外伝09♪~θ(^3^ )第三次×第五日

▲軒先黒板のメニュー表示例

 遅くなった。朝6時半に福建賓館を出発。
 日本でのGWは昨日で終わってる。大陸中国のメーデー連休から1週間経っており,観光客の少ないベストな環境で1日半歩けるはず。時間を無駄には出来ない。
 北へ。尖沙[ロ且]から[サ/全]湾線で終点[サ/全]湾まで。
 まだ立ち客がまばらなほどの空き具合。
 7時を回った。
 列車が地上に出る。
 終点2つ前の駅名は「葵興」。ピンインはkwaihing。ここが徳川将軍家創始の地であることを知る者は少ない。言ってる奴もわししかいない。

 [サ/全]湾下車。
 7時40分,例の乗り場から川龍村行き80番ミニバス発車。
 便が悪かったのか今日は20人もの列が出来てて乗れない人も出た。満席で乗客数は16人。立ち客は許さないらしく無情にドアが閉まる。
 ただし,この客の半数が途中の前田何とかって施設で下車。通勤の皆さんだったらしい。
 片道大人5.50HK$。昨年より運賃も上がったか?
 ケータイ,アンテナ一本立ち!?前回までは圏外だったような…?
 でもないのか?沙[ロ且]道に出ると3本立ちになってちゃんと送信も出来た。Wifi環境も改善されてきてる無用。山手に入るとすぐアンテナは減ったからまだ完全ではないらしいが…。
 しかしまあ…。
 山道の蛇行をよくぞここまでブッ飛ばして走る公共機関であることよ。

▲瑞記茶楼の飲茶

 さて,今年もやって参りました瑞記茶楼。
 本日のアテは
豚肉と黒豆のうずめ飯
馬来包
 茶は,あえて今まで飲んでなかった「寿眉」というのに手を出してみた。
 ここのお茶は4種。お馴染みプーアルの他,この寿眉と水仙,香片とがある。各ケースの茶葉をポットに入れて好きに点てるシステムです。
 香片は見るからにジャスミン,これはまあ中国人のメジャーだろう。水仙も聞いたことはあったけど,寿眉だけは全く分からない。
 分からないものは口に入れてみよう,というわけで。
 一服。

 これはまた…香りの個性的なお茶です。
 一煎,二煎目は,ご飯にも合うポーレイにも似た発酵香を放ってます。
 なのに三煎目くらいから段々香りがキツく出て来る。東方美人みたいな強い芳香を徐々に帯びていきます。
 さらにしばらく置くと,さらに紅茶に似た渋みを帯びていきます。カステラにもよく合う味。
 この変幻自在さ,裏返せば扱いにくい茶葉ということなのかもしれない。が,水がいいこともあるんだろうか,何度かのタイミングではハッとするほどの凄みを見せてくれます。
 この茶をアテる2品。今回は,日本で言う飲茶イメージからはかけ離れたのを選んでみた。
 今回の道行きからは,けれど自分では納得のチョイスとなりました。
 どちらも蒸篭に入ってますが,これ本当に,単に蒸しただけなんでしょうか?
 うずめ飯。
 何度か見た金属製の円柱の器に入ってます。ご飯の上に排骨,それに微量の唐辛子と黒豆。排骨の下拵えはしてあると思うけど,調味料の形跡はない。
これだけで…この美味さ!米は長粒種なんだが,おそらくそれ故にこその香りと粉粉しさが…ハマってしまうとこれ以上ない美味さに感じられる。寿眉の三煎目くらいとピタッと合ってくる。このタイプは[イ子]とは言わないんだろうけど,何て料理法なんだろう?
 カステラ。日本のカステラの卵味で淡く気取ったところがなく,黒糖から出た苦味を帯びた甘さがやや俗っぽく匂う。これも,確か蓮香楼で最初に食べた奴だけど,ハマると抜けられないスイーツです。さらにこれも寿眉が8煎目辺りで紅茶的になってきたのとベストマッチング。
 というわけで,今回の主役は寿眉がさらってしまったわけですが…何なのかはさっぱり。歩き方の情報だと,プーアル茶など黒茶より発酵の軽い白茶と呼ばれる部類。新茶で作られる,いわば季節ものらしい。
 至福の2階ベランダでの一食。
 軽やかな小鳥の声,朝の清風,山間の薫り高い精気…に混ざって,絶え間なく聞こえてくる牌の音。チラ見すると別室には土地のちょっと危ない親玉というか御ヤーさんというか。とにかく日本人観光客がおいそれと触れない方がいい世界も同じ建物の中で展開されてそうです。

 10時を回ってしまった。太子まで戻って地下鉄下車。
 西洋菜南街と水梁道の交差点北西角近くへ。ここも偶然通りかかってから毎回行くようになってしまってる「車[ガンダレ+里][可/可]夫」,アルファベット名「Cherikoff」(ロシア語か?)。
菠蘿紅豆飽
新ジャン合桃包
提子小麦包
 しめて16HK$。
「太子」という地名に,この微妙なエキゾチックさを残しつつ独自の咀嚼をきちんとしてるこの小さなパン屋。最高に香港を感じてしまう店です。
 さてお買物でさらに時間を使ってしまったけど,今回のプリンスタウンのメインは――。

▲金華[ン水]廳の菠蘿飽&[女乃]茶

 有名[ン水]室へブランチタイムに御訪問,という無謀な企画だったけど,幸いにもレジ前の小さなボックスが空いてました,金華[ン水]廳。
 店の造りだけだとこんなにアメリカン・ダイナーそっくりなのに,香港人をうぎゃあっと詰め込むとかくもチャイニーズになっちゃうのは何でだろう?
菠蘿飽
[女乃]茶
 菠蘿飽。流石にスーパーな美味。クッキー質と生地のバランスもいいし,甘さも先味控えめ,噛み進むと小麦主体の甘さがジンワリと染み出して来る。現地ガイドが絶賛してただけはある。
 けどもむしろ驚いたのは[女乃]茶の方。香りは控え目でミルキーさも軽い。なのに,何と言うか…紅茶にそんなんあると知覚するのは初めてなんだけど…コクがある。コーヒーみたいなジンワリと染みる渋い苦味が後味に残る。パンジェンシーと呼ぶにはあまりに実体感のある後味。[女乃]茶でしか発現しえないコクです。
 インヤンが成立する秘密も,この辺りに実はあるのか?
 ただ,ここはかなり観光地です。マスターのオバチャンなんか日本語でガンガン喋ってくるし,壁には「地元で評判の」とか日本語のガイドが貼られてる。
 ちなみに,この店のある西洋菜の東は通菜街。何の由来なんだろ?この道沿いには「水族」という熱帯魚ショップが並ぶ一角がありました。

 太子から香港島の湾仔へは,地下鉄を乗り継げば難なく行ける。
 行けるんだけど何となく,ふいと乗ってしまった湾仔行きの905バス。バスで香港島へ渡るって企画が頭に浮かび,個人的に満場一致の大政翼賛状態になってしまいました。
 衝動に押し流された二人(一人だけど)の運命は!?…上記リンク参照のこと。
 11時40分,香港島の,きっと上環のどこか。皇后街という停留所から北角行きのトラムに乗車。
 陣取るのは当然ながら2階席。しかも最前席に座れた。
 そよ風が心地よいぞよ,ほほほ…ってゆーか風で髪バサバサなんですけど。
 中環の無限極広場2階に「鈴木珈琲館」という高そうなカフェを見かける。日本人の店だろうし,窓際には白人の姿ばかりで,お値段が上流階級っぽい。香港で珈琲は有り難いけど,今回は少なし行っとる余裕はないな。
 また衝動的に下車。中環と上環の間の辺り。
 歩き方にあった茶店に寄る気だったけど,途中で「美香村茶荘」という客足のありそうな小店を見かける。
「有没有寿眉?」(寿眉置いてます?)
「有!」と答える「当たり前だろ」的語気からすると定番なのか?1/4公斤(250g)を購入しとく。12HK$。
 今年のお茶は8月に届くそうで,新茶は白牡丹というのがあるそうだ。一応匂わせてもらう。香りは夢見るが如くに最高だったけど1斤200HK$近い。香港で初回購入の店を過信すると危うい。まずは安い方を確かめましょう。
 そのすぐ並びだったか?Capo’s Espressoというセンス良さそうな店に寄る。トイレがあるのが入店理由でしたが…何せ川龍村でポット2杯飲んだもんなあ…。
Espresso solo 20HK$
 おお!?かなりイケる!
 ドトールは愚か,スタバとも段違いの本格味やがな!!外国人しかいないけど…。
 タバコも吸えるみたいだし,Wifi表示もあってちょっと食い物もある。何より繰り返しになるけどトイレがある。使えそうな店です。
 混んでたから入らなかったけど,この並びに楽香園[口架]琲室という面白そうな[ン水]室もある。
 たまたま入った脇道だけど,いい店が並んでる機利文新街。Gliman’s Bazaarが英語名。
 この迷宮の町には,まだまだこんな裏道,沢山あるんだなあ。

 結局,上環からMTRで天后へ。――それなら最初から地下鉄で行けよう!みたいなツッコミを自分で入れつつも。
 天后,[舌甘][女夷][女夷]を目指す。
 清風路へ…あれ?ここ来たことがあるぞ?全然見たことない景色だけど,土地勘は来たことあると言ってるぞ?妙な表現だけど確かに…。
 気がついたら,初回にインド料理を食べに来た店の真ん前に立ってました!全然変わっとるがな,この界隈!!
 [木留][サ/連]豆腐花が有名らしい。何て発音だ?北京語ならリウリエン…あ!ドリアンか?
 東南アジア歴は長いけれど,あれだけは常にゲロ吐きそうになる。未だにダメ!だけど店内には,あの臭い充満!
芒果二重奏豆腐花 28HK$
にする。けどこれ…マンゴーの味しかせんがな!!
 と思ってたら…味覚の底にはちゃんと豆腐が埋まってました。
 おおっ!?
 合う。合うぞ!!
 驚いたことに,豆腐の重い甘さとマンゴーの酸味とイヤミを帯びた甘さは別の層で交差するんである。ちゃんと両立しとる。
 しかし日本でやったら確実に狂ってると思われるだろな。男前豆腐の上にマンゴー潰して混ぜくって「美味い!」とか言ってたら…!!
 一瞬,舌の正気を疑いたくなる美味。けれどこれまた,どーしよーもなく香港なわけです。

▲華[女]清湯[月南]
清湯牛[月南]菜飯

 次なるターゲットは駅前角地の華[女]清湯[月南]。
清湯牛[月南]菜飯 40HK$
 湯は流石!の一言。旨味たっぷり,しかもかなり濾してあるのか,クドミも脂気もヒドく薄い。五香粉の効かせ方も淡く絶妙!美しい味ながら毎日食える味です。
 肉もムチャクチャに柔らかい。これは…牛筋を選んでも酔えたかも?
 台湾の牛肉麺の味に似てるか。沖縄の骨汁にも近しいけどあれにはこんなにシナモンは効いてない。西洋のシチューにも絶対にない味だし…まさに香港味。
 隣の大利という店も同じ料理をメインに売ってるらしいが,明らかに負け組になってる。ただそれでも一定数の客が入ってるから固定客がついてるみたい。実力は拮抗してると見た。ハシゴしかけたけど,今回は先の予定を優先しよう。

▲[火柄-木]記茶[木当]の風景

 トラム道を横切って山側へ。思ったよりきつい坂道をずんずん登った鄙びた住宅街の路地,安庶庇街。
 [火柄-木]記茶[木当]。言っちゃあ何だけど汚い露店だ。
 食い物は出前一丁と三文治くらい。皆さんガッツリ食べてるけど,通りがかりっぽく
[女乃]茶 12元
だけにした。
「棒四大[女乃]茶王」の名を冠され,CNN[言賛]港式[シ慈]味第三位…と読んでも何が何やら分からんけど,すごく有名な店らしい。繰り返して申し訳ないが汚いんだけど,客はわんさかで席がないほど。
 [女乃]茶を啜る。
 確実に凄い!
 この[女乃]茶…コクが凄い!ミルクを含め香りはほとんど感じられない。紅茶としては香りを殺してるとも言えるんだろう。
 でもだからこそ,コクの後に素晴らしい爽快感となって現れ出てくるこの感じ…。
 これはもう紅茶でもミルクでもない。[女乃]茶という別種の何物かである。
 …キマッたように聞こえるけれど既に繰り返して書いてる感想だな。
 まあ繰り返しなんだけど,そんなものをこの屋台で作り出してしまう。その香港人の創造性にただただ脱帽するわけで。
 もう3時過ぎにも関わらず,席はほぼ満席。固定客が当たり前にくつろいでいるビルの谷間,大坑の昼下がり。

 [火包]台山までトラムで移動。
 ビルの窓に「9楼B女西医高月嘉」との文字の看板。だから何の医者なんだ?これ見て来る客はいないに三千点!
 で,目指しましたるお店は「福元湯園」。
 橋桁下。小さなお店を仲の良いご夫婦が経営されつます。いい雰囲気の店でした。
[怨-心/鳥][夫/鳥]湯園 17HK$
 え~と,後はですよ。
 ゴマ団子は上海とか寧波並みにおいしかったです。
 湯は高知日曜市の生姜湯並みにパンチが効いてましたです。
 天后エリアに出没する雨後のタケノコ店は,大体ここに代表されそうな気がします。ものすごく実験的なワンダーランド状態なのは確かに面白い。だけど裏返して言えば,香港的にも広東的にも完成度はまだ低いと感じます。
 この土地には,3年経ってまた来てみたい。

 16時を回った。
 10時間連続行動してると流石に疲れてきたが,もう一つどうしても行っときたい。
 九龍側へ帰って進水[土歩]へ。緑林[舌甘]品。
豆腐布丁 16HK$
 ウマカッタ。
 ウマカッタんだけど…。
 ちょっと気分が悪くなってきた。ちょっと…とゆーか,気が遠くなってきた。おおっ何か急激に襲って来るものがあるぞ?かなりヤバいぞ!?
 食い過ぎか?あるいは歩き過ぎか?きっとそのどちらもだと思われる。とゆーか,間違いなくどちらもでしょう。
 劉林記の席が奇跡的に空いてるようだったけども…今食ったら噴水してしまう。間違いない。
 今回はマッサージにも行く時間がなかったけども…今,胃腸の後ろとかをグッとされたらやっぱり噴水だ。
 あかんわ。何とか地下鉄の座席に座り込む。前に爺さんがいるけど…ゴメンナサイ,座らせて下さい。…今,腹に力入れてしまうと噴…。
いかん,かなりヤバい。列車の揺れすら…来る。
 尖沙[ロ且]まで後2駅。
 耐えろ,我が胃腸よ!!