外伝05O蘇州ヰ 星期六 ヰ
侵入感知器虹橋の天を突く

■上牛八点十分■
南京西路呉江路:小楊生煎館 生煎6個  600
 「生」で「煎」るとはよく言ったものだね!
 蒸し器で蒸すなんて普通だよ,俺んちは蒸す前の「生」を煎っちゃうもんね~!って奇をてらった料理法。元々はそーゆー語感だった臭い。
 地下鉄2号線南京西路駅からすぐの呉江路。小[口乞]街としてかなり競争が激しいエリアだけど,小雨の中,その店だけに行列なので探すまでもなかった!!小楊は,朝も早よから店内もほぼ満席!
 席は5席のみ。ほとんどの客が持ち帰りだけど,たまたま空いてたんであえて狭い店内で食ってみる。


▲小楊生煎館の終わらない行列。人民広場駅に近い黄河路にも支店がありますが,そっちもほぼ常に同じ状態みたい。

 う~ん…外皮はクリスピーで中身はジューシー…っていうか…あッ,熱ッつー!!
 肉汁が30cmほど水鉄砲状態で飛びまくり!!隣からも飛ぶ!!グルメぶってる余裕なし!中の肉汁が完璧なスクランブル体制で敵(つまりわし)を待ち構えてて,一口目が来るや否や一斉発射~!ってオイオイ買い主にこんな攻撃的な食いもんは違法だろ!?
 けど左隣からは迎撃がない?代わりに啜る音?左の常連臭い工事着の若僧を横目で観察。なるほど…一口目で優しく外皮に歯で穴を開け,そこからまず肉汁を注意深く啜ってから,初めて中のお肉を頂く技なわけね。
 真似てたら幾らかマシにはなったけど…マスターしきれないまま,後にした小楊でした。
 こんな私ですけど…一応味の評価をさせて頂いてよろしおまっしゃろか…?
 肉汁タップリなのに妙にしつこくなく,結構アッサリで深みもある。それに,外皮と中身本体の肉の間に何かトロミのある物件があって,これが尾を引いてくる。
 地元の大人気,納得の逸品!…って自信持って言うのは上手く食べれてからにしますゴメンナサイ…とか妙に弱気で後にした小楊でした。絶対的にお勧めよ!

■上牛九点ニ十分■
香港テン品:甘露豆腐花(22元)      150
姜水浄湯丸(8元)150
 「豆腐花」が豆乳スイーツだってのは,日本のコンビニでかなり有名になってきました。けど,その甘い露とはこれいかに?
 この店のメニューには,全て日本語訳が付されてる。ので商品内容がとっても分かりやすい…かってえと…全然ダメ。むしろ迷うじゃねえか!
 例えば,さっきの「甘い露」の日本語訳―=uザボン加えダイズの汁の固まり」。…えっ何だって!?豆乳のザボン味って書けば十分なのに…あえてダイズの汁を固めるのか?
 も一つの姜水浄湯丸――和訳:ジンジャーソース+特製あん入り団子。まあ分からんでもない。それに,この店じゃ一番安いランクの品だけど,ちょっと日本じゃ食えない味。さりげない美味に絶賛!


▲注文した香港スイーツ。ザボン加えダイズの汁の固まり,ア~ンド,ジンジャーソース+特製あん入り団子

 日本のスイーツより5倍,タイや台湾のスイーツよりも倍はあるバリエーション!そしてこの和訳!笑えるじゃねえか!!以下調子に乗って記録しまくる――


▲香港スイーツのメニュー。こんなオシャレなのに書いてある日本語は…。

西瓜涼粉15元:西瓜加え草汁ゼリー
(草汁は何?にしても…どうしても「加え」を使いたいらしい)
生磨芝麻糊豆腐花15元:ごまおしるこ入り大豆の汁の固まり
(とにかく豆腐は「…固まり」じゃないと許さんらしい)
南北杏雪耳[火屯]木瓜28元:漢方杏・白キクラゲ/ババイヤダブルボイルデザートスープ
(もう何がなんだか…少なし「パパイヤ」くらいはちゃんと書けよ)
黄金番薯糖水8元:サッマイモ入りシロッゲスーゲ
(どう間違えてシロッゲだ?)
生磨芝麻糊加紅豆沙15元:ごま,アズキのお汁のこのミックス
(「この」が指すものを10文字以内で述べよ)
椰汁[クサカンムリ+連]子[火屯]雪蛤膏薬42元:蓮の実/カエル脂肪(漢方薬)ココナツジュース/アーモンドおしるこ入りだブルボイルデザートスープ
(謝るから許してください…)

■上牛十点正■
寧波湯園(10元) 150


▲寧波湯園外売り場

 上海旧城の中心,街屈指の観光地,[予象]園(ユーユエン)。
 さっきの香港スイーツもこの中だけど,寧波湯園はさらにど真ん中。
 店名のとおり寧波湯園が有名なお店で観光客だらけ。例によって名前倒れかもと思いつつ,とにかく食う。
 …これは…確かにスゴい。
 踊り出しそな軽妙な味覚!それ程甘くもないのに黒ゴマのアンのふくよかな香りが実に軽やかに口中に染み渡る。丹波の黒豆の重厚な香は京都で学んだばっかだけど,ゴマってこんなに深い味なの!?
 やっぱりすげぇよ中華スイーツ!

■上牛十一点半■
 かつての上海租界の代表的景観・外タンは,南側一帯が大工事中でした。旧城から見ると北側のドヤドヤした地区。20年前に最も好きでうろつきまくったエリアだけど,馬桶(トイレ代わりの桶)が並ぶ暮らしにくそうな旧式家屋街でもあった。…エキスポ狙いの再開発ね。


▲東門入口ゲート

 そのただ中,東門付近だけが旧態依然とした姿で残ってた。さすがにここだけは保存するつもりなんだろか?
 古き上海街路を背に,東門路渡口からフェリーで黄浦江を渡る。対岸は上海の未来都市,フ東地区。


▲フ東のビル群

 対岸に上陸。吸い寄せられるよに高層ビルに向かう。
 目立つのはグランドハイアット(金茂大[広-ム+夏]88層観光庁)と上海環球金融中心の2本。小雨模様の中,ビルの最上部は雲に霞んでホントに見えない。その周囲にはまだまだニョキニョキ建物が生えてきてる。木材の足場で人力で作業してたりしてかなり危険そうだけど。
 確かに…ここはとんでもない国策都市。初めて新宿都庁付近を歩いた時以上の圧倒体験!(田舎者?)


▲プー東の象徴建築・上海タワー。京都タワーに似て,西原理恵子曰くの「ち〇ぽタワー」タイプでとっても珍妙。周囲は建設工事だらけで…


▲上海タワー南の食い散らかしの後。工事現場の方々があちこちにタムロしつ投げ散らしてるみたい。中国人は健在だ!!

 この工事現場の土方の皆さんを除いて,ここプー東は街としちゃあ…全然面白くない。ビル内でショッピングは色々できるんだろけど,まるで生活臭ってもんがない。肉が付いてない骨格だけがやたらにデカい出来かけのハリボテって感じ?
 けれど。エキスポが終わって,この街が日常を取り戻した時にここに生まれる風景が,上海の未来図になってくのは間違いなさそーです。

■上牛十二点半■
 地下鉄で南京東路へ戻り,マッサージ屋さんの桃源郷へ。
 博多で通ってる「健美園」の本店にあたるそうなんで来てみたんだけど,按摩師に聞いてみると「そうらしいけど…よく知らないワ」。
 腕はまずまずでしたが,客に日本人が多いんで日本語のカタコトが出来るお姉さんがたくさんいて結構お話は楽しめる。隣部屋の按摩師が姉妹で,壁ごしに「姉ちゃん,〇〇って日本語で何て言うの?」とか聞いてくるからわしが「△△だよ!」とか怒鳴り返したりしてたら,隣と仲良くなっちゃったり。
 桃源郷を出てすぐのMo’loCafeでエスプレッソを引っ掛けた後,西へ歩く。
 南京東路のど真ん中で中国人の女の子2人に声を掛けられる。「そこのアナタ,西蔵路はどちらかしら?」…何か臭い。「わしも旅行者ですけど」と地図を見せて「西蔵路ってのは知らんなあ」「アナタ何国人?」「一応…日本人だけど」「まあ素敵!」(何がだ?)「一緒にお茶にでも行きませんこと?」
 臭い。ヤバい臭いがプンプンだぜ!?「自分,友達と待ち合わせで。それにアンタら西蔵路は?」と嘘ついて去ろうとすると「いえいえ,それよりアナタとお話したいワ!」
 危ない!十中八九,外人狙いの罠臭い!やや強引に振り払って足早に去ったけど…十中一ニは純粋な男漁りだったかも…なんて甘い迷いが危険なんである!!
 ここ南京東路は上海最大の観光地。まだこの手の危険な輩が跳梁してるってこと…なんだろね。魔都上海の残り香はまだ随所に残ってる!
 人民広場を越えて黄河路。グルメ街として名高い通り。昼時をさして過ぎてもないこの時間帯はどこも客で溢れてました。
 目当ての佳家湯包も満席だったんで,明日最終日に出直すことに。

■下牛三点正■
 虹橋エリアへ行ってみる。目的は水城路の林海っていうキノコ鍋のお店。
 地下鉄2号線で[米/女]山関路へ。この虹橋は,日本人駐在員の多いとこと聞いた。
 歩くと,そこはまさに「上海日本人村」。「日本人クラブ」の看板を掲げた店が,周りから完全に浮いた豪勢な造りを晒してる。店名は…「縁むすび」「Doll」「蝶々」ってさあ…そこまで露骨なネーミングは恥ずかしくないのかな~!?
 バンコク・スクンビットのプロンポン界隈の日本人村と雰囲気ソックリ。…いや,違う点もあるか?タイでは割と混在してる現地と日本人との生活圏が,この虹橋ではハッキリ区画されちゃってる感じだな…中国人の市場には中国人しかおらず,日本食っぽいものはない。その代わりに――
 林海を発見したのは,その界隈でも最も典型的な日本人村ブロック。日本料理屋とビデオ屋,それになぜか韓国料理屋ばっかの閑散としたスクエアでした。
 全く…異国に来てまでそんなに日本人を守りたいかあ?隔離された完全消毒の日本ボックスでしか生活できないわけ?悲しくならないの?それ以上に…こんな空間を不気味と感じないの!?
 とてもこんなとこで一服する気にはなれん。即決で去る。


▲林海のある日本村

 暗い怒りに満ちて歩いてたら,地下鉄駅を通り過ぎちゃったらしい。
 マンションだらけのエリアに迷い込む。30階建のマンションを何十も壁で囲った巨大な区画がいくつも連なる。それぞれ〇〇花園って名付けられてる。ゲートは警備員で完全ブロック。
 壁は3mない。ゲートの死角から乗り越えて入れるな…とか完全にドロボーの視点で攻撃法を検討してたら…
 はは~ん。敵もそれほど甘くはない。壁の上に等間隔,50m置きに設置された対になった機械がある。こいつらを結ぶラインを見ると,どうも区画の外延グルリを囲い込んでるみたい。
 ぐええ~,侵入感知機かよ!しかも007かゴルゴの悪役並みの本格的機械防御システム!
 上海の他の場所で,こんなん見たことない。建物のネズミ返しや窓の檻で通常は十分。それ以上は自分の力で防御する。こんな見た目だけイカツイ機械群で満足するのは,健全な自衛観念のない日本人だけ。
 花園か…。さぞかし無垢で虚ろな花が咲くことでしょう。
 と書いてハッとした。その花って…アジアの中での平成日本列島の子どもの姿でもある?てことは日本義務教育って…この花園のよな姿ってこと?
 自分で歩かない。変われない。その意欲もない――


▲河畔花園の侵入感知機

■下牛五点半■
 南京西路,王家沙。
[減-シ]菜肉糸湯麺8元 500
 ここは2年前,上海初日に熱でふらふらしながら上海1食目を食った場所。懐かしさで寄っただけだったんだけど,どーも客が押し寄せてる雰囲気だし,一応食ってみる気になった。
 ここのサービスはとにかく悪い…。先払いのチケット制で,専門の店員が数人いるのに,かなり主張しないと注文は来ない。主張すると露骨に嫌~な顔で眉しかめる。
 …素晴らしい!共産時代の食堂の生きた化石ですね…。これが珍しくなったことが大変化を象徴してる!
 お味の方は…意外にまあまあだぞ?歩きっ放しで疲れてるからか?麺はくたびれてるけどシェン菜([減-シ]菜)が意外に美味くて汁もイケる…
 ここではプラスチックパックの野菜や肉の料理も売られてた。客がバンバン買ってく緑豆包子も買って宿に持ち帰りとする。

■下牛六点四十分■
 疲れた!この3日間,歩きっ放し!
 やっと帰った静安寺の地下鉄駅から,久光B1を抜けてみる。
 「フアンイン!!」(歓迎)の掛け声と同じ位に聞こえてくるのが「いらっしゃいませ~!!」「どーぞおはいりくださ~い」…ってことは,こいつら全部日本人なの!?こんなとこにこんなに溜まってんのかあ?
 虹橋よりは少しはマシだけど…ここも結局日本村なのかねえ?対面には東京の菓子の陳列ケース。ミニ日本の無菌箱庭でたむろして安心してる日本小市民の群れ。
 同じタムロなら――国策都市プー東の道端でも自分たちの無秩序無作法ワールドで食い散らかす中国人土方軍団の方が百倍パワフル!このままじゃ完敗だぜ!!