▲秀の窯のクリームチーズとサーモンのベーグルサンドを表のテーブルにて
大阪城地下に議事堂を持つ大阪国なる裏国家が,会計検査で存亡の危機を迎え,全大阪が完全停止。その壮大なるストーリーと並行して,どうしても女の子になりたい大阪国総理大臣の息子が登場する「プリンセストヨトミ」。よく出来たストーリーと感心するんだけど,唯一──息子がおかまである必然性はどこにあったの?
→こぼれ話:知事vs市長vs総理
さて,那覇での朝食にうかがったのは「秀の窯」。マスターはきちんと男らしい男性のようで安心してます。
長く引っ張りましたが,今のがオチでした。
クリームチーズとサーモンのベーグルサンド
ひまわりあんぱん
マカダミアスコーン
やっぱりいい。ここのパンは異様に生々しい。
感動するのは何回目かから買い続けてる入口左手のサンド系。これと,松山のガロパンのサンドに匹敵するサンドイッチを,わしはまだ知らない。
この朝のも期待を裏切らない。
ここでベーグルのサンドは初めて見る。サーモン&クリームチーズはニューヨークのベーグルサンドの定番中の定番ではあるから,処女作かもしれない。アメリカ的に淡い臭みのベーグルに,宮平だろか,クリームチーズのとろける味わいがかくも美しくかぶさって来る。サーモンなんて沖縄で美味いはずがないんだけど,全体の背景味として香り高く流れ続ける。
これは後から食ったけど,ひまわりアンパンもいい。内地定番の小倉アンに,おそらくドイツのブロートフェンの発想だろう,ひまわりの種の軽く滑らかな豆の香り味が意外にマッチしてる。どうやって思いつくんだろ,こんな取り合わせ。
この日も,入口脇のテーブルでベーグル頂くうち,客足が俄かに増えてきた。人気は健在なわけだけど,ココはこういう創作にも貪欲さを失わない。それもサンド系やハード系だけじゃなく,アンパンの部類のニッポン的な菓子パンにいつも新メニューを出してる。
沖縄にパン屋は数あれど,どうしても寄ってしまうのは,やはりこの小店独特の「軽やか」オーラなんだと思います。
「好きにやってるさー,でももしかなゆんなら※寄ってねえ」みたいなマイウェイ振りが,マイウェイだからこその生真面目さと技術水準を伴ってる。そのスタンスが,何ともウチナー臭くて。
※かなゆん:気に入る
午前中の残りを桜坂市民劇場で過ごす。映画は「さよならドビュッシー」。
お気付きの如く,今回は冒頭を映画ネタに絡ます趣向なんですけど,これが結局批判になってるみたいで何なんですけど,このドビュッシーもまた…大胆なトリック設定は分かるけど,主人公の身になってみると悲惨過ぎるぞ!!?
げんなり来たのでほのぼのしたお店にゴー。
沖映通りから曲がってくねった路地裏の「うちなー畑」。有名じゃないけどまさにマチグワーのパン屋さん。
プチバケット
ミニパン
あんぱん
飛び抜けたとか感動する味じゃないけどホッとする。那覇のパン屋って意外にこういう路線のパンもむしろメジャーにあって,結構見逃してるのかもしれません。
続けて那覇港の嶺吉食堂。「まんぷく」と同じくここもこれしか頼んだことがない。
てびち 700円
もはや写真撮る気にもならんけど…やはりここは外せない。トロけるコラーゲンが見た目と材質の割に淡麗な味わいにまとまってる素晴らしい老舗です。
ただ,ここもそろそろ建て替えた方がいいみたいな気が…。いつ崩れてもおかしくない気配をひしひしと…。
明朝は帰国。終わりが見えてきてしまった。
と考えてたら前回の最終食を思い出して足が向いてしまった「みかど」。
ちゃんぽん(沖縄風)550円
店が貼り出してる人気ランキングにもあるし,前回から気になってたこのメニューを頼んでみた。
何だコレは?
わざわざ「沖縄風」という表示が不気味だったんだけど…ここまでのものか?
端的に言えば──長崎ちゃんぽんのアンがライスにかかってる?じゃあ中華丼なのかと言えば,アレよりははるかに中華の色が濃い。八宝菜という日本中華じゃなく,きちんと福建中華っぽい。
違和感のあまり──つまり,全然違うんじゃないけど,ありそうなのに内地のどこにもない,少しずつズレてる不協和音の共鳴がスゴくて──美味いのかどうだか実感できない。
次回,再確認する。とにかく不思議な料理です。長崎や八幡浜のちゃんぽん,熊本の太平燕,それらとの関係は?沖縄風中華みたいなジャンルを考えるべきなのか!?
既存仮説:
①おかず載せご飯という類似点からインドネシアのナシチャンプルと語源も含めて関連がある?
②韓国のチャンポンパプ(長崎ちゃんぽんに似たスープと具材を白飯にかけたクッパ)と関係あり?
③朝鮮語の「チャンポンハダ」(ちゃんぽんする)が語源?
※その他,ちゃんぽんにはローカル形式が相当例ある。九州内の北九州市戸畑区や水俣市のちゃんぽんや,福岡のちゃんぽんうどんはともかく,滋賀県彦根市のちゃんぽんや姫路市のチャンポン焼きなど,この料理は得体の知れないところがある。
「沖縄料理とお酒 創業1958年」と掲示あり。
牧志の大衆食堂むつみで,本来みかどで食うつもりだったこちらを頂きました。
豆腐の味噌煮 630円
ここも通い始めて長くなる。レベルは保証済みですが,「むつみ」のは「みかど」より肉主体か?ナスと挽き肉の中華味噌炒め,というのが実態かも?
ただ,味噌の使い方は共通してる。和風の香りを足す感覚じゃなく,苦味とコクとしてチャンプルーに和えてある感じ。
こういう調理だけをみてると,ウチナー料理は広東か福建の中華の一分派と捉えた方が分かりいい気もしてくる。ただ,その捉えだとはみ出してしまう奔放さもあるから面白いんだけど。
▲コープ買いの田芋入りクンペンとタンナファクルー(3つ100円)
いよいよ最終宿へ移ろうと荷物をピックアップする直前に,こいつを見つけてしまった。
つまりサンキョウビジネスホテルの真ん前。いつも売ってるわけじゃなく,借り物の売り場らしいです。おばちゃんが一人でやっとられました。
タンナファクルー?
「旦那,ファック・ユー!!!」みたいな音で,はいはい仲睦まじくて宜しゅおまんなあ,というんじゃあもちろんない。
後で食べたら…美味い!甘味は,今回バイク借りて直行した「きっぱん」系らしい。でもこれは饅頭生地でくるまれてる…というかアンと生地が未分化という感じ。この生地もまた単なる小麦ベースとはかけ離れてて,和とも洋とも一線を画した沖縄スイーツ。
調べていくと──
■衣は小麦粉と砂糖で作る。ただし,あんを入れて焼くので,その香りも移っている。
■あんは卵黄,胡麻,落花生(ピーナツ),桔餅(きっぱん)で作る。
■琉球時代から祭事に供えられたもの。今は祭事用の菓子。
■王朝菓子としてはクンペン。庶民のものがタンナファクルー。
──クンペン(漢字:光餅又は薫餅)の流通版らしい。ただ,クンペンの薬臭い上品さはなくなってると思う。夜,コープで買って再確認した。
■クンペンは,新垣家の一世が琉球王家に包丁役(=料理番)として仕えていた際,中国の冊封使から習った中国菓子と,江戸上りで使節団にお供して行った江戸で習った和菓子を,琉球独自の王朝菓子として融合させたもの。
■タンナファクルーは,クンペンを首里の菓子屋,玉那覇家(たまなはけ)が安価な焼き菓子に作り直したものだと伝えられる。
──で?何で「タンナファクルー」?
■名前の由来は,「色黒の玉那覇さん」。玉那覇は沖縄方言読みで「たんなふぁ」。黒を「くるー」と言う。つまり菓子を作る玉那覇さんの呼び名が,そのまま菓子の名になったもの。
──何じゃそりゃ!単にアダナやんけ!ファック・ユー!!
▲最強食堂のふーちきなー
帰国の飛行機が翌朝の早い時間だったから,最終宿を奥武山にした。
奥武山を選んだ理由はもう一つ,この最強である。ゆいレールに乗る予定にしてた6時より前でも,24時間営業のここならウチナー飯の朝食が取れる。
さすがに店内には誰も客はいない。自動券売機に立つと,前々回の記憶からやはりコレを選んでしまった。
ふーちきなー 480円
記憶違いではなかった。やっぱ最強だわこりゃ!
卵の染みた麩の柔らかさとチキナーの辛みとの織りなす地味が効いてるのは確かだけど,何か勢いが違うんである。
豚肉が凶暴に香る。それほど高級な肉の使用は想定しにくいから,僅かに使われてるポークが作る香りなんだろうか!?いや,豚肉とポークの親子合わせ技というのが肉味を重層化してる!?あるいは,豚肉以前に微妙に香るカツオ節が豚肉の下味として力強く響くからだろうか!?
沖縄麩の何とも掴みがたい味わいとチキナーの苦味と香りも,それを補強してると思うんだけど…どうも捉え難いものがある。──でも間違いなく美味い!B級に美味い!
あんまり不思議な旨さを再度味わい尽くしてたら──ゆいレール始発の06時06分を逃してしまった。それどころか2本遅れの35分に乗る羽目に。
奥武山に宿泊した意味があんまりなくなってしまったとも言える。とりあえず飛行機には乗れましたが──。
最強食堂は沖縄本島内に少なくとも5店舗あるようです。次回,全店舗制覇とかバカなことは考えないと思うが──他のメニューも試してみにゃならんな,このB級ぶりだと。
という感じで,第五次を終わりますのですが。
別にお金はもらってないけど,途中で触れた高良結香さんについて再度書いときます。
高良結香『愛と光』が何となく今回頭から離れなかった。テーマソングということにしときます。
この人の経歴がまた凄い。沖縄から内地を席巻,という従来スタイルじゃない。ニューヨークで成功しながら,同時平行で音楽活動をしてる方です。
ウチナーポップの第三世代みたいな時代が始まりつつあるのかも知れない。この記述で締めようと思います。
◆沖縄県那覇市出身。
◆幼少期:沖縄クリスチャンスクールに通うかたわら5歳から高良幸子バレエ教室でバレエを習う。
◆高校卒業後:渡米。ヴァージニア大学でダンス専攻。
◆大学中退後:ニューヨークでミュージカルのオーディションにもチャレンジ
◆2001年:ブロードウェイでミュージカル「Mamma Mia」の舞台に立つ。
◆以後:「Flower Drum Song」(主役),「Fantasticks」,「太平洋序曲」(演出:宮本亜門)等に出演
2005年:沖縄発での音楽活動を開始,シングル「今なら素直になれるよ」を発表
◆2006年:(沖縄)1stアルバム「Goin’ Home」をリリース
(ニューヨーク)「A Chorus Line」(16年ぶりにブロードウェイで再演)にコニー・ウォン役で出演
◆2007年8月~9月:人気ミュージカル「RENT」に出演
◆同9月:ミュージカル「The Yellow Wood」に出演(オリジナルキャストとして),このパフォーマンスが「The New York Musical Theatre Festival」で「Outstanding Individual Performance」賞を受賞。ブロードウェイのアジア人女優の中でもずば抜けた実力と目されている。
◆著書:「ブロードウェイ 夢と戦いの日々」(ランダムハウス講談社,2008年出版)→「ブロードウェイ♪ブロードウェイ ~コーラスラインにかける夢~」として映画化