外伝08〓’ⅩⅠundici-2’insalata del Mac!! マックのイタリアン・サラダ


▲集落西側よりコルニリアを鳥瞰

 「イタリアン・リヴィエラ」の名を誇るチンクエ・テッレ(5つの村)。2つめの町コルニリアがまた,歩いて酔っちゃう町でした。
 岬の高みのこの集住集落の北側外延部に,小さなピアッツァがある。大きな樹の周りの空間で,駅との間を往復するミニパスが発着する。ちなみに駅は集落のある岬の東斜面を下った最下部。
 メインストリート…と言っても幅2m強の石畳の不整形な路地。これがピアッツァから始まって集落内を反時計回りに半周したかと思うと,海側のテラスみたいな場所で終わってる。


▲ピアッツァを見下ろして


▲コルニリア メインストリート風景

 この道からの脇道は何本も出てるけど,それは建物間の隙間かどうか分からない風情。建物は程良く古く寂れてる。平均3階建位。明らかに建て増しに建て増しを繰り返してて,日本ならどーひいき目に見ても建築基準法違反。


▲コルニリアの路地裏


▲コルニリアの峠より,も一つ東の集落マナローラを遠望

 ミニバスも乗りたかったけど,歩きたかったんで捨てた。12時15分,コルニリア駅へ階段の道を下る。
 葛折りのとことん急勾配の山道。下るわしはともかく,登って来る白人は汗だくでヒーヒーでもー死にそう。
 そんなんじゃダメだ!頑張れ!!リメンバー・パールハーバーだ!(イタリア人だけど)

 鉄道の高さまで下ると,道は鉄道の海側を並走。海岸沿いにレンガで海と隔てられた道。
 振り返って見ると,コルニリア集落から駅までは驚くほどの高低差。これでミニバスが日に23便ってのは,外界との交通はしんどいやろな…。


▲コルニリア駅への坂道を下る


▲コルニリア駅への坂道下の絵地図。詩情豊かなタッチでよろしい。特に「Tu sei qui」──あんたはココ!!って表示は,今から登る者に人生の厳しさを教えてくれる。

 次の町マナローラまでは,ヴェルナッツォ-コルニリア間ほどの距離じゃなかった。(でもそれかりに峠越えの山道)
 13時5分,マナローラを見下ろす共同墓地の脇を通る。南に水平線を眺める高みに朗らかなイエスのモザイク画。
 水道もあったんで,折角だから持参したブドウパンを完食。眼下のマナローラの港には,同じく昼飯を遣う観光客が一杯。…トラットリアでだけど。
 コルニリアまでと観光客の数が違う?マナローラまでは東のピザ方面からの交通の便がいいってこと?何にせよここまでの2集落とは空気が違いそーです。


▲マナローラの集落を西から見下ろす墓地


▲マナローラ集落を西側の共同墓地から鳥瞰

 マナローラも海に突き出した断崖の東西を巻くように家並みがまとわりついた街。
 ただし,コルニリアと違って,海岸線から高みまで集落が続いてて,西側斜面がメイン。町の中心も西側の港を起点とし山手に伸びるメインストリートで,これは幅5m以上の乗用車が離合できる広さ。この道路が東の都市ラスペンツァまで続いてるみたい。
 土産物屋も観光客もコルニリアまでとは桁違いに多い。特に港付近には例の馬鹿高いトラットリアがいっぱい連なってます。
 つまり,ボローニャからぐるっと反時計回りに迂回して,ローマからフィレンツェ周辺のイタリア中央部の観光客多発地帯に,わしはまた戻ってきた形になるみたいです。


▲マナローラのメインストリート


▲マナローラの路地裏より集落を見る

 イタリアの建築基準法はどうなってるんだ???????とハテナだらけになりそな増築ぶりはヴェルナッツォ,コルニルアと同じなんだけど,マナローラではさらに隣の建物と空中で繋いでる建物が目立った。それもメインストリートを鋏んでくっついてたりしてる?建築基準法はええわい(良くないけど),区分所有とか空中所有とか…そもそも民法はどーなってんの???????
 でもそーゆー法秩序上のハチャメチャさが,この路地裏の面白さになってるのも確か。
 ただマナローラはメインストリートが観光化しすぎてるせいか,一つ高みを伸びてる路地裏は閑散として人影もない。つまり生活臭に乏しくて廃村的な雰囲気。
 集落の東側斜面へ行くとホントに打ち捨てられてて,眼下に見える駅まで従来は延びてたらしい道が崩れて通行止めになってました。架橋された島が寂れるのと同じで,交通の便がいいってのは小規模な社会にとっては致命的なファクターなんだろう。
 その中でヴェルナッツォやコルニルアみたいな小さな独立社会が,やはり観光外資を糧にしてるとは言え存立し続けてるのも,やはりイタリア人の逞しさなのか?
 マナローラのメインストリートから駅へは,岬の地下を貫くトンネルがあった。最近出来たものらしい。コンクリートの打ちっ放しでチンクエの解説とかがポツポツ掲げてある。確かに合理的だけど…この空々しい設備,この集落社会の空洞化を象徴してるよに思えて…。
 東のジオ・マッジョーレ歩きは取り止めた。ちなみにジオ駅までの間には「愛の小道」とかって名所もあったけど…要は観光地。


▲マナローラ集落東側の駅

 14時13分Giomagiore発…と思ったら辺り一円の白人が突然奇声を発して慌てて下車!?
 何だあ?とっさに吊られて,わしもバックをひっつかんで飛び降りようとして──
 踏みとどまる。だって…列車の切り離しなら進行方向の前方コーチだし,残って笑ってる奴もいるし?「Per Genova!!?」とそいつらに聴くと,やはり「Si~!!」とのこと。
 14時15分,列車は無事に動き出す。って何だったんだ?
 ドア間近の白人が笑いながらコメント。「I think they are group.They misstook plathome,maybe.」だってさ。逆のプラットホームからラスペンツァ方面に帰るつもりで間違えてたんだろか?「Waoo~I’d also get down!」と真顔で胸をなで下ろしたら,さらに爆笑されちゃいました。
 そ…そんなだからダメなんだ白人!よっしゃこーなったらもう一回やったるでえ!!…あゴメンナサイ,実は,私戦争反対の広島市民デース。ノーモアウォー。
 14時25分,Monterosso着。ヴェルナッツォを含め,間の3つの駅は飛ばされた格好。今日延々歩いた道行き,列車なら10分未満の距離なのね。


▲ジェノヴァのピアッツァにある幼児生首像。このモチーフにもかなり慣れてはきたけど…。やっぱり嫌!

 しかしまあ…あんだけ何百人と観光客とすれ違ったけど,東洋人は一桁ほど。それも,2人日本人臭い女性がいたけど他は全部香港っぽかった。彼らがズレてんのかわしがズレてんのか?
 ああ~久し振りにいい集落を歩いた充実感!四国の泊,台湾の膨鼓島,インドのマドゥライやダラムサラに並ぶいい集落でした。特にヴェルナッツア!あの港町でのんびり滞在したら最高だろな~!!
 あ…それはともかく,今の状況だけど。さっき切符を窓口で求めたら「ジェノバのどの駅?」って聞かれた…。リオマッジョーレ駅で停車駅の案内があったけど,ジェノバ名の駅は10以上あるみたい。15時42分着って予定時刻はメモってきたけど,わし…正しいジェノバ駅に降りれんのか?
 流石に眠気が襲う。いかん,眠っちゃダメだ!影武者ジェノバ駅に騙されるぞ!


▲ジェノバ 坂道の路地裏


▲ジェノヴァ港沿いのアーケード下の風景

 列車はほぼ時刻表通り走ったんで特に問題なくブリニョーレに帰着。
 明朝にはジェノバを発つんで,しばし市内を散策。
 …人いないんですけど?
 ほとんど歩いてる奴のいない迷路状の町。これは怖い。ふと折れた細い道に人影を見たと思うと,革ジャンの目つきの悪い数人のグループ。
 こ…ここで襲われたら一発じゃん!完全犯罪じゃん!?助けを求めよーがねーし!!
 …とか何とか昨日と同様の危険都市妄想が膨らんじゃったら,もーダメ!昔南米帰りの旅行者から教わった10mに一度振り向きモードにチェンジしながら,出来るだけ人通りの多い道を選んでたら──結果的に昨日と同じ道を歩いてるじゃないか?しかも…気づけば,そのまま宿に帰ってしまっとるじゃないかッ!?
 宿そばでエラい人の出入りの激しいドアを発見。人混みに紛れて中に入ってみたら──馬鹿でかい空間!天井もドーンと高い!
 教会でした。夕方のミサか何かでしょーかね?安息日に外出する人がこんだけ少ないってのは,敬虔なキリスト教徒がそれだけ多いってこと?


▲ジェノヴァ駅前Macで購入した結構豪勢なインサラータ

 さあ…晩飯どーするよ?
 通行人がいない位だから店も開いてない。駅周辺なら…と望みを繋いでたけど,入口シャッターが降りてる状態のオリエンタル市場を始めてして,他と全く同じ。幸いベイビーヨーグルトだけは営業中だった!街角で舐めながら途方に暮れてる次第であります。
 駅前ピアッツァでは,今朝朝イチのエスプレッソを飲んだカフェ・エキスプレス以外は…Macかあ?如何に困っても,海外でマックって…アホやん!!
 と思って避けてたんだけど──マジで晩飯難民状態なもんで,2回目に通りかかった時にメニューに目を通してみました。…韓国マックのプルカルビバーガーとかの例もあるしね。
 すると──へえ~インサラータがあるんだ!ε6位と結構高い…ってことはサイドメニューとしての日本感覚のシーザーサラダじゃなく,メインディッシュとしてのサラダ臭い!
 インサラータの他はあんまりオリジナルと変わらないようです。世界各地を浸食しつくしたかに見えるマックが,バールの一般化したこのイタリアでは明らかに相当苦戦してる。そのマックが地元対応として打ってきた戦術の主軸が,インサラータってことか?パスタでもピッツアでもなく…。
 と考えてくと,一度だけ手を出す気になってきた。結局,晩飯はこのインサラータと駅バールの「バスコダガマ」と「マルコポーロ」にしました。


▲ジェノヴァ ブリニョーレ駅バールのパニーノ2種

 駅バールのパニーノはまあ名前倒れかな。
 でインサラータ。想像通り,ボール一杯位の凄い量!けど当然,ドレッシングはない。そして当然のように…モデナのバルサミコ酢とエキストラ・ヴァージンのオリーブオイルの小袋付き。具もトマトとモッツアレラがデーンと入り,野菜もレタスだけじゃなくハーブ系もちゃんとたっぷり。コープのインサラータセットより充実度は高い…ってゆーかフィレンツェの店で食ったインサラータに近いぞ!!かなり質もよくてシャキシャキでした。
 考えてみりゃ,食事系のバールでガラスケースに入れてるわけだから,Macで出せない訳ない!インサラータはMacを介さずに出て来てるけどイタリア流ファーストフードって面を確実に持ってるわけで,だからこそ「サラダバー」って形式が欧米に展開してるわけで──つまりそこに,「正気のファーストフード」みたいな食の形式の可能性があるのでは?
 けどそれも,イタリアみたく市民が真っ当な「野菜感覚」を持ってて初めてビジネスとして成立するんだろけどね…。


▲ジェノヴァ路上でマリア像を模写するチョーク画の大道絵描き。迫力…マジで上手い!