本伝01章ステップ3 グルメ旅行はどこまでも

続くダイエット中のわしなのであります。
 基本的にニッポンは嫌いだけど,「旨味」を発見して学会に認めさせ,「味の素」を世界に送り出した世界に冠たる美食大国日本にあって,デブたる者,食わずにおれようか(いやおれはしない:反語)。
 減量中も,博多へチャンボンを,徳島へラーメンを,名古屋へひつまぶしを食いに旅行しまくった。──制約はたかが1500に抑えるだけですもん!
 調べてみると,土着の名物はそんなにべらぼうなカロリーじゃないんだ。いわゆるB級グルメは,よく行って700から800程度。
 例えば,先日の名古屋行きで「予習」した時のメモ。
 ひつまぶし  800
 味噌煮込うどん550
 味噌カツ定食 825
 どて焼き定食 560
 きしめん   290
 エビフライなんか1本130なのである!!…都合のいい数字に加工してるわけじゃないでっせ。考えてみりゃどれも油で揚げた衣ギトギトの食いもんじゃない。味噌カツのカロリーが意外に低いのには狐につままれた感じだったけど,久しぶりの現物を見て理解した。味噌が染みやすい工夫なのか,衣が通常のトンカツより薄いんだわ。エビフライの数字は,エビが意外に低カロリーなため。
 最初は「ラッキー!」くらいにしか思わんかったが──どの土地のB級グルメにも超高カロリーのものはほとんどない。
 これは海外でも(アジアに限れば)一緒なのだ。例えば,最初に触れた韓国なんか,行く度に庶民料理のおいしさに驚き,焼き肉なんかほったらかしでクッパばっかし食うようになったが,あれなんかも汁ものだから腹にこたえる割にカロリーは低い。小皿がどれだけ出ても,キムチ中心だからその低カロリーは周知の通り。
 今まで,わしはグルメ旅行がデブる原因と思いこんでた。要するに,究極に旨い食いもんを食えば究極に太る。その快楽を諦めてまで痩せるなんてねえ…って感覚。──しかし,どーもそうじゃないのだ。
 ありゃあ?…じゃあ,わしは何で太ってるんだ?
 今度は以前日常的に食べてたものをチェックしてみる。チキン南蛮,ステーキ,カラアゲ,マヨネーズシーチキン,カルボナーラ,カレーチャーハン…どれも土着のB級グルメの1.5倍から2倍近いカロリー!1000を超えるメニューすらあるのだ!
 旅行先のスーパーB級グルメとは比べようもない,こんなしょうもない食いもんが太る原因だったのかぁ?
 どうやら,痩せる生活ってのは,旨いもん食わないことと違うらしい。それどころか,本当の旨いもんは低カロリーじゃなくても中カロリーくらい。普段の、うかつに食べてる日常食の方だけ方向性を変えりゃいいみたいなのだ。
 わしも最初はお粥ばっかし食べてたが,食品のカロリーが頭に入ってくるにつれ,そういう貧相なもん食えとか量を減らせとかじゃないことが分かってきた。今はもう結構腹いっぱい食べてます。
 例えば今日作ったミネストローネ。具だくさんでドンブリ山盛り。2食分で700以下。
 じゃあ,食生活をどう変えるんだよ!?と自問してみてさらに気づく。どう変えりゃいいのか分からないから,カロリー計算でその感覚を思い出そうとしてるのだ。カロリーのメモ帳ってのは,痩せてる日常人が持ってる食生活感覚を学ぶために,それを失ってしまっているデブが装備すべき地図とコンパスのようなもんなんだな…

 というわけで,減量前より総じてはるかにいいもん食ってるわけです。
 カロリー計算してると,自然と野菜中心になってくる。これが工夫するとかなり旨い。今まで知らない旨さなのだ。カレー鍋,シチュー,スープなんかの汁ものの魅力に,参っている日々。
 先日の釜山旅行ではまった純豆腐(スンドゥブ)チゲ。おぼろ豆腐主体のチゲだが,旨いなんてもんじゃない。向こうの人の真似してご飯をぶちこんでクッパにした日にゃアンタ…実にもう最高なわけです。
 韓国料理屋を探してメニューを見ると…あった!さすがに味は落ちるけど,なかなかのもんで,今は週のローテーションに入ってしまいました。
 肉が食えない訳でもないっすよ。1500がちょくちょく余るので,時々ステーキも食います。しかし,イカレてしまったのが,レバーと砂ズリの旨さ!魚ではシシャモの旨さを再発見した。これらは肉の中では低カロリーなんで,これとライスでかなり満足な1食ができます。

 やってるうち,今までの太る食生活が美食の面からもいかに損だったか理解できてきた。
 「この食いもんはカロリー高いぞ~,だから旨いんだぞ~」という誰かのウソにだまされてた気分だ。
 ここまで考えて,やっとわしは,自分を幻惑してきた「デブる食文化」を正面から問うてみることに,ガゼン興味が湧いてきてしまったんでありますわい。
 ──ねえねえちょっと聞いてみるけど…あんたホントは誰なんですか?

▲おまけ「此付近応仁の乱最初合戦跡地」
だから?