外伝05O蘇州ヰ 星期五 ヰ
上海新流行の東北名菜を食す

■上牛七点正■
同得興:肉麺(青菜)
         500
 海外の初日は思った以上に疲れてる。
 まして――この中国って国の旅行は,とにかくどこより疲れます。そりゃ20年前よりは幾らかマシだけど,基本的には有り難いことに変わってない。とにかく街づくりがデカいし市内交通は不便だから,歩く距離が半端じゃない!
 昨日は宿に帰ると同時に睡魔に襲われた。「センゴク」を無理して読んだらも~限界。朝まで泥のように眠る。――体重半減減量から半年経過したばっかのこのボディ,やっぱまだ体力は乏しいみたい。
 ただ,その反動で今朝は6時起きで行動開始。7時には,嘉[食余]坊の同得興店内に座ってました。
 相当な年代物の建造物。50席ほどの店内が満席近い。
 蘇州麺の名店。6時半から開店してる。中国の庶民店は日本のパン屋並みの早朝営業店が多くて助かる。
 でもってお味もなかなか。なかなかなんだけど…
 昨日の朱[シエ鳥]興でも思ったんだけど…言いにくいけど,蘇州麺って汁はチャンポン麺の味じゃないの!?つまり,そんだけ化学調味料満タン注入の味って疑いがあるわけで…どーも素直に味わい難い気がしてならんのよ。
 薬物混入で悪名高い中国産食材で育った現代中国人の味覚って…ひょっとすると日本人以上に壊れてないの!?この味が最高級って感じてるとしたらさ。
 ただ,麺はやっぱり美味い!小麦粉の味が濃厚にザラザラと口内に反響する。日本なら一部の手打ちウドンでしか味わえない分厚い粉の食感!

■上牛七点四十分■
 観前街からこだわりの平江路へ。疎水を南行して十全路までとにかく延々歩く。この辺り,前章参照ね。
 太極拳やってる集団は以前ほど見ない。けど,なぜか後ろ向きに歩いてる老人がメチャクチャ多い。日本人にも時折いるけど,割合が違う!この時間帯にすれ違う爺婆の半分が後ろ歩き。ブームなのか!?そんなに健康にいいのか!?


▲現前街の太極拳
マックの前ってのが笑えるのはわしだけ?

■上牛八点四十五分■
十全路FisherCooffee:エスプレッソダブル28元(0)
 朝からエラい歩いた~。エスプレッソ飲んでも襲いかかって来る睡魔。でも都合のいいバスもない~!
 ちなみにバスは今や相当乗りやすいみたい。昔みたいな戦車の如き大音量とトロさと乗り心地のはなさそう。バス停の行き先表示も整然としてきてるみたい。

■上牛十点十五分■
豆ジャン     100
菜包       100
芳芋[女乃]茶    50
 街角の共産主義の遺物,食糧配給場。
 20年前はほとんどの食糧売り場がこんなんだったけど,今はもはや撲滅寸前。でも蘇州にはまだ相当数見かけたんで,試しに買ってみた。


▲食料配給場。ガラスの向こうに山積みの少品目の食材と,明らかに売る気のない小さな受渡口が特徴

 漢民族の超定番,豆ジャンと菜包(昔の最貧層やわしら学生は,何も入ってない饅頭(マントウ)ってパターンでしたが)を買う。値段を聴くと…
 「サンクワイ!!」
 サービス業とは思えぬネーチャンの怒鳴り声。え!!三元!?(元は「ユエン」ですが,俗に「塊(クワイ)」と言う方が通じます。)
 通常の食事の1/3程度,下手すりゃ桁が違う。ここだけは20年前と同レベルの物価なのね!!――わしらは学生食堂で1食5毛(1/10元)から1元でした。
 観察してると,節約したいからか貧しさからか,ボツボツ購入者はいる。もちろんイートインなんて気の利いた配慮はないから疎水岸の階段で食べると…ウン。決して美味くはないけど,それほど不味くてたまらんもんでもない。
 菜包は日本のコンビニ並み。でも,肉なしの具って日本にゃないでしょ?ほうれん草主体みたいだけど,これが結構ハマるのよ。豆乳になると…温かさと生臭さで断然配給場の勝ちよ!!


▲豆ジャンと菜包
豆乳のカップはなぜかクレヨンしんちゃん。…ところで著作権って知ってる?

 また観前街。酒[酉良]餅を再び購入したついでに芳芋[女乃]茶ってのを買ってみる。タロイモとミルクティーのブレンドらしい。これまた馬鹿ウマ!
 こりゃ…今回の狙い目は中華スイーツか?

■上牛十一点■
 リュックを背負い宿を出る。人民路を北へ。
 すぐに外城河に出る。巨大な橋を徒歩で渡る。彼方,ガンガンに大改修中の蘇州駅のクレーン群が見えてくる。
 20年前のこの蘇州駅界隈は,とんでもなく閑散としてました。悪質な客引きと大喧嘩して,今ここで殴り殺されたら完全犯罪だなってビビッてた温かい思い出がある。しかし21世紀の蘇州駅は――
 施設が完成する前だってのに,見渡す限り荷物を抱えた人間だらけ。
 ショウ票処(チケット売り場)に入るとさらに凄まじい人の海。相変わらずドデカい売り場に,スゴい乗客の行列,それに負けないほどウヨウヨしてる客引きとダフ屋。ちょうどいいからしつこいダフ屋に「上海行きだけど売り場どこだろ?」と聞いてみる。すると――
 「上海?」途端にダフ屋,呆れ顔で言い残して去ってく。「和階号ならその辺全部そーだよっ!」
 え…!?みんな新幹線乗るの!?
 蘇州から上海は最近出来た中国版新幹線・和階号ってのに乗るつもりで来たんだけど,空港リニアや台湾新幹線みたく,馬鹿高いチケットを別窓口で売ってて大して客もいないんだろと予想してた。でも…もうこんなに一般的な足になってるの?
 共産主義華やかなりし頃の,2時間行列して「列が違う」攻撃を思い出してゾ~ッとしたけど…並んでみると1件辺りの処理が早いからそんなにかからなかった。26元,1時間半後の12時26分の票が取れました。――座席番号がなく,共産時代には死刑宣告に近かった「無座」の文字が気になったけど…まあ間違っても所要時間はたった40分。
 早速候車室(待合室)へ。4つの大部屋はどこも満杯。一覧表示はないので,とにかく全部回って改札にたどり着く。――この辺りはまだ効率的じゃないね。
 しかしまあ…これだけ移動が一般的に出来るほど,中国って自由になったんだな!

■上牛十一点半■
 500人ほど中国人民が発酵してる待合室で,先ほどまた買ってしまった采芝斉の饅頭を頂く。
酒[酉良]餅5個  500
 1個1.5元,5個で100円ちょいでこの感動の美味さッ!いやあ~口福口福!!
 とか感動に浸ってたらもう発車時間。ゲートが開くと凄まじい数の人並みがホームへ流れる。でも昔みたく走ってなだれ込む人はいない。整然とホームへ移動してく。
 衣食足りて礼節を知るとは,現代中国人のことだな。
 ホームで待つ。時間が来る。
 でも列車は来ない。
 あちこちで「新幹線,このホームだよね?」と不安そうな人々の会話。逆に安心してると放送が流れてくる。「415次はすぐ来るから大人しく待ってなさい」…日本と違い,お謝りのお言葉はない。少しして「2分遅れです」。結局4分遅れで新幹線は来た。――この位の刻みで運行管理が出来てることに,わしは逆に驚いたね!!
 列車に乗り込む。
 満席!他の方々は座席ナンバーがあるらしく…どーやらボク,ヤッパ「無席」なんですね…


▲通路で目の前に表示されてた和階号車内見取り図。どこかで見たよーな気がするが,気のせいだろう。

 開き直って通路に陣取り,軽快に流れ始めた窓外の景観を見やる。しかし…ホントにマンションと工場だらけ!!


▲そして40分後。上海火車(邦訳:列車)駅前の広大な広場に吐き出されました。駅周辺はビルだらけ!
地下鉄上海火車駅に潜り,地下鉄で移動することに。

■下牛十二点三十五分■
 ふうッ…やっと地下鉄に乗れたがや!
 上海地下鉄は,ハードそのものはかなり良好でした。自動改札,そこら中に電子掲示板と広告用テレビ,整理された案内板,先降り後乗りの注意表示。切符の自販機もあるけどなぜか火車駅にはなくて売り場に長蛇の列。
 長期利用のカードみたいなもんはまだないみたい。切符はICカードなのに…と不振がりつつゲートにかざして通過する。
 …はずが…あれ?カードを当てても改札が通れへんで!?見ると先に通ろとした女の子2人も同じくスッタモンダしてる。「ダメじゃん!」って3人で大笑いしながらうだうだしてたら,たちどころに20人ほど人間が溜まり始める。でも駅員は来ない。
 ダメだこりゃ!故長介モードで他の改札に回る。あら?ココもダメ。結局,他人の後置いで強引に通っちゃいました。
 列車が来たら来たで,降りるのを待とうとしないから常に出口はグチャグチャ。
 …これは20年前と同じだど。バスの入口で車掌が「先下後上!」(降りる人が先!)って声枯らしてたあれよりはマシだけど…本質変わってないねえ。


▲地下鉄2号線車内
見た目は最早日本と大差ないのに…いざドアが開くと…

■下牛三点正■
 延安西路静安寺,久光百貨店前の花園珈琲でエスプレッソを飲みながら。
 烏魯木斉路のワールドサービスアパートメントに,運よく最後の一室が空いてた。静安寺駅から徒歩5分。1泊388元と中級の高さだけど,あと2泊は迷わずココに決める。だってさー!!
 部屋に入ってヤッパリ感動――11階で眺めは最高。自炊設備は完璧。ソファにダイニングテーブルに食器完備。オーディオは大型テレビはもちろんDVDまで揃ってる!そんで出入りは自由,入口は門番付き。
 実はここで2年前の夏に4泊した。減量前,まだ体重3桁の時代です。休みは長かったんだけど,滞在直前からリンパ節に細菌が入る蜂華識炎って病気が再発して…久光百貨店の地下の日本食材で栄養維持に務めつつも結局途中リタイアで帰国ってゆー…我が旅行史最大の大敗北を喫した,今回はその雪辱戦でもあるのじゃ!
 それにしても元気で,かつ幾らでも歩ける半減ボディで来た今回,これは最高の基地だぞよ!


▲静安寺サービスアパートメントの我が城

■下牛四点十分■
 話題の保羅酒桜に行ってみた。夕方の中途半端な時間帯なのに客はまだパラパラいました。
自制農家[減-シ]肉(26元) 150
菜泡飯(10元) 300
 [減-シ]肉は,要はハムでした。えらく待たした割にはあんまり。
 菜泡飯は,野菜のお粥。粥なのに300も取ったのは,それだけ量があったから。3人位で食いたかった…。
 どうもこの手の普通の中華料理は,大人数を想定してんのか平気で3人前くらいが出てくる。かと思えば当たり前に1人前の量のもある。
 ってことは…一人飯の外食文化がまだ育ってないわけだ。大体お昼のサラリーマンとかは小[ロ乞]食ってるみたい。「定食屋」っぽいのはほぼマクドとかの外資のみ。
 さてお味。まあ及第点か?サービス態度は悪いし,感動はなかった。ただ店内の空気はいい。西日の指す空間は落ち着けるし,何より広くて煙草も吸い放題!散策の休憩には宜しいかなと。

■下牛五点半■
 MagpieMassageってお店で真面目な中国マッサージを受ける。かなり本格的で雰囲気もいいけど,かなり押しが強くて痛い。けど,歩きっ放しの足腰は相当復活。
 家路についたつもりが,陝西北路で名前を聞いてた東北人って店の前を通る。…そう言えば,上海で東北料理が流行してるらしいな。田舎料理の代表格としてウケてるって?
 ひやかし半分で覗く。小さい玄関から2階へ登ると――おおッ,すごい客の数!200人はおる!?ちょっとしたビアホール状態!
東北牛肉[純-糸+火]夢ト 200
老家炒山野蕨菜 150
自家東北小〇 200
 「〇」は日本にない漢字。ブツはいわゆる「白酒」(バイジウ)。強烈にキいた。それに何やら薬草臭があって,わしが一番好きなズブロッカに似てエラく気に入っちゃう。
 さて魚は――牛肉[純-糸+火]夢トは肉じゃがでした!中華と韓国料理の合わせ技みたいなええダシ出してる!!
 炒山野蕨菜はワラビの醤油炒めみたいなもの。これもイイ!漢方薬臭い感じもあって染みる味でした。
 驚いたのはサービス。完全に日本並みな上に,「どれか一番美味かった?」ってマーケティングまでしてた。なるほど…これが大入りの秘密かあ?
 共産中国人にあるまじきこーゆー資本主義的な感性が,ここ上海では芽生え始めてる。そしてさらに,システム化されつつある。
 人間が創出した最も強力な装置は,ITでも民主主義でもない。組織であり,その機能としてのシステムです。天才はいてもシステムにならんとされた中国が,ついにその域に入りつつある。
 中国人が怖いのは,これからだ。帰路,上海の夜景をこれほど不気味に感じたことはなかったね。


▲陝西北路屋根のイルミネーション

■下牛二十点四十分■
 全家を漁ってみる。ファミリーマートね。
吉香居麻辣三糸 100
杯装水果羹一銀  50
緑豆羹     100
 最初のは辛いザーサイみたいなの。あとの2つはスイーツ系。どれもまあまあ。
 コンビニでもこのくらい楽しめます。