外伝06@明潭@(@_54_@) 第四日@ (@_54_@)

 善導寺・阜杭豆ジャン。
 この有名店にはまだ入れたことがない。今回は10時に行ってみた。時間を外せばあるいは?と期待してみたが甘かった。やっぱり開店間際の朝駆けしかないな。
 で,前回と同じコースで南行。盛園を目指したわけだけど…この超老舗がついに移転!!!
 どうやら記念堂付近の再開発の餌食になったらしい。対面の新鮮豆ジャン店も移転してました。
 再開発は大反対運動中らしい。金華街にはものすごい数の抗議文入り白布がはためいてました。通り入り口の比較的読める旗には「黒心政府政策殺人屋壊人亡財[口〈専]内閣」と書いてある。悪者政府の政策が人を殺して家を壊し,財産を失った人々は内閣を潰す,つまり「倍返しするど」と言いたい模様であります。

▲金峰魯肉飯の魯肉飯(中)と頭髄湯

 仕方ないから小南門まで歩いて金峰魯肉飯へ。
魯肉飯(中)35元
頭髄湯 50元
 滷味はやはりいい。滷味の日本向けキャッチフレーズは「ほんのり甘くてむおんと臭い」とかにすべきだなあ。
 しかしこの汁は…淡白というには独特な臭みがある。舌触りがいいと言うには不気味過ぎる。豚だと思うけども,とにかく脳味噌そのもの。いい出汁出してるんだけど,その上質さが一層リアルに脳味噌を味わわせて頂けるピュアなもので…美味いと喜んでいいのか悪いのか迷ってしまうような珍妙さ。
 この店で一番高い湯です。きっと自慢の逸品なんだろけど。
 多分…日本人的には,メニュー名に「頭髄」と来てる時点でアウト。

 金峰から西にワンブロック隔てた道,かなり気に入ってます。個人的には黒面祭通りとしてインプットされてます。
 PJcafeという木目調の小さなカフェを見つけた。漢字名は品極cafeらしい。店名下には「毎日新鮮[火共]焙珈琲豆」なる標語。確かに,入り口に珈琲煎りの機械が唸りを上げてます。
 けど中国だぞ?さらに台湾だぞ?まともな珈琲に出会ったことがなかった台北だぞ?
 しかし「エスプレッソは苦味が出るのが早いからお早くお召し上がりを」みたいな注意付き。これもなかなか本格派っぽい匂いだぞ?
義式焙縮Espresso 40元
 え!?ウソ!!?完璧なエスプレッソ?苦味がシンプルに深いし,ビシリと濃い。
 赤でまとまった室内。センスも居心地もなかなかです。
 突然変異なのか?あるいは2009年に珈琲何とかってキャンペーンがあった実がようやく出て来た!?

 黒面祭([サ/祭])。
 漢字圏でその言葉を口にするのはあまりに危険である。ハリーポッターで言う「例のあの人」的な暗黒の秘儀である。
 と最初から思い込んでるこの不気味な店は,今や大陸にも進出するチェーン店である。
新経典楊桃汁(小)35元
 日本語表示が出来てました。見ると「スターフルーツジュース」みたいなことが書いてある。ついに我が国にも彼らの毒牙が届こうとしているのか!?
 原点に返って「経典」を注文。やはり顔をしかめてしまう珍妙な味だけど,もう虜になってしまってる自分が怖い。すでに彼らに洗脳された一人なのだろうか?黒面祭の一斉蜂起の日は,刻一刻と近づいている。備えよ,羊たちよ!

▲南台湾[魚土][魚毛]魚[火夷]の魚[長ミ/松]肉[火品/木]飯(小)35元と総合丸湯(貢丸+魚丸)40元

 黒面祭の呪いなのか?店のある角の西側の小店に,何の因果かふらふらと入ってしまう。
 ホントは[魚土][魚毛]に期待してたんだけど…間違えた!総合にばかり目が行ってしまった![魚土][魚毛]の店で丸湯頼んでどーする?
 が,結果的に…うまかった。台湾ハムの肉肉しさがちゃんとあって香港のイギイギしい魚丸と全然違う。台湾の魚丸,これもまたこの土地の特異なのか?
 髭飯も意外にいい。魚の魯肉飯みたいなのと,このふわふわの削りカスが時間差で響いて来る。魯肉みたいなのは,甘く魚臭い奇妙な味覚です。さらに,その下から干物味の髭が顔を出す二重奏の妙。
 でも次回は以下を頼みたいな。
(正解)
火腿肉飯
総合[魚土][魚毛]湯

 この黒面祭の界隈,昼飯時にはものすごい客足です。
 初めは黒面祭だけ目当てだったけど,足を運ぶ度に意外に期待の高まるエリアです。
 万年排骨老店,観音亭素食と,客足が多くなかなかの魅力の店もある。あと,智静素食館とか仏教図書館とか,仏教色の強さも目立つけど,何かいわれのあるエリアなんだろうか?
 とか,迷いに迷った末に選んだのが「え!?それ?」ということはよくあるもので,そのあと一時間を過ごしたのは
信安按摩 台北総店
全身 600/h
 盲の人たちのマッサージ。バンコクのカノクェートの例から期待して入ったら,やはり大正解!
 ほかと全然別次元の施術です。効きが嘘みたいでした。

 台北の珈琲シーンの進度,これはどうなってるんだろう?
 地下鉄駅構内の通りがかりで「cama現[火共]珈琲専門店 南昌店」という店を目にする。品極cafeの余韻で寄ってみることに。──チェーン店っぽいけど「現[火共]」は焙煎したて,つまり自家ローストを意味するのだろう。珈琲の丸亀製麺みたいなもので,そういうチェーンは日本にもまだ稀なはず。
 でもセレクトの主な理由は,注文した以下のメニュー名に例の秘密結社の影響力を感じたためである。
黒珈琲 Americano 40元
 機械淹れらしい。でも豆はやはりちゃんと自家焙煎。アロマはかなりのレベル。
 7時半開店だからモーニング利用も出来そうです。
 ただし…基本,女の子のバイト店らしい。いい雰囲気の店内なんだけど,バイトのお喋り声が姦しい。この辺りの大らかさはとっても漢民族なんですが。

▲大橋頭魯肉飯の魯肉頭と酸菜猪[月土]湯

 延三夜市。
 そんなん聞いたことがなかった。例のネタ本に載ってたんだけど,台北で最もローカルな夜市だとか。場所はMRT大橋頭駅から民権西路と民族西路の間へ少し歩いたとこという。
 とにかく足を運んでみました。普通の車道の両端に屋台が並んでる,気兼ねない雰囲気の夜市でした。
 昨日の景美夜市が良かったんで,同じネタ本に載ってたこの夜市の店もがぜん訪れてみたくなって行ってみたのが──大橋頭魯肉飯。
 やはり普通の小さなお店でした。
魯肉頭45元
酸菜猪[月土]湯45元
 最初は「これは豚角煮と辛子高菜丼か?」と思った。けどスープの繊細なセンスも考え合わせてよくよく味わえば…ご飯にほんのり滷味が染みてる。汁じゃなく,米に直接に入り込んだ滷味。滷味炊き込みご飯という風情でしょうか。
 それと,清湯をしたギリギリ味の残る出汁だけを純粋に取ってある酸菜。素朴な茹で味と絡みあってて…いい。かなりいいぞ!

▲里長伯臭豆腐王の麻辣臭豆腐(鴨血+冬粉+玉子麺)

 距離的には一番近い寧夏夜市をハシゴしてみることに。
 寧夏はMRT中山駅からかなり西に離れてるんで,タクシーで直接移動しました。全く付いて行けない裏道を走破してくれました。減量後はほとんど利用しなくなったけど,タクシーは楽なだけじゃなく思わぬ発見がありそう。
 さて,市内ど真ん中のこちら,久しぶりですが相変わらずの盛況ぶり。人気屋台にはもぐれつくように人が押し寄せてます。
 伺ったのは里長伯臭豆腐王。
麻辣臭豆腐(鴨血+冬粉+玉子麺)80元
「えっ!?」と来た料理に唖然。何かの間違いかと思ったけど…なるほど玉子麺ってのは日本風のインスタントラーメンのことか…。
 台湾や香港では,手打ちのいわゆる拉麺と並立する麺の一形態としてインスタントラーメンを捉える感覚があります。香港では「出前一丁」と表記されるアレ。
 でお味の方だけど…端的に言おう。辛い!濃い!で?それだけ?という感じだなあ。
 壁の掲示によると──1995創業,二代目の店。
 代替わりでめっきり残念な味になってしまったけど,過去の栄光でしばらくは食えてます的な空気。常連客は少ないようです。
 帰りに見ると,野外にまで露店を出してた。とても有名なお店らしい。

▲師大夜市の清蒸肉園 40元(店名は商品名に同じ)。
 台南で福建肉園を食って以来だけど…こんなんだったっけ?十分におかずになりそうなのが来た。
 味は京都のかぶら漬けを想起させました。どこまでもまろやかにまったりと広がる肉汁とあんの香りが堪らん!肉をどうやったらこの味に再編できるもんなんだろう?

 夜も更けてまいりましたが3ヶ所目のハシゴ。というか,ここまで回ると師大夜市にも寄ってみないわけにいかなくなりました。
 基本的にはスーパーのヨンリッチだけのつもりで
黒糖
鮮[女乃] 各1 計30元
 ところがこんな店も発見。昨日の流れで購入してしまう。
師大[臨/皿][酉ノ木]鶏
鶏排+豆干(3)+地瓜 90元
 鶏唐を野菜もの,それからスパイスも一緒に袋に入れてシャッフルすると出来上がりらしい。昨日の2品も合わせて考えると…要するに唐揚を完成品じゃなくて食材の一つと見て使っていく料理群。意外に日本にはない発想です。
「阿二」の
芋鮮牛[女乃] 45元
を飲んでやっと帰途につく。
 師大夜市は,灯篭滷味が繁殖してる反面,食い物屋台の比率そのものが減ってるようです。同じ食い物でも,デートに使えそうなムード満点の店が増えたと思う。それもタイから地中海料理まで幅が広い。
 平[イ介]滷味より駅側はもうファッションストリートと化してます。ちょっと写真にしにくいが,昔のコザみたいなアコークローの…いわばハロウィンのムード。カボチャをくりぬいたような手作り感たっぷりの創意ある店が並ぶ。

 地下鉄に降りる手前,チビまる子ちゃん(小丸子:シャオワンズ)を崩したみたいな作風のマンガ財布を売ってた。
 売り子のお姉ちゃん曰く「他の大学生なんですけどね」。
 マンガやアニメでは日本への憧れが伴うのが,昨今の世界的状況。もうかなり遅いんだけど,しばらく話しこんでしまいました。彼女の研究心と弾け飛び様はよく分かったが――。
 実は結局買わなかった。もちろん電話番号も交換してはいない。
 台湾は,この5年ほどで本当に吹っ切れてしまった。彼らはもう地上に引き返しては来ない。
 買わなかったのは,それを羨む気持ちからだったと思う。あるいは,彼らが既にワシらの助けなんか必要としていない。その事は既にはっきりしていたから。