外伝09♪~θ(^2^ )HK-File17:其他中式

「その他」です。
 中式(中華)か西式(洋食)かで言えば大概前者なんで,何でも羅列してしまいました。中には他の章の写真までありますが…まあちょっとした間違いです。人生そんなこともあるさ!
 あと,何の順番なんだ?って意見もあり得るわけですが…まあ写真を載せた順です。要するに適当です。人生思い通りには行かないものさ!
 そんな深く哀しい事情があって,本章は3回シリーズでお送りいたします。人生色々あるから楽しいのさ!
※後日評:というか,他の食文化圏ではともかく,香港で食をFile分類しようとしたら何百カテゴリーあっても足りない,のみならずカテゴリーにとても整理しきれない奔放さを持つことに,大体この辺で気づき始めてます。

[2日目]春回堂薬行(中環)
 スタンレーストリート,エスカレーター直下の角。これまでも何度か目を止めてた店でした。
「漢方じゃ!文句あるか!」と店全体で胸張ってるような老舗然とした店構え。…いや,文句はないんですけど。
 本格的な漢方薬のついでに,ごっつい兄ちゃんが軒先に試飲感覚で数種類のお茶の紙コップを並べて,「まあ金がない奴にも飲ませてやるぜよ」みたいなチョイ売りもしてます。…すみません,貧乏旅行者で。
 メジャーなのは涼茶,[舌甘]茶,参茶の3種類らしい。中でも一番黒いのを選んでしまう。
甘四味涼茶 6HK$
ってネーミングにちょっと敷居の低さを感じたんだけど…。
 ぐびっ。
 げええっ!むっちゃ苦いがな!しかも直線的な苦さなら構えようがあるけど,複合的な苦さの同時攻撃!これは痛い!
 店先にそっとカップを置いて立ち去ろうかと思ったんだけど,ごっつい兄ちゃんがギロリと睨む。…あ,とても美味しいです。全部飲ませて下さい。飲めばいーんでしょ!
 平静を装いつつ心は号泣モードでチビチビやってると――あら?甘くね?甘いぞ!
 味覚が発狂したか,それとも兄ちゃんのプレッシャーに洗脳されたかと疑ったが…いや甘いんである。訳の分からんけど舌が美味を感じ始めてる。
 最後の一口を喉に落とす頃には,本気で美味いと感じ始めた。漢方臭さと苦味がちょうどいいバランスを保って,その均衡の下からホンワカっと何ともふくよかな甘味が湧き上がるんである。地獄に仏とはこのことだ(違うか)。
 もうワンランク高い商品はこんな感じ。
特効感冒止咳茶 15HK$
精製亀[サ/令]膏 30HK$
「特効」とか「精製」とかつけないと気がすまない辺りが,この店の気高い自負というか強引さというか凶悪性がうかがわれるところである。
 いえ,大変美味しく頂きました。


▲龍記飯店の単隻併焼味飯

[2日目]龍記飯店(中環)
 そもそも春回堂でひどい目にあったのは(いえ,旨かったんですが)この店の開店時間を待つためでした。
 ガイドブックにも乗ってる焼味の有名店だけど,まだ訪ね損ねてた。
 一歩入るとタイプが分かった。
 も…ものすごく,汚い!
 典型的な香港大衆食堂である。
単隻併焼味飯 32HK$
 ライスの上に黄色い鶏肉と赤い…おそらく豚肉。台湾の赤焼肉みたく,どの肉も何かに浸けて焼いてあるんでしょう。
 味の方は――鶏肉はタイのいわゆる鶏飯の鶏肉に似た肉をそのまま味わうタイプだけど,やはり少しハムの澄んだ香ばしい味になってる。
 豚肉は,しかし他に例えようがない。燻製に近い味なんだが,焼味の看板を掲げてる以上そうではあるまい。サラミとハムとチャーシューの間みたい。日本人的にはものすごくヘンテコな味。
 ただし,間違いなく食わせる旨さ!噛み締めるごとにそのバイブレーションは増大する。異なるレベルの肉味のハーモニーが素晴らしい。モデルとしては,サラミからハム,チャーシューと変わっていく感じ。
 米は完全にインディカ。チキンライス系の肉汁とまみれて微妙ないい味出す米としては,ジャポニカよりこっちがマッチすると思う。インド系のスパイスが入らないカレーみたいに,中華スパイスの効いた肉汁とサラサラ混ざる方が旨いわけです。野菜としての米使いというか…。
 正直,焼味ってのを初めて旨いと感じた気がします。
 ただ,謎は残った。
 台湾で赤焼肉を食ったのは西門と万華の中間辺りで,広東人の居住地っぽくない。
 東南アジアから奄美大島まで広く流布するチキンライスは,華僑が広めたとは説明しにくい。
 そもそも,広東料理に区分される焼味は,潮州や順徳など四大源流より以前から存在する,最も古い形態とされる。
 
[2日目]健康工房(美ポ駅構内)
木錦花紅茶 20HK$
 前回からお気に入りの小店なんだが…香港が長くなると,やっぱり少しお高く感じる。街中で売ってる何百HK$オーダーのツバメの巣と同じく,この手の伝統食材にかける財力は,漢人圏ではすごいもんがあります。
 さて本日は木錦花の紅茶です。香港の紅茶に木錦花と来れば,もう迷うべきものはない。買いだろ買い!ってことで購入しました。
 その「木錦花」が何なのか,わしもサッパリ知らないわけですけど,漢方臭さが残るんだが全然紅茶に合う。奇妙なエキゾチックさを含む味で――と書いても何のことやら分からんね。
 まあそんな味です。香港で見かけたら買ってみてや。

▲潮香園の坑[月南]河と西冷紅茶

[3日目]潮香園([竹/肖][竹/其]湾)
坑[月南]河 21HK$
西冷紅茶 10HK$
 外見も店の造りもまさに香港[ン水]室。馴染み客がほとんどっぽい,土着店のオーラ。
 してみるとこの街…?全般は駐在員用の宇宙人タウンのイメージだけど,この商店街界隈は意外に歴史があるのか?
 かくのごとく環境的にはバッチシな潮香園なわけですが,さて実のお味は?――ちなみに「河」ってのは,調べても全く分からんが,米粉のキシメン状みたいな麺の種類みたい。
 一口。
 思想が違う?広東の一般常識を裏切って,肉汁はガツンと濃い。しかし,これが究極までに…丸い。麺の歯応え,舌応えに角というものが一切ない。これは?潮州料理の色なのか?だとしたら,日本食の感覚に一番近い中華の系統かも知れない。
 近いとしたら,台湾の牛肉麺?けど…記憶をたどると,やはりこの丸さの点で完全に一線を画す。例えば,この濃さのスープなら台湾牛肉麺と同様にがっつりとご飯か刀削麺が合うはずなのに,ここのは繊細な米粉の「河」が非常にしっくりとフィットする。
 この丸みに,[女乃]茶の味もチューニングされてる感じなんである。渋みがガツンと来る,なのに丸い。ミルクの甘味のまろやかさとぴったり符合する丸さ。
 この丸さの正体は,これはもう想像の域でしかないが――中華ダシの相が,北京や上海とかの肉系と全く異なってるからでしょう。おそらく魚介と乾物。中華一般の常識的には「貧しい」ダシの複雑な併用。潮州スパイスと呼んでも過言ではないブレンド。

[4日目]劉森記
蝦子雲呑[テヘン+労]麺 30HK$
 かなりの有名店らしく,開店と同時に満席になった。それもそのはず,丸座席に丸椅子のみのムチャクチャ狭い店,20人ほどしか座れません。
 注文取りのおばちゃんが何か言った。適当にはいはいって流したけど,他の客に言うのを聞いてたら,つまりワンタンと麺が別々の碗で出るよってことだったらしい。
 ローメン。久しぶりだった。第一印象は,最初にマカオで食ったときと同じく――こんなんベビースターの蝦フリカケまみれやんけ!?ってガッカリ感。
 でも…段々慣れてきたら美味いんだなこれが!くしゅくしゅした極細卵麺の歯応え,蝦の粉のほのかな香り!後からじんわり湧いて来る辛み,これも結構捨て難い。
 全体の粉っぽさが,こもごも複合して味わえてきたら,これがすごく感じいいんである。
 さらに!!劉森記のはワンタンが素晴らしい!生地自体も混ぜ込まれた蛯粉も相まってムッチリ絶妙な柔らかさと出汁を垂れ流してる上に…このスープ!夢見心地になりそうな蝦の出汁が口中に鼻孔に染み渡る。薄く円やかに,けれど不必要に技巧的でなく直線的な美しさが光る味覚です。
 これは…確かに!ここ,常連っぽい方々が頼んでるみたいだったけど,湯麺か水餃子で食ってみてもスゴいかも?全般的に秀でてると見える粉使いの面で,より実力を示してくれそうな気がしました。

[4日目][シエ鳥]福堂(佐敦)
自家湯涼茶坊って街頭お茶ショップ。
清熱利[シ日/糸糸] [ネ去][シ日/糸糸]茶 17HK$
 うーむ。品名の漢字の画数には圧倒されるけど…さらに意味の片鱗すら理解不能だけど…まあ普通のお茶?
 この類のバラエティお茶街頭ショップは…やっぱり台湾のチェーンの方が本場ってことなんでしょうか?少なし今のところ,香港系統では感動的または白旗的なのに出会ったことはない。

▲九記の上湯牛[月南]伊麺と九記[ロ加][ロ里]汁

[5日目]九記(中環)
上湯牛[月南]伊麺 29HK$
九記[ロ加][ロ里]汁 7HK$
 少し時間をズラしたつもりだったが…まだビシビシに満席!店員の兄ちゃん,6人がけテーブルの空いてた1席にご案内,とゆーより嫌そうに押し込みやがりました。
 通りからの見かけより,店が奥に伸びてるからか収容人数は多い。けれど見かけ通りに,店内は思いっきり…汚い。
 他の客の注文見てると…湯麺とカレーに分かれてるみたい。しかしカレーは…あくまでアレンジだろ?
 結局どっちもを選択。カレーじゃない方をメインってことで,ガイドブックご推薦の「伊麺」にし,カレーは味見ってことでスープだけ…と思って注文した。
 が――大間違い!
 そうか!!伊麺の「伊」ってインスタントラーメンの「イ」か!?しかも汁は味の素主体で肉汁死んじゃってます。
 一方,カレーはムチャクチャ味が染みてて,B級的には最高!これはライスが欲しい!
 基本的には有名過ぎて終わっるケースみたい。けど,それでも人気を維持してるポイントが,このカレー…っていう転がり方のお店と見えやした。

▲宝蓮苑素食の点心と豆ジャンの朝食セット

[6日目]宝蓮苑素食(上環,蘇杭街)
点心2つ+豆ジャン15HK$
粥付き18HK$(麺も選択可)
 点心は斉焼売と芋饅頭を選択。「斉」の文字は「これは素食です」のマークらしい。
 点心がAで,朝食としては他に3つ選べる。
B香滑腸粉
C鼓油皇炒米/麺
D斉滷味
 点心以外の組合せは他も同じ。2ランクのセットがある。
15HK$セット:茶/珈琲/豆ジャン/菜蜜/山[シ査]子
18HK$セット:栗米粥/白黒粥
 まず…出て来た少なさに驚く。他の客を見てると,Cの「麺」ならそれなりの量にはなるみたいだけど,それにしても,香港の一般水準から比べて少量過ぎる。過食を戒める仏教の姿勢か?
 ただ,味わうための十分量はあるし,何軒も回りたいわしにはむしろ好都合。
 焼売――信じ難いことに筍とココナッツが入ってる。これが,どう仕上げてあるのか,大した調味料の気配もないのに何か食えるんである。醤油やダシを使わない筍本来の香り高さと,ココナッツの濃い乳香。スイーツ的でもなく,なぜかチャンとおかずになる。
 芋饅頭――軽く炒めた芋の細切りと,筍か蓮根が入ってる。これもふくよかな香りに繋がってます。いい味だ!
 豆ジャン――何て言うんだろ?豆腐専門店の深々した旨味ってゆーより,落ち着いて頂けるじんわりした重心の低い豆味ってゆーんだろか。豆ジャンに皮が乗ってたのも初めてかも。
 静かな空間です。サラリーマンも立ち寄って新聞読んだりしてるのに,大声で騒ぐ奴が一人もいない。心なしか香港らしからぬ穏やかな顔つきが目立つ。ケータイのカメラの音が目立つ香港の店って初めてかも?
 店を出てタバコ吸ってて気づいたんだが――これ,量的にはムチャクチャ少ないのに満足感が素晴らしい。特に豆ジャンがきいてるみたいだ。腹の底が,良質なバイブレーションに大満足していくのを,じんわりと感じる。

 とても書ききれません。其之二其之三へ続く!