Ψ 清明~穀雨
δ 筍の直鰹煮・若たけ煮・木の芽和え,筍ご飯,えんどう豆の卵とじ・くず引き
θ 花の山
おおおッ京都タワー様!!
あんなん京都の恥やわとか,ボロクソに言われっ放しのこの塔だけど,今の京都駅ビルよりは,ヤッパ標準をちょっと外れてるとこはラシクていい気がする。
月始めの土曜日,10時8分。4回目の講義を賜るため,またまたこの学び舎の門をくぐったわしであります。
桜咲く春休み最後の土日,河原町近辺の宿は完全にロックアウト。止む無く京都駅南の九条辺りに宿を取ったけど…当日加茂川を通って納得。
モノスゲエ人手!それにも増して――絵のような見事な桜が視界を埋める。
けれど我が旅は,その桜絵巻よりさらに幽玄なるこの町の懐から,今回も離れる気にはならないのでありました。
京都駅からJRで正福寺へ,京阪に乗り換えて終点出町柳へ。
百万篇交差点まで歩いて巡り会ったお店に始まる中華談義は,章を改めてお話しします。
今回の第一の目的は,前回の三条会で味をしめた商店街巡り。とにかく数を回って,京都の商店街事情を概観してみたいわけさあ。
まずは1本目です。出町柳に戻って,目の前の升形商店街へ。
ローカルにかなり賑わってて面白かった。三条会よりはノーマルだけど地元の支持は根強い感じ。
▲升形商店街風景
▲升形商店街風景その2
▲升形商店街東口の謎の行列。饅頭屋っぽいんだけど…
尾崎食品のこんにゃくが一番目当てだったけど,こっちはまあまあ。専門店でかなりの客足だった。刺身こんにゃくとしてはかなりのもんなんだけど,やはりわし的には錦の鮒寿司屋で売ってる赤こんにゃくには及ばない感じです。
記憶に刻まれたのは,この商店街の八百屋さん,マツヤ食料品店。
何の変哲もない野菜の陳列の片隅に,小さなカウンターがある。この「満月」で売ってる饅頭,阿闍梨餅。
全然有名でもないから2つだけ買いました。
夜,宿で食す――。
▲阿闍梨餅アップ
翌日,箱で20個買い込んで帰りました!
調べてみると――阿闍莉餅本舗満月。創業1856年の老舗の和菓子屋。一種の飴で一種の菓子しか作らない主義。シブいプロの風格ギンギン!
まず外皮に驚く!たまらないもちもち感は,パン生地と水餅の中間状態。
あんは普通です。普通なんだけど,真っ正直に美味い。これは,阿闍梨餅だけでは今のわしの舌では分かりにくかった。でも,一緒に買った羊羹状の菓子で確信!小豆の味を底から掘り起こす重低音は,これまさに京都!!
▲大納言アップ
2本目,山科会商店街。東西線とJRの山科駅近く。
雨も降ってきたからか?人気は全くない。商店街って風情はなく,シャッター街化が深刻な感じ。当たり前だけど…京都の商店街が全て元気なわけじゃないのね…
とは言え,この商店街では目当ての店がありました。炎の池…ってこれ店の名前ね。
午後3時近いのに満席。でもって,その客層がまた…
4人の家族風の集団がわしとすれ違いに出た後には,10人程と5人の2組の団体が席を占めてる。えらい盛り上がりですけど…酒が入ってんの?…いや,確実に入ってる!昼間の泥酔モード!大丈夫か山科?っていうか大丈夫なのかこの店!?
かなり疑念に包まれたので,ビーフシチュー(デミグラスソース)1150円にミニセット730円を追加して2千円近い飯を食うのがためらわれたけど,酔っ払い軍団もシチュー食ってるみたいだし,まあ頼んでみた。
…だってさ…他のメニュー,ミックスシチュー1580円とかエラい高額なんだもん。
炎の池ってネーミングはシチューの事を言ってんのね。センスが好いよな悪いよな…
程なく出て来たシチューは,しか~し!どの国でも食ったことのない繊細さとインパクト!
デミグラスソースの味が確かに深く,肉汁の凶暴さを残す。なのにそいつがブーケの調和に溶けてる。いや,単に調和してるだけじゃなくて何とも幸せな和音を奏でる。ピストロ山形で感じたのと同じ,京都の洋食の味わいです。
確かにこのシチューならビール飲みたくもなるわな!幸せな真昼のシチュー酒場でした。
さあドンドン行くぞ3本目!四条烏丸すぐ南から始まる松原通り商店街へ。
▲松原商店街風景
アーケードなし。まばらに店が続く道でしたが,落ち着いた佇まいは好感がありました。
黄昏時。チャリンコの学生がカラカラと追い越してく。
味のある小店もちらほら。古いマンガを揃えたカフェ,扉を閉ざしてるのに客足の絶えない和菓子屋。
気になったパン屋で買ったサンドイッチは,町のパン屋さんって感じの懐かしい味でした。
▲松原商店街まるき製パン所
入らなかったけど,おでんの専門店も発見。ちょっとそそるオーラだったけど…
▲松原商店街おでん屋すず菜
その落ち着いた概観にそのチャラチャラのポスターは何故なんだ?
▲松原商店街おでん屋すず菜メニュー
のれそれ!?かますご!?何語なんだ~?
翌朝,東福寺から京阪乗換で今度は南へ。
満開の桜が彩る沿線の車窓は,まさに今が盛り。
東福寺―鳥羽街道―伏見稲荷―深草―藤森―墨染―丹波橋―伏見桃山。ちょっと他にない優雅な地名が多いね。
しかし早い。駅間の距離は普通にあるのに停車時間が短いからすぐ着いちゃいました。ドアの開いてる時間がすごく短いわけだわ。イラチな関西人仕様なのか?
伏見桃山で降りるとすぐ北側から,目的の大手筋商店街が伸びてました。4本目!
▲伏見桃山大手筋商店街風景
▲同商店街の丸京川魚店店頭
鯉の甘煮,かなりのもんでした!西日本にはない川魚食の文化。
アーケードのある,それなりに賑わってる商店街。ただ,茶屋や川魚店とか独特の店もあるけど,概して外来のチェーン店が大半かな?
伏見区役所のあるこの地域の核になってるローカル商店街のようでした。
西の端から南に折れると竜馬商店街に続く。正式名はパッサージュなやまち5番街…ってそれは誰も使わないだろ?
▲伏見桃山龍馬通
なぜ龍馬かってえと…
▲寺田屋旅館
竜馬の常宿にして落命の地・寺田屋がすぐ近くにあるのね。
帰り道,ドトールに寄る。飲み慣れた250円の安物エスプレッソを啜ってましたが…ありゃ?何か違和感?
客層が違うのです。
ブルーワーカーぎらぎらに発酵した関西オヤジの溜まり場,かと思えばおばちゃんまでいる。それがみんな,立ち話とかして徒等を組んでる感じ。ただし,その隣りには割とナウなお姉ちゃんが普通のドトール的に平気で携帯とかいじってる。この逞しいモザイク空間は,そうかこれが関西の味なんだったんだよな~!
東福寺まで引き返して今熊野商店街へ。
5本目!…だけどここは既に商店街の体を成してないみたい。
東大寺通りの道路沿いに,よく見れば片側だけのアーケードがあるかなってエリアでした。ただ,京菓子の専門店がボツボツだけど相当数存在しており,気をつければ地域性が匂うかな?
▲今熊野商店街
休憩代わりにバスで四条河原町に向かう。
予想はしてたけど凄まじい渋滞!整理員が出てるバス停まであるぞ?歩いた方が早いぞ?
加茂川の三条四条辺りに向かう花見客がわんさといるみたい。まあ…確かに今が盛り,かなりの絶景だったからな~。
でも…あらら?もう11時を過ぎちゃった!こんなんで11時半に池政までたどり着けるのかあ?
タイムオーバーで着いた4月の池政塾。今日はいつにも増して客足の立ち上がりが早い!最後の1席を何とか確保し,早速注文。
エンドウ豆ご飯
焚合せ
加茂ナス田楽又は鯛のカマ煮
木の芽和え
お吸物
先月から悩んだメインのチョイスはナス田楽に決断しました。
▲いけまさ4月昼定食
だ,だ,だ,大正解~!
これは柚子味噌だぞ!高知朝市でいまだにハマってる柚子味噌で,そうか…ナス田楽に持ってく手があんのかあ!
あら?でも柚子の高貴な香りだけじゃないぞ?何かの香油がキイてる。オリーブオイルかもしれんけど判別できない程うっすらと,けど十分に料理に張りを与える程度に加えてある。
焼きナスの香ばしい苦味と甘味,柚子の香り,そしてこの香油らしきものの迫力。このフルオーケストラ…も~何も言えん!
正直――焼き物なんて原始的と思ってた。ナスは大好物なのにメインを悩んでたのはそのためで,ナス田楽なんて誰が作っても同じ,さしもの池政さんも工夫しよーがあるめえ,うへへへへ。って感じ?(どーゆー感じだ?)
池政の実力を侮ってました!てゆーか,焼き物もここまで持ってけることに目が覚まされました!
菜の花が春めいて香る吸い物。
木の芽和えにも感激!けど,最後まで原材料が何だか見当つかず。鞍馬辺りの春の名物らしいけど…だから何の木の芽なの?とにかく,爽やかな甘味と春めいた華やぎのある何かなんだわ。
この店の懐は…どこまで広いんだ?
例によって5月メニューの貼り紙チェック。
かつおたゝき
焚合せ
大椎茸のすり身天麩羅
三度豆の練り胡麻和え
白ご飯・香の物
上等~!鰹のたたきなら高知の料亭・濱長で最上級を知ってるつもりなんだけど…またまた打ちのめされたい!
▲いけまさ店頭
いつも爺ちゃんが座りこみ「はい定食食べれますよ,美味しいですよ」の口上を延々繰り返す。
ある路地裏。
自転車で去る子ども。喫茶店の奥へ叫ぶ。「お母ちゃ~ん,ほな頼むで~」
喫茶店から出てきたお母ちゃん,実ににこやかに「分かった~!!気いつけてな~」
子どもの走り去ってしばらく置いて,喫茶店の奥からオッサンの声「何やて?」
お母ちゃん,店に入りながらポツリ。「分からん…」
か…関西人や~!これが関西人や!!関西人の笑顔だけは信じたらアカンでえ~!!
京都市役所周辺をうろつくも,6本目の堀川通り商店街らしきものはついに発見できず!…どこかの界隈がそう呼ばれてるんだろけど,商店街って実体はいずれにしてもない。
北大路から新大宮商店街へ。結構遠かったけど7本目じゃ!あ~シンド!(知らんわい)
▲新今宮通風景
アーケードはないけどここは人通りもかなり。街路沿いの桜も艶やかで,華やぎ感のあるローカルさが歩いて楽しい場所でした。
とり山本店。こちらの漬け物専門店で買い込んだ鞍馬の木の芽漬けは,その後2週間の夕食を彩りました。ドギツイ醤油味の中にしっかり香るあの新鮮さは何だ?(後日談:木の芽は山椒の葉野菜らしい)
▲同風景2
さしもの京都だって,やっぱり現代日本の町です。
この土日に回った7つのローカル商店街。三条会を加えて8つのうち,専らわし的に言えば――成功率3/8≒27%。
この大規模チェーン時代×不況下で,京都ビジネス的にむしろ輝きを増してる!そーゆー奇跡の商店街は三条会,升形,新今宮だと見た。
まあ奇跡だから。むしろ27%って数字はスゴい!
さて。この8本は予習。来月いよいよ大本命――三条河原町は寺町通を徹底探索じゃ!!