本伝豪遊記05《豪遊∧5》博多・スプレマシー

2008-12-07 21:53

 最初に一度だけ言っておくが,スプレマシーとはッ!
 スプレーよりはなんぼかマシやでホンマ,って感じの大阪人のウィットに富んだ鎌倉時代の表現である。つまりその位薄っぺらくてどーしょーもないってゆー…
 博多っ子の怒りのアフガン蹴りが飛んできそーな冗談はさておき,「至高」とか「最上」とかって意味です。いやあ,良かった良かった。一時はどうなることかと春子生きた心地がしませんでしたわオジサマ!ホホホホホ…
 ってことで,またまタマはサンマが好き…もとい!また博多なんですけど。どうよ?

 と言っても今回は360度趣向を変えましてですな(つまり同じ方向?),博多の周辺地域から参るぞ。
 珍しく小倉駅で途中下車。4駅JR日豊本線に揺られ揺られてたどり着いきましたのは安倍山公園。小雪ちらほら舞い落ちる中,優雅に1時間ほど散歩いたしましたのです。
 さ…寒いど~!!
 人間の寒さじゃねえ!目当ての店はでんでん見つからんわ風はびゅーびゅー吹きまくるわそりゃもうエラいことになっちゃいました。
 こーゆー時の人間の思考は意固地になっちゃうもんで,住所表示だけを頼りにグルグル歩き回った挙げ句の果てに入手したぞ2本のロールケーキ!
 そんなもんのためにイ~!?
 いや…何年も前からこの小倉って街のロールケーキにはハマってるの。この度,ついについに小倉ロールケーキ研究会※ってのが出来たって聞いて,オススメのお店が2つあるこの駅にノコノコやって来ちゃったわけよ。
※旧URLは2020年現在なくなっていたので,ハッシュタグにリンクし直しています。
 そして男は――鼻水ジュルジュルになりながら博多のホテルのベッドに倒れ込んだのであった。(完)
 で…でも…せめて一口ロールケーキを…
 そんな瀕死の状態で口にしたグランダジュールと卵家のロールケーキは――一気に目が覚めたぞ~!!
 グランダジュールの抹茶ロール!きな粉入りのクリームが抹茶のスポンジと口の中でアルペン踊りをさあ踊りましょランラランラララララランラランラランラ…(注:風邪と美味さが融合するとこういう症例に)
 卵家のたまごロール!卵の専門店ってだけあって生地の味わいの奥行きがズド~ンズド~ンズド~ン…(注:風邪と美味さの二乗を掛け合わせると人間気を失うことがあります。)
 2本のロールケーキの衝撃にベットに撃沈し,目が覚めたら…おい…もう夜じゃん!
 慌てて繰り出す薬院の街。
 最近はホント,駅前は完全に素通り,中洲や天神にすらほとんど寄り付かなくなってしまった。大名から食の聖地・警固交差点,薬院から柳橋市場のエリアを専ら歩いてる。宿も当然このエリアに移ってしまいました(当然こっちの方がスイてるし)。たまに行くと中洲や天神が新鮮に思えるほどっスね。
 風邪撃退のために久しぶりに警固ヤキトンを食らうかッと息ごんで歩いてくと…うかつに通りかかってしまった王丸食堂。
 ヤバい…まだ営業してる!
 けど博多だぞ!?今の時間は飲んだくれの博多っ子が「よかばいよかばい」とかクダ巻いてるにちがいないし…
 覗いてみる。…皆さん普通にメシ食ってる!?「落ち着いて晩御飯食べてね」的な雰囲気むんむんです。
 そうか…そこまで言うなら(誰も言ってないけど)食うしかないでしょ魚定食!
 何にも増してここの惣菜は最高。定食は卓上から1品選べるんだけど,おきゅうととか筑前煮とかの博多土着の料理もだし,ひじきや豆腐なんかの全国定番モノも。いつも何にするか迷いに迷う。
 魚は特に煮物がスゴい。質にもこだわってんだろけど,まだわしには分からん。
 とゆーわけで,食堂だけにまんまと(上手い!)王丸の罠に落ちたカノッサの屈辱な夜でした…あ~旨かったぞよ…じゃなくて苦しくてたまらない。
 ちなみに昼は薬院のエベレストキッチンでネパールのクワティを渋々食う。本格的な薬膳カレーで十種の豆が入ってる。馬鹿ウマ。
 さらに苦渋の選択で,朝は大橋のボンジュール食堂でラムステーキに舌鼓を打つ。絶品・山苺のタルト付きという地獄の苦しみ。
 これに西鉄薬院駅で発見した熊本名物いきなり団子と,柳橋市場で買ったピチピチ刺身を義務的に口に押し込んでる。う~ん阿鼻叫喚の苦しさだぎゃあ!

 先ほど博多の住吉にある天興源で猪肝韮菜粥と腰果鶏丁を無理やり食べました。
 ニラと豚レバの粥に,カシューナッツと鶏肉の炒めものという最高に精のつく中華。国内じゃ珍しい中華粥専門店。うう~嬉しいぞ~じゃなくて苦しい~。(もーいいって)
 各国料理も美味いのが博多のスゴさ。一般人の舌がマルチに進化してんの!?
 次の朝,最早義務化された感覚のCafeTecoでブランチ(遅い朝飯とも言う)した後,大名のガムランディーへ。
 わし的に国内のタイ料理じゃ最高位のお店なんだけど,これまでは何となく取り合わせが悪くて,実はまだ2回目。
 パッペッガイのランチに,壁に貼ってあったデザートのファクトンサンカヤーをプラス。――何じゃソリャ~!?日本人なら日本語で説明せえ!!って?確か「パッ」か「ベッ」のどっちかが「炒める」で,「ガイ」が鶏肉だった朧ろな記憶。「ファクトン」と「サンカヤー」はどっちかがプリンでどっちかがカボチャだったような?
 この小さなやや安っぽい感じの店,料理も凄いけど,野菜の味がチャンと匂い立つんだ!地元の有機野菜か何かなんだろか?土佐山田の景福宮と同じく,食材の質で食わせるエスニック。
 そのことに前回気づいて,タイ料理店でもったいない気もするけど,あえてパッペッガイ,つまり鶏と野菜の炒めにしてみたら。…超大正解!ソムタムと同じで,タイ料理の味付けは野菜の美味さとも見事にデュエットする。
 あとファクトンサンカヤーも完全に本国水準。台湾から東南アジアに根付く非砂糖系,芋やこのカボチャなど野菜の深く淡い甘味を生かしたスイーツ。その味わいを再現してる。どころか…こりゃもうそのもの!
 いや,も~苦しくて涙が出そ!

 話がスイーツに戻ったとこで,九州スイーツアイランドの全貌に今一歩迫ってみる。
 熊本駅に来る度にキオスクで買ってしまう「こっぱ餅」。餅状の芋の干し煮なんだけど,芋の重厚な甘味が凝縮された逸品!四国の東山よりずっと柔らかい。五島のかんころ餅が近いけど,あれより歯応えが残る。市内には紫芋のもある。
 メーカーは天草市内。下世話なイメージなのか,あんま名物扱いされてないけど。
 高知朝市では「朝食蒸かし芋」としていわゆる焼き芋が売られてる。芋を主食とする食文化が確かに存在してたんだ。
 熊本のざぼん漬けや沖縄のきっぱんなどの果実の漬け物文化,五木の豆腐味噌漬けや沖縄の豆腐ようなど豆腐の漬け物文化も同様だろう。
 五島‐天草‐四国山中。いきなり団子の熊本や唐芋スイーツの鹿児島も併せて考えると,この分布は,まず芋文化が普遍的にあった西日本一円に,後から山陽道から北九州のシュガーロードのエリアに砂糖系が入ったと読める。
 後者は,米食の文化と重なるでしょう。
 つまり,かつて恐らく「貧しい食文化」として後退して行ったのが,今わしの舌が感激してる一連の食材――芋,果実・豆腐の漬け物,赤米や雑穀らしいんだわ。
 沖縄のポークランチョンミートが伝統食の塩漬肉を代替していったよに,恐らくシュガーロードのスイーツも,砂糖を運んだから出来たってのは正確じゃない。既存の非砂糖系のスイーツに新しい食材の砂糖が置き換わり,または融合する形で出来たからこそ,他にないスイーツが千変万化に咲き乱れてんだろね。
 そして博多。こんな島の中核にあるってバックボーンが,博多っ子のスプレマシーな味覚の底流なのかな…って夢想しつつ舌鼓を打つ,二日市「ロジウラ食堂」ランチだっちゃ。

ころしのカレー

食中毒が出たら有罪確実