弗the second day弗 Veg. the great in Farmer’s basket

▲Flying Biscuit Cafe Breakfast

 朝。
 Martaで北へ。
 MidTown駅で地上に出る。閑静なエリアです。デカい道路の両脇に低い軒が続く。人通りも少ない。
 東へ3ブロック歩いた十字路の角,Flying Biscuit Cafeで朝飯。ダイナーってより少しコジャレたプチレストランの雰囲気。8時前だけど客は多く,ほぼ満席。界隈には幾つか朝食食えそうな店も見えたから,人気の店ではあるみたい。
Flying Biscuit Cafe Breakfast $7.50
 コーヒーは作り置きか?「コーヒー味の湯」みたいな液体,これがアメリカンコーヒーなんだろか。
 大皿に盛られたメニューは,まずトウモロコシ粥。これがグリッツってもんらしい。隣にビスケット,小さいハンバーグ2つに卵。
 聞いてた通り,卵は作り方を問われる。目玉焼きは苦手なんでスクランブルにしとく。
 さてお味だけど――グリッツが思いのほか美味いのに驚いた!トウモロコシの甘味そのものをそのまんま生かしてるんだけど…それだけか?トウモロコシの甘煮みたいにも感じられる豊かな甘さ。「粥」って先入観でわしはスプーンを使って食べてたら,こっちの人はフォークで召し上がってました。なるほど,確かに十分粘るわな。
 けれど,それ以上に驚いたのはビスケット。スコーンよりさらにしっとりと重い食感で,柔らかさは蒸しパンに近い。なのにサクサク感も表面にはとどまってて…何をどうやったらこうなるのか?判別不能な食い物。
 スクランブルエッグとの間に,赤黒いゲル状のもの付いてた。配置的にケチャップと信じ切って口にしたら…ゲッ?甘酸っぱい?これも類推不可能な味覚と思ったけど――しばらくして桃だと気付く。桃の,ジャムとゆーより甘い漬け物みたいなものらしい。
 隣席を見ると,どうもビスケットに付けて食ってるようなんだが…自分でもやってみると,やはり不可解な味覚。ジャムをスコーンに付けてると思えば確かに英国ティータイム風だけど,はるかに主食的な濃厚さで,けど確かに美味いし…?
 にしても――初回から,スクランブルエッグ以外は食ったことのないブツばっか。そんなにこの南部って独自の食文化色が強いの?それとも単に英国食の崩れたものってだけ?
 予想外にハテナだらけになってしまった第一食でした。
 それはともかく,このチップの習慣だけは何とかならんか?予想よりはるかに面倒くさいど!初めから足しとけ!

 North Ave.辺りまで歩いてみる。
 すれ違う方々,皆さん走ってる。土曜日だからか,人通り自体は少ないから,歩いてるアメリカ人より走ってるアメリカ人の方が多い。どーもアメリカ人のジョギング好きってホントらしい。しかも,走ってない人はほとんどアフリカ系なのに,走ってる人間はほぼ白人。つまり,土曜日に働いてる白人は少なくて,ジョギング好きは白人だけってことか?そんなに生活様式からして分化しとんの?
 ジョギングの次に多いのが犬の散歩。これも異様にたくさん見かける。2匹連れてる方もおる。アメリカ人そんなにペット好きなのか?しかもこれも白人ばっか。裕福であることの社会的サインなのか?
 中規模なスーパー以外は,コンビニみたいな小店がない。だから街並みも,もの凄く閑散とした感じ。良く言えば公園都市みたいな…わしの旅行歴的にはスゴく珍妙に感じる。
 タバコ吸うとこも少ないみたい。仕方ないから,今公園みたいなとこのベンチで,高知で買った龍馬携帯灰皿を傍らに吸ってます。
 すると,ジョギングしてるお兄さんがやってきて…吸い殻を拾い集め始めたぞ?わしが携帯灰皿を強調しても,責めるような優しい眼。少なしある一群のアメリカ人からは,喫煙族って言い逃れのきかない罪人みたいね。

▲VarsityのChilli cheese slow hotdogとFried pie(Peabh)

 Noth Ave.に至り,少し西へ。
 目的のVarsityは,十字路の角のドライブイン。平屋ながらかなりデカい建物です。
 カウンター自体は普通のマックとかと全く同じ。
Chilli cheese slow hotdog $2.65
Fried pie(Peabh)$2.50
を注文して,学食みたいなシンプルな席でいただく。
 へえ~!?
 ホットドッグは野菜が何か馬鹿ウマ!まずもって,玉ねぎが単純に瑞々しい!つなぎとか添え物じゃない!そんなに量はないのに,それだけでスゴいパワフルなんですわ!
 それに加え,何だこのアボガドみたいなホクホクコリコリした感じ?チーズの文字が入ってるから,カッテージか何かなんだろか?でもこの食べ応えは…イタリア系のまったり感じゃなく,それとは全く違うフレッシュな力強さ!
 ソーセージやパンズは普通な気がすんのに,この脇役の野菜の盛り立てが素晴らしいんで,全然飽きが来ない。何だこの強い味覚は…!?
「slow」の文字の意味は最後まで分からなかった。「とろ火で煮た」ってことか?
 あと,アトランタだからとついでに頼んでみたピーチパイ。
 これは…ヤバい!
 要は,桃の果肉の揚げ餃子ってモノなんだが――薄い揚げパンの生地の中はムッチリした桃の果肉が溢れんばかり…っていうか食ってるうちにホントに溢れて垂れてきた!それほどたっぷりした量感で,これが見事に気味の悪いドドメ色で…印象的に体にもの凄く悪そうな激ウマスイーツ。いやスイーツのつもりだったが,これだけでチャンとメインになる食い応え。
 しかし,桃を食材にしちゃう発想,日本には不足してるよな。

▲Mary Mac’sのGeorgia peabh cobbie

 何だかんだで$18。チップ込みで$20。なかなかのお食事になってしまいました。
 Mary Mac’s。カーターが愛したというこの店,11時の開店前から客が待ってるよな名物店。まあ高級店はこんな感じなんだな。
Vegitable plate
Georgia peabh cobbie
root bier
 ベジタブルプレートは4つ選択オーダーのプレート。訳分かんないまま適当に頼んだら,目当てのビーンズに加え赤カブの酢漬けみたいなのと人参サラダ,それにビーチの煮物が来た。ウェイターに「Good choice!!」と誉められたが,ジョークか,あるいは笑われてるかの可能性もあり,多分後者。――だとすれば,ひねくれたアジア系ヴェジタリアンと解釈されたっぽい。
 味はなかなか。カブはピクルス系で酸味がいい。京都では赤カブ漬けは定番だけど,まさかアトランタで見ようとは…。ただパンにちゃんと合う微妙な味の違いはキープしてる。
 豆はメキシカンとほぼ同じか。美味かったけど発見はない感じ。
 人参サラダもよく出来てる。クドさがない大味な味覚らしく,全然違和感なし。
 桃の煮込みは――これどう煮込んだらこうなるのかね。パンにベストマッチな,ちゃんと調理しましたって味。これは岡山でやってみたい。総社のインダストリーのパケットと一緒に,岡山の桃煮込…たまらんやろな~。
 さあ締めはピーチパイ…って,またかよ!!だけど――
 Varsityのとはまた全然違って,カップに入れて焼いたタイプ。桃の茶碗蒸しみたいなことになってます。カスカスのパイ生地に程よく染みた桃のネットリ汁,2つが丁度いい食感にまとまるバランス感が…素晴らしい。
 ただ,全般の満足感からすれば,1600円はちょっと高いか?やはりアメリカの高級店も,雰囲気に金払うタイプの店なんかも。
 ここのウェイター,言葉を交わす度に「Enjoy!!」を繰り返す。そう言えば昨日から,話す度に皆さん「Enjoy!!」だ。そんなにわしが楽しんでないよに見える?…ってことじゃなく,多分「See you」の代わりに使ってる感覚らしい。お互いに「楽しんで行こうぜ!」と言い合ってるのって,いかにもアメリカンなセンスでいいやね。

 午前中に3食回ってしまって既に腹一杯なんで…ちょっと張り切り過ぎたか…と反省し(全くしてないけど)ハイ美術館 High Museumに行ってみる。
 腐ってもここはアトランタ。南部の中心都市である。腐るどころか,新興しつつある工業エリアのハブ空港都市。
 有名どころでは,コカコーラとCNNの本社がある。どちらも観光名所。明朝早くアトランタ発なんで,観光的にはハイ美術館なんて行ってる場合じゃないんだが――街中でダリ展やってるってポスター見たんでノコノコ出向いてしまったわけ。
 作品だけじゃなくて,おヒゲで遊んでる写真とかがこれでもかと並んでたり,生前のメディア出演の映像でやたら大仰な語り口を聞けたりと,賑やかな展示でした。
 この男,ナチスを嫌ってアメリカに移ってから,かなりこっちに溶け込んでしまった御仁らしい。あの大胆でシンプルに見える活動が,アメリカン・ポップ文化に馴染んだ以上に,アメリカ人にも受けたみたい。なるほど,現代美術ってこんな風土から生まれる可能性もあんのやね。
 ハイ美術館のある北部エリアは高層アパートの並ぶハイソなエリア。昼間なんで人通りはあるんだが,中心部よりもっと冷血な体温の素っ気ない街並み。
 さらに北,Lenox Plazaまで足を延ばすと,その雰囲気はさらに濃くなった。Plazaは複合入居店舗ですが,入居店も建築構造も整然としててかなり高級。
 アトランタではアメリカの普通の街を見るつもりだった。この宇宙都市みたいな空気は…率直に言って,かなりツマラン。こんなもんか,アメリカ!

 南に戻ってからが,アメリカ初体験だったと言っていいのかもしれない。
 Five point駅。十字架状に伸びるMartaの地下鉄網の,交差ポイントにあたる。
 繁華街。治安はあまり良くないと言われる。
 地上に出て,意表を突かれる。狭い道の路肩にたむろする若い,えらくガタイのいいアフリカ系がスゴい大声でまくし立ててる光景があちこちに。Peachtree center以北のビル街とは全く雰囲気が違う。いい意味ではダウンタウン,悪く言えば…ってゆーか普通に見ると…スゴく荒れてそ。
 ただ,バス停とか小店も多くて,普通の繁華街ってだけにも見える。アメリカで初めてのマックも発見。
 駅からすぐにあるはずのモールに行こうとしたが,見つからない。地図を広げて探してやっと理解した。完全に地下に入ってるモールだ。地下への降り口も数えるほどしかない。その名もUnderground…怪しい!
 Undergroundに潜入(?)する。歩いてみたらまさに言い得て妙。暗がりの道の両脇に店舗と屋台がずらり。パティオのスペースではサックス吹いてる奴とかも。
 落ち着いて見れば…まさにいわゆるアメリカの光景。

 Peachtree Centerに戻る。
 このホームでは,ケータイのアンテナが立たない。隣のFive pointでは3本立つのに。つまりPeachtree Center辺りの地下鉄施設が一番古いんだろう。
 Peachtree Centerで,軽く晩飯をテイクアウト。
 スーパーの売り場で買いあさりを想定してたんだけど,生鮮食料品売り場ってのが全くない。流石にこのモールにはあると思ってたが…。North ave.では見かけたからある所にはあるんだろけど,ヨーロッパと同じで,あんまりメジャーにあちこちにはないらしい。
 フードコートはあった。どこも$5前後で安かったけど,ここじゃあなあ…と思いつつ物色してたら,お?…結構魅力的な店もあるやん?

▲Great american cookiesのクッキー

 5つで$5.95のクッキー屋を発見。
 足繁く客足があるみたいなんで,昨夜からのビスケットの衝撃の余波で5つゲット。Great american cookiesってヒドく独善的な店名。
 売り子のアフリカ系の女の子,購入時に「Have a happy-happy day!」とニカリ。あの愛想良さにもマイッタ。
 このクッキー――期待を遥かに越えてた。
 チョコ入りとかのスイーツ系より,ライ麦とかの食事系のものが,舌を疑うほどウマウマ!…しっとりした歯触り,ジャリジャリと粉っぽく残る感じの麦の香ばさ。
 スイーツ系もピーカンナッツのは最高。このビスケットは,もう完全に食事だ。パンの一種なんよ。この感覚は,新鮮だったな。

▲Farmer’s basketのヴェジ・プレート

 Farmer’s basketって店でもお買い求め。
 肉がメインで2品ヴェジが付くワンプレートがメインの店。へえ~こんな「お膳」感覚あるんだな,と思って立ち止まると,「3Veg $5」って表示もある。聞くと,豆やサラダもチョイス対象でテイクアウト可だったんで,頼んでみたら…インディアン系らしいおばちゃん,ドバドバに入れてきて,見る間にスゴい量の野菜入りプラスチック容器が出来上がり。野菜だけで日本のホカ弁の大盛サイズ。
 ビスケットと一緒に宿で食す。
 ええ~!?
 こんなに美味いの??
 これ…どうなってんだろ?大した調理じゃないし,ドレッシングもシンプルなサウザンみたいなんだが。
 豆,人参とセロリ,キャベツの3種。豆のムンと寄せる土臭さいっぱいの甘味,セロリのむせるような青臭いエグみ,人参のクセはあるけど限りなく優しい甘臭さ,キャベツの口内に満ち渡る豊かな野菜味。
 アメリカ行きを,野菜の味が分かった後まで取っといてくれた旅行神に感謝の祈りを捧げたいッス!
 どれを取っても…素材の力強さが凄まじい!
 特にこの人参とセロリのサラダは…いつまでも噛みしめてたくなる味わいですわ。
 しかし,これ…どこかで…。
 そうだ――高知の食感覚。
 日本で言えば,京都的な調理技法の尺度では大したプレートじゃないんよ。けど,岡山や高知みたいな,力ある食材を育んで,その力を最大に,だからこそシンプルに引き出すタイプの「料理」。そんなベクトルでは,少なくとも農業地帯のアメリカ南部,ムチャクチャなレベルなんじゃないの?
 「?」でしか言えない短い滞在だったのが非常に後ろ髪を引かれる。
 けれども,そんな可能性だけは覚えつつ――ついに明日は,ニューオーリンズ入り!