ベルリンを発し西行するヨーロッパ特急。いわゆるメルヘン街道だけど,似合わんからあんまり自覚してないが――。
ここまでほぼ平地だった地勢がうねり始めました。
15時40分,ドイツ中央部を東行するヨーロッパ特急が,今初めてトンネルに入ります。
2つ連続する。その間のわずかな間,眼前に小さな谷が現れる。溜め息の出るよな美しい村。
少し置いて3つ目のトンネル。ちょっと出てすぐ4つ目。
なるほど。地図を見ると,グロッケン山の西麓を南下してるルートです。標高千程度だけど,そんな山でもこれだけ異様に感じるのは,それほどここより西の地勢が平らかだったってことなんでしょう。
15時55分,Gottingen。「ゲッ?○ん毛!?」みたいな名だが,緑豊かな閑静そうな街で安心ようございますね。
この街で人口12万!?この半分のフルダってどんな田舎やねん?――でもこのゲッ?…は大学町で,ノーベル賞輩出は30人以上とのこと。何と絵本「マックスとモーリッツ」の作者の出身地でもあるそうで…つーか何だその本?
でもフランクフルトまで2時間弱とやや遠いな…とかまだ今宵の泊地に迷いを覚えつつ。
▲誰も知らないだろうから・・・フルダ Fulda の位置図
▲後日調査結果:マックスとモーリッツというのはこんな奴ら。いかにもどうにかしてやりたい,という見かけのこいつらが,いたずらを繰り返した挙句,こうなってしまう・・・という末路が,何とアヒルの餌になる,というこれまたドイツ系らしい怖い最期になってます。→ヴィルヘルム・ブッシュ作の七つのいたずら話 訳 岡部由紀子
16時を回る。いきなり10分位のスゴく長いトンネルに入った。えーっ!?と地図を見直す。どこにこんなトンネル掘る標高差があんねん?途中ちょっと出たが,ほぼ15分,カッセルまでの半分以上はトンネルでした。
なるほどメルヘン街道か…!?こういう山里的なとこが舞台なんだろか?日本で言えば戦国の伊賀や信州みたいな小勢力の乱立地だから,色々とえげつない物語が生まれた…みたいな?
16時15分,前駅Kasserに着く。
隣のおばさんのチェックする素振りで分かったけど,どうやらコンパートメントの外に,どの席の客がどこまで行くと表示されてるらしい。
隣のコンパートメントから鶏みたいな鳴き声が聞こえてどうも気になる。確認してみたら,どうやらドイツの子供らしい。ドイツがみんなこうなのか?それともこの子だけか?
さて…次の駅のはずだが――只今どんどん増速中。電光表示は時速230km/hを越えました。まあ新幹線並みと言っても許される速さかの。
コンパートメントに新たに入ってきた兄ちゃん,席につくなり充電開始。気づかんかった…フリーのコンセントもあるんやね。
ホームを流れた駅名放送の発音はまさに「古田」。やはりヤクルトファンの多い町と言われるフルダに,15時45分着。
駅から出て500m,ibisに入る。素泊まり57ε。エレベーターにカードキーを使うセキュリティーの高さ。マップも調達してすぐ市内へ。
割とデカい町です。フルダ直前にもトンネルに入ったり出たりが15分以上続いたから,山間の村をイメージしてたんだけど,全然街です。ヤクルトの未来は明るい。
空は薄闇が差して来てる。おお,もう5時を回ってるぞ?
Leipzigerstr.を西へ。地図に縮尺がなかったもんだから,距離感を間違えて西へ進むと,まだ街の中心部,SchloBgartenという公園のど真ん中に出たとこでした。
こりゃ本気で,思ってたより遥かにデカい町やど?
この公園の規模もすさまじい。gartenだから正確には庭園か?中央の丘を巡って各種の植栽が彩る。広いがこの高低差が居心地のいい空間を作ってる。時間がいいのか散歩客の数もある。
園内にゴッツい建物のレストランまで出ててテラスは客でいっぱい。Win-fried-schuleって建物らしい。これを右手に見て,公園をようやく横断。
Pauluspronenadeという道に出る。観光客の姿が目立つ。確かに古めかしく建物は多いけど?例のゲーテの何とかがあるのかも(確認もしてないけど)?この道よりさらに向こう側,Friedrichstr.まで出る。
この西側の路地に迷い込んでみた。童話のような家並み,石畳の坂道。程よく生活感のあるいい町並みです。フルダでは一番気に入った界隈でした。
いい黄昏です。
GERLACH…って何て読むんだ?げらーちぇ?
どこ歩いてんだか分かんなくなってきた辺りで,店舗の多いエリアに出ました。フルダではこの辺り(どの辺り?)から駅前までが唯一市街地っぽいとこみたい。
とにかくこの「げらーちぇ」なる小さなパン屋さん。この街の売り場は店じまいが早いみたい。6時だがもう閉店しかかってる時間でした。
茶色のソーセージみたいなロールパン
プレッツェルの太い奴
計1.50ε
Eglise paroissialeという教会みたいな尖塔2つの建物が,駅の方向を塞いできました。人の流れに従ってこの脇の小径を抜けると,パティオに出ます。
ここまでと打って変わって,物凄い人出!街の人が全部集まってそうな賑わいです。屋台が出てる向こう側,パティオの真ん中では,楽団が演奏会をしてる前にテーブルに付いた夕涼みの人々が群れる。
でもその前に屋台に寄ってみて――
Pappert coffeeshop company
Bratwurst(パン無) 1.80ε×2本
初めて買えた,パン無しソーセージ。
パティオの脇に小ぎれいなパン屋をもう一軒見つけちゃって1つだけ購入。
Backer HAPP
Streussel kuchen 1Platte 2.50ε
さっきからバラバラと音が聞こえてる。音源を辿ると,パティオ駅側の端で子供が踊り続けてる。踏むとオルゴールみたいな音がする石畳があるらしい。不規則な,風鈴みたいな金属音が残照の下に途切れ途切れに流れて続けて来る。
ここから北へまっすぐの道で駅に出られるらしい。
7時近い。チェックインから2時間の街歩きになっちゃったけど…村でも都会でもない,ちょうどいいたゆたいと賑わいのある街でした。3時間ほど前に成り行きで選んだだけの街がこんななら…ドイツってこんな,何ちゅうか,居心地のいい街がそんじょそこらにあるくになんだろか!?四角四面に画一化された日本の民には,にわかに信じがたいんだが?
さて。帰るか?▲Pappert coffeeshop companyのBratwurst
宿までの道を適当に取ってひとしきりブラブラしたとこで,7時の鐘が鳴り響く。
やや閑散とした裏道。やや年期の入った一軒家が某々と立ち並ぶ界隈に,さり気なく残照が残り。
もう…カッコ良すぎる!!
何だ,このスタイリッシュな感じよさは?
作り物の美しさじゃない。生活者が日々わずかずつ整形してきた,そうとしか思えないごくさり気ない自然な美。そう,おそらくこの「さり気なさ」がムチャクチャにカッコいい!――とこの時初めてハッキリと感じました。
>▲Backer HAPPのStreussel kuchen 1Platte
さて。朝のベルリンの市場からためにためたお買い物をズラリと並べた夕食は――充実の一言でした。
一昨日のパンまでまだ残ってます。口にすると,どーゆーわけか素晴らしいブロートフェンのお味ばっか。ひょっとしてライ麦ブロートと同じで,多少時間を置いたのが旨いんだろか?特に黒っぽいパンは,大麦とかカラス麦だろか,麦の香が図太くズシンとキマッてます。
ゴマのパンは,あれもゴマの種類が違うんだろか,それとも下拵えの違いなのか…日本のゴマパンで出会ったことのないジャリジャリ感と穀物臭。パン生地自体が粉っぽい旨さなのに,これにハモって来るから堪らない。
種パンもやっぱり旨い。なぜだろか,種の生々しさが日本のと違う気がする。
考えたら,各国のパンがこれだけある中で,種をまぶすパンはドイツ以外であんまり見ない。粉そのものの旨味を味わう趣向がないと,またそういう粉粉しい生地じゃないと,種や粒を合わせるメリットがないんだろうか。例えば――中華饅頭やリュスティックに入れたらモチモチ感が台無しになるし,パケットだと焦げ味の邪魔になると思える。
同じ小麦の粉モノでも,どの旨味をメインにするかで違う体系化がなされてるわけです。
今日買った茶色の2つのパンも,その意味では同じ。表面に纏わせたセージ香と塩味で食わせる感覚。これもドイツ独特だと思う。
でかいプレッツェルは,太い部分を切り裂いて中の白い部分を三日月型に見せてるんだけど,蝶々結びしてる輪っかが目に見えるから…笑いパンと命名したい。
さてこれに,3つの塗りモノをご用意してしまってました。
いずれも今朝のWochen marktで購入した,蜂蜜,レバーパテ,ブルーベリーソース。
どれも半分も食べれませんでした。凄過ぎるんで…残りは日本に持ち返って続きにしたい。特にブルーベリーは,ヨーグルトに入れて…。あと蜂蜜は,その後,帰国後も蜂蜜がないとパンが食べれなくなってしまったほどの決定的な味覚体験でした。口触りの清順さ,後味の深遠さ…拍手したくなる逸品でした。
ただ問題は――どれも検疫的には×だよな,当然。通関できるかな?
ヴァイスヴルストもいい。日本のに似てるようなのに,後味の所の端正な,かつ,それでいて図太い味覚の有り様が全く違う。
そんなこんなで――やっとデザートにたどり着きました。
Streussel kuchenは初めて食します。
何て言っていーのか分からん…旨さでした。チーズケーキと普通のケーキ生地の間みたいな硬さなんだけど,表面はビスケットみたいなパリポリ感もある。甘味は薄くて,けれど生地の複雑さでチャンと魅了してくれる。こんなスイーツってあるんだなあ。
ゲップ!ご馳走さん!!――さて最終日です。明日も早いぞ,ハードだぞ。
§SixWord:あの夜の光は完璧だった。