外伝08〓’ⅩⅠundici’Focaccia vegitariana!! 野菜入フォカッチャ


▲ヴェルナッツォで土産物に売ってたペースト用擂り鉢

 深夜から早朝2時位まで…窓外のセッテンブレ通りはとても賑やかでした。
 週末の夜だからか?どー聞いても酔っ払った団体御一行様の酔いどれてお叫びになってる声や,あるいはとってもリズム感ある暴走車のクラクションが鳴り響いてて,お祭りみたいでよく眠れました。
 …今回一番治安の悪さを感じるんですけど…人を愛する心があれば神様はきっと守ってくれるさ。だからぐっすりお休み。そう言っておじいさんはハイジの頭をそっとなでたのでした。


▲ヴェルナッツォの集落 東側岬辺り鳥瞰

 と…とにかくチンクエ・テッレなんである!
 インドとパキスタンの間にアクサイチンとゆー国境未確定エリアがあるけど,語感がよく似ててちょっとエッチっぽいが案ずるなかれ!!チンクエ(5つの)・テッレ(村)ってだけの意味。
 張り切って今日も早起きして,7時20分発の列車に乗りました。ジェノバ・ブリオーニョ駅発,ラ・スペンツァ行き。
 切符購入後,いつも通り駅のバールでカッフェに。
 ブリオッシュを頼みかけたけど,ここのカッフェはフォカッチャが充実してそーだった。昨日の感動からつい期待して注文してしまう。
 確かに…他でのフォカッチャと違う。生地には痕跡は全く見えないけど何か…バジリコかオレガノが練り込んであるっぽい。
 なぜかここのフォカッチャは「バスコダガマ」とかジェノバゆかりの船乗りの名前が冠してある。観光客っぽい客が食ってた「マルコポーロ」ってフォカッチャにハムか何か挟んでるのもあって,ちょい嫉妬。この時間には合わんけど…美味そでした。
 エスプレッソマシンを担当するオヤジがまたイケてました。まだ暗いのにサングラスかけたオヤジ,意味もなく延々と口笛を吹いてる。宝島に出てくる酒場のオーラを独りでムンムン漂わせてます。
 あ…このジェノバってどこかデジャヴを感じると思ったら…宝島だ!ジョン・シルバーがニタついてそーな…危険と合わせ鏡の魅力を持つ町。
 さて…発とう。列車がホームに入ってきた。
 ヴェルナッツァ着は8時44分予定。

 7時30分,Genova puarto dei mille駅。
 朝焼けの海が見えてきた。山陽線の海岸のような海に山裾が迫った細長い景観。近郊住宅地らしく4階建て位のアパートが連なる。
 7時35分,Genova nervi駅──って一体幾つジェノバ名の駅があるんだ?
 ホームの向こうは海しかない。古いけど「東京ラブストーリー」ならハンカチでも結びそなホーム。
 7時46分,Recco。
 何か既に凄いぞ!!鋭角の狭い谷間を家並みが海まで雑然と埋める佇まい。
 クレモナで見た大きな煙突のある重厚な家屋って,集落の一定規模ごとにあるらしい。何なんだろ?
 8時20分,Sestri。ジェノバを出てから一番広い平地に出た。けれど家並みはまばら。ラ・スペンツァまでの大体中間地点だけど,時間的にはもう1時間経った。
 列車の速度が上がる。ってことは,ここからは過疎地ってこと?
 8時25分,長いトンネルを抜けてMonegliaへ。明らかに「トレッキングします!」って風情で全員リュックと登山靴の15人程の団体様御一行に取り巻かれる。言葉はイタリア語,女性が過半以上。肥満のオヤジや色白少女もいる。今日は日曜だからな。明らかに休日のバカンス。
 8時32分,Deiva Marina着…ってここどこだ?歩き方にも昨日買ったガイドにもない?
 手元にあるのは,昨日水族館脇でマップ代わりに買ったガイドブック。イタリア語のみなんで全く読めないんだけど,集落と集落間ルートのマップが詳細に出てる。それに加えて集落の景観や建物,野鳥の詩情ある挿し絵がたくさん載ってる。一種の「絵本」としても気に入っちゃって衝動買いした。ε12もしたんだけど…。
 8時40分,Levanto着。既に列車はトレッキング客で満席状態?そんなにメジャーなの!?それとも単に日曜日だから?まあ…これなら遭難したくても出来やしないな。良かった良かった。
 バリで簡単な地図1枚で谷をいくつも越えて歩いたら,完全に迷って死に損なったことがある。広島の筒賀村山中とイランの砂漠で同じ目にも遭った。あれはもうゴメンだ!わしは冒険家じゃなく旅行者なんだから!
 8時50分,ヴェルナッツァ着──え?ここなのかあ?トンネルの中だぞ?
 きょときょとしてたら,聴く前に隣のお姉様,「ヴェルナッツァだわよ!」と早く降りろって急かす。
 …間違いない。
 2つのトンネルの間,新神戸駅のミニチュアみたいな風情の可愛い駅でした。


▲後で高みから見下ろしたヴェルナッツォ駅周辺鳥瞰


▲ヴェルナッツォ駅前の風景


▲ヴェルナッツォ メインストリートの風景

 駅から港へ向かう100mほどのメインストリート。
 それは谷間の最下部をくねって続いており,こから左右に何本もの脇道が険しい坂になって登ってる。
 それがヴェルナッツォとゆー町の全て。
 たったそれだけの町なんだけど。
 この町は,美しかった。


▲ヴェルナッツォ西側概観。概ね西側はなだらかな,東側は急な斜面


▲ヴェルナッツォの港脇。教会の建つ集落西側斜面。


▲ヴェルナッツォの港の尖塔をメインストリートより

 孤立してるため,生活圏として完結してる。小さいけどCoop有。バールもちらほら。
 宿も多い。民宿に近い規模で雰囲気もまったり。も少し日程が余ってりゃな…無性に宿泊したくなって困りました。
 例えば,立ち寄ったHotel Gianni franziってトラットリア兼バール兼ホテル。狭い押し戸を抜けると木造のカウンター。奥の薄暗い階段に出入りする長期っぽい宿泊客。いかにも木賃宿って風情。宝島でジムの家族が経営してた宿屋そのものなのよ!
 その目の前はもう港の広場。港は砂浜で,漁船が数艘とプレジャーボートが浮かんでる。

 モーターボートを引き上げてた自家用車。浜の砂に車輪を取られ,エンジン吹かせば吹かすほどズブズブ沈んでモ~どーすりゃいいの状態。
 けども案ずるなかれ,ここは時間のゆったり流れる最果ての港町。住民やら観光客やら,とにかくそこら中の有象無象が絶好の暇つぶしのネタとばかりにワッと砂浜へ。もちろんワシも…。みんなで板切れ差し入れたり周囲の砂を掘り返したりして,ものの15分ほどで見事脱出成功!
 大喝采の後,車の運転手とみんなで握手して,一同名残惜しそーに今日一番の事件の現場を後にしたんでした。
 さてワシは…?
 一つ西側にあるはずの集落コルニリア,さらに西のマナローラ,ジオ・マッジョーレと歩いて回るつもりなんだけど?
 とりあえずコルニリアへの道は…どこにあるんでしょう?


▲ヴェルナッツォの路地裏より上方を見る


▲ヴェルナッツォ 階段下より路地裏の家並みを見る


▲ヴェルナッツォ 路地裏壁面の祭壇

 マップを睨みながら徘徊してみると。
 コルニリアへの道は路地奥をグネグネ行ったとこから伸びてる?あちこち迷った挙げ句,9時45分頃,コルニリアへの道表示をやっと見つけることが出来ました。
 どーも…「Sentiero per Corniglia」って白地に赤三角の表示,これを辿ればいいみたいね。
 見つけてみると,トレッキングの観光客がかなり行き交ってる。
 にしても…皆さんスゴい本格的なトレッカースタイルか,素っ裸に近い状態で歩いてまんな?確かにかなりのアップダウンだし,足場は完全未舗装で岩だらけの危ない山道。
 白人さん方はかなりヘバりモードで,半減後1年生の身の軽いワシはどんどん追い抜いていける。「Sorry…Chaoo!!」とか呼びかけたら「You’re welcane!!」とかハアハア息を切らせながらニッコリして「You’re hard trecker!!」
 ってワシも普通の旅行者だっつーの!
 そんなんじゃダメだ白人!もっかい太平洋戦争やったら勝つぞ!ってほとんどがイタリア人ですけどね…。
 ちなみにヴェルナッツォを出てすぐの地点にはチェックポイントの小屋有。ここで入域パスε5を購入させられました。ちゃっかりしてまんな~イタリアの観光行政!


▲ヴェルナッツォからコルニリアへのトレッキングルート


▲ヴェルナッツォからコルニリアへのトレッキングルート。ほぼ中間地点の峠

ヴェルナッツォよりコルニリア>山上の集落

 10時55コルニリアの入り口。
 1時間と10分だったな。白人の足なら2時間近くかかるかも。それなりにえー運動で,さすがにTシャツ1枚になりました。
 コルニリアは海に突き出た岬の上の街。
 途中,はるか高みの山の上にも集落が見えた。マップで見るとSun bernardinoって街らしい。これも美しい集落っぽい。白地の教会が青空に映えてました。
 さあコルニリア。歩いてみよ!


▲トレッキングルート峠より遠望するコルニリアの町。岬の高台の典型的な集住集落


▲コルニリア入口 ピアッツァにて

focaccia
focaccia con pomodorini
focaccia con olive
focaccia con cipolla
focaccia vegetariana
focaccia ripiena
focaccia con nuttella
focaccia lilletta
focaccia scrambles
focaccia brix
focaccia batti batti
 ハリー・ポッターの禁断の呪文…ではなくてフォカッチャ屋のメニューです。
 概ね訳が分からん。特に最後のバチバチって何者よ?拍手か!?
 ちなみに別の店にはこんなのも。いずれも各ε3程度。
focaccia con tacchino
focaccia ruccola e ricota
focaccia caprese
 コルニリアの通りがかり,小さい店ながらフォカッチャをガラスケースに並べ倒してるのに吸い寄せられた。なるほど客が入れ替わり立ち替わりやってきては1つとか2つ単位で買ってく。
 フォカッチャを焼く匂いがプンプンに立ちのぼる…。
 昼の弁当(昨夜の食いくさしのブドウパン)は持ってきとんのに──たまらず1つ購入。怪しい語感のバチバチじゃなく少しは想像のつくヴェジナリアーナ。
 イートインはなかったからピアッツァで食う。──がぷり。
 屋のフォカッチャ・メニューのバラエティ


▲コルニリアで買い食いのフォカッチャ・ヴェジタリアーナ

 うほほ!
 包子みたく具に入れたまま焼くのか,フォカッチャの間に野菜が入ってる。中国なら菜包。フォカッチャ生地そのものも十分過ぎる豊潤な小麦臭なのに,野菜の青くさい深い甘味が絡みついて喉に落ちてくる。全く刺激的な何かはない。限りなく優しい味わい。
 これは…トロける。
 駅へのパスの発着する慌ただしいピアッツァの往来を,しばし茫々と眺めてました。


▲コルニリア集落から駅へのミニバス