外伝06@再訪@(@_23_@) 台湾ハム (@_23_@)

 西門と万華の中間地点,観光客的にはえらく中途半端なエリアです。
 万華の前世紀的な頽廃した空気と,西門の現代版のいかがわしさのオーラ,どちらもから置いてきぼりにされた,少し寂れた感じのエリア。
 老[舟孟][舟甲]シエン粥店。
 ある事情で店が閉まりまくってる中,やけくそで通りかかったら空いてたので入った。
シエン粥 20元
赤焼肉 40元
 初めてのタイプの店だな。
 赤焼肉が旨いと聞いてたけど…何だそれ?「赤肉飯」にしたら,それはないと言う。「飯都没有!」(飯は全部ない)んだって。飯のない食堂!そんなら皆さん何食ってんだ!パニクりかけたけど,どうも…「飯」ってのはご飯モノって意味なんでしょう。
 来た。赤焼肉の単品の皿とお粥の碗。ってゆーか皆さん結局それにしてるらしい。

▲老[舟孟][舟甲]シエン粥店 シェン粥と赤焼肉※

 この肉…赤い輪郭部分はうまいことクリスピー。揚げてあるんだろか?対して,中の肉は食ったことのない香り。ハムの一種でもあるみたい。にしても…。
 口の中で香りがものすごい。
 口にした途端に,パアッと広がって,後にはほのかに燻した香味を残す。
 悪く言えば,何か腐ったような臭い。西域で食わされた臓物系のムワッと来る変な臭いが残る。これと食い慣れたハム,スパムのよーな軽い脂身の味覚が合わさって,味わったことのない,軽重の味覚を合わせ持った感じの珍妙な肉の芳香を作り出してる。
 その代わり,西洋のステーキみたいな肉々しいガッツリ感はほとんどない。浅漬け感覚の肉ってゆーか…。
 中国本土の安いハムが似てたよな記憶があるけど,正直,旨いと思えるこの種の中国ハムには初めて出会った気が──
 そうか!!中国ハム!
 金華ハムだったか?肉食の歴史が古い中国には,西欧とは別のハムの,つまり燻製肉の食文化がある。ある種の炒飯では,この中国ハムを加えることもあるらしい。
 なるほど,この分野は。そもそも肉食の類そのもの,完全に見逃してたな~。
※後日談:これが「红曲」あるいは「红糟」と呼ばれる福建独自の調味料の初見でした。後に少し資料を整理してますけど,2020年段階,未だに謎の食法群です。福建現地でもついに見つかりませんでしたから,今は台湾だけに残る「生きた化石」的な食文化かもしれません。→(@_65_@) 第二日@台湾/再六訪 鶏籠美麗/昼の基隆夜市(@_65_@) ■小レポ:ドス赤い肉と魚
 香腸。
 最初,セブンイレブンで茶蛋を買うついでに手に入れてみました。
 香る腸と書くこの二文字で,ホルモンを指すってのは食材の性格として納得だけど,ソーセージを意味することもあるらしい。独式香腸って表現もある。ちなみに茶蛋は茹で卵をお茶に漬けこんだもの。
 けどここではソーセージのお話。
 赤焼肉の衝撃があったんで,まあ念のため一度だけね…と思いつつの購入。だってさあ!これまで何度も見かけてきたけど,見た目は完全に日本の魚肉ソーセージと同じですぜ!?それに何つったって,言っちゃあ悪いけどセブンイレブンですぜ!?ねえ旦那!
 ただ。確かにこのソーセージ,それだけにしてはどのコンビニにもやたら目についてた。日本でもソーセージのないコンビニはないだろけど,酒のネタってより惣菜コーナーの定番って感じなんよ。
 宿で喰う。

▲西門のセブンイレブン買いの香腸と茶蛋

 うッ──日本のソーセージと全然違うッ!
 むっちりしてて,肉以外にハーブのような味わいがして,この香りがまたすごく豊かなんです。とは言え,ドイツ系のハーブ使いとは全然違う。さすがにコンビニだから安っぽさは拭えないけど,一方で味わったことのない豊かな芳香を蓄えてるのも確か。
 そうなのか!
 台湾のソーセージってこんななのか!
 セブンイレブンでこのレベルなら…と,西門の街へ出撃し直し。
 ざっと見渡して,よく売れてる路上の専門屋台で2種類を購入してみました。

▲西門路上売りの香腸2種

 赤と白。
 赤い方は普通の肉味でした。ただし,やっぱりむっちりハーブの味覚がスパム肉の凶暴さとハモってます。
 しかし──ビックリしたのは白い方!
 餅米か?一瞬舌を疑った。
 でも肉の味はちゃんと付いてる。中華粽と同じ豚肉油で蒸してある感じ。肉の素材は外皮の腸だけだから,詰める前に何か加工してあるの?
 つまりこれは…腸皮で覆った粽が実体!
 中華粽の外側をソーセージの衣服で覆って蒸しあげてあるわけで,日本はもちろん西欧のソーセージの範疇にはとても入らないもの。ただ,製法や発想は確かにソーセージそのもの。
 中華のハムやソーセージの歴史が分からんから,何がどーゆー経緯でこんなのが生まれてきたんか想像もつかない。大陸中国に共通するのかどうかも分からない。でもとにかく,現在の台湾にある加工肉は…何かスゴく特異なことになってるらしい。

 中華早飯の屋台や小店は,台湾を含めて中華食文化圏で,朝の定番風物です。
 ただ,そのパン屋さんヴァージョンが土着化してるのは,台湾独特かもしれません。
 三商巧福は,かなりあちこちにある三明治のチェーン店。この漢字3文字でサンミンチと読ませます。つまりサンドイッチ。
 考えてみたらこの三明治も,まともに食ったことがなかった。
 だって,中華早飯っつったらやっぱり日本イメージなら小龍包とか粽だし,台湾通的にも豆乳とか粥飯とか焼餅とか,いわゆる古早飯じゃん?サンドイッチはサンドイッチでしょ?
 でも香腸のことがあったんで…とにかく一度食ってみることにした。確かに,この三明治の店もただの輸入食にしては異様なほど,古早飯と同じ位の数が朝の街に溢れてる…。
三明治と珈琲のセット(三明治套餐) 39元

▲三商巧福 三明治套餐

 座席につく。
 白テーブルに簡易な椅子,明かい照明。こりゃマックじゃんか!明らかにマックの台湾コピーとして設計されてる。
 出てきたのも,ただのコーヒーとサンドイッチ。サンドイッチの具も卵とハム。ダメだろ…さすがにコレが旨いわけが…。
 が!!
 違うんである。
 玉子がえらくまろやかじゃ。こいつが,手作りらしいうっすらした味のマヨネーズと相まって。まさにクリームのようにふんわりと口中に広がる。
 あんまり日本人的には知られてないけど,中華世界で生活した方は実感したことがあるんでは?中華の卵使いの巧みさは,世界標準をはるかに超越してるんだった!
 にしても?ハムの味が登場しない?単なる彩りのアクセントだった?…かと思ったらである。
 食い終わったと思って油断したあたりで,肉々しさがムッと残った。サラミ系のハムらしい。これが,味覚の背景に緊張感を持ったオーラみたく広がってたようなんでした。
 それにしても…こんな一切れにも関わらずこの満足感は,どうもハムの効果みたいです。それに?やはりこのハム,昨日の香腸と似てるのか?同じような,むっちりハーブ感がある?
 もしかするとこのむっちり感って…台湾米?もしくは台湾の餅米じゃないの?
 ハーブとして使える米って食材もスゲえんだろけど,米をハーブとして使う発想も凄い。昨日の[舌甘]飯も似た感覚です。つまり,もしわしの直感が正しければ,米を使う感覚がムチャクチャ自由なわけで…。
 コーヒーはまあ普通だったんで,むしろ安心しました。
 台湾のコーヒー,周辺の料理のガラパゴス的進化ぶりと比べてかえって異様なほどに──普通です。
 同じ食文化が元気な国として,韓国のカフェ文化の乱立ぶりと好対照でした。
 後で触れる明星を除いて──。

▲RIDO 里豆珈琲 独式香腸套餐

 RIDOって珈琲屋に立ち寄ってみる。漢字名は「里豆珈琲」。
 客足もあったし,内装も本格的な…スタバにそっくりってゆーかパクリってゆーか。
 台湾にはカフェがないのかと言えば,数はすんごく沢山あります。スタバだらけです。
 つまりは。アメリカと仲良くするあまり,外資だらけになってる。
 だからこーゆー国内系の珈琲屋はえらく珍しいわけですが…そのレベルはってゆーと。
 結局,出て来たのは,ごく一般的な珈琲と,これまた一番日本的なソーセージのホットドッグでした。日本的にはかなりいいソーセージで味わい深いと思えたけど…台湾ハムじゃない。つまり西欧風のちゃんとし過ぎたソーセージで独自性は薄い。
 位置関係が何となくイメージできた感じ。
 つまり,どーもあの味の台湾ハム,得てして,もー少し下品なものらしい。台湾ではスパムみたいな下世話な加工肉の扱い。
 ただ,こーゆー観光的には発見されてない原石のよな台湾風味ってのが,まだゴロゴロしとるんですね。
 以前,志村けんと金城武のコラボした広報紙面があったのを思い出しました。
志村けん「ふっふ…人は私を台湾通と呼ぶ」
金城武「いやいや,台湾の奥はもっと深いです