外伝03-FASE16@deflag.utina
バッペータ!!アギジャビッ!!

[和訳]
パッペータ:間違えた
アギジャビ:どうしよう!ありゃりゃ!くらいの意

 今日1日だけ,沖縄に投資することにした。
 いつも使わせて頂くバイク屋,牧志駅直下のサキハマで原付をレンタル。
 時間は48時間設定。
 とりあえず,前回打ち震えた「きっぱん」を目指す。
 牧志から壷屋の入り組んだ路地に入り込む。この辺は地図を広げでもさらに分からなくなるだけ。勘です。
 どうにか松尾交差点から南へ延びる無機質な道に出る。記憶を頼りに探すと,ショーケースだけの例の小店を発見。
きっぱん 300円
 ショーケースにはなかったけど奥から出して来てくれた。「これ最後ね」とか小声で言ってる。聞くと今年最後の一個だったそうだ。危ない危ない!
冬瓜漬 500円×2袋
 パッケージしてない家庭用。元々この売り方だった臭いが,見るからに茶色の不格好な塊で安っぽいんだが…これが凄いのよ!
 今回帰国後,日に1個だけ食べてった…淡く爽やかにキラキラと拡散する甘味,まずはこれが沖縄の心象そのものなんです。果肉の瑞々しさ,砂糖のジャリジャリ感,この食感はちょっとどこにもあり得ない。ざぼん漬けが似てるけど,この甘味の淡麗さとは雲泥。
 正月は滞在中はもう開店日なし。危うし!ただ,前も言われた気がするが。HP(→リンク)でネット販売もやってるそうだ。沿革や製法もここに詳しい。
 沖縄王朝伝来の伝統の味――ってのも間違いじゃないけど,ごく最近復活させた製法らしい。こういう古いような新しいような…ってのがウチナー飯の一面です。過去の蓄積だけじゃない,現在の創意がある美味。

 那覇港へ向かう途中,街角に小汚い…失礼,味のある風情(→写真)の弁当屋があったんで,衝動買いしてしまう。
玉ちゃん 弁当(小)300円
 見回すと,昨夜の辻界隈。ただ朝からやってるから,お姉さん相手でもないわけで…となると,この法外な安さはやっぱり沖縄庶民の価格水準なんだろう。
 ここより少し南,オフィス街久茂地の交差点は,昼休みに弁当屋台が列をなすので有名だけど,あれはも少し高かった記憶がある。その前段にあったであろうものがこれら小汚い(又も失礼)弁当文化なんだろか?

▲玉ちゃん弁当。見た目が悪いし配列グチャグチャだし,コンビニ弁当とは全く異質!
 以前,次の日には腐った臭いがしてて,

 さて港に着いた。目的の嶺吉食堂のドアを押す。
あしてびち 750円
 ここ,これしか頼んだことない。確かに3人に1人はてびち注文するんだが,他にも色々メニューは多くて,頼んでみたいんだけど…めったに来れん観光客の身分じゃ,どーしてもここのてびちは逃し難い。
 一口で美味のフラッシュバックに襲われる。
 これ!
 このコラーゲンの塊みたいなプヨプヨ感とマッタリ感!!とてつもなく下品な脂っこさなのに,とてつもなく澄んだ肉味…どーやったらこの2つが,こうも魅惑的なまま両立しうるんだ?
 今回初めて気づいたが,店のおばあたち,入ってくる客に「はいさい」ってあいさつしとるのね。歌と幟でしか知らなかった。今は那覇ではほとんど耳にしないこの言葉,まだこーゆー古い社交場では残ってんのね。

▲嶺吉食堂の入り口辺りの風情

 爆走。
 原チャで北へ。
 何度か走った道だけど,やはり今度も那覇の北郊外では道に迷う。西原の辺り,何か微妙なカーブした道が多くてどっちへ走ってんのか分からんくなる。時には逆に那覇方向に走ってて慌てることまである。
 普天間から先は逆にスゴく楽だ。基地の間を市街地が伸びてるから…って喜んでいい理由じゃないけど,迷いようがない。普天間交差点,ライカム,プラザ前…。
 坂道を下って胡屋交差点に至る。あんまり見違えて,通り過ぎるとこでした。店舗入店も終わった感じの小綺麗な南西角のミュージックタウンと,緑色に区画された沖縄初のスクランブル交差点…が閑古鳥。あんまり地元に馴染まなかったみたいですね。
 沖縄の行政,自治体レベルの巧妙さに比べ,グランドデザインの類いには明らかに,壮大なんだけど地に足がついてない気配が漂う。
 グランド通りへと路地に入る。中之町社交街は以前にも増してゴーストタウン化。貸店舗の貼り紙が風に揺れてる。
 なるほど。どうやらミュージックタウンを橋頭堡にして中之町を再開発するビジョンを,行政の上の方が持ってるっぽい。このエリアが那覇の新都心みたいなことになったら――コザも日本の町になっちゃうな。

▲グランド食堂の変わらずズタズタな外観

 グランド食堂。
 ここは変わらない。
 いつもと同じメニューを注文。ここもこれしか食ったことない。
骨汁 650円
 丼山盛りだから出てきた時にはいつもドキッとするけど,ほとんどが骨なんであっさり完食できる。しかし,量の割にものすごい食べ応え。
 牛骨のスープと濃い生姜。骨髄臭いムンムンの肉は少量でしっかり腹にたまる。汁がまたいい味出してて,これだけでもご飯が進む進む!
 その米だけど…ホントに違うみたい。台湾米なのか?それとも沖縄食糧の米選別の特徴?甘味はアッサリで,微妙な臭いとモッチリ感があって,骨汁にすごくマッチする。とにかく,ヤマトンチュの嗜好する米と僅かに違うみたい。

▲南山の山羊汁

 コザの常宿――つっても2年振りだけど,ホテル赤坂にチェックインする。
 風邪ぎみになってきたんで少し眠る。正月前後の那覇は割と寒い。聞くと,この3日ほど特にヒドいらしい。
 夕方になった。路地を抜けて胡屋交差点。南へ引き返してライカム。東に入ってホテル街方向へ。北へ折れて島袋。
 最早地図なしでたどり着ける。コザのこの辺,何度も迷いに迷ったからなあ。
 山羊料理南山。ここだけはどーしても再訪したかった。
 早い夕方の時間なんで客は僅か。前回は入口右手の座席で食ったけど,今回は左手の座敷に上がり込む。
山羊汁(中)1100円
 出てくるのに10分ほどかかった。客は少ないし,汁なんだから鍋から注ぐだけに思えるんだが,そこが素人の赤坂夜は更けてなんでしょう。何か仕上げの一手間をかけてるはず…だけど想像つかん。
 待ってる間に他のメニューをチェックしてみる。
山羊定食(大)2000円
同 (中)1600円
山羊汁(大) 1500円
山羊さしみ 1000円
山羊じゅうしい 800円
山羊そば   800円
白いか汁 1000円
ヘチマみそ煮 600円
フーチバーじゅうしい500円
てびち煮付 800円
ゆしどうふ定食 600円
 汁モノ屋みたいなカテゴリーが沖縄にはあるみたい。座敷ってことは夜は酒の肴にするんだろう。
 しかし,こう見ると――どれ一つとして内地にはないメニューばっか。とゆーか,内地のお品書きにあっても理解できんだろな。ウチナーコテコテの料理屋です。
 山羊じゅうしいには惹かれるな…と思ってたら,山羊刺をテイクアウトする客あり。まだ正月には早いから,年越しに帰省した息子と囲む料理とかいったところか?
 刺身か!!メニューの順位から言っても自慢の一品っぽいし,これもソソる。ただ,この店の安さで千円分ってスゴい量な気がして諦めた。どっかで食えるやろ…。(後日談:結局今回は巡り会えませんでした。)
 汁が来た。
 …やっぱ,すげーよコレ!
 注文の時に「脂入れます?」と聞かれたが,今回は迷いなく「入れてください!」。もう山羊さんへの恐怖感はない。
 やっぱり臭い。脂入れてもらったんだから,あの独特の臭いはなかなか本格的。――どんな臭いか表現したいけど,この臭さを乗せる言葉が見つからない。Wilkiにも「きわめて不快な臭い」としか書いてない。ただのアンモニア臭とも違う獣臭さ。成分のカプリン酸の語源がヤギ (Capra aegagrus) である位に特有な臭いらしい。ヤギの毛の油の分解物から発する臭いなんだって。
 と書いちゃうと,ゲエ~ッ,何でそんなもんをわざわざ食いに行くかなあ!!ってことになるんだけど…一口啜ると,味が知識を吹っ飛ばす!やっぱりスゴい!
 生姜とフーチバー(よもぎ)で臭みが中和される…ってな消極的な結合じゃ決してない。それぞれの臭みはむしろ互いに強化し合ってるのに,臭×臭の神々しい味に昇華してしまう!四神湯みたいなブレンドの妙味です。これも,何と表現していいのか…獣臭さと野草臭さの王様が舞台の両端で声を張り上げてハモってるみたいな,カンツオーネっぽい味覚風景…って何のことか分からんな。
 訪沖幾たびかの中で,これを前回初めて知ったってのが,悔やまれてイカンです。
 恍惚として店を出ると夕闇。看板のライトアップの灯を浴びながら,原チャのキーを回す。

 北上。
 基地の門前町,セントラルロードで,一種の聖地巡礼気分で照屋楽器へ立ち寄る。
 沖縄の音楽シーンの活況は健在どころか,勢い止まるところを知らずって感じ。
 今回は石垣島の城山(きやま)商会ってバンドを見つけました。ファーストアルバムMemorialを購入。1曲名が本章題の「パッペータ!」,最終曲が前章の「ユーシッタイ」です(どっちもヤマトンチュにゃ何のこっちゃ?なタイトル)。ローカルなのに垢抜けてて,ムチャクチャ元気のいいグループ。しかし,何でウチナーグチってこんなにリズムにノッちゃうんだろな。
 あと,前回から好評だったオリオンビールのCDは,調子に乗って「CMソング集~20周年記念盤~」ってのを出してた。2枚組3500円と高かったんで悩んだが…買った。買ったけど,宿で聞くと前のCDに搭載済の曲が半分以上で…ただ,ウチナー濃度は高水準なんで,初期ウチナーホリックな誰かの土産にせんとす。
 そりゃそーと,この照屋楽器の隣のコーヒー屋も,何人ものミュージシャンが馴染み客だと言う有名店らしい。有名店らしいが…店名を忘れた。コーヒー一杯引っ掛けてこかと思ったけど,微かに「名前だけオーラ」を感じたし,目指すパン屋の閉店時間が迫ってたんでスルー。
 既に真っ暗。冬至直後の夜の早さだけじゃなく,街灯が少ないかららしい。昨日まで内地に慣れたセンスからすると,その闇の深さが殊更感じられます。
 コザ交差点付近から路地に入ると,ホントに真っ暗になってきた。地元の方は平気で歩いてるからそんな特殊なエリアでもなさそうだが,道はぐにゃぐにゃだし特徴のない住宅地の景観ばかりだし住所表示は少ないしで,迷いに迷った。
 何とか宮里の「ピエールやきたてパンの店」にたどり着いたのは7時を少し回った頃。
イタリアパン
ちびクロワッサン
りんごデニッシュ
 空間を贅沢に使った郊外型の店。閉まる間際で品薄だったけど,いつものパターンで食事系・デニッシュ系・ドルチェ系を1点ずつ。
 宿で頂くと――奇麗な味だ。小麦の深みやサクサク感より,地味を美しく引き出してる。スパイスや乳製品でごまかしてない。素直に奇麗なパン。
 この感覚は内地でも欧米のでもない,沖縄飯の感覚です。
 最近思うのは――サラダ,パン,コーヒーのセンスって土地の食感覚をかなり鮮明に映す鏡だ。この3品の共通点,近代に入ってきた外来形で,技術の入る余地が比較的少なく,製法の自由度が高い。つまり白紙に近いキャンパスなので,ちゃんと客の顔見てる店なら,土地の嗜好に誘導された味に至る。
 沖縄でパン屋ってトッピだけど,面白い攻め口かも?

▲紅芋玄米,豆乳,沖縄限定販売タバコ「うるま」

 すぐ近くにサンエーV21みやざと食品ってスーパーがあったんで,立ち入ってみました。
 この宮里,今夜迷い抜いたコザ交差点辺りとは対照的に小綺麗な住宅エリアっぽい。
 なお――沖縄,そして宮里って来ると,ゴルフに何の関心もないわしでも宮里藍を思い浮かべる。藍ちゃんが稼いだ賞金で潤ってるエリアか?と一瞬トッピな連想が浮かんだけど,彼女は北部の東村出身。全くの勘違いでした。
 で,サンエー店内。最近,こーゆー当たり前のスーパーで楽しめることが増えたけど,ここもお宝続出でした。
 まずは昨日から気になってる地物の
1)ほうれん草×半束 58円
 捨て値の賞味期限切れ間近コーナーじゃない。生活物価がこんなもんなんだろう。味も元気で滋味深く,これだけでトートバックが一杯になる量を,翌日買った塩漬け肉でアッサリ完食しちゃいました。
 初日の三笠の味が忘れ難く,固い沖縄豆腐を探してたら,
2)こだわり豆乳 198円
ってのを発見。表示をチェックしてみると…原材料:大豆(添加物ナシ)。製造者:株式会社まえさと,住所:沖縄県中頭郡西原町。同じ棚の並びを見ると沖縄豆腐のメジャー業者っぽい。試しに買うと…仮借のない硬質な豆乳でした。内地やタイのスイーツ豆乳みたいな甘味の媚びがなく,台湾の食事系の豆乳に近い。
 待てよ?沖縄でしか飲めない飲料と言えば「ミキ」があるけど,あれってスーパー売りしてんのか?…と探すと,内地のアンテナショップにまであるミキはなぜかないのに,類似品が数種類並んでるコーナー有。
3)べにいもげんまい 99円
 この他,「〇〇げんまい」ってネーミングがソレらしい。紅芋の成分表示を見ると――原材料名:紅いも,玄米,もち米,片栗,果糖ブドウ糖液糖,黒糖,蜂蜜,塩。製造者:有限会社渡具知,住所:沖縄県名護市。
 宿で確認したら,やっぱりミキの味。元祖のミキは市場から駆逐されて安い類似品がメジャーになってるって形か?
 ついでに沖縄デザートだ。
4)ジーマミートウフ 100円
 製造者:(資)琉球うりずん物産。中華デザートではお馴染みのごまスイーツに,沖縄のコレは勝るとも劣らない口溶けです。
 タバコを切らせてたんでレジ脇で選んでたら,そうか!!JTはなぜか沖縄限定たばこ発売してんだよな。
うるま 250円
 これも理由不明だけど,有り難いことにこの安さのまま!