外伝02-6구포:《第六次2日目》ドンデタンの日

[前期繰越]
    /負債1473

7月12日(土)
1000 キムカネカルクッス
ビビンミルミョン 400
1245チュオタン ボチャンドゥブキタ(市場内)
ドンデタン550
1300OPS
カラメル焦げ目コッペパン
パケット500
1715 -196℃
ミルクビンス150
1745HANDS COFFEE
Ambricano
Chocnlate Tiramise250(1850)
1930 ウォンジュ(元祖)ハルメクッパブ
ソンジクッパブ550
[今期計]
消費1800/収益2400
負債 600/
[次期繰越]
    /負債 873

▲キムカネカルクッスのビビンミルミョン

 旅行初日の眠りは底知れず深い。
 遅めに起きて,せっかくの温泉場だからと宿の大風呂に行ってゆったりしたり。
 この温泉場の湯は,少なしわしの身体には合う。別府の強い湯より,湯田の爽やかな湯に似てて,湯上がりの爽快感がありながら湯当たりしない。
 満喫してたら移動開始が10時近くになってしまった。やや慌て目に駅に向かっていたんだけど──。
 足が止まってしまう。前に入った「ソン」カルクッスの斜め前の店。
 店名キムカネカルクッス…ここはまだ入ったことないよな?
 貼りだしのテレビ報道を見ると,ミルミョンが売り物らしい。韓国中華のビビンミルミョンを久しぶりに試してみとこうか?
ビビンミルミョン 400
 うん!麺が丁度よく柔らかで,ナチュラルに甘い。
 ビビン(って言っていいのか,このアン)の方はかなり辛い。一口目はそうも思わなかったけど,噛み進むにつれて口に響いてくる辛さ。──四川本場の麻(花椒)の代わりに,韓国の山椒が強くストレートに効いてるようです。
 この甘さと辛さの絡まり方,溶け合い方が,何とも止められない旨味を生み出してます。南浦辺りの有名店のよりもはるかに美味いのでは?という感覚は久しぶりに喰うからってだけなんでしょうか?
 具も胡瓜やキムチのほか,何か天ぷらの切れ端みたいな練り物やナッツみたいな歯触りのものと…とにかく色々入ってて,どうも工夫を絶やさない店みたい。実際,これらが醸す複雑味は訳わかんないながら明らかに成功してます。
 外の幟には「100%無添加」らしき文字もある。素直に感動できたお店だったのでした。
 今や完全にカルクッスストリートと化した感のこの温泉場西側メインストリート。
 客足からするとこの「キムカネ」と「ソン」の2店が宜しいようで。ただ今日はもう食えん!!!

 さて今日のお宿は…と探して回っております。
 西面のエンジェルにトライしてみたがダメ。周りのモーテルを含めて,どうやら本番専用への特化がさらに進んでる模様。モーテル2軒で7万と言われたが,何か韓国の本番モーテルはアメリカにも日本にもないハイクラスに進みつつある模様。
 まあそれは進んでもらっていいンすけど…さてどうしよう?
 胃袋も弱っちい状態ではあるし…温泉系で固めるアプローチに出るか?となるとつまり…。
 パン屋にも行きたいしね。
 既に正午。もったいない時間ではあるんだけど…海雲台行きの地下鉄に乗車。

▲チュオタン ボチャンドゥブキタのドンデタン

 海雲台駅から常宿・海雲台温泉へと市街を横切る途中,市場を抜ける。いや抜けようてしたんだけど…。
 この通りの中ほどに何軒か食堂があるんだよなあ。メニューは海鮮中心,なかなか良さそうなんだよなあ。でもって,そうなると腹にも余裕が出た気もするしなあ。
 リュックを下ろしもしてないのに,何とか一人前で食わせてくれそな店を探すと,見つけてしまった。で今しがた入ったとこ。
1245 チュオタン ボチャンドゥブキタ(市場内)
ドンデタン550
 メニュー表示に英語と中国語の訳が付してある。frozen pollack soup [ン東]明太魚湯。
 チュオタンをメニューの看板にはしてたけど,海辺に来て川魚もなかろう…と選んだこの謎の魚系が──。
 美味え!!
 何だこの淡白ながらも深い出汁は!?
 魚肉の身自体はパサパサのタラか鰆みたいな歯応え。日本人的にはも少し脂が欲しいと感じがちな味ですが,どうもその辺りも含めて魚の味は汁に出てるみたいで。
 かなり満席状態が続き,ついにわしは相席にされたけど,この対面のオヤジもドンデタンです。
 おそらくこの魚,ドンデってのは…台湾でよく出るあの蛋白な魚だと思います。漢語訳で「[ン東]明太魚」と表示されてて,この漢字だったかどうか自信がないんだけど?…とにかくこれも一種の韓国風中華,あるいは「中国人も食べるらしいから食ってみる?」的な疑いも。
 この深みある脂が,コチュジャンとも負けずにマリアージュしてます。香りを重んじるコリアン料理の中で,こういう系統の出汁を表に出した味わいって…これまで食べたことなかったと思う。ひょっとしたら,コリアン的には下世話な部類に入る味なのかもしれませんが…。
 最後にクッパブにした段階のこの出汁の深辛さと来たら──これはもう凄まじいものがありました。

 宿を確保してから金連山まで折り返して下車。
 以前に歩いた海岸の道を,以前と同じく広安里までゆるりと進んでみます。
 どうやら温泉場にも西面にも支店ができてた韓国伝統スイーツの店・サルビが,初回にここで入ったあのトックの店だったらしい。今や大盛況,とても入れそうにありません。
 だもんで代わりに入ったのが「-196℃」。時計は17時を回ってますが…マイナス200度というのはさすがに低温すぎね?
ミルクビンス150
 韓国のパッピンスは,思った以上に面白い。昨日は腹にキて何も書けず仕舞だったけど。(そのくらい,ひょっとしたら危ない衛生度かもしれんけど。)
 おそらくは──氷と絡む甘味が原初的なんだと思う。特にここのは,小豆がほとんどそのまま,アンとして機能するぎりぎりまでしか一次調理されてない。
 ぎりぎり抑えた甘味だからこそ,穀物由来の素朴な甘味が出る。スイーツってのはそういうもので,そういうスイーツだからこそ本当に甘味が光る。
 ミルクとして使われてるのも,日本的な練乳じゃなさそう。
 甘味としてギリギリ感じ取れるところにコントロールされてて,最初小豆を加えるまでは存在に気づかなかったほどのミルキーさです。
 この素顔のミルク甘さと小豆甘さが融合した段で,驚くような誇り高い甘さが氷と合わせ立って来ます。
 最近気づきつつありますが──氷モノというのは,土地ごとの甘味感を思った以上に反映してる。そしてその甘味の感覚というのは,大抵食文化の中枢に居座ってるもんなんであります。

▲HANDS COFFEEのAmbricanoとChocnlate Tiramise

 Tokiwaも満席。階上席が封鎖されてしまってました。すっかりカフェ気分だったので海岸線の並びのこちらで一休み。
1745 HANDS COFFEE
Ambricano
Chocnlate Tiramise250(1850)
 これもだ。
 日本のチョコという感覚じゃない。カカオ由来の苦甘さをそのまま纏わせる発想です。イタリアイメージでのティラミスとしては失敗してると言っていいが,やはりカスカスして単独では余り甘さと感じられないチョコ生地の上に,カカオの豆香,そして小麦の豊穣な味わい。これらが一点に出会い,儚く淡い甘さに融合する妙が,いかにも美しいスイーツです。
 美しいと言ってもヨーロッパ的なハイセンスな意味では,これは全くありません。繰り返して恐縮だけど,そういう意味では明らかに失敗しとる。──なのに韓国的に美味い。ここがミソなんですね。
 韓国独自の原初的な甘味感。大分,理解できてきた。年々ハイセンスに磨きをかけるこの食文化が,その芯で持っている野暮ったさ,プリミティヴな味覚感性。
 そして,それがハッキリ現れてるのは,実はこのアメリカーノかもしれません。
 日本で言えば高知のサイフォンコーヒーです。分解された苦味やアロマを技巧的に磨く,いわば演繹的な高め方じゃなく,食材,この場合は豆そのものを味わう帰納的な感性。つまり柚茶とかトウモロコシ茶みたいな韓国茶の一種として珈琲豆を扱う。ビンスの場合は小豆を。
 それが何かの意味で良いとか悪いとかは,少なくとも今わしには判じ難い。ただし,この土地では,そういう食材本来の味覚を持つ土地の食文化が,世界レベルでも稀な程度に「元気」である。そのことだけは,ハッキリと感じ取れるんであります。
 ところで,今CD機で日本語を選んでみますと機械様が日本語で曰く「処理中だから少々お待ちください」。「だから」の辺りに感情的な刃を感じさせますが,急かしてないからゆっくり,出来れば多めにお金出してね。

▲ウォンジュ(元祖)ハルメクッパブのソンジクッパブ

 海雲台温泉に戻る前に,やはりこちらに寄ってしまいました。
1930 ウォンジュ(元祖)ハルメクッパブ
ソンジクッパブ550
 たまにはソンジを…ってわけじゃなく疲れて小声で頼んでしまったらソコギじゃなかっただけでした。
 でも,これも良い!
 エグい。エグいんだけど,エグ甘いとでも言うのか…ご飯と絡むと,確かに他ではなかった旨味に感じられるから不思議です。
 なるほど…こういう美味さなんだな,ソンジって!──と再確認するとともに,この辺りも韓国らしい「スタイリッシュな野暮」の前段階たる素の野暮ったさを留めるように思えまして。
 しかしどうでしょう,この韓国の野暮の元気さは!!この国の伝統って硬直化するってことを知らないみたいです。
 夜は温泉でゆったりいたしました。この硬い湯もまたいいんだよなあ。

▲広安里から地下鉄に戻る辺りはちょっとした丘になっている。広い道もあるんだけど,この丘を覆う迷路のような居住区に入り込むのが最近の定番ルートになってきた。
 雑然と,突き放されたように,殺風景なコンクリートの低層家屋が並ぶ。おそらくかつての釜山の景観を留める界隈です。
 写真は丘の一番高い辺りに立つ教会。韓国や台湾には妙にキリスト教徒が多いらしく,こうした光景に唐突にハッとさせられることがあります。