外伝03-FASE27@So many くらいクライ洞窟 And we お祈り@ひめゆり

▲Le・Pattisier・Jyo-gi(3日目御訪問)の軒先のお二人
 何がってわけじゃないけど腹が立って来るのは私だけなんでしょか?

 駆け出しダンサーのデビー・レイノルズがデカいケーキの中から登場するのはミュージカル「雨に唄えば」だが,何か今回は沖縄でケーキばっかり食べちゃいました。
 二泊目のコザの宿を出て那覇に戻る道すがら,既に2軒お店に寄ってます。

 まずは浦添市前田,ケーキハウス ナシロ。道は…地図とにらめっこして行ったのでもう全然分からん。旅行者には結構分かりにくい丘陵地の直中で,我ながらよく到達できたもんです。
 結構お高そうな一軒店で品もややディープなラインナップ。確かイートインも出来たと思う。
 購入したのは
地火焼きチーズケーキ
チョコブラウニー
ウィルキンズ
1030円→お三方御写真
 お味も,分かんなくなるので個別に書こう。──三人とも納得のお味。店造りとは裏腹にお高いジョートー味じゃなく割とアメリカンに庶民的。
 中でもヤラレてしまったのは,このウィルキンズという御方。
 キャラメルでコーティングしたパンケーキ。簡単な作りなんだけど,ソースがオレンジ。これが鮮やかな酸味ながらさっぱりしてていい!さらにこの柑橘味の背景にキャラメルの甘苦さが微妙に絡んで来る木訥とした絶妙さ。
 何か内地で言うケーキとジャンルが違うようなスイーツです。宿ではいつものように中国茶に合わせて食べましたけど,そうするとこの内地との距離感がより一層感じられました。
 ところでご存知ないでしょうか?ウィルキンズって…何よ?ってか誰よ?検索しても「ドイツ老舗洋食器メーカーウィルキンズケーキフォーク」しか出てこんのじゃけど…店主の友達とか?

 浦添市前田から同・伊祖へ原チャを向ける。
 このコースは,今度こそ全く再現不能。この辺りってどうなってんだ?曲がってくねって登って降りて立体交差で訳分からんくなる。地形のみならず道路配置の発想そのものが内地とスゴい違和感。敢えて類似を探すなら,長崎とか松江の山際かなあ。
 それで気付くと高架の阪の下みたいな,段差の脇みたいなとこに…。
 全くよくたどり着けたもんよ。「マキシム沖縄」発見。
 店名は,一応だけどインスタントコーヒーとかとは関係ないっぽい。内地センスでは違和感あるけどウチナー的には丸なんでしょう。てことは,それなりに古い店か?
シュークリーム
レアチーズ
トリコロール
550円→写真
 ここのも美味かった。コザ的に大味一辺倒じゃなく,内地的に病的な繊細さでもなくて,おおらかに繊細な作り。アメリカ家庭風とでも言うのか,レアチーズなどはそういう一品でした。ただ,トリコロールみたいな欧風のネーミングからは,その器に安住しない創意の意欲もみなぎらせてる印象。いいバランスの立ち位置です。
 味に戻ると,このトリコロールってのはケーキの種類じゃなくて「色とりどり」という程の意味らしい。チョコレートケーキに抹茶クリームが挟んである。うまいバランスでイケたけど…。
 このタイプは他で全くないわけじゃない。普通「抹茶チョコ」とか言うぞ?わざわざ何でこんな多義語のトリコロールと言わねばならぬ?
 きっとこういう答えなんだろな。「やー,その方がジョートーっぽいさあ」

▲グランド食堂のほね汁

 という感想は実際は宿での話。美味そうなケーキを選んで結構時間もかかって国道58号に出たら。
 腹へったなあ。朝は諦めたけど…やっぱり食いたいなあ。
 てことでわざわざ浦添から再度引き返してコザ・諸見へ。目指すは──朝閉まってたグランド食堂。
 開いてた!
 開いてたけど…グランド食堂だよね?
 いや,外見は普通の店です。建物も塗装も看板も,普通の外見になってしまってます。そう看板が…とうとう掛け変わってたんです!
 来る度に
「え!?ここ?まだやってるよな?潰れてないよな?」
みたいな最上位のチープ感というか,端的にボロいというか…あの戸惑いはいまいずこ。
 でも玄関入るや,安心する。家庭の食堂みたいなテーブルも変わらない。すっかりネーネーになっちゃったけど3人の子供が店を遊び場にしてる様子も変わらない。出てくる汁の上に積まれた牛骨の建造物も変わらないぞ!!
 この店,来る度に他も検討するんだけどなあ。まだ結局,これしか頼んだことないよなあ,もったいなくて──。
ほね汁 650円
 あまり書くことはない。当然に,かつ最高に…美味い!
 考えるのは骨髄食という風習の幅の広さです。この部位を食べる文化はユーラシア全土にまたがってる。スープを取るのは中華圏では一般的だし,韓国のカムジャタンの隠れた主役であることまで持ち出さずとも,そも豚骨ラーメンがそうです。ただ,この髄そのものへの嗜好も,西はフランスの大腿骨の骨髄食「l’os a moelle(ロス・ア・モワル)」,東なら中国で焼いた骨髄をストローで吸う何とかって料理とか。どうも遊牧民の食法に端を発するみたいで,肉食文化圏では隠れたメジャーなのかも。
 それが沖縄にだけあるという点。つまりこの辺が,日本で唯一の本格的な肉食圏たる由縁なんでしょう。

▲まんぷく食堂の牛汁,800円也

 3度目の正直か…?ホントに久しぶりに入れました。
 沖縄の肉食いの洗礼を受けてしまうと,記憶の中からのフラッシュバックでどうしても食らいたくなってきて──コザから那覇を突き抜けて一気に大里まで原チャのエンジンが唸りを上げる。
 開いてた!!!
 給食でも出せそうな馬鹿でかい調理スペースの,二辺を囲むような客席と,せこから拡張したらしい四人掛けのテーブルと小上がり。商店というより地域の社交場らしい空間です。昼下がり,客の波はひとまず引いて,くだを巻いてる酔っぱらいオジイが闊歩しとりま…したが,あッ,今,タクシー到着!店側の判断により呼ばれたらしく,嫌がるオジイを押し込んでご自宅に送還した模様です。
 こんなファンキーな店内に癒やされなががら,口に入るはゴロゴロ牛肉と至福の汁。──中華スパイスでも肉汁でも,赤身のソルロンタンとも違う。いい意味で臭い脂と,あとポイントになる茴香めいた何か…。
 それだけでは臭いスパイスの組合せ。それがなぜか,汁としては途方もなく旨いのは…このスパイス使いって,一体何なんだろう!!?
 台湾の牛肉麺スープをイメージしてた時期もあったけど,あの滷味の一種の味覚とは根本的に何か違うと,今は感じる。あえて似たものを探せば,漢方スープに近い。
 要するに,中華圏の料理に深入りした今となってみれば,単に中国の影響を受けたものと言って済ませていいものにはどうも思えない。
 最近,三重県名張市の名張産業振興センターが町起こしに同名の料理をアピールしてるという。だから海の民の料理というのも短絡なんだけど,何か複雑なルーツの味に思えてならないんですが──。

 大里から与那原方面に戻る道の途中にあるタバコ屋に寄るのが恒例になってしまった。
 やたら拘った感じの(シガーやパイプが結構な種類揃ってる)タバコ専門店です。店名は…何ていうんだろう?
 内地のたばこが高くなってから,海外から帰り際に免税たばこを買うけど,沖縄タバコも同じ感覚で自分土産に買ってます(アメリカ世の時代の価格が発射台になったまま,振興策上増額できない流れらしい)。うるまとバイオレットを各ワンカートンずつ,物好きな観光客面して購入します。
 携帯灰皿500円を250円で付けて頂きました。
 さらに那覇市内への道すがら,古波蔵の名店・にーちぇに立ち寄る。常に迷いまくった挙げ句,突然着いちゃうんだけど…ここはホントにいい。味も雰囲気も最高だと思う。

▲ニーチェでブレンドとショコラケーキ

 沖縄食に執着し始めた最初の店だったと記憶する。
 その時行ったのは沖大前の店だったけど,そちらは今はない。前回「ついに閉店!?」と焦りまくった。根拠はないけどあるうちに必ず立ち寄らないと不安なんであります。
 かなりの数の紹介で「どこが軽食やねん!?」みたいなツッコミをされてる。
 軽食の店ルビー。

▲ルビーの豆腐ちゃんぷるー

 ベタだ。
 沖縄で豆腐チャンプル食ってどーすんねん?まるで観光客やがな!たるんどる!最近覇気がないぞ覇気が!!
 いや,覇気は前からカラッキシですけど,豆腐と牛肉の味噌煮580円也のチケットを買ったはずなのに,何かの間違いで来たんですわ。「何だこれは!!牛肉が入ってないじゃないか!」──とキレるほど見かけも内容物も離れちゃいないし,そんなに牛肉食いたいのか,昭和一桁か,と思われるのも心外だけど,まあそれはそれでいいか…。
 とかいろいろ戸惑ってるうちタイミングを失いまして,いやあ人生色々あるよのう。
 てことで久しぶりに食べたチャンプルーは──ええっ?こんな料理だったっけ!?
 味覚の柱が,単なるソースじゃない。味噌でもない。よく言われるカツオ節ですらない!カツオは単にスープに混ぜて炒めてるだけの具の一つだと思う。──最初の沖縄の時代に,このチャンプルーを自分で作ろうとしてどうしても似ないから諦めた記憶が蘇える。
 そうか。おそらくダシを最後に炒めながら加える,あの中華的発想。その調理手順だけが違いの「野菜炒め」なんである!!
 沖縄豆腐その他の具は,その上に乗っかってる。つまりこれはサラダなんだと思う。これも中華の発想で──一次加工した材料を油で和える生野菜を使わないサラダ感覚。
 対して──ダシの使い方の束縛から逃れられない和食。
 さらに言えば──コンビーフを中華風に調理する発想を持ちえない大陸中華。
 見た目の素朴さに似合わず,これは沖縄の創造性が生んだ和食(出汁)と中華(サラダ感覚)のコングロマリット。
 そして,サブカルチャーはサブカルチャーであるうちにしか文化として変容しえない。だからこの島にこの料理が成立しえたわけです。
 ちょっと論を暴走させ過ぎたけど,そんなイメージを巻き起こした間違い注文の一食だったんでした。

 夜になっちゃったけど新都心にも寄っとこかね。
 天久のりうぼうでお買い物。サンプル試食感覚です。
黒酢で健康280円
宮平カフェ・オレ 93円
あんあんじーまあみー豆腐 258円
りうぼう焼餃子 148円
かぼちゃと紅芋のサラダ 118円
 正直あまり当たりはなかった。実は最大の狙いは魚くんだったんだけども,意外にスーパーの品揃えはフツー。ただし宮平のカフェオレは
さすがに唸るお味。
 唸ったのは,さらに入居店舗の白バラで買ったケーキ。本店は長田のお店だそうです。
新都心パリパリ(シュークリーム)
キリクリームチーズ
プレミアム楽市ロール→お写真
 さすがに那覇のケーキ屋さんでバランスはいい。先の3軒みたいな(いい意味の)荒っぽさがなくて内地のベクトル。
 ただし水準は相当高い。素材が生きてるというか,生々しいお味のケーキで,生地よりクリームで食わせるタイプかなあ。
 ちなみに後から知ったけど…看板商品はパヴェ・フリーナ。モンドセレクション5年連続受賞って…ああもう,また行かなきゃならんじゃないか!!!今度は本店へ──。