外伝08〓’Ⅸnove’Mostarda!! モスタルダ


▲ボローニャ「8月8日広場」開催の朝市のキャンピングカー

 9月25日,8月8日広場の市場を早朝から見に出かけました。
 はあ?…だからいつだって!?
 すみません,毎週金曜日に朝市が開催されるこのピアッツァの名前が「8月8日」。
 学校の校庭くらいの広さではあるけど,品数はまあまあ。ただ,このキャンピングカーの上部から折りたたみ式で軒が出るよになってるのがズラリと並ぶ様はちょっと日本では見れないかも。
 てことは…市場仕様のキャンピングカーが規格化されるほどメジャーに売れてるってことだよな。その位,市場の文化がまだ生きてて,一般人の普通の生活になってるわけです。
 実は向かうクレモナも,土曜日開催の市場が最大の目当て。ボローニャの常設市場が気に入り過ぎてしまってます。
 この時立ち寄った,広場の東側の店のブリオッシュ──最高。完全に素のブリオッシュだったのに…何であんなもんでこんなに腹の底から満たされるのか?
 バールじゃなくてパン屋の軒先が,おそらく朝だけバール的に使える形式。
 最近の松山で,モーゼルってパン屋に必ず立ち寄る。無添加かつ卵不使用のパンを出す以外は,ほぼ完全に普通のパン屋。ここのクロワッサンの味を想起した。パサついて素っ気ないからこそ明瞭に奏でられる小麦粉本来の重低音。
 ひょっとしたらイタリア本場のパンって添加物はもちろんだけど卵使ってないのかも?
 町並みのレンガ色に曙光がゆっくり流れる。見る見る光沢を蘇らせてくボローニャの町に,人々の波が静かに高まり行き交い始める。

 ボローニャを発つのはやや遅くなった。9時半発,Piacenza行R2064。
 駅西口のインフォメでは英語が通じた。トーマスクックにはPiacenzaからクレモナまでの列車が乗ってなかったから不安だったけど,やはり毎時位の頻度で走ってるらしい。
 駅前のバールでブリオッシュに生ハム挟んだのと,初めてカップチーノを頼んでみた。生ハムだからかε4と高くついた。
 カップチーノは…あんなに皆さん頼んでる割にはそう驚く味わいではない。ただし,ブリオッシュの生ハムは凄かった。生ハムの芳香をまとうとブリオッシュが菓子パンじゃなく,ここまで絶品食事パンの存在感を持つのか!
 この朝は浮かれて食い過ぎました。宿のカウンターで供される朝食にも手を出す。
 やはりヨーグルトは最高。イチゴ入りだったけど,日本の給食で出るイチゴヨーグルトとは全く別次元。それに…ビスケッタと表示された固いパンにバターを塗ってみたら,このバターがまたクリーミー。何で?乳製品一般がこんななのか?
 …帰国後知ったけど,牛の乳じゃなくて水牛や山羊の乳を使ってるらしいです。
 ボローニャを離れて列車に揺られる。
 段々,都会を徘徊してみたい気がしてきた。現代の,普通のイタリアを見ておきたい。
 ジェノバには行ってみたいけど,そこから行く予定だったアルバは玄人向け過ぎるかな?ミラノを2日間うろついてみるか?まだリゾットとパスタ・フレスカを食ってないしね!!


▲クレモナに向かう列車より見るロンバルディア平原風景

 11時24分,PiacenzaでCremona行きに乗り換え。
 「テルミニ・コスタ・デル・トゥレーノ」ってのが終着の意味らしい。ただ,かなりの客がそのまま乗ってたし,電光掲示板にもトリノ行きだと出てるし?不思議だけど…わしはとにかく乗り換えなんでしょう。
 かなり大きいターミナル駅です。周囲に広々した敷地の工場多数。重層化する必要がないのか,なべて平屋建。
 接続は,ちゃんと待っててくれたらしく全く不安はなかった。30分ほどで着くみたい。
 2両のみのR。車内は今までで一番質素で日本のローカル線並み。
 11時33分,やっと動き始めたクレモナ行き列車。
 斜め前の座席のカップル,思いっ切り男が胸を揉んでる?女がけたたましー罵声を発して抵抗してるけど?単なる求愛行為なのか?それとも助けるべきなのか?
 そーいや,昨日もホームでスンゴいディープキスをしてるカップルは見たよな…単にお熱いだけかあ?そんならもーやっちゃえやっちゃえである。


▲クレモナ中心部 ドゥオーモ前のピアッツァ


▲尖塔のある路地裏


▲路地裏の街並み


▲路地裏の街並み2

 感じ…ルッカよりもっと小さい町?
 クレモナ駅に降りて,中心部まで徒歩10分ほど。
 浄土のよな町です。
 正午前,人通りの少ない石畳の広めの道を,穏やかな顔の低い建物が挟んでる。建物は古いけど,ローマの古刹臭もフィレンツェの荘厳さもルッカの攻撃性もない。自然な生活臭がある町並みです。
 歴史的にはミラノ公国の衛星都市。近隣都市国家と興亡を賭けて争ってきた町じゃないんでしょう。
 だから刺激が足りないってことは,けれど全然なかった。何とかって音楽家の町ではあるらしいけど,初めてのイタリアの普通っぽい田舎町。
 中心部の路地裏に宿を取り,早速町の徘徊に出かけました。


▲路地裏の街並み ベランダに花


▲路地裏にてベランダを見上げて


▲トンネルから路地裏へ抜ける

 正午を回った頃。
 広場すぐ北のVia Janello torriani。何でもない路地裏の道がありました。
 一度マジで通り過ぎたんよ。あれ?今の地味な看板は!?って感じで引き返してみた。
 看板には確かに「Self」の文字。「44…PIATTI」って変な名前の店。さらに路地奥の何でもないドアを示してる。
 行ってみたら…中が全く見えない普通の家っぽい入口。やはり一度立ち去りかけた。まるで人気がないし。
 けど…でも話に聞いてるセルフには一度入ってみたいよな~。ミラノで探すつもりだったけど…間違えたふりして覗くだけ覗いてみる?
 で入ってみた。
 意外に中は広い。若い客が多い。満席に近い状態です。
 システムは日本と変わらん感じだけど,ラインに並んだ皿は種類が豊富な上に見たことのない品も多いぞ!思わず手がプレートを取ってしまってました。
 導線はまずパンのコーナー。次にプリモとセコンド,ドルチェのコーナー。それぞれ10種類近くあって,各ε3位らしい。これがロの字型になってて,真ん中に20種類ほどはあるサラダバーがある配置。その先のキャッシャーで清算。
 飲み物はその先で自前で購入する仕組みみたい。よく分かんなかったんで買わなかった。


▲クレモナのセルフのお膳

 フォカッチャ,ミネストローネ,豚肉のキノコ焼き,インサラータまで一揃えでε8.88。
 味はまあまあ。ただ勉強は出来そう。豚肉のキノコ焼きなんかは,穏やかにハーブとキノコがキイててイタリアンの奥行きを感じさせました。
 客数に気をつけて,あと次からは皆様に一番出てるのが何か気をつけて選べば,ε10位の安オステリアよりはいいのが食えそう。
 残る問題は──この目立たないセルフをいかに発見するかだよな…。


▲タルト屋のガラスケース


▲トローネ・クレモナ

 「3T」が名物とされてるクレモナの町。
 その1つがコレ,torrone。宿のそばに専門店っぽい店があったんで買ってみた。
 …死ぬほど甘いスニッカーズみたいなチョコね。
 ネチャネチャの食感からして砂糖はもちろん油もドブドブ。ネットで調べてみても卵にハチミツ,アーモンドまで入ってる。ヌテッラに勝るとも劣らない,紛うことなきスーパー肥満食じゃ!!
 ただ,激しい甘さで油断させといて,深い苦味もちゃんと追って来ます。名物たるゆえんは,ホントはこの苦さの複雑な味わいにあるみたい。甘さはこのハードな苦味の引き立て役なわけ。
 この味覚に似合った深緑のパッケージもシブい。土産にはかなりヨロシイと思いました。
 なお。3Tの残りはtorrazzoとtette。torrazzoはドゥオーモの鐘楼だけど,どれなんだかよく確認できなかった。あとtetteは巨乳で,クレモナ女性に多いってことでしたけど,こちらもあまり確認できなかった。


▲スーペルメルカート外観(フィレンツェ)

 イタリアのスーペルメルカートってこんな感じの雑貨屋規模のが普通なんだけど,クレモナのCoopはデカかった!日本の郊外型スーパー並みの店舗,イタリアではここでしか見ませんでした。
 そんなに珍しいこと自体がまさにイタリア感覚だし,それを見つけて早速入店しちゃうわしも悲しいかな日本人感覚なんだけど。つまり──大量消費の手軽さ中毒ね。
 ドゥオーモから東のピアッツァ,何とかpoってとこの2本炭焼小屋みたいなとこの煙突がある小川の脇に,ドンと広がる平屋でした。
 店内はこんな感じ。


▲大型コープのレジ

 少なし今のわしには,ここはもー面白過ぎました。
 クレモナでも一つ探してたモスタルダをまず発見。
 フルーツの辛子漬けのシロップ漬けなのよ!どーゆー制度なのか…クレモナのみ生産を許可されたシロップ漬けなんですと。
 宿で食って,未知の味覚に味覚野が嬉しい大混乱。
 涙が出るほど辛いのに,同時にムチャクチャ甘い!!…って,何ちゅー無体な味覚やねん!でも甘さと辛さが,どっちが後ってことなく同時なんだわ。
 コレはハマりまっせ~!!
 後日,倉敷のcanaleでちょっと出た。肉料理の付け合わせに使われてました。
 しかしイタリア人の味覚開拓欲って…。


▲モスタルーダ


▲他にも買った変なもの,その1。リモンチェロ。
プリンとゼリーの中間みたいなレモン味のドルチェ。あっさりした食感に爽やかなレモン果汁が素晴らしくマッチ。


▲その2,ティクタック。フリスクみたいなもんだけど,ココナッツミルク味でまったり。


▲その3,サムライとキモノ。爪楊枝って日本のイメージなの!?どーでもいーけどサムライの武具もいい加減だし。

 夜9時から野外リサイタルがありました。
 ピアッツァの掲示によると,今音楽祭の期間中らしい。宿のそばだったんで繰り出してみたら,既に200人程ひしめいてます。イタリア人ってつくづく夜型。


▲野外リサイタルの客の群れ


▲野外リサイタル

 少年音楽隊から始まってロック,ジャズと続くみんなの歌謡祭みたいな混成イベント。
 しかし──司会者喋り過ぎ。半分以上はこいつの喋ってる時間なの。
 演奏自体もかなりレベル高いし,何より盛り上げ上手。
 ホントはイタリアって夜が醍醐味か?


▲夜の路地裏


▲夜の尖塔


▲夜のバール前