外伝09♪~θ(^6^ )第六次香港(仏山編)
第四天仏の山も雨アラレ 逆風もなお順風の徳

[前期累計]
消費1800/収入1920
負債 120/
[前期累計]
    /負債2385
§
5月5日(火)
1220隆江猪脚飯10元,550
1420 [保/火][保/火]香
紫砂[月昔]味飯22元,550
1520民信老舗
双皮[女乃] 6元,150
1800現[火考]蛋ガオ 8.75元,250
1815 [イ五][シ甚]記粥品分店
浄鮮[虫下]水餃13元,250
1950 金城拉麺
羊肉拉麺650*0.75=488
[今期累計]
消費1800/収入2238
負債 438/
[今期累計]
    /負債1922
§
→5月6日(水)

 羊城[上下]ってどこでチャージするんだよう。
 確かここで買ったよな…と公園前の改札前のクリーニング店に行くと「不能!チーシーイーへ行け」とお姉ちゃん2人がハモって怒鳴る。「何ですか?チーシーイーって」と尋ねたら,外人対応に切り替えてさらに激しく「セブンイレブン!」と今度は英語で怒鳴られて,セブン…イレブン?何の番号だ?と謎めきつつ場を改める。
 あっ!?そのままか!!
 委託してるのかどうか知らんが,コンビニのセブンでしかチャージ出来んってこと?
 次の乗換駅・西郎の乗り換え口のセブンイレブンの小店で,確かにチャージできた。ただし最初40元出すと断られる。まごもごしてたら後ろの兄ちゃんが「50…」と囁いて来た。最小値が50元らしい。
 さてこの西郎までの中心部行き1号線は凄まじいラッシュの真最中。わしは逆方向,終点・西郎へ。ここから広仏線というのに乗って禅城区まで入るのはまず問題ないだろう。問題はそこから順徳までだが…。
 そう,本日の目的地は順徳です。前回香港から海路で入ったこの街を,今回は陸路で目指してみたのですが…。
 一言で言って苦難の一日になりました。

 西郎に着いたのは8時半。2駅前から地上に出てる。傘を忘れたけど小雨が降ったり止んだり。
 セブンイレブンで時間を取ったためもあり,満員の列車に飛び乗る羽目になる。満員と言っても中に詰めれば立ってられる程度。なのに入口にばっかり立ってるから混むんだよ…。も~!分かれよお前ら!
「愛心専座」のシートが設けてあるけど,座ってるのは全員若い衆だよなどう見ても…。市内方向にはこっち向きの倍くらいの人の流れだったけど…どんな状態になってるんだろ?
 目的駅は「祖廟」という駅に辺りをつけた。10駅。ただ,今「千打湖」というとこでかなりの人数が降りて座れてしまいました。ウーン,このバランスは…。普通,迂回線を考えるんじゃないの?──広州地下鉄は運送量の問題以前に,明らかにニーズ分析不足です。
 隣の男がスマホに大声で話してる。「モウマンタイ,モウマンタイ!」(没問題:問題ない)──あのね,君のマナーが有問題だよ。

 祖廟着。
 おお!?大雨やないか!…と呆然としたのが9時半前。A出口から出たかったけど,たまらずショッピングモールにつながるBへ。

 このモール「[金白]頓城」の中に何とマックスバリュー(美思[イ百]楽)があった。当然,きちんとした傘も置いてあった。それと腐乳とインヤン。また荷物が増えるが,背に腹は変えられぬ。購入。

 そのモールのスタバにて,時計の針が11時に近付くのを見守る。
 傘をさして歩ける雨量にはなったんだけど,道が河になってしまって今度は長靴が必要になってきた。流石にそれは…と迷うにも,場所によっては膝上まで位の深さになってそうです。
 世界均一に旨いスタバのエスプレッソを頂きつつ──しごく途方に暮れにし参りけり候。
 けれど,流石に現代中国はインドとは違う(こういう雨で,二日ほど街が海になってたのは…パトナーだったか?)。一時は膝下まで来た水は,スタバを出る頃にはみるみる引いていきました。
 よし。では次の課題は──順徳行きのバス探し!
 これがまた,途方に暮れました。

 歩き方にある「禅順専線」なる路線も,バス停で見つけた「旅遊4路」なる路線も,全然にして姿も形もなかりせば,も一度帰って来てしまったスタバのエスプレッソもまた苦味増しにけり。ちょいとモノをば尋ね易き小店とてなかりせば,さても如何とも成し難き様にてありおり侍り…本当に如何せん?
 ──どうやら今回は,疲れが溜まると古文めいてしまう景色ありけり。さはともかくも,途方に暮れし雨上がり。
 どんどん頭中が古文で満ちて行くもあわれなり。
 祖廟[立占]Bまで歩き着いたのが11時半前。かなり北にありました。旅遊4路が清[日軍]園に行くとは書いてあるのに,何分待っても「旅遊」の表示バスそのものが姿見せず。
 ついに諦めて仏山汽車[立占]へ延々歩く途中,たまたま向かい側に渡ってみたら,仏山中医院というバス停でついに「順徳」と書いたバスを発見せり!時は今,天をも下す11時45分。路線番号はなく,緑色のバス。これが「専線」(ダイレクト便?)というこてなのか?次のバスを待ってみる。
 …来んがな。
 …来たらざりし。
 …来し能わざりし。
 あっ!!ええっ!?…来たれども止まることなかりしは,これ如何に?
 …来し方行く末を知らずして行きかう人もまた旅人なり。
 …来て頂戴。
 …1202三台目を見送る。

▲隆江猪脚飯のお膳(トマトと卵炒め,豚耳炒め,鶏とジャガイモ煮込,油菜)

 さて,そんな些事はともかく。ともかくだ!ご飯を食べてなかった。
 もうほぼ諦めて,というかヤケクソのモード。
 12時20分,隆江猪脚飯(仏山汽車総[立占]前)に入る。腹が減っては戦が出来ぬ,戦がなくてもまたしからざりしか。
トマトと卵炒め
豚耳炒め
鶏とジャガイモ煮込
油菜 10元,550
美味い!
 空腹は最高の調味料とは良く言ったもの──だけじゃなくて本当に美味いぞ!!
 まるで中華じゃないみたいってゆーか…調味がすごく自然なんですね。トマトはトマトで酸っぱ甘くて,でもほのかに中華。ミミガーなんかの絶妙さは筆舌に期し難い。ほとんどイタリアンな塩使いと微かな中華スパイスが本当に素材の味を引きずり出してます。
 鶏と芋。あんまり見た取り合わせじゃないけど芋にほんわかと纏わりついたチキン出汁の何たる見事さ!
 良かった良かった!もうこのまま帰っても有意義な一日たりと言わざらんや。このまま帰る…のか?

 物ごとに執着心の強い皆様にあっては,順徳はどこへ行ったのかと訝しく思われし者これありとぞ覚ゆる。
 汽車総[立占]のインフォメでムチャクチャ面倒くさそうなお姉ちゃんが「一番の…(ぐにゅぐにょ)」と言った一言を,一番目の交差点と推測できた自分を誉めてあげたいとぞ覚ゆること限りなし。
 一つ戻った交差点でバスの動きから西に入り──ついに城巴総[立占]というバスターミナルを発見せり。カウンターへ。拝むが如くにぞ問うて曰く
「到順徳的汽車…有[ロ馬]?」
 順徳に到りしところの汽車(バス),有りや無しや?

 バスが動き始めたのは12時50分。3時間半近い,長い仏山彷徨でありました。
 バスの有無の問いに,カウンターの御姉様の「9元だ」との怒声の,何と芳しき音声であったことよ!切符はないらしく,直接乗車,強面の運ちゃんにビビりつつなんとかきっちりの札を見つけて箱に投入。車体にはやはり「順徳客運総[立占]-A線-仏山城巴総[立占]」との表示。タイムテーブルには44公里とあった。
 [シ分]江中路を南行。
 中医院前…ええっ?止まるやないか!
 次は…科学館前。こんな近くに止まったのかよ?祖廟西のロータリーの北側西側。で,城面頭南。これもロータリー南すぐ。[シ分]江南路との境目付近。
 東に折れた?東健何とかって[立占]。帰りに降りるには遠いな…。
また南に折れるのか?それなら何で祖廟前を通らない?
 市一医院B。ここはもう使えんな。
 また東へ折れて緑景ニ路。もう全然分からん。

▲非情なるシャッター

 順徳に着く。13時55分。
 宜新路三淮一街の…ええと?14-18号?前回の釜飯屋・陸記が閉まってるのを視認したのが14時15分!残念!
 しかし困った…。既に[保/火][イ子]の口になってしまってる!陸記の近所に[保/火][イ子]を謳う店が3店あったけど,しかしこれは明らかに陸記のおこぼれ(又は間違い)狙い。
 そこで14時20分, [保/火][保/火]香というお店へ。
紫砂[月昔]味飯22元,550
 えっ?裏で「チン!」とか音がしましたが…!?まさかねえ。
 しかし,その音から1分後にバスケットに入れられた釜が出てきた時,我全ての望みをば捨てざる能わざりき。
 まあ…何ですよ。
 こうやって[保/火][イ子]の食文化が現代に広がっていくことはなかなか良いこととぞ覚えんやと覚え候。

 歩行街はファッションストリートになりにけり。
 うーん。この中心街にはあんまり大したとこ探せてないんだよなあ。(後日談:次回:八次香港では大分開発できました。ないことはないです)
 仕方なく…清[日軍]路に民信が出来てたからこっちの方に入ってみました。15時20分。
双皮[女乃] 6元,150
 窓際に座ったら同じ志向で座ってた日本人の駐妻らしき3人組がえらく注文を迷ってます。実質,ここではあまり選択肢ないはずだけどね。
 しかしここのミルクプリンはやはり特別。まったりとしているようでスルリと喉を通り抜け,そのくせ重量感のある甘味,ミルクそのものから離れない誠実な旨味が鼻孔に抜けていく。
 帰りに隣近所に増えた土産物屋を冷やかすとこの商品がインスタントで並んでました。でも…こんなんコピーできんやろ?

▲ 蔵[ロ巴]で意大利式珈琲(エスプレッソ)

 この民信の裏手にふと見つけた店に,何となく入ってみました。蔵[ロ巴],15時40分。
意大利式珈琲(大)22元
「蔵」はやはりチベットらしいが,壁の写真以外はあんまり民俗的な色彩はなく,あくまで優雅な感じ。チベットかどうかはともかくも,けれどもシチュエーション的にはかなり完璧です。蔵の一面に池があり,そのほとりのテラスでエスプレッソをちびちびやる。
 少なしスタバよりは上だな。こんなレベルのエスプレッソをきちんと出す店が,珈琲不毛地帯・漢人エリアである中国に出来るものなのか?
こういう「ここは地球のどこなんだ?」感覚は悪くない。
 味都・順徳は,わしにとっての生地・呉みたいなものなのかもと思われてきた。華僑たちがその旧き味覚を外地で「守り」育んできた誇り高き地名「順徳」は,実際には爆発的に増殖する商工業地帯にほぼ完全に飲まれ,かつ消化されてしまってる。そして,それでも彼らは「順徳人」であることを誇り続けるのである。

 何と言うか,覚えたことのない奇妙な感覚だけど…ここは深く掘ってはいけない土地みたいな気がしてきた。そう考えたら最後に西蔵ゆかりの店にぶつかったのも偶然とは見えなくなる。
 畢竟,現代人というのはそういうものだろう。前進しようとしている限り,故郷など,夢想の中にしかありはしない。

▲蔵[ロ巴]の入口

 離脱。16時ちょうど。
 清暉園発のこのバスは,祖廟(地鉄)名の停車場表示があるし,アナウンスもある。乗ると「このおばちゃんに8元渡せ」と運ちゃん。どうやら釣りなし族らしい。
 50分間,再び車窓を見やりつつうたた寝しました。
 以前,上海から蘇州にバスで向かった折,あちこちに出来てる新増の街に驚きましたが…この仏山は,語感からは想像できないほどの街の連なりでした。
 何となく,福岡県みたいな雰囲気を思い描いてました。博多と北九州の2大都市とそれらに挟まれた小さな街。仏山と順徳の間は畑が広がってるイメージだったんですが…。
「広域広州都市圏」の躍動部はもう仏山に移ってると見てもいいんじゃないか?
 どこもかしこも,「村」の名前のままビルディングや工場が立ち並びつつあります。春が来て草木が一斉に芽吹いてるような,物凄い躍動感で全域が満たされてる。
 今朝驚かされた水はけの良さは高度な都市インフラのほんの一例。仏山-順徳間はハイウェイ,しかも立体交差しまくってる高度なインフラがばっちり整備されてます。
 2年前は香港-順徳を船で動いたわけですが,今日その行程の続きを引き継いだような気になりました。香港-順徳-禅城-広州の環。
 もちろん広州から香港の間にも,常州-東[サ/完]-深[土川]と続くこのリングが本当に都市圏として動き始めたら,このエリアはとんでもない場所になっていくんじゃないか?
 そしてここから既に長沙へ,近々に潮州・厦門,広西・貴州へ高速鉄道が伸びていく。
 一体──何が起ころうとしてるんだろう?
 これはもう戦慄と言ってもいい。
 あまり報じられたのを見た記憶がないけれど,この文化的にも強いプライドとアイデンティティを持った南中国が,本当に巨大な何物かに孵化しようとしてるように見えてならんのですが…。

▲ 広州老街で店仕舞いしかけてた現[火考]蛋ガオを何とか買ってお茶請けに致しました苦難の日の夜