外伝07(≧∇≦)長老喜の1月

 たまあるか!
 って…どゆこと??????
「貴様んッそげな根性でどげんすっと!玉あるんか!」…とか,博多スラング的な語感!?と思ったけど,正解は──

たまあるか(たまるか)(瀕)たまーるか
(標準語訳)なんてこと!/そりゃあひどい!/すごい!
(意)感嘆詞的使用。びっくりしたときに使う言葉です。動詞「たまる」が「我慢できる」とかそういう意味で,標準語でも「たまらん」「たまるものか」はかろうじて残っている表現でしょう。それに付加疑問(反語?)の「か」ですね。「たまるものか」は連結して初めて意味を持ちますが,「たまるか」は独立で意味を発揮します。
[出典]Hiroyuki Osaki:土佐弁辞書I自立語 (’05復刻版)

 いやあ~このHPに,他にも山ほど並んでる上級者仕様の土佐弁!
 コレ拝読しまして改めて痛感。土佐弁ってなかなか難物ですね!!単に表現だけじゃなくて,感覚が違うって感じ。
 さて,何でこんなこと調べてんのかってえと──今月,高知のAceOneで見つけたこの一品。「有限会社安芸グループふぁーむ」生産の「卵のアイスたまあるか」。
 表記に曰く──高級地鶏,土佐ジローの卵を使用。原材料:牛乳,卵,クリーム,トレハロース,砂糖,脱脂粉乳
 卵の香りが凄まじく香る。もちろんアイスだから冷え冷えなんだけど(だから1月に食うな!),この冷たさでここまで香るってすげえよ!
 香りづけの化合物じゃない,本物の卵の直球勝負で来てる。
 やっぱり高知の卵をちゃんと食べてみたくなるけど…広島までの輸送がなあ…。かと言って…ホテルで一晩にワンパック分10個を食い尽くすってのはなあ…そこまではロッキーでもやらんだろ…。

 土佐山田で下車してみた。
 はりまや市場での購入品の定番になってしまったブラウンライスのカンパーニュ。そのメーカーのパン屋,さくらベーカリーがここにあると聞いた。
 駅から結構歩くけど,何とか行き着いた。けど…金土が休みなんやねココ。なぜか日曜日は開店してるらしい。寄るなら帰り道しかないみたいやね。
 線路の反対側へ取って返す。調べた時ヒットしたお店。
 とても探し易かった。建物自体が少ないからです。
 元々ここは山田村。1954年に新改村,大楠植村,佐岡村,明治村,片地村と6村合併で土佐山田町になり,平成の大合併で2006年に香北町,物部村と再合併して現香美市(かみし)に。市の面積の70%が山林。
 けど…?そんな田舎(失礼!)にホントに美味い店が!?
 とにかく目的のパン屋ファンベックを発見。駅北側のあけぼの通りって閑散とした道路の脇にポツンと建つ小さいお店。…美味いのか?大丈夫か?
 特段の情報は持ち合わせてないから,やや捨て鉢に適当なとこを3つ買う。

▲ファンベックのパン

 失礼致しましたッ!
 美味い以上に…幾つも驚かされた小麦体験!
 まずカスクルート。バケットも歯応え抜群の小麦粉臭満タンだし,中のハムやレタスもシンプル,量もちょーどいい。これはかなり本格的やんけ!
 ブドウパンみたいなのも,ハードパンとしてバッチシ。さっきのパケットも同じだけど,パン生地みたいなんよ。技巧的ってんじゃなく,ピュアにシンプルに美味い。透明感ってゆーか…。そこに,ピチピチにフルーティーなブドウが,控え目なくせにたまらないアクセント!
 ただやっぱ3つ目の「コパン」が存在感でした!
 全然意識せずについでに買ったわけ。「もちもちコパン」みたいなネーミング表示で,1個30円だったか?あんまり小さいから5個入りと10個入りの袋で売ってた。この売り方といい置いてある数といい,明らかに主力商品の臭いだったから一応チェックしとこか…くらいの感覚で。
 口にしてみて──最初の印象はグジュールみたいなスカスカした感じで味がしない…気がしたわけ。でも?噛み進むと次第にもっちりした歯応えが感覚され始める。その中から,ほんのりした甘味とゆーか香りとゆーか得体の知れない味が立ち上がって来る。決して強い味覚じゃない。でも口内が幸福感に満たされる…やはり得体の知れないとしか言いよーのない味覚。食後しばらく尾を引いて消えない,不思議な食感。
 と,細部については言えるんだけど?
 全体として…分からん。
 何でこーゆー店がこんなに美味いの?
 そんで,結局この透明なパンの味って一体何なんだ?
 これは果たして,ファンベックだけの突然変異の旨さ?それとも,ひょっとして…高知のパンって全体がこんなレベルなの?

 前々から気になってた安芸駅のぢばさん市場へ,ついに行ってきました!
 億劫になってた理由は──駅付属のこの市場,高知駅から1時間もかかるわけでした。
 しかし!
 予測を遥かに上回って大正解!総額3千円も使ってしまった…。
 当面,実力測定目的でできるだけカテゴリーを分散させて買ったつもりの7品は──
東山
ゆず皮の佃煮
カシキリ豆腐
ゆず果汁(酢)
イカの煮付け
安芸茶
よもぎ田舎羊羹
田舎寿司
 3千円っつっても,安芸茶を千円の特上にしたから。他は日曜市並みの単価です。
 これはいい!
 広さこそ小さな郊外スーパー以上のもんじゃない。けど,3段の棚に地場モノの野菜中心の品が出荷ケースのまんまで満載されてます。ケースのままってのは伊野と同じだけど,3段だからかなり選択肢は多い。どのケースも生産者と生産地が明記されてる。生産者は,伊野以上に個人がメイン。
 しかし…この野菜の種類はスゴい。ちょっと知らない名前や,明らかに見たこともない形状の葉野菜,見慣れてるけどどう食うのか分からんのが並んでる。花の咲いた菜の花とか…。
 パン屋や総菜屋とかの加工品業者まで入ってる。ここで食材一式が揃う店として機能してる。
 つまり,それだけこの地の食生活は一般的日本とは違う。もっと露骨に言えば…食文化が進んでる。
 例えばイタリアで食文化レベルのバロメータ的に捉えられてる野菜の種類。高知市内でも京都以上だけど,この安芸の種類の多さは高知市内をさらに凌駕してる。
 さて──でも肝腎なのは実力ですが。
 宿で食う。日曜市で馴染んだ東山,ゆず皮の佃煮,田舎寿司ですら味わいが微妙に違う。素朴ってだけじゃなく,素材の力強さが歴然。スーパーの定番,イカの煮付けも微妙だけどプリプリ感が違う。
 よもぎ田舎羊羹。軽い甘味なのに,ふくよかさに魅了される。
 ゆず果汁。実は…瓶詰めで重そうに見えて購入は初めてだったんだけど,これ凄いんやね!商品表示が「(酢)」ってなってるから,バルサミコ感覚でサラダ野菜にかけてみたら…完全にハマりました!数滴でサラダが別次元の華やかさに!
 安芸茶って名前も初めて聞いたけど…土佐茶って言えば四万十じゃないの?けど,飲んで納得。京都の幽玄さ,静岡の繊細さとは違う,ジャワティ的に力強い西日本のお茶。その特徴で言えば,四万十のよりさらに典型的。まあ確かに,京都,静岡的には「下品」なんかも知れんけど,わしはこれはこれで好き。
 あと,カシキリ豆腐。何のこっちゃ?「本日貸切」みたいな…って食いもんだぞ?
 薄茶色の豆腐。訳分からないからとにかく買った。食うと──
 素朴で微妙な渋みが大豆のふくよかさとマッチして…これは面白い味覚!!けどこの渋み…これは…?
 ドングリか?つまりカシの実──。
 見えた。カシキリってつまりドングリの豆腐みたい。
 調べてみたら,はっきり分からんらしいけど,高知以外じゃあんまりないらしい。
 ドングリを水に晒して食う。縄文時代の遺跡からドングリが出るらしいけど,このドングリやトチノミ,シイノミは縄文日本人の主食だったらしい。晒さないでも食べられるシイノミを除き,ドングリやトチノミは現代日本人はほとんど食わなくなってる。
 いわば「生きた化石」食なわけです。
 なお,似たような高知独自の伝統食として知られるものに碁石茶がある。
 烏龍茶は茶葉を自然発酵させるけど,プアール茶は固めて強制発酵させる。碁石茶は後者の類で,漬物に似た形で強制発酵させたお茶。
 現在,日本には発酵茶は少ない。本州には富山のばたばた茶がある位だけど,四国には徳島に阿波番茶,石鎚黒茶があるほか,この高知の大豊町地域で碁石茶を飲む。地域分布から言って,おそらくこれも古代日本の食文化の残存だと思われます。

 食品以外でも,このぢばさん市場,裏手の方にレンタルサイクルが20台以上ありました。
 街は閑散とした感じだけど,温泉もあるし,のびり滞在ならいいかも。カフェも駅周りだけで2軒見つけたし,何よりこの市場のモノを食いまくれる!
 高知市内への帰路につく。
 鉄道はごめん奈半利線。
 この線,なぜか全ての駅にキャラクターがいる。アンパンマンのやなせたかしのデザインです。そんで車内アナウンスはこんな感じ──「次は~御免,御免,ごめんえきお君の御免でえす」
 駅の中に球場前って駅があった。阪神のキャンプ地になってるとこ。ここは…流石にキャラ化は無理だろ?と思ってたけど甘かった。
「…球場ボール君の球場前です」
 ちなみに。高知の路面電車は御免から伊野まで。これを「ごめんごめん」「いーのいーの」と表示してる看板があったけど…だからそれが何!と突っ込まさせていただこう。
 高知人,企画屋さんまで何かヘン!

 帯屋町のバス停そば,いつもワゴンを出してる「菓子工房magister est Renee」ってケーキ屋さんがある。
 高梨ジャムとゆずジャムがメイン。やけにたくさん並んでるし,結構売れてくみたいなんで,とうとう買ってしまいました。
 1瓶480円。まあまあ高いけど…かなりイケました。素材も相当良質っぽいけど,砂糖より果実本来の香りで食わせる誠実な味。
 メーカー表示を見ると──特定非営利活動法人まあるい心ちゃれんじどの応援団。
 どうも,ケーキ屋の軒先を障害者生産施設が共同経営で使ってるってことみたい。
 広島でも障害者自立施設の品を買う機会があるけど,概して良質。何より誠実なスタンスが質に出てて,目の覚めるよな味覚に時々出会う。そこに高知の素材のレベルの高さが加われば…そりゃうまいだろ!
 結構狙い目かも?

▲菓子工房magister est Reneeのゆずジャム

 どーも最近。
 日曜市巡礼は,高知歩きの締めの儀式みたくなってきてる。
 三本締めみたいなもんで,この土地の食文化礼賛の一種の作法みたいな感覚。ここは季節を感じる場所として,あるいは高知の食を総覧する意味では貴重な存在だけど…正直もうあんまりクオリティを期待してない。ここは根本的にはハレの場てあって,ケの空間じゃない。
 って言うわりには,今月もどっちゃり買いまくってますが…。
 ひろめ市場西側を南に入った2軒目。
東山 1000円
 高い!何で?
 尋ねてみると「オオツキ町のちょっとえーのですわ」とのこと。
 思い切って一回!と購入してみた。
 ──確かに凄い!
 柔らかくて飴みたいな食感。それでいて甘くはない。いや,甘い。だけど,甘味の奥行きと鳴動が普通の甘味とまるで別物!
 後に松山で,宇和島の東山を手に入れた時に同じような味覚を感じたけど──
 これは…化け物だ!

▲高い東山

 363番,5丁目南の野村さんのお店で。
古漬け大根 100g80円
「ちょっと酸っぱい」と書かれたダンボールがカワユイ。小さいの一本で160円でした。
 全く…高知の漬け物ってどーなっとんの?京都で覚えた漬け物とパンのセット食い,このシャープな酸ゆささらまるで違和感なし。
 ところで。こちらの住所は高知市鵜来巣。「うぐるす」って読むんだって。古代の臭いの響きです。

 5丁目南,大坪さんとこで
金時にんじん 100円
 389番東隣,にんにくのぬたの店で
長老喜(小)300円
をそれぞれ購入。
 人参は真っ赤でうまそう。だけども一つのこれは…!?
 
▲金時にんじんとチョロギを茹でて素朴に頂きました。

 …幼虫?カブト虫かなんかか?
 だとしたら…?そもそも食いもんなのか?
 おばちゃんに聞くと「酢漬けよ。畑の根っこにこがーに出来ゆう」少なし飼育用ではないらしい。
 食い方は?「湯がいてマヨネーズか揚げて食べるが」だって。
 自虐的に,それ以上は聞かずにとにかく茹でて食ってみた。
 何だ…この歯応え!
 コリコリしてるけど野菜。銀杏とかに似てるけどあーゆー華やかな芳香じゃなくまったりして少し酸っぱい。例えがたい味覚だけど…とりあえず美味い!
 調べると──中国原産,シソ科の植物。巻貝形。本来の色は白色。市販のものが赤いのは梅酢漬けになっているから。
 12月頃が旬なので,正月のおせちの定番。黒豆の煮物に添えられる。
 漢字表記は「長老木」がメジャーだけど「長老喜」「千代老木」「長呂貴」とも。表記通り,脳細胞を活性化する成分を含有。

 今月も芋天を1袋(250円)購入した後,みっちゃんちのお店で
のし餅(はしっこ)300円
ってのが出てたから手を出してみた。
 種類は白,よもぎ,茶色,赤の4つで,この「はしっこ」は細長いのが4種類全部入ってました。雑煮にしたらカラフルで面白かった。味もずっしり着実。

 2丁目北,吉松さん(134番)とこで久しぶりに
梅干し 200円
を購入。やっぱ梅干しはここがいい!
 「梅干しは土用干しやき…」おばちゃんの自慢の言葉が途中で途切れる。何か包装に手こずってるみたい。「寒いき指が…」
 おばちゃんの指はともかく,土用干しの「土用」は「土用の鰻」のと同じく7月20日~8月6日頃。本来その頃の天気の良い日の3日干し。転じて梅干しの最後の製造過程で,3日間日干しにする作業を言うそうな。

▲日曜市の朝食 芋天,こんにゃく,ゆず味噌

 122番,池上自然農園は2丁目北開店。
ゆずマーマレード 大人の味 300円
池上こんにゃく 刺身でどうぞ 120円
をお買い上げ。
 このマーマレードも美味かった。果実そのものに近い味。
 しかし驚愕は蒟蒻──あっそうか,これって芋なんだよな!と気づかされるガッチリした野菜味ある丸こんにゃく。飾り気も何もないけど,これは凄かった…。

 朝市には現地で食える店は少ない。
 201番,3丁目北の一柳さんとこでは,ところ天を何度も買ってたけど,今回は
うどん 350円
を店先で頂きました。
 味覚的には普通。
「キムチ入れんね?」と隣の客におばちゃん勧める。「辛いき覚悟して入れてや!」
 そう言われると挑みたくなる。口に入れると…確かにバカ辛い!
「あんたもキムチ入れてや」とおばちゃん。
「入れました…辛かったス」
 おばちゃん「たっすいがはいかんき!」