早朝6時半,宿の空港リムジンのミニバンで出発する。
薄暮。
とりあえず,あと4日このNWK(ニューアーク)でステイするわけだから,マンハッタンへの道と所要時間を確認しときたい。
昨夜早く寝たから,5時ころ目が覚めてしまった。
起きたはいーけど,何も考えずにベットに倒れちゃったから…ははは,さて,今日どーしよう?って感じ。
ガイドブックを投げやりに眺めてたら…気付く。NWK発のNJT(ニュージャージー・トランジット)の列車は,マンハッタンの中央駅,PEN(ペンシルベニア)に直接乗り入れてる?
この直行便を使えば,ここって…昨日来た時ほど時間かからんのじゃない?――と思いついてしまうと,とにかく早く出発して確認してみたくなった。
ホテルのリムジンはNJの駅じゃなくて,やはりP4に着く。Rail link St.と表示のある駅までAir trainで一駅。これは昨日確認した通り無料。
走り出した空港トレインから周辺を望見。やはりこのエリア,歩ける場所じゃない。車だらけ,ハイウェイだらけの宇宙基地みたいな造り。住宅街には店はなく,治安的にもちょっと足を踏み入れにくそう。
Rail link St.のTrackAから07時11分発のNewYork-SECってのに乗ってみることにする。「SEC」って何だ?予想がつかんが――チケットは自販機でNewYork-PENってアイコンを選択した。「PEN」はペンシルベニア駅じゃないかな?
…さてどこに着くのか?何分位かな?
ちなみに,次のSEC行きは07時21分。毎朝,このどっちかに乗ることになるのかね?ただの「NewYork」行きってのも07時54分にある。これはどこに着くの?全然分からん。
歩き方なんかでも,この辺は極端に記述が薄い。まあ利用者いないだろから当たり前っちゃ当たり前だが…。
定刻,列車が入ってきた。乗り込んで適当に座る。指定席とか自由席とかが心配なんで,車掌に「I sit hear,OK?」と確認しとくと,「OK」と軽く流してチケットを取り上げてく。えっ?それでいーのか?つーか,チケット取られちゃって駅の改札抜けれるの?前の席のフックに引っかかってた升目が付いた紙を取ってったけど,それは何よ?
もー全く分かりませんけど?…ま,今日はマンハッタンに着けりゃ文句ないっす…。
一つ目の駅に止まった。窓から構内を見れど駅名が確認できず。
間もなく2つ目の駅,駅名表示は「Secoucus」?うーん?さっきの駅は風景的には昨日の車窓と似てるけど…これは,見覚えない駅名?
07時35分,トンネルに入る。長い。…ってことはハドソンリバーをくぐってるのか?
07時40分,何か…地下のスゴく広い空間に入ってきました。どこよ?構内の出口表示がある。「7ave. and W32St.」とか…ってことは,もうマンハッタン?
どーもペンシルベニア・ステーションってのが,ここらしい。
30分強?なんや,えらい早かった!これなら全然負担じゃない,楽勝じゃんNWKステイ!
すっかり足取り軽く,地上へ。
自分の出てきた建物見て初めて気付く。どーも…今出て来た建物がマディソン・スクエア・ガーデンだったらしい。
W32,西32番街を東へ歩き始める。
こんな中心街がコリアンタウン化してると聞いて来てみたんだけど…確かにハングルが多い。けどそれより,店がヒドい!Red mango開店中!Paris baguetteも発見!しかも「7days24h」表示の店ばっか!
メニューを見ると,ランチセットにビビンバ&チゲとかスンドゥブとかまである。
その中に,なぜかすき焼きや寿司も混ざってるのが笑える。
パークアベニューの33st.駅から,6番でCity hallへ。
朝の地下鉄車内,通勤サラリーマン多し。新聞広げて読みふける。東京とかより遥かに空いてるのはなぜ?
このCity hallが6番の終点みたい。…って大分アナウンスが聞き取れるようにはなってきたがや。
City Hallにはグリマ開催の情報を聞いてきたんだが,見当たらず。
続いて向かったTomas St.でもそれらしきもの発見できず。なぜじゃあ?
この辺り,自分が出て来たシティホールとか連邦ビルとか,当たり前にばーんと出現する。
景気づけにスタバでドピオ引っ掛け,Aトレインで次のグリマ,34st.8ave.へ。
…ってAトレイン?…で行こう?
わし,歌になるよなのに乗ってんのか?確かにアフリカ系比率,さっきの6番よりべらぼうに高い。
▲Murry’s Bagelsのベーグル(Creamcheese Veg.)
8ave.でベーグルを買う。
Murry’s Bagels
Creamcheese Veg.$3.50
今朝何も食ってないんで,ちょっと立ち寄っただけ。
…の,つもりだったんだが!
朝飯時だったのか,それとも本気の人気店なのか,既に15人以上の列。とにかく並んで,後は言われるがままに受け答えしてたら,最後にはこいつをゲットできた。
カウンターで口に入れる。
むふう!
この味…本当にパンなのか?
これまでのパン食の経験からは類推不能の麦の香り――むうんとした,軽やかな臭みとでも言うべき味覚が,中華のマントウに似たムッチリの歯触りの中から立ち上ってく。これがクリームチーズの,同じく乳臭さと滑らかな歯触りと醸す重層的な味わいは…これは並ぶわな!
ニューヨークのベーグル,確かに聞くけど――こんなに独自のワールドを築いてるもんだったんか!?
動く列の最中にサーバーから掴み取ったTea bluberryのベットボトル。これも,美味い!こんなハーブティー,日本でもあったらいーのに…とメーカーを見たら。
日本人があんま飲まないから売らないだけみたい。
ベットをよく見りゃハッキリと四つ葉マークが印刷されてて…横にアルファベットで5文字。
「ITO EN」。
▲Casa Havanaのサンドイッチ(Cuban Sandwich)
W19st.まで歩いて,Casa Havanaなる店のカウンターに陣取る。
朝飯ベーグルの衝撃から欲が出てきた。サンドイッチ類はどーよ?
薄暗く,朝からネオンが灯った怪しい雰囲気。スペイン語のビートの効いたサンバのナンバーがガンガンに響いてる。
怪しいぞ!
追い討ちかけるよに,臨席に警官が2人やってきて座る。店中が明らかに胡麻すりまくっとる。どーも…映画や漫画に出て来る,巡回中に店主にたかってる図みたいに見えるけど…。ってゆーか,金払わずにドスの効いた「Thanks!!」を言い放って去る辺り,もうソレとしか思えんけど…。
全く…役人ってヤダね~。あっワシもか?
Cuban Sandwich $5.75
パニーノの焼き過ぎみたいなパン生地に,ハムとチキン,ピクルスが挟んである。味付けはホット。チキンがそれだけじゃパサパサでムッとくる凶暴な匂い。ホクホク感のない,和食なら最も避けるべき状態のチキンなのに,ピクルスの旨さ,パニーノの焦げ味と合わさって…これが妙に食わせるんである。
14st.からCトレインで96st.へ。
と思ったけど,Cがなかなか来ない。Aトレインで125st.にいきなり入ることに。
42st.駅。クラシックギターを持ったオヤジがおもむろに乗り込んできて――前口上何もなし。いきなりラテンの伝統歌謡みたいなんを,とんでもない大声でズンドコ情感たっぷしに歌いあげ初めた。
さあ…歌った後どーするつもりだ?
あり?そのまんま隣の車両へ去っていった?
――単に歌いたかったんかい?
うーむ!さすがは人間の坩堝ニューヨーク,難解である。
皆さんそうするみたいなんで,真似をして,59St.で1に乗り換えてみる。
なるほど。123番の数字トレインとABCのアルファベットのトレインとは,客層も安全度も異なる沿線みたいです。ただ,1番は96st.までしか行かないから,グリマを先攻しよう。
え!?別にハレム入りにビビってるわけではないぞ。偶然の道行きに過ぎないぞ。
地下鉄を上がるとBroadwayと96st.交差点に出る。
スペイン語聞こえる比率,50%を超えとります。
正午を回ってる。97st.のアムステルダム通りから西を封鎖した路面で,学生らしき集団がアメフトしてる。昼休みだけ校庭になっちゃう道路らしい。日本じゃ交通法上絶対ダメだけど…なるほど手ではあるよな。
▲アムステルダム&コロンブスのグリマでパン購入(The ultimate whole wheat)
アムステルダムとコロンブスの両通りにまだがる場所に…三度目の正直,ここのグリマは開催中!
いい!
ユニオンほど学園祭色はなくて自然な風情だけど,ボールディングよりは比べ物にならん店数の多さ。――品は写真集で詳述しやす。
このグリマ,カサノヴァが響き渡ってます。何とナマ・ヴォイス!物凄く上手い,しかも超美人の歌姫がギターをかき鳴らしては,道行く人に妖しげな視線を送る。ちょっと意識し過ぎだけど,とにかくしばし聞き惚れるよなムチャクチャな美声!
2番の地下鉄に乗車。ああっ,とうとうハーレムじゃ…って,いやいや全然ビビっちゃいない。平然とした面もちで116st.へ移動するわしである。
車内,今度は菓子売りが出現。商魂は認めるが…ショートトリップのこの路線じゃあ,売れんだろ?っつーか,地下鉄車内って飲み食いしていーのか?
▲Emx Rurth’sでコーヒー&ホットケーキ(The Carl S.Redding)
116st.駅,地上出口から初めてのハーレムに出る。
あああッ,ついに来てしまった!
毛頭ビビってないのであるが,すぐそばの「Emx Rurth’s」にコスコスと入る。何事にも,助走というものは必要だ。
けど…助走どころか…この店がまさにハーレムそのもの!
満席近いこじんまりした店内には,白も黄色もほとんどいない。ウェイターの態度はビシッと折り目正しいんだけど,何ともドスが効いてる。
んでもってメニューが,全品アフリカ系の有名人の名前。ワケ分かんないんで,安そうなんを適当に頼んでみる。
The Carl S.Redding $7.50
すると,程なく来たのはワッフルでした。予想外に粉モノの昼飯になっちゃったけど…食す。
噛めば噛むほど…ネットリ流れて絡みつく,夢見心地の甘味。繊細と言うのではないが,ぶっきらぼうなのにバランスが取れてるよな不思議な旨味です。
これはッ!?他のちゃんとした調理モノを頼めたらスゴかったんちゃうか!?…何を,ってか誰の名前がそーゆーもんか分からんけど…。
一緒に頼んだコーヒーも,やはり同じく伝統の味。アメリカンなのにくっきりした渋みが残る。食い物との相性がいーのじゃ。
てわけで,全くビビってない上に完璧な助走でリラックスし切ってしまって,晴れてハーレムの散策に出発したんでした。
Lenox ave.を北へ歩く。だだっ広い通り。由緒ありそな教会の尖塔が青空を突く。
み…道行くアフリカ系が皆さんジェイソン・ボーンズに見えるのは…きっと気のせいだ。
125st.に歩き着くと,人通りがぐんと増えた。この辺りがハーレムの中心のはず。
交差点辺りを少しうろつく。明らかに他のエリアと空気が違う。ドス濃いてゆーか,オゾンが濁ってるとゆーか。ハーレム・アンダーグラウンドを探して路地に一本入るとリスキーな居住区の雰囲気に。
ただ冷静に見ると,この辺は,普通に白人も闊歩してるからホントはビビるほどじゃなさそうだけど。
125st.を西へ歩く。周りは割とマックやサブウェイ,ドンキードーナツが溢れた区画なのに,やはり独特の空気。
アポロシアター前のCD屋前で,2つに分かれた道の両サイドに分かれてグループがけたたましく口論中。どーも,今の音楽ホワイトばっかりじゃねえか,お前が売ってんのもそーだろ,みたいな差別論的にウェットなテーマらしい。
空いてるのは唾の散ってる双方の間だけなんで…顔を伏せ気味に,そ~とすり抜ける。
露店の多いこの通り,Tシャツや小物のテーマに多用されてる2人の人物がいる。さて誰でせう?
一人は我が崇拝するボブ・マーレイ。これはもう年期の入ったブームですよね。125番街を歩くうちに,主要ナンバーは全部耳にした気がします。
もうお一方は,現職米大統領です。今や支持率急降下中のこの方も,ハーレムでは人気健在みたい。彼を印刷したドル紙幣のレプリカも幾つか見かけた。
考えてみたら――今のところのアメリカ人のコモン・センスではまだまだ有り得ないよな,アフリカ系の印刷された米ドル札。
白人以外の顔の紙片が世界通貨として流通し始めたら,それは確かに新時代の開幕だと思う。
ハーレムを離れるAトレインに乗る。
南へ。Chamber st.まで。
シティホールや連邦ビル前にも今日はグリマが出るって情報あったんだけど…見当たらない。
ただ,連邦ビル前は,入り口辺りのスペースしか考えらんない。ここだとすれば,曜日はともかく,国会議事堂前に朝市が立つよなことになるわけで…。食育に本気ならここまでやって欲しい,文科省及び厚生省!…あっ,県教委もか…。
さて,次はリトル・イタリーに入りたいんだが――さすがに疲れてきたな。
4番に乗るか…とマップをチェックしてたら,道端で暇そうにしてたアフリカ系でっぷりオバチャンが尋ねてきた。
「どこ行かはんの?」
大阪弁はイメージだけど,まさにそんな感じ。ニューヨークって,人情的には東京なんかより遥かに濃い。よくこんな感じで声かけて来る奴がおるんよ。
「あ,チャイナタウンやねん。4番かな?」とか適当に言ってたら,途端に冷たい口調で一蹴してきやがった。
「…Just walk!」
このやり取りで,妙に発奮させられて,疲れが脳内麻薬化してきちゃいました。ほー,言うやないけデップリおばちゃん!こちとら今や足には自信があんねん!
ヨッシャ,歩いたろやないけ!
というわけで,マンハッタンを狂ったように歩いたこの日のお話,まだ少し続きます。
▲グリマで買ったリンゴ(Jonamac&Golden delisious)
宿で食って…美味いのなんの!酸味と香りのパワーが物凄いんだわ!一日一個で病気知らずって言うリンゴだけど,ニューヨークでは日に2つ以上は食ってたよな。
ただ…味は明らかに違うんだが,評価できるほどリンゴ食い慣れてないので…どれがどうとは書けまへん…。