外伝09♪~θ(^1^ )HK-File08:其之他

 食のホットな土地。
 その意味では,香港・マカオは東アジア随一だと思う。
 21世紀初めの今現在,瞬間的にホットってだけじゃない。台湾,韓国,タイなどに比べて,ここ百年ほどホットであり続けてきた。熱さに年季が入って,脂の乗り切ったオヤジ的なホットさがある。
 以下,今回咀嚼の十分でなかった食文化の点景を列記する。こいつらも追いかけたらまたスゴい深みを出しそうなモノばかりでした。

▲マカオ フローラベラの免治猪肉

 まずポルトガル料理です。
 マカオの宗主国だったこの国の料理,マカオでも香港でもかなり見かけた。
 マカオ本島の北側,市場のさらに北の住宅街にあったフローラベラ。漢語名:雅豪[女乃]。セレブなオバサンって語感みたい。
免治猪肉 26パタカ
(ライス,フライドエッグ付き)
 気になったんで
エスプレッソ 12パタカ
を追加。
 エスプレッソは並以下。まあこれはイタリアンだろ?ここはポルトガルだからな。
 猪肉。
 知らない食世界だ。
 芋と併せた炒めものみたい。田舎じみた,素朴な食材使い。日本の肉じゃがを思わせる。
 調味料的には,しかしスパイス使いが独特で,何か味わったことのない味覚です。あえて言えばアラブ系のスパイスに似てるか?素朴で薄く,刺激的な味じゃ全然ないのに,しっかり腹に残る感じ。
 ヨーロッパの古い食にイスラムの調味料が入り込んでる気配がある。ただ,スペイン料理のような華やかさはない。イタリアの影響が少ないからなのか?
 ヨーロッパの中ではドイツの田舎料理に似てる気がした。日本人的には不思議な食体系みたいだけど…この1食だけだからよく知らん。

▲益食家粉麺茶餐庁小厨の豆付班[月南]反

 ランチの定食。
 九龍城で通りがかった益食家粉麺茶餐庁小厨で「寄ってきなさい」みたいにお婆ちゃんに手招きされた。何か感じよくて,店の風情も気に入ってしまってフラフラ入ってしまった。
豆付班[月南]反 26HK$
例湯付き
 「反」とゆーのが天ぷらの意味らしい。イカ天と厚揚げの飴煮みたいなやつでした。
 天ぷらだけど極めてあっさり。
 特筆すべきはソース!物凄い豆の味が染み込んでて,口に入れると…重く振動するよな豆の香りが,ごくうっすらと味覚の背景にパアッと広がって,これがモンゴウイカのアッサリした生臭さとコラボする。これは見事と言うしかない。豆付班[月南]ってのが何かの豆味を意味するんでしょうか?ちょっと食ったことのない味覚。
 帰国後,広場の京風という広東料理店を見つけた。ここで黒豆を使ったソースの中華に出くわした。広東では時々使う調理法みたいです。
 薄味中華の迫力みたいなのを実感できる調理法でした。

 佐敦の街角で見つけた恭城柿餅。毎傍10HK$。
 日本語も数詞の多い言語だけど漢語はもっとヒドい。「両」とか「傍」ってのは概念としても分かりにくくて,一食分ほどの意味。
 最初,1個10HK$かと20HK$払うとムチャクチャな量来たんで,慌てて1傍の10HK$で勘弁してもらった。それでも6個ほど来た。
 干し柿です。
 秋の高知で嫌ってくらい食ったモノ。
 ただ,味は微妙に違う。いい意味で素直さがない。最初は飴のような甘味の透明感が,非常に官能的な後味を残して消える。複雑な渋みのハーモニーがこれにかぶさってくる。食感も極めて滑らかで,そのまんまアンになってもいいくらい。
 食材なのか製法なのか?
 ウェブ検索してみて改めて驚いた。漢語のサイトは山ほどヒットするけど日本語のは皆無。曰く――恭城月柿果型美觀,色澤鮮艷,個大皮薄,肉厚無核。鮮柿味甜可口,凍柿清香甜蜜,柿餅 甘柔如飴,形似圓月,肉紅透明…
 まるで本質的な表記がないけど,少なし香港のみならず漢人圏全域で相当知られてるモノらしい。
 ひょっとして?スゴい食材だったんちゃう?…とも思うけど。

▲PALKI INDIAN RESTAURANTの[ロ加][ロ里]羊肉

 香港島の二階建てトラムがエラく気に入ってしまって,東の方まで来てしまった。
 天后。中国の女神に当たる地名だけど,なぜか東南アジアから南アジアの居住者の姿が目立つ土地。
 皇[車橋-木]印度餐庁。英語名PALKI INDIAN RESTAURANT。ランチセットがあったんで入ってみた。
精選午餐 42HK$
C [ロ加][ロ里]羊肉
 店内はそれなりに豪勢。純白のテーブルクロスに暗い暖色の照明が注いでる。ギラギラのサリーのインド人お姉様が水のグラスを運んで来る。
 午餐じゃないメニューでは,80HK$のがいくつかあって,ベジタリアンも58HK$であったんでそっちかなとも思った。でもメニュー的にも肌の色からも,どうも北インド風臭いから羊にした。
 スープはキノコ。いきなりもろ中華だ。
 ナンはまあまあ。おそらくタンドリーがないんだろう。
 でもカリーは本格的。インドの大衆食堂のこてこてマトンカリーじゃなく,ちゃんとしたレストランのスパイス使いで上質っぽい。
 かなり辛い。しかも唐辛子の辛さじゃなく,スパイスのまとわりついた奥深い辛味。いーじゃないの!
 最後に付いてきたレモンティーにも驚く。紅茶味がしっかりしてる。何かレモンの香りもずっしりキテる。香港の紅茶ってこんな特別なのはなんでだ?

 香港でカレー?
 まあ,よく考えたらここは英国のってより東インド会社の植民地だったわけで,紅茶と同じくインド料理が美味い地政的位置にはあるわけで。
 大埔墟でもう一軒行ってみた。沙士亜印度餐庁。
午餐 [ロ加][ロ+ガンダレ+里]羊肉 30HK$
 また羊。やはり北インド臭い。パキスタンかもとも思えた。
 土曜日でもあり,店内はやや混んでる。雰囲気はやはり豪勢だけど,若いカップルやトレパン姿の中年夫婦と客層は大衆的。
 来た羊は――かなりイケてる!ここのはスパイス以上に羊が生きてる。いや,羊さん自体はもちろん死んでるけど,あの独特の匂いがスパイスにガッチリ一体化して絡まって,だけど本場のほどギー(油)のギトギト感はなく広東的にアッサリまとまってて。
 昨日の天后よりさらに上!…どころか,これまで食った羊カレーで一番かも知れん。素晴らしいぞ香港カレー!