋。
 しかも…どーもフルーツ盛りにしか見えない…と思ったアナタ!ふっ。まだまだ甘いな!
燕巣鮮[イ十]果西米[テヘン+火火/労] 38HK$
 お姉様曰く「こちら今日最良[テヘン+火火/労]でございま~す」ってことで,5HK$値引きで33HK$。
 日本円で500円しない。
 ここのスイーツのトッピングとして食うのが,一番安い方法だと聞いたんである。
 リッチな珍味食いという文脈からどんどんズレてる気がするが,三大珍味をついに制覇する緊迫感から来る妄想に違いない。今は燕の巣に集中すべきである。
 そう言えば…昔から,これだけはどーも美味そな気がしてこなかった。だって巣だぞ?藁で出来てんちゃうのん?口に刺さるだろ?…とか気弱になってるうちに。
 来た。
 一番上に,ちょっと乗っかってる透明ゼラチンみたいなのがソレだろうか?
 食す。
 うーん…。
 食感としてはポンカンとかの柑橘類が思い浮かぶ。アレの絞りカスの皮だけになったやつ。あんな感じでスカスカだけど,味覚は何とも奇妙な甘味。ザラザラ,ブツブツの細い甘味の塊っていうか?
 珍味ではあるんだろけどね。やっぱり旨いのか不味いのか…どうもスミマセン。

▲潮州菓子

 8日目の昼,大埔墟の市場で買ってみた潮州菓子。
 ホテルで改めて見ると。焼売なのかスイーツなのか…カテゴリー不明のモノでした。焼売だとしたらひょっとして蒸して食うもんかもしれんが,そのまま食って危険な味はしないし,まあ食っちゃえ食っちゃえ。
 外側は,香港飲茶でよくある半透明生地。ベトナム春巻きの皮みたいな奴。
 中はレンコン,お豆。だから,外側の生地でムッチリ来た後,今度はレンコンがシャリシャリ,豆がコリコリと来る奇妙な歯応え…コレ,食ってるうちにハマりまくりました。味覚自体もレンコンと豆です,2つの淡い香が陽炎みたいに重なり合って…。
 いい!!コレはいい!!
 焼売,レンコン,豆とどれをとっても「甘い」って意味のスイーツではあり得ない。だけど,この歯応えの妙は素晴らしいお菓子の感覚。少なし,ご飯や麺やパンのおかずではない。
 つまり潮州菓子なんだ。そう理解するしかなかった。この土地の,古い感覚の,恐らく砂糖文化が入る前からの伝統的なお菓子がコレだったわけだ。中国北部の山間で八宝茶が,松江でぼてぼて茶が食間の小食として食されたように。
 「おやつ」の語源である昼食と夕食の間の時間,小腹がすいた時の間食文化は,考えてみれば当たり前だけど,欧米風のものだけのはずはない。潮州菓子は,おやつとしての独自の形式を守られて今に至ってるだけなわけで。

 それで思い出したのは。九龍城の城南道,和記隆餅家で購入した瓜蓉餅と緑豆沙白餅。各5HK$。
 潮州菓子の店だというけど,店の名前には「結婚用品」みたいなことが書いてあった。えっ?結婚拒絶症候群のわしが入って大丈夫?いきなり相手を紹介されたりとか無理やりとか…?
 特に何もなかった。月餅も,何か普通っぽい。いーのか?ホントに潮州か?山口県の長州の間違いじゃなく?
 「瓜蓉」は何のこっちゃだけど「緑豆沙」はグリーンピースあんのはず。知らんのと知ってるのと試しに組合せてみたが,さてどうよ?
 宿で食うと──シャリシャリと歯応えあるあっさり味覚の瓜蓉餅。何だこのあん?そしてあんは食い慣れた緑あんのはずが意外に食感の違う緑豆沙白餅。
 あんの甘味の質が違う。
 あんだけじゃない。月餅とはどうも違うデニッシュ生地。パサパサしてるけど何かネットリ舌に絡む。つまりこの潮州菓子,中華スイーツとは確実に違う発想のスイーツらしい。
 ちなみに「蓉」は蓮のことで,つまり蓮根のあんらしい。九州のどこかで蓮根の饅頭があったと記憶するが,歴史的に完成されたこの潮州菓子の食感覚は…改めて驚きました。

▲義順牛[女乃]のミルクプリン

 さて。最後にご紹介するのは――
 今回の旅行,マカオと香港を通じて3回通ってしまった義順牛[女乃]です。
 歩き方には,香港のコーナーには書いてある。最初,マカオの街角で見つけて,常にスゴい客入りだったんでつい入ってしまったってのが馴れ初めでした。
凍馳名隻皮[火敦][女乃] 17パタカ
 何だこれ?
 美味い!激しく美味い!
 ミルクの甘味がむんむん!いわゆる牛乳臭いんじゃなくて高貴に甘い。砂糖の安直な甘味とは全く別次元の甘味。いわゆるヨーグルトに近いんだけど酸味はごくうっすらとしかない。
 後醍醐天皇の「醍醐」ってヨーグルトのことらしいけど,そーゆー昔の神秘性を帯びたヨーグルトの味覚がイメージされた。
 ここ,珠海の直営牧場から原料のミルクを持ってきてるらしい。とにかく凄い!
(後日情報では,現在牧場経営はしていないらしい。)
 何でマカオにこんなヨーグルトがあるんだ?(…と,最初はイタリアンヨーグルトみたいなもんと勘違いしてました)
 店頭のガラスケースに並んだ金物のお椀もインドのラッシー屋そっくり。隻皮(本当の漢字は「隻」の上半分が2つある)ってのは牛乳の上に出来る膜のことらしく,ヨーグルトの上に乗っかっててこれがまたアクセント。

 2回目。香港の佐敦の支店にて。
馳名隻皮[火敦][女乃] 21HK$
 マカオのが本店だったらしい。
 けど,やっぱり最高!今回はホットにしてみたら,さらにミルク甘さが引き立ってました。
 オッサンが日本語メニューを持ってきた。結構,対外人戦略とか考えてんのね。
 でも…ん?日本語メニュー2段目の巧手[サ/田/一/田/一]汁[火敦]鮮[女乃] 22HK$
「こちらは生姜風味の牛乳プリン。類似品はたくさんありますが,[サ/田/一/田/一]汁[火敦]鮮[女乃]を本当に牛乳と生姜汁だけで作っているで,その調合は企業秘密」
 なぜ突然途中で大阪弁になってしまうのか不思議ではあるが,むっちゃいけてるで,その美味さ再訪確実。

 最終日,3回目の義順に来てしまう。
巧手[サ/田/一/田/一]汁[火敦]鮮[女乃] 22HK$
 牛乳プリンはマカオ,香港とも21HK$。1HK$分高いのが生姜みたい。さて,その実力や,如何に?
 お?
 おおおおお!
 そうだった…生姜汁にゴマ団子だけでシンプルに食わすのもある中華スイーツ。生姜を舐めちゃあいかんかったのじゃ…。
 牛乳に生姜。ミルク甘さにジンジャー辛さ。あるいは,乳臭さに生姜の香気。どーも想像できんかった。でも一口食って…完璧に納得。
 かなり合う!
 ミルクの滑らかな味わいと,一種口中を痺れさせるようなジンジャーの軽妙な刺激が,ピタッッとマッチしてくる。
 こいつら…こんなの,どうやって思いついたんだ?

 にしても。中華世界ってこんなにローカリティの強いものだったんやね。いわゆる中華料理に,こんなんあるなんて想像もつかん。
 てゆーかこの「中華料理」って呼称,こんなに陳腐な言葉もないよな,と身に染みて分かる気がする。例えば,ヨーロッパ料理って言われても何のこっちゃじゃないですか?「カレー」ってのがインドじゃあ「おかず」って意味でしかないのと同じで。
 あるのは広東料理とか潮州料理とか台湾料理とかなんであって,中華料理なんてものは存在しない。あるいは,何も示してないか,中国風日本料理を差してるだけ。
 それほど,中華世界の食文化のバリエーションは,広い。