外伝09♪~θ(^1^ )天后華麗編


 え…え…エアコンがウルサい!
 ガリガリガリガリッと物凄い音が夜通し!あんまりウルサいから,ついに夜中に元電源を落とした。でもなぜかまだヤカマシイんですけど一体どーゆー設備不良なんだよう!
 朝明るくなってみたら,大雨でした。稲妻までパチパチ光ってる。
 ウルサい音は,アルミサッシに打ちつける雨粒の音でした。増築に増築を重ねてるっぽいから不規則にアルミ使ってて,放水ルートもあんまり設計されてないからなんだろな。
 長くなさそうな降り方です。窓外を見やりつつ,プーアル茶を飲みながらしばし雨待ちする先達広場ビル11階の我が部屋。
 あー,この部屋いーわ!日本円で1泊3千円の沖縄辺りの安宿,あーゆー感じ。

 この旅行で初めてだ。朝こんなゆっくり過ごしたのは。
 傘をさすかささないか程度の小降りになった。割と平気で濡れてる小粋な香港人を真似て,街に出たのが9時前。
 出勤ラッシュがこの辺りの時間らしい。中環までは超はつかないまでも満員電車状態。ただこの状況でも皆さん平気でケータイご利用中。イヤホン付きを使ってる人が多いんで,一見独り言喋っとる客だらけの満員車内で──生理的に怖いんですけど。
 物静かな人も多いんだが,香港人の中には喋ってないと死ぬんちゃう?って感じの明石家サンマ段階の病状の人が約1割はいる(テキトー)。
 何度目かの銅鑼湾駅へ。
 A出口の時代広場(タイムズスクウェア)までは,モノクロの「izzue」なる広告が左右にずーと連なってる。イタリアの地下鉄みたいな黒基調の通路は一種異様。
 Das Guteなるパン屋有。値は高め。けど,本格的でパケットからプリッツェルまである。試しに小さめのクロワッサンを買ってみたら,ちゃんと正統派の味。小麦の味わいが主体で卵は感じられず,バターの香りを控え目に纏わせてる。
 あと,チェーン店らしいけどDelifranceって店も,どこで見かけても賑わってる。Toast Boxってチェーンもこの路線でウケてるみたい。
 このタイムズスクウェア辺り,どうも客層が違う。
 いい!公衆トイレも多いし!それではちょっと放出…朝からプーアル飲み過ぎたかも。


 本日の朝飲茶は,タイムズスクエアのちょい山手,鳳城酒家。
濃湯[サ/見]菜水餃 8.8HK$
香煎軟腸粉配皮蛋痩肉粥 12.8HK$
【→File09飲茶参照】
 人心地がついた腹で[足包]馬地までトラムで足を伸ばす。「[足包]馬」は競馬らしいけど,英語名のHappy Valleyの方が似合う落ち着きある斜面の道。
 「二階建てトラムに乗ろう」オプショナルみたいなのがあるのか?日本人のツアー団体がトラムにわっと乗り込んだ。あまりの恐怖感に一つ遅れたトラムに乗ることに。2階席から前の車両を見ると,彼ら,2階部を実力で占拠しちゃったっぽい。
 全く…血も涙もない。住民から見たら,時代劇で言うところの野武士の集団。平和な街の無法者集団として,当局では警戒を呼びかけている。

 完全に――二階建てトラムにハマってしまった。
 銅鑼湾から東へ,全然行ったことないけど乗ってみる。
 最初は下車のタイミングを逃さしそうで,怖くて二階に上がれなかったけど,もう今やバスでもトラムでも,座席なくても二階に上がる。位置確認が容易だし,景色がよくて爽快。でもそれより何より,人間模様がメチャク楽しい。とかくせわしない香港ピープルがゆったり過ごしてる貴重な場所だし,外人が2階に乗りたがるみたいで変な行動してる輩が必ずいやがる…っていうか,わしもその一人か?
 今回もタイ人の女性旅行者とお近づきになった。と書くと非常に嬉しい出来事のようだけど,「ここどの辺?」「どこで降りればいいの?」「わあアレ凄いわあ」と観光気分で不安がったり舞い上がったり大変なことになっとる。もー外人旅行者はせわしなくていかんぜよ…ってそれもわしか?
 先述のごとく車内アナウンスも駅名表示もない。地図で公園とかランドマークや道の曲がりを見て適当に降りたら,まあ大体目的の天后辺りでした。
 時々山手方面にぐんぐん入ってく路線が混ざってるから行き先表示に気をつけた方がいいみたいだけど,メジャー路線は海岸線沿いだから,地下鉄駅に遠い場所で降り違えても逆方向に乗るだけ。料金は2HK$,30円ほどだから騒ぐよなことにゃならん。
 日本の路面電車にも是非入れて!送電線の工事費は観光収入で還元されるはずよ?

 天后の街並みはゴチャゴチャしてていい感じ。中国的な猥雑さじゃなく,東南アジアの一種垢抜けた空虚さがある。
 [土唐]観にしてもこのエリアにしても,香港の下町ってかなり彩り豊か。九龍側の内陸部みたいなモロの住宅地はともかく,海岸線は面白味がありそう。
 皇[車橋-木]印度餐庁(英語名:PALKI INDIAN RESTAURANT)でカレーを食う。
精選午餐42HK$
C [ロ加][ロ里]羊肉
【→File08その他参照】
 サリーからでっぷり腹肉をはみ出させたインド人奥様やビーチボーイ風のタイ人兄ちゃんまで,とにかく人種が多彩。店も東南アジアから南アジアまで各種ごちゃまぜの下町風情が面白くて海側をぶらついてたら,[火包]台山の駅前まで来てたらしい。
 スタバ発見。香港にもやたら数はあるけど,あんまり人が入ってるのを見ない。試しに入ってエスプレッソ頼んでみたら──ダブルで17HK$?250円行かない…つまり日本よりやや安い。中環なら屋台の[女乃]茶でも20HK$だぞ?
 カウンターを見てみると,スイーツのガラスケースが日本より一回りでかい。
 香港人にとってカフェとは,がっちりしたお茶受け食事をとる場所。飲み物だけの,日本的な意味での喫茶店は少ないわけだ。後者の典型であるスタバの立場,香港ではツラいんでしょね。少なくとも当分の間は。
 当然,スタバほど知名度のない「喫茶店」は生存を許されないんでしょう。
 現にこの駅前スタバも,今わし以外いなくなってます。むしろ外国人には利用価値高いかも。
 みんなで応援しよう!香港のスタバ!もちろんトイレもあるぞ!

 結局北角までぶらついてしまった。
 北角駅の北西側に食べ物や衣類の店舗型マーケットが連なってた。懸案だった焼味を購入してみる。3種セットで22HK$。パックに収まりきらんくらいの量。
 今の役所仕事が介護関係だからか,このエリア,「養老院」の看板がやたら目についた。今のわしの宿みたく,雑居ビルの中にある。複数階に展開してるようだが,この中にギュウギュウに押し込んでるんだろう。同じく幼稚園もこんな感じで営業してるのを見かける。
 福祉関係,あんまり充実してそうもない。

 銅鑼等湾に帰ってきてぶらぶら。
 軒尼詩道の高架下で見かけたんだけど,3人ほどやたらパンパンしてるお婆ちゃん。パンパン音がデカ過ぎて近づかんと分からんかったが,客を前に座らせて,何かしら小声で呪文唱えてる。叩いてるのは,何か書いた紙切れ。
 悪霊か何かのヨリシロだろか。としたら香港版のイタコ?
 ひとしきりパンパンし終わったお婆ちゃん,唐突にその紙切れに火をつけてしまった。ぼうぼう炎を吹くそいつを,無造作にドラム缶の中にポイ。
 ヒドい…。無茶苦茶にパンパンぶたれた挙げ句に燃やされて捨てられて。香港の悪霊に人権はないのか!
 まあ日本国憲法にも悪霊に優しい条項はないけれど…そう言えば,日本の八百万の神様ワールドでは,イザナミにしてもカクツチにしても,根の国側の神様も割と平気で活躍しとる。沖縄や東南アジアのピーとかの妖怪ランドではほとんど主役グラス。沖縄の耳切坊主なんか,泣いてるってだけで幼児の耳を切っちゃう児童虐待法上許されざる妖怪種族なのに,ウチナンチュにはお茶目な奴よのう的に可愛がってもらってる。
 南アジアのヒンドゥー神になると,最高神の反面が極悪神だったりする。シヴァは創造神であると同時に破壊神だし,鬼子母神のルーツとされるドゥルガーは手にかけた子供の頭をわざわざ首飾りにしてる物好きな女神だけど熱狂的に信仰されてる。
 悪い奴は叩きのめす発想は,漢民族とかゲルマン民族の観念みたい。騎馬民族由来のということなんだろか。
 ガード下のお婆ちゃん,既に次のお客のヨリシロのパンパンに移ってます。

 消防車が5台,物凄いサイレンを響かせて湾[イ子]の方へ走ってく。でも…まだ昼過ぎ,ラッシュ時には程遠いんだが,車両に加えて2階建てバスやらトラムやらで道路は完全に塞がってる。消防車が声の限りにワンワン叫べども,全然動けないでいる。
 悪者を探すとすれば…やっぱりこの狭い道でスペースを占領してるトラムなんだろな。

 銅鑼湾駅から海側には謝斐道という大きな繁華街がある。夜賑わいそうな店が目立つ。
 蛇羹[火敦]湯 蛇王二って店で飯を食ってみる。
蛇汁浸鶏飯 32HK$
【→File03漢方茶参照】
 続けてスイーツ。木[米康][舌甘]品屋って店。
[ロ査][ロ乍]紫[米需]米(熱)19HK$
【→File05香港スイーツ参照】

 湾[イ子]に星街って名前の裏道を見つけた。辺りには月街とか天体系の名称が多く,気になって寄ってみたが…坂がきついだけで半分以上が工事中みたいな印象。
 帰りついでに快楽餅店でを1個だけ。本日は花生将飽ってやつ。
 やはり美味い!【→File01パン参照】

 夕方,香港島のずっと東の[魚則]魚桶駅まで行ってみた。
 [米唐]廠街ってとこにバーの集合体みたいな場所があると聞いたんだが。
 一応金曜日の夜…確かにショットバーは多い。通りの一部に10店舗ほど連なってる。東南アジアにありがちで,そう言えば香港では他で見ない光景。その外側を,普通の小[ロ乞]店も取り巻く。そんな,自然形成された雰囲気のストリート。
 ただまあ,雨だからか?人出はまばらで猥雑さも熱気もない。特に東南アジアのアレと比べるとね…。
 スタバでエスプレッソあおって帰ろ。
 隣に太古坊(Taikoo Place)なる巨大なショッピングモールもオープンしてる。太古は次の鉄道駅だから,両駅間に跨る規模。これを目当てに来た方がいいかも。

 それはともかく!
 このスタバ,トイレがない!
 ヤバい!
 狭い店内を見回す限りあるわけないんだが,とりあえず売り場のお姉さんに聞いてみた。すると,通路の突き当たりを指差して「イーウージウリン」と言い,手元の紙に「#」マークを書く。
 何のこっちゃ??
 とにかく行ってみたら,確かにトイレがある。けど開かない。
 あ…ノブのところに番号入力盤。
 「#」を押す。やはり開かない…あっそうか!「イーウージウリン」は番号の漢語読みか!
 押すと緑のランプが初めて点灯して,押すとドアが開いた。
 しかし,ここまでやるか香港。やはり浮浪者の住み着き防止か?トイレに住みたがる奴いねえだろ?
 …いる!思い出した。1990年頃の大陸中国には,予約なしで列車に乗って目的地までトイレを占拠して個室にしちゃう奴がいた!
 あーゆー奴が,最近まで香港にもいたってことなのか?
 まあええやん。とにかく,つつがなく放水したし。さて帰ろ帰ろ。ドアを押す。
 ──開かない。
 えええッ!開かんやないけ!
 焦ってガチガチしてもびくともせん。押しても引いても動く気配なし。なぜ?なぜなの?わし,ここで一夜を明かすの?あるいは,ここで華々しく最後を飾るのか?あまり華々しくないけど,とにかくヒ~ンである。
 ダメじゃ!!何しても開かんもんは開かん!!
 まあ…共同トイレなんだから永久に誰も来んことはない。それまで待つしかないか?
 ふと,ノブの隣の記載のないボタンに気づいた。日本なら省エネ用の消灯スイッチだけど…香港人がそんなの使うか?
 試しに押してみる。
 電気が消える代わりに,ドアのどこかでガチッと音がした。
 開いた…!!
 こうしてわしは,決死の奮闘により[魚則]魚桶から生還したんである。まあ掛け値のない実力の賜物と言えよう。
 それで得たものは尿意の解消に過ぎんのでは?といった意見もあろうが本人は努力しているので今は暖かく見守ることが肝要だ。

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 紅茶が美味いと聞いた租[ガンダレ+比]地街の港式餐庁は,その一帯を含めて翠園大酒店に買い占められとるらしい。桁外れの不動産価格のこの付近,店舗の新陳代謝も激しいんだろ。
 付近に移設されてないかとウロウロしてたら,裏手の方に素食の定食屋を見つけた。曜日ごとに違うメニュー設定をしてるらしい。夜もやってるみたいだけど,このランチの構成見てみたいな。それに結局,香港で素食はまだ食えてない。日曜は休みで11時から14時半までらしいから,明日来てみよ。
 で…[シ占][イ子]記でラーメン食う。
招牌雲呑麺 17HK$
郊外油菜 10HK$
【→File02広東麺参照】
 ラーメンもだけど,久しぶりの野菜に満足。
 既に真っ暗。本日のシメに蘭芳園で夜のミルクティーを一杯。
馳名[糸糸][ネ蔑][女乃]茶 14HK$
【→File06[女乃]茶参照】