外伝06@再訪@(@_28_@) 春節の台湾見聞録 (@_28_@)

 想像ついてる方がおられたら,中華圏の感覚をお持ちの方だと思います。
 何度か書いたバレンタインデーの「ある事情」とは──春節,つまり旧正月。
 もちろん新旧の暦はリンクしてないから,春節の日が新暦で何日かは毎年違う。たまたま今年はバレンタインデーでした。
 大陸中国では,帰省客で交通機関が完全に麻痺すると聞いてたこの春節。あんまり凄そうな話を聴くんで,まだ中華世界でこの日を迎えたことはありませんでした。
 今回は完全に想定外。向こうに着いてから知ったって有り様で…。
 大晦日だった3日目と元旦だった最終日の模様を,ほぼ重複になりますけど,当時の原文を出来るだけ留めたまま連ねてみときます。

 3日目夜,松山の夜市へ。
 初日夜の士林,2日目夜の師大は超満員だったから,夜市は大丈夫かと思ったら…。
 誰もおらん。
 ほとんどシャッター街状態。
 20軒に1軒くらい空いてる店に,スゴい人数が詰めかけて…日頃と打って変わった超売り手市場。
 こんな…。
 それしかない状態で旨いもんに出くわすわけがねえ!
 見事なまでの空振りで,何一つ飲み食いせずに引き上げてきました西門も?

 デサスター映画でよくあるシチュエーションやん!
 昨夜まで歩けないほど群れてた人混みが…ギンギンギラギラのネオンが…!
 台湾新宿・西門,もーがらんがらんで真っ暗。新型インフルで人類滅亡したんちゃうのん?
 最終夜だから買い込むつもりだったCDショップも,まったり過ごす気でいたスタバも完全に灯が消えて,大停電の夜状態。
 カウントダウンとか…それすらないのね,台湾の大晦日。

 萬国滷味って屋台の滷味が辛うじて出てたから,やけくそで130元も買っちゃう。
豆干
海帯
香腸
黒餅
 結構イケた。
 滷味の味はごく弱いのにちゃんと生きてる。苦い滷味と淡い滷味,台湾の本流はどっちなんだろ?

 香腸。
 最初,セブンイレブンでの買い物ついでに手に入れてみた。
 日本のソーセージと全然違う!
 むっちりしてて肉以外にハーブのような味わいがすごく豊か。ドイツ系のハーブ使いでもない。味わったことのない豊さ…。

 セブンイレブンでこの違いなら…とよく売れてる路上の専門屋台,っても2軒くらいしか選べんかったけど2種類を購入。赤いのと白いのがあったんで1本ずつ。
 赤い方は普通の肉味。ただやっぱりむっちりハーブの味覚。
 白いのがビックリした!餅米?でも味はちゃんと付いてる。中華粽と同じ豚肉油で蒸してある感じ。肉の素材は外皮の腸だけだから,詰める前に何か加工してある?
 つまり──これは腸皮で覆った粽!中華粽にソーセージの衣服を纏わせてる。

 さて最終日の朝。つまり春節当日。
 どーしましょ?
 頂渓に向かってみる。早飯ストリートなら生きてんちゃう?
 ──全滅。
 世界豆ジャン大王さえ休み。
 すぐ北に,博愛路なる街路樹の多いタイル敷きのいい小路を見つける。楊三郎美術館ってのがある。
 しばし佇む。
 さて…どーしましょう?

 三商巧福。
 かなりあちこちにある三明治のチェーン店です。
三明治と珈琲のセット(三明治套餐) 39元
 玉子がえらくまろやかで,手作りらしいうっすらした味のマヨネーズと相まってクリームのよう。
 にしてもハムの味が登場しない。
 単なる彩りのアクセント?…かと思ったら食い終わったあたりで肉々しさがムッと残った。サラミ系のハムで味覚の背景に緊張感をもたらすよな役割を果たしてるらしい。それと…こんな一切れにも関わらずこの満足感は,どうもハムの効果。それに?やはりこのハム,昨日の香腸と同じむっちりハーブ感がある?
 やっぱしこのむっちり感って…台湾米?もしくは台湾の餅米じゃないのか?
 ハーブとして使える米って食材もスゲえんだろけど,米をハーブとして使う発想も凄い。昨日の[舌甘]飯も似た感覚です。つまり,米を使う感覚がムチャクチャ自由みたいなんです。
 ほぼ炊飯でしか米を食わない我が民族と,隔世の差──。

▲台湾省城[耳皇]廟前のポリ

 武昌街一段に行ってみた。
 台湾省城[耳皇]廟ってお寺かお墓か,とにかくそんなのに500m近い行列が出来てます。何だか全く分からんけど,まあ初詣みたいなもん?
 門を10人位のポリスが警備してます。
 入れ替え制らしく中から案内人のマイクの声と拍手が上がる。
 この廟の対面が明星。なんとカフェもパン屋も空いてるらしい。帰り間際に土産を買いに立ち寄ることにしよ!
 けど,当てにしてたワンタンストリートは──壊滅!

 全く…ここまで徹底してるとは。
 RIDOって珈琲屋が開いてた!もはや選択の余地なし,速断で入店。
 漢字名は「里豆珈琲」。古き良き喫茶店的だけど,チェーン店的な対応で店のタイプがよく分からん。
 徳式熱狗+総合珈琲のセットにしてみる。75元。
 総合珈琲はブレンドってな語感みたい。「不要糖」(プヤオタン)と注文してみたら,ちゃんとブラックが来た。ただ,珈琲としてはあんま旨くない。韓国では進化が著しかったカフェ文化,台湾にはあんまり期待できそもないやね。
 「振動器」と台湾では呼ぶらしい。出来上がりのお知らせ装置。なかなか鳴らない。完全無欠の売り手市場,客がわんさかいるから仕方ないけど。
 徳式熱狗は,一番日本的なソーセージでした。日本的にはかなりいいソーセージで味わい深いけど…どーもあの昨夜の独特な味のハムは,感覚として,も少し下品なものらしい。
 西門の遠東百貨店の初売りにやはり500m位の列。入口に獅子舞が出てドンドコドコドコやかましい。
 西門はなぜかかなり人出がある。店は大して開いてないようだが?

 忠孝新生で降りてみた。
 こうなったら最後の切り札しかない──勘だ!文句あっか!
 忠孝敦化の市場付近は大晦日が閉まってんだから元旦もダメだろ。生活エリアも観光エリアも外国人街も開いてないなら,後は大学生エリアと無法エリア──つまり科技大から八徳路!
 ほら見ろ!半分以上営業中やん!
 と勝利感に浸ったのも束の間…開いて電脳系のみ!
 もー何でもいーぞ!と駅に帰ってうろついてたら?おお~開いてるやん,フォルモサ!実は初めてでしたが入ってみました。
 表からも見えた古めかしい雰囲気の店内…は,入ってみるとかなり安っぽい。しかも
苦瓜排骨湯 65元
魯肉飯 30元
を頼むと3分で出てきた。かなり客もいるのにそのスピード?持ってきたのはいかにもバイト臭いお兄ちゃんだし…大丈夫かあ?
 来てみると──ふ~ん,かなりいいじゃん!
 苦瓜湯は苦みが程よいハードさで決まってる。魯肉飯はがっつり滷味が響く。
 厨房でのお兄ちゃんの手を見てると,魯肉飯は白ご飯にバサッと汁をかけてるだけ。苦瓜湯は作り置きのをすくってるだけ。そう言えば,苦瓜のエグミが残る感じはあるな…。
 でもまあ,ファーストフード的にこの味が出せるのはなかなかだと思いまっせ。

▲老薫牛肉面粉の牛肉麺
 ダメだろな…かなりヤケクソっぽく民生東路に行ってみたら?
 え!?開いてるやん,老薫!
 ムチャクチャ混んでたけど運よく一席空いてた。
 減量前,まだ小北門に牛肉麺ストリートがあった頃にはコレ目当てに台湾に来てたよな…。今回はこれが初牛肉麺ですけど。
 けどやっぱなかなか。以前は感じられなかった肉出汁と滷味とトマトの酸味の三位一体絶妙のバランス感!手打ち麺のシコシコした力強い小麦味!
 そして──これは以前気に入ってた牛肉の肉肉しい旨みが,その上でキイてる!
 強い味覚と弱い味覚のジョイント。個性的なヴォーカルの後ろで奏でられるパックコーラスがあるから音楽の深みが出る。
 地獄巡りの果てに一周して戻ってきたよな,奇妙な満足感に酔ったわけでした。

▲明星西面包店一階の名物

 帰国の時間が迫ってきた。
 明星西面包店へ戻り,例の白い奴(非合法なものではない…はず)を150元で購入。
 漢字5文字,最後が「ス」だから中華ケーキのカテゴリーらしい。
 帰国後食うと。マシュマロみたいでケーキみたいな変な食感。あんまり甘くもない,台湾で言うQなスイーツ。でもミョーな満足感がある。
 この「ス」ってカテゴリーも,何かスゴそーなんだけど。
 ついでに買った
ケーキの切れ端(蛋[食ソ/王]片)40元
もグッド!
 何となくうまそうだったし,明らかにお得だし,前のおばちゃんがゲットしたからつい釣られて…。

 初めて明星の2階に上がってみました。明星珈琲店。
 これまた雰囲気最高。白基調の1階とうって変わって暗がりの店内。窓からの採光。木製の枠に黒大理石の机だけど,他はさして気取った感じもない。かなり落ち着けるスペースです。
 客層はやや金持ちっぽい御家族か,ちょっと張り切って来てみました的な方かみたい。
 1時過ぎ。どーもわし以外の全員が飯食っとるらしいけど,もー食えまへん!浮くのを承知で明星珈琲を頼む。いーじゃん180元なんだから!さっきの牛肉麺とほぼ同じじゃん!
 来た。
 ほう…流石に旨い!
 いや,かなりイケる!明星のオリジナルブレンドみたいだけど,鋭さが強く細く,舌を針でチクチク刺すよな,ちょっと味わったことのない面白いテイスト。
 「マンボ」とかって台湾産の豆のストレートもあったから,知らない豆を使ってんのか?
 ネットで勉強してみると──マンボなる豆は分からんかったけど,台湾コーヒーって意外に良質みたい。まだ生産量が乏しい反面,だからこそ小規模農園で農薬を極力使わないで,完熟豆を手摘みで収穫していく丁寧さが売りらしい。
 そもそも台湾のコーヒーって,植民地時代に日本が開発したんだって。旧日本領内でコーヒー栽培に最適な場所を探したら,やっぱ一番南の台湾だろってことで国内初の大規模コーヒー農園が開発される。品質向上に試行錯誤を重ねた末,昭和天皇に献上されたこともあるんだそーです。
 戦後しばらく生産量が落ちても,現地台湾人の農園主が大切に守ってきたコーヒー園を,今また台湾政府が売り出しにかかってるって構図らしい。ネット販売とかではちらほら扱ってるとこも出てきてる。
 アフタヌーンティー使いも最高っぽい明星珈琲店。この台湾では貴重なスペースで,成長した台湾珈琲にまた再会したいと思いました。

 空港行きのバス停,やたら新しくなってた。
 ただ125元と値上げ。ここだけの話,なぜか120元で売ってくれたけど。
 手荷物検査,イミグレとやたら高圧的だった気がした。
 今の禁煙政策といい出店の管理政策といい…何かここんとこの台湾は官僚化の進行が著しい空気を感じる。明らかに9か月前より顕著です。ファッショにも似てるけど,違いは目的。90年代以降の自由化の開放感の揺り返しみたいなのが来てるのかも。
 と批判的なのは,この空港,全く喫煙場所がなくて…黙認とか隠れて吸う場所すらないなんて何ちゅー非情な…。こんな厳しい国初めてじゃ!ってゆーか,ほんの数年前まではかなり自由に吸える国だったやんけ!

 空港行きバス車窓から屋台を見る。「大湖草苺」…。イチゴちゃん?
 ああッ!食い損ねてた!
 士林以来この表示,何度となく見かけたのに…やられた!
 台湾には,まだまだ食い損ねてるもんが山ほどあるんじゃ!