外伝10 弗 弗the sixth day弗 NY city as the earth itself

▲SquareDinerのEgg Benedict

 敵の「やまと」を利用してでも強いアメリカを守り抜いたベネディクト大統領であるが,わしは今ベネディクトを食ってるとこである。
Egg Benedict $6.00
 マフィンは多分イングリッシュ系。その横半分切りに目玉焼きとチーズとベーコンとを挟んだガッツリ系サンドイッチ。皿には他に,炒めたポテトとオニオンが山ほど盛られてる。満足感はスゴいけど,まあそれなりの味か?
 マンハッタンの朝。
 W.Broadway。踊りたくなる街である。
 SquareDiner,最も典型的なダイナーです。
 区画された20ほどの席。席は木製のバーで仕切られたボックス。ブロードウェイ通りに開かれた窓はツタで縁取られ,そこから爽やかに陽光が注ぎ込む。沖縄のAサインを思い出した。
 客層はビジネスマンが半分。
 コーヒーはやっぱ薄い。ただ,それはそれなりに旨味があると感じられ始めました。軽い苦みの心地よい程良さってゆーか。
 今朝は朝7時に出発。出勤するアフリカ系やイエロー,アラブ系に混ざってマンハッタンに流されてきました。
 ブルックリン橋から下降してきたマンハッタンの建造物が,曙光の霧海中に目覚めつつありました。

 6番で14st.Union spuareへ。
 初めて地下鉄駅でエスカレーターに乗った。構造的に古いからか,この後もほぼ見かけなかった。福祉的にはあまり優しい乗り物じゃない。
 同じ理由からだろう。ケータイは地上に出ないとアンテナが立たないらしい。ホームではギリギリ1本立つ程度の通信状態。
 列車は14st.に着いた。が,ドアが開かない。車内,割と平然。よくある事みたい。3分は経った頃,車両の一箇所だけ開いた。車両間の移動が出来ないから,こーゆー時は致命的。
 日本なら苦情殺到しそうなトラブルは,結構当たり前なニューヨーク地下鉄みたい。

 とにかくユニオン・スクエアに来た!
 とりあえず,ここに真っ先に来たかったんである。
 Union square greenmrkket。昔の本には水曜市だけと書かれてるけど,今は週4回開かれてる市場です。
 最初は少しがっかりした。店数は100足らず。いわゆる市場の雑然とした感じが全くない。ましてアジア的な猥雑さや不潔さは皆無。お行儀のいいフリマじゃないの?
 …と二十歳頃に来たらそれで終わってたと思います。
 しかし!
 品を見て回ると――これは…このこだわりは本格的じゃ!
 パン,野菜,果物,肉,チーズ,魚とチャンネルは確かに少ない。ただし,それぞれ店の目玉売りみたいな商品を固めて出してる雰囲気。中にはせいぜい5種類ほどしか選べないチーズ屋もある。大抵味見が出来て,相当の店が飛び上がるほど…美味い!
 技巧的ではない。素材のパワーが違うんよ!
 固定客もかなりいる雰囲気。
 人種も面白い。売り子にはイエローや南アジア系はかなりいるのに,なぜかアフリカ系だけは皆無。市場の空気への馴染みの度合いか?
 さて,購入したのは――詳細は写真集参照。
■Paffenroth gardens
(94-95little york rd.,warwick,NY)
Rainbow carrot 1.75
■njCheese
(LongValley,NJ)
Handmade cheese $4.50
■Buy local Apples New york state
Macintosh $1.15
crisp tart $1.50
■Becket,Massachusetts
Berkshire Berries
Rhubarb Jam $4
■Ingredients Rhubarb,Sugar,Pectin
Carrot raisin cookies 2.75
Granberry walnut square 2.25
■Windfall farms
Mesclum $3
Rassubelly $5

 初めて,アメリカの食い物の懐の深さに接触したと思う。
 リンゴにせよ野菜にせよ,種類の多彩さは日本の比じゃない。アメリカの食文化について語られる,そしてわし自身ここまで感じてきた貧しさと,全然連動しない。
 この土地には隠された顔がある。それは何で,なぜ隠されたのか?
 美味に酔いしれつつ,そんな問いに困惑してきてました。

 しかし何だ…今日になって3回道を聞かれたぞ?
 しかもついさっきの一人は,外見も英語の発音も,どー見ても生粋のアメリカ人だぞ?
 地下鉄では,メトロカード通せずに難儀しとる韓国系っぽいお婆ちゃんにガイドして差し上げました。
  …わしもまだ24時間経ってないんだが…。そんなに順応しとるかあ?――と,初めて自分の外見をチェックしてみますと。
 年期の入ったTシャツとポケットいっぱいの作業ズボンで,肩には葉のたっぷりついた人参入りのトートバック。
 どー見ても地元民やがな。
 外見と言えば,皆さん厚着だ。観光客っぽい方々はわしも含めてTシャツ1枚で汗かいてんのに,地元人はジャケット着てんのは当たり前,中にはジャンバー姿まで。
 確かに…猛暑の日本よりは涼しい肌心地。昨日までのニューオーリンズに比べると,比較にならんほど気温は下がってますけど…あんたら何で暑くないのじゃ?

▲Burger Jointのチーズバーガー

 人参抱えたTシャツ姿てニューヨークの超高級ホテル内をうろつくのは,やや勇気が必要でした。
 6番街56-57st.,The Parker Meridien Hotel。訪ねてきたのはハンバーガーの店…ってこんなとこにあるのかあ?間違いじゃないか!?
 ホテルマンに聞くのも躊躇われるんで,1階フロアを2往復した。ふと,チェックインカウンターの右奥に灯るバーガーのネオンを発見する。
 細い通路を折れると,やっとBurger Jointとの店名が見えた…。分かんねーだろ!
 店内は暗くて狭い。思いっきり猥雑な空間。夜は入る勇気が出ないよな場所だけど,ホテル内だから実際危険はない。こーゆー場所を店内に作るホテルのスタンス,これ何なんだろ?コレがアメリカだ!って誇りか?
 チーズバーガーを注文。値段は6$程度。
 パンズも野菜も大したことないな。
 と思って食ってたら…これ,パテがスゴい!レバーみたいな図太い臭いの肉味がムーンと口に満ちる。
 そう気づいた時には,ピクルスの旨さにも驚き始めた。酸っぱさも青臭さもほど良い。
 そして,それらのバックとしては,野菜もトマトも,ややスカスカのパンズも丁度いい。つまり全体の完成度が物凄いわけです!
 最近通ってる岡山のCozyと,これは互角以上の味。
 しかし,このバランス感覚って…こんな芸当がアメリカに有り得るんか?ドバッとガッツリってだけじゃないファーストフード,こんなん初体験じゃ!何て捉えたらいーのか…とにかく,アメリカのファーストフード全部をマクドと同一視して蔑むのは,非常に浅はかな認識みたい。
 このホテル,便所(Rest roomと言わないと通じないらしい)を尋ねたら,割とにこやかに貸してくれた。入り口に喫煙所もある。この街ではムチャクチャ有り難い存在!

 昨日降り間違ったように,地下鉄は鈍行と急行があるらしい。鈍行はall stationと表示があるか,何もないかどっちか。だけど,今乗ったDEF共通路線だとFが鈍行と決まってるようだ。これを覚えたら間違いは減る。急行はexpressと表示があるが,並行乗り入れ路線の場合,例えばDには急行表示がない。逆にこれが怖い。
 駅には,次の駅の表示はない。車内アナウンスも前の駅を出ないと次の駅名を告げない。車内に伝言表示がない路線もあるから…やはり英語のヒアリング力を鍛えるしかないらしい。
 けど,どーも駅名の一部しかアナウンスが告げない場合もある。今出た車内表示は「W4St」。…何やて?駅名の後ろのWash squ.を略してるわけで…その略したとこの方が日本人的には分かりやすいぞ?ちなみに今から降りるのは「2AV」。「2番街」の意味。
 電車内で募金とか物売りとかする奴,結構いるようだ。この点,日本より韓国に共通しとる。

 Allen st.で「粥之家」って店を発見!
 皮蛋痩肉粥$2.50!安い!…でも抑えて今日はピクルスじゃ!
 対面に山東鍋貼も発見!鍋貼だぞ鍋貼(焼餃子)!でも抑えて抑えて。まだ先は6日もあるのじゃ。
 3軒あるはずのユダヤ人街のピクルスの店,1軒だけ発見。
The Pickles Guys
コールスロー
ミックスベジタブルス
各1/2pints,計$5
 これ…予想以上!!コールスローってこれが本物なんやね!ザウアークラウトの何でもあり版みたいな,野菜の地味を生かす絶妙な酸味に刮目!

▲The Pickles Guysのコールスローとミックスベジタブルス

 気になったのは,この店のすぐそばまで漢字の看板の洪水地帯だったこと。
 道行く人から見て確かにユダヤ人街ではあるけど,非常に微妙な住み分けです。すぐそばを今や地球中を席巻する中国人観光客の濁流がある。
 中華街以外でも突然中国語が溢れる地域がある。数分置きに,行き交う人種が変わっていく。
 実感――この街が,地球なのだ。

 クイーンズに入ってみることにする。
 42st.でDから乗り換え,5AVから7番で終点Flushing main sta.まで。
 …のはずが,逆に乗ってタイムズスクエアに行ってしまったけど,マンハッタンなら慌てる必要はなさそう。すぐ逆の列車が来る。
 なお,今んとこタイムズスクエアも自由の女神も旅程にない。最終日までに…暇になったら行くかもしれん。
 マンハッタンから東へ。クイーンズに入ると電車は地上に出た。
 鈍行。急行はかなり駅を飛ばす。
 クイーンズからブルックリンまで直接結ぶ便はないみたい。地下鉄で帰るなら一度マンハッタンに出た方がいい。Grand Central乗換で4番がUticaまで直行するが,その位同じロングアイランド内の2地域は交流がないエリアらしい。
 74Street-Broadway通過。ポリスが乗り込む。巡回らしい。
 ブルックリンとは車窓違う。施設が近代的だし,窓外の街並みも緑が多くて整然。南部やブルックリンの集合住宅的な危なっかしい空気無。
 車内の空気も丸で別。客層はアジア系が圧倒的。イエローだけじゃなく,半分はインド系。アフリカ系はむしろ少数。
 111St.。客数がまばらになる。ヤバい空気はない。でかい球場みたいな施設が見えてる。
 15時05分ブラッシング着。遠目,タイみたいな街並み。

 Main plazaという雑居ビルには「韓式[テヘン+半]飯$6」って表示有。ビビンバのことらしい。
 Queens CrossingってビルにはParis Bagudtteも開店中。ハングルの看板も出てて,中は韓国系らしき老若男女で一杯!…その証拠に,表にタバコ吸ってる奴が連なってる。
 ビル内のFood Courtで休憩してみる。
sbarro
Piza Vegtable 3.50
 かなりイケた。sbarroってこんなにウマかったっけ?

▲sbarroのPiza Vegtable

 一緒に,Cafe jojoでOrganic coffee(漢語表記:有機珈琲)$1.00も注文。
 試しに「ヨウチカーフェイ,シャオベイ(Small)ライイーガ(一杯)」と中国語で注文。驚くでもなく「有牛[女乃]?(ミルクは)」と来た。「不要」と答えて,最後まで漢語で会話が終わってしまう。
 珈琲はまあまあ。でも,とにかく薄くない珈琲にホッとする。
 トイレを借りると,裏手には味干拉麺も入ってた。カウンター席でアフリカ系の若者が碗を両手に汁を啜っとる。
 こんな感じで――このブラッシング,白人もアフリカ系もそれなりに生活者らしき姿で歩いてる。治安がいいんだろうか,こんなに人種が混ざってる光景は,地球上にも他にないかも。

 帰路。7番からNに乗り換えると,途端にアフリカ系が増え,アジア系が激減。ゼロではないけど数えるほどになる。
 36th st.下車。もう一つ訪れたかった人種チャンプル地帯,アストリアです。
 インド系と北欧系の少女がきゃあきゃあ騒ぎながら走ってきます。
 デリでタバコ購入。適当に指差したら$10超えてた。おばちゃんに「安いのない?」とボヤいてみたら「これなら$2.50」と奥から出す。「OK!」と即決。「You know this?」と不審がるおばちゃんに「No!But I try!」と強がってみる。ふとおばちゃんの手元に目を落とす。広げてあるのはヒンドゥー語の新聞。
 フラッシングのパターンはアジアでは何度か見た。でも,ここの光景は…バンコクのスクンビットが近いけど,ちょっと経験がない。
 36Av.が店舗展開の中心。住居はこの一円に至るみたい。
 ベネズエリアン・フードって看板を掲げる定食屋。
 ブラジル行がほぼ専門らしい旅行代理店。
 「リオ」という名のスーパーマーケット。
 アラビック文字の食料品の小店。
 コロナビールのケースが野積みのキューバ風酒場。
 こうした国籍バラバラの店が,一件整然と並んでる。
 帰り道には,ダーバン巻いたインド人オヤジが,アフリカ系のでっぷり娘と口論中。
 違和感に満ちた光景。いや,うまく出来てるって意味で…それは3つほどの側面がある。
 一つは,ここに固まった人種はどうカテゴライズされるかって言えば――イエローとアフリカ系以外のマイノリティ。
 次に,ここがフラッシングに比べて遥かに豊かな生活空間に見えたこと。
 最後に。この街並みは明らかにN・W号線の36Av.駅の駅前ストリートとして形成されてて,わしが乗り降りしたフラッシングから乗り換え易いR・V線からは歩ける距離だけど…導線が明らかに切れてる。つまり,同じクイーンズでも,フラッシングとこのエリアは相互交流しにくい。クイーンズとブルックリンの関係と似た状況なわけで――各人種エリアがマンハッタンと同心円状に結ばれてるけど,相互のラインは絶たれてる。東京や大阪の環状線みたいな線が,多分意図的に断たれてる。
 これは政治的に相当にクレバーだ。性悪説的な戦略です。つまり交通網設計による分割統治――。
 こうした意味でも,繰り返したい。この街こそ,地球そのものなのだと。

▲ブルックリンの住宅街に迫る夕暮れ