外伝04〓━〓〓霜月之講〓━〓〓
西京極Baruberaのキャベツと豚バラ肉のパスタ

Ψ 立冬~小雪
δ 鰆の幽玄焼き,鮭・ニシン・鰯の味噌漬け
θ 錦秋(きんしゅう)

▲東山 疎水の紅葉

 秋も深まってまいりました今日この頃ですけど,わしは未だにイタリアン狂奏曲です。
 京都着後,一直線で西京極。今日は流石に開いてましたBarubera。
 ふっふっ…先月の恨み晴らさでおくべきか。
 パスタコース1500円。プリモ:ジャガイモ載せパケット,オイルサーディン,ハム,クスクス
スープ:キノコを煮込んだ暖かいスープ
セコンド:白ワイン煮の豚バラとキャベツのパスタ
ドルチェ:カボチャのチーズケーキ,なし,ジェラート
エスプレッソ


▲西京極 Barubera プリモ

 芋はスイーツとして最高!って以前から繰り返してるけど…ジャガイモがこんなフワフワの甘々のクリームになるのか?何を入れてどう調理したら?
 これがパケットに乗せたらバッチシ!
 これにオイルサーディン,生ハム,クスクス──この3品は素材そのものだけど,このバランス感!ちょっと量を増やせばこの4品だけで最高に優雅な一食です。
 でも本領発揮はセコンド!


▲Barubera キャベツと豚バラ肉のパスタ

 バラとキャベツって…これは中華か?あるいはお好み焼きか?だってテンメン醤で炒めたら回鍋肉,麺の代わりに粉だったら広島風お好み焼きそのものだろ?
 味もまさしくそーゆー下世話な味覚。第一印象では…。
 半減過程で,カロリーの高いバラ肉からは遠ざかってた。今はモモの赤身とか肉本来のガツンと来る味の方が断然好きなわけ。
 けどよく味わうと。肉はちゃんとラグー。あのポロポロ崩れる感じの歯応えはワインで煮込むから出るのか?下世話な味に似ながら本質的に端正な味覚におさめてある。ギリギリの線で中華やお好み焼きじゃなくてイタリアンのまったり感が味覚を支配する。
 でも?回鍋肉とかお好みから遠いかってゆーと…。
 そーいう旨味もちゃんとするぞ?外見は中華だけど中身はイタリアンっていう事でもない?それどころか──回鍋肉とか広島風をイタリアンの発想で作ったって感じ?
 じゃあコレ,一体何だ?
 違う食材にソウルだけ吹き込む,そんな魔術的な料理。ジオカトーリでも感じたそんなアプローチ。料理以外にも,伊右衛門の創造や京都発のハイテク技術に通じるよな──ホントの京都の底力を垣間見た気がした。
 あとドルチェとエスプレッソは,本場感覚ではまあまあ。…なんだけど,深みのメリハリはちゃんとクッキリしたまま,日本人一般的にちょうどいい苦味のバランスに構成し直してると思えた。そーゆー意味では,これもチャンと再創造されてる…。


▲Barubera デザート

 柳馬場通三条。こんな中心部にまだ見逃してた和食店が。
 わたつね。
 基本はそば屋らしい。ただしメニューの半分は定食。
 とりあえず気になった炊き合わせ定食を頼んだ。
 炊き合わせは,たいと季節の野菜。まいたけ,コウヤドウフ,こいもが入る。
 他の皿は4つ。
白菜おひたし
漬け物
味噌汁
ご飯
 とにかく!だしがスゴい!
 ごく薄い一番だしに,柑橘系,おそらくゆずが加えてある。これにタイの肉汁が染み出して,スゴい重振動の来る味覚が出来上がってる。わしにはまだ十分理解できんほど。それが,具材にてきめんに染み渡ってる。
 味噌汁のだしもスゴいけど,これはまた別の白味噌味に合うだし。
 白菜も信じらんない味覚。
 あんまり旨くて…気付くとご飯を全然食ってなかった。でも余っただしだけでご飯は十分食えた!
 あと漬け物。菜っぱと沢庵。普通だ。でも菜っぱもゆずの香りをきっちり纏ってます。
 会議室みたいな椅子と机。店内の雰囲気は全くの大衆食堂。「ここ,意外にえーやろ?」みたいな会話してる京都人はいたけど,観光客は皆無。こんなとこでこんな本格的な和食が…しかも観光的に有名店の和食と何か違う旨さ?落ち着いた日常使いできる旨さってゆーか…。
 いい店。惚れ惚れ。


▲Commp Toujours ケーキ2種

 夕方,北山大橋西詰近くのCommp Toujours再訪。日本語読みは「コムトゥジュール」でした。
ナッツの焼きタルト
紅茶といちぢくのケーキ
ブルーベリーのクグロフ
の3点を購入。
 ここのナッツ使いはホント凄いらしい。ナッツが豆豆しくて,しかも渋い。それでいて甘味もくっきりなんよ。
 紅茶といちじくもぴったりマッチ。前回感心したよに果物の地味を生かしきってます。
 未知の味覚はクグロフ。頂上部分のキャラメル的な砂糖の甘味と低層部分のベリーの甘酸っぱさが,自然にクロスしてる。


▲Commp Toujours クグロフ

 この夕方は,ここを皮切りにさらに西へと3つの店でテイクアウトしました。
 2つ目は上緑町。新大宮通の北にある「かわきた屋」。
 戸口辺りは雑貨屋っぽいけど,左手から奥へガラスケースが続く。古いタイプの肉屋。
 …に見えて,実はドイツのハム類に強い店と聞いてきました。確かに,奥手のショーケースには本格的なドイツ語の肉類が!
ミートローフ
バジリコソーセージ
濃い色の普通っぽいソーセージ(ドイツ語名があったけどド忘れ)
 の3種を購入。
 ミートローフ,肉味の複雑さがたまらん。これ100gにスーパー買いのサラダを合わせたら,止まらなくなりました。


▲かわきた屋 ミートローフ

 名前を忘れた何とかソーセージ。
 これも,サラミ的な脂味とスパイスの多層感がスゴい。バジリコはまずまずだったから,この普通色の系統が狙い目?つまり──肉味そのものの使い方に長けてるってこと?
 しかし…ここもそうだ。一体,何でこんなとこに本格ドイツ肉屋?京都人って人種は,とことん詰めなきゃ許してくれんのか?


▲かわきた屋 ソーセージ2種

 一度歩いたはずの新大宮通,色々見逃してたらしい。
 かわきた屋から南へ。ちょうど車の影になってて見失ってたほどの小さなケーキ店。
 コンディトライ マウジー Mausi。
 ウィーン菓子専門店。オーナーは,ウィーンのハイナーとかオバラとかの名店で修業したんだって。
 3点購入してみた。
モーンアプフェルシュニッテ
カルディナールシュニッテ
 この2つは,メレンゲと卵黄のビスキュイを縞模様に焼いたものに,さらにそれぞれの味のクリームを挟んだ菓子。それでシュニッテって何なんだ?ビスキュイも?
 名前長いし,まるで分からんから,も一つは唯一知ってたザッハトルテに。


▲マウジー ケーキ3種

 2つのシュニッテは,軽いけど妙に練とつく,ちょうど胡麻豆腐みたいな食感のクリームが3種,層になって重なってる。日本の一般的ケーキとは一線を画す軽妙なバランス感覚で。少なしわしは食ったことがなかったです。
 ザッハトルテ。チョコ部分がエラい堅い。どーやったら生地と一緒にスプーンにすくえるんだ?って食べにくさを克服できんままやったけど,このチョコが渋くて甘味を抑えたチョコ生地にピシッとハマってくる。
 ウィーンでは過去2泊した。ホテルザッハーでトルテも食ったのに…全然味覚できてないらしい。


▲寺町通 スタンド外観

 スタンドで昼間から酒を飲んでみた。
 ビールの肴は,すじ肉とこんにゃくの煮込み600円。
 薄口醤油の鋭い塩辛さ。B級的ながら東京の野太い醤油辛さとは違いあくまで繊細。肉のだしと唐辛子の微かな辛みが味の幅を作ってる。
 1人客も2~3人の客も入り混じって思い思いに酒をあおるユルい空間。やっぱりいいッス!


▲いず重 鯖寿司半分

 八坂神社の三叉路の北西角にある有名店「いず重」。
 通りがかりに寄ってみた。中は混んでるみたいだけどテイクアウトは何とかなった。
 鯖寿司 半分2000円
 やっぱ高い…。名物に美味いものなし。一度確認だけと思って買ったけど──これは本物!
 とりあえず!シャリがとことん美味い!
 米の旨さプラス,おそらく巻いてある都こんぶ(食べるときは外せと注意あり)の重い香りが基調に染み込んでる。鯖も肉厚ながら穏やかな酸味でシャリの旨味を活かしきる丁度よさ。
 土産にした上箱も凄かった!


▲八坂いず重 上箱


▲同 上箱の断面

 さて11回目のいけまさ亭。
焚合せ
[サ/無]かぶ蒸し
具だくさんの白和え
栗とむかごのご飯
お漬物
 むかごご飯。「普通の白米?だけどちょっと違和感?」って感じの第一印象。でも,その違和感をよく味わってくと──米に溶け入った栗とむかごの重低音ハーモニーの甘味,いや「軽み」とでも言うよな味わいが僅かずつ感じられてきました。
 カブラ蒸しも,どこか共通する渋い味わい。底に隠れたこんぶと銀杏が奥行きになってる。
 ご飯をも一度食べてみる。やはり低音の軽やかさが染みてるのが今度はよく分かる。
 白和え。くどさが全くない。豆腐に加えた野菜は,何か春菊のよなハーブ系の味が入ってるけど不明。これが共に爽やかに香る。
 そして,これらの軽みが共鳴してまさしく日本の晩秋の味覚を構成する。
 秋って,こーゆー味覚風景だったんやね。初めて見る世界に目を見張った。
 12月
焚合せ
ブリ照り焼き
えび芋団子のかに身あんかけ
豚汁
白ご飯
お漬物


▲錦いけまさ亭 11月の定食

 どーも東山近辺と相性悪い。
 平安神宮東の某有名うどん屋へ。
牛と土ごぼうのおうどん945円
 30分待ったけど──なぜ並ぶ?
 味の感想:まあ汁は飲めた。
 讃岐や博多のうどんと比べたら大変失礼なので,特に何も言わん…行列の出来る店はマズい。京都では特にヒドい。この原則をユメユメ忘れてはならぬぞ武蔵!


▲林万昌堂の完熟甘栗

 四条河原町の林万昌堂で完熟甘栗を買う。
 美味い。美味いけど普通の天津甘栗のちょい上質な奴ってほどだと思う。
 この時期,焼き栗の専門店は結構あちこちで賑わってます。時々焼き芋専門の店とかも見かける。
 ただどーも…この種の店,根本的には味で売れてる店じゃないんだと,最近感づき始めてる。無論なべて上質ではあるけど。
 つまり──京都の贈答文化の一角なんでしょう。
 手土産としてのレッテルが,本来の味のレベルを離れて独自のステイタスになってる。京都の店だって他に違わず有名になれば味は傲って堕落するのが一般的なルートだ。そうじゃなくても味のレベルの寿命なんて厳密にはそんな長くない。けど名店たるレッテルの寿命は長い。ましてそれが贈答品としてステイタス化すれば,それは「記号」として何十年も長らえる。それが京都人にとっての老舗使いみたい。
 ただ,京都のしたたかさはそーゆー堕落の危険さをちゃんと知って,絶えず新生することをシステム化した老舗もあるってこと。伊右衛門の複寿園しかり。おそらく錦の多くの店しかり。
 それがどんなに困難な技かってことは,何らかの成功をおさめた経験のある人は分かるはず。本当に難しいのは成功の後なんだから。

 今井食堂ってやっぱりあった!
 以前訪ねたけど発見できず。閉店したんか思ってたら。
 上賀茂神社前。え…ここ?
 けど。火曜日は10時半からと店頭の貼り紙にも書いてあるのに「すんませ~ん!ご飯炊けないんで11時頃になりま~す!」
 上賀茂神社をうろつく。七五三祭りとかで都踊りやってたからしばし堪能。「お~こし~や~すう」って黄色い声は何だかんだ言ってやっぱ可愛い~やね!
 ザバ煮定食680円。
 11時開店と同時に既に数人客。
 ザバ煮3切とご飯,味噌汁,漬け物が出た。
 大根の味の染み出た白味噌の汁は素晴らしい!漬け物もギンギンにキイた塩辛さの中に滋味が溶けてて良し。これだけでもご飯なんぼでも食えそ。
 肝心のザバ煮は,ザバ缶詰めみたいな醤油辛さ。脂の乗った部分まで真っ黒に浸かってて明らかに体に悪そだけど…確かに美味い。缶詰め味なんだけど止められん。麻薬的な妖しい醤油辛さ。


▲小倉旦過市場 たっぷり野菜と鯖のぬか漬け。こちらは正統派の味わい。