油煳干青∈外伝12∈辣∋壱月弐号之二 重慶初訪∋糟酸麻蒜

▲小雨も滴る重慶市街
 路面も街路樹もバッチリ整備されてて,こう見ると日本だと言ってもあんまり違和感ありません。地下鉄臨江門駅辺り。

本編より続き

 定刻成都東[立占]着と書いて,本編を中締めしたわけでありますが,その定刻とは何時なのかはあえて記さなかった。まず,その点について触れておこう。
 夕方遅くじゃないですか?きっと。
 記録されていないので定かではない。いつ着こうと勝手じゃないか,分からなんもんはスルーしとけば気づかれやしねえよっとか合目的的な判断のもとに触れずに来たんですが,これが分からんとこの後が書きにくいことに気づいたので,時間は何か適当に書いとこう。
 そういうわけで7時48分,成都東駅に到着。

▲小雨とは言えない滴り方になってきた重慶市街
 雨の似合う街にも思えるけど,雨振りの街しか見たことないから自信が持てません。

 東駅はものすごいデカくて,近代的で,豪華で,新しい建物。今のところいかにも共産圏らしい金の使い方に見える。
 けれども,電光表示の接続交通機関欄には地鉄も入ってるから,間違いなく次世代を睨んだ設計。つまり,準新幹線と高速道路,地下鉄のジャンクションとなる次世代のコアを企図してはいる。周囲は全然寂しい風情だから今は異様だけど,動車の乗客という奔流を注ぐと…この国のことだ,一気に変わって行ってしまうだろう。
 乗り換え交通は到着間際に車内アナウンスされた。バスは2路が北[立占]を始発駅にしてるとのこと。
 乗り場を探して乗り込む。全線2元。
 長蛇の列だったが3車体連結のやつがすぐに来る。ちゃんと座れました。18時37分発。
 若干…時間記述に矛盾があるような気がするが,細かい事を気にし過ぎると大局を見失う。この場合,見失って困るほどの大局も特段ないがとにかくバスに乗ったんである。
 バスは第三環路を反時計周りに進む。三車線だけど今の時間は混雑してます。バス内もすぐに満員になってきました。
 地図上で北[立占]への経路を追いたかったけど分からくなった。アナウンスに加えて電光表示でバス停名の案内があるから降り損ねはすまい。
 どうも第二環路に乗り換えて入って行ってるらしい。この街の道路計画は東京型の同心円構造。この3つの円を一番外側から一番内側へと順次乗り移ってく格好。
 こう書くと幾何学的で無機質っぽいけど沿線もいい。このエリアにも双林路というかなり賑やかな通りがあったし,二環路も東二段辺りは華やいだ空気がある。
 まだまだ歩き甲斐のありそうな街です。明日帰国だけど。

▲小雨に霞む重慶市街の高層ビル
 こんなんまでニョキニョキしてる街です。重慶市は人口3千万人余,面積は北海道並み。その中心地としてはまあこんなもんかも知れませんが。

 北[立占]下車。
 せっかく北[立占](ジャン)へ来たんじゃん!とオヤジギャグが決まったとこで初日に次いで二度目の陳麻婆豆腐(駅前店)へ。ちなみにこの駅前店は,文殊院の本店みたいな敷居の高さがない大衆店で居心地もいい。
陳麻婆豆腐+冷菜+米飯 15元
 何か麻辣,麻辣とこの漢字2文字を並べるのはウソみたいな気がしてきました。
 というのも――明らかにこの豆腐は,麻の一種として辣を捉えてる。四川に何千年も伝わる様々な舌への刺激の中で,辣はごく新参者に過ぎない。
 これが四川の麻辣の真意だと思う。意訳するなら「辣(唐辛子辛さ)を含む麻(舌への刺激)」。つまり「麻」で捉える味覚がこの土地にあるものなんだと思われる。

 北[立占]地下の通路に開いた小店で足が止まる。
 旧き悪しき共産真っ盛り時代のガラス戸付きキオスク。お姉さんはキレイだけど(関係ないか)売れ残りの中華菓子を片付けて今にも閉店っぽい空気。解放前はこのタイミングで声をかけてまともに対応してもらった覚えがない。ただ…。
 今日は中華菓子を買ってない。
 けど,こんなとこので大丈夫か!?
老成都 自家[月俺]滷
中華菓子3種×各2 11元
 時代は巡るもので,お姉さんはかなり気安くにこやかに売ってくれはりました。
 宿で食す。通りがかりの割には当たりでした。(ちなみに店名にあった「滷」味は未感知)
 ミルク味,白あん,肉汁味というところか?
 白あんは一番中華菓子っぽい。潮州菓子みたいな細かく柔らかい銀杏とかのあんが混ぜてあるっぽい。かなり見事。
 ミルクの上の一点の紅は凝固させたイチゴジャムみたいなので,日本人的には慣れた味。生地はクッキーと言ったところか?
 こんな小店がこのくらいの工夫をして来る。一昔前よりはるかに商魂の底辺がレベルアップしてるわけです。

 そう言えば,明日は帰国日だったな?
 今さらながらこみ上げてきたナトリの珍味,じゃなくて名残惜しさに動かされて,文殊院の裏手を徘徊してると,やっぱりもう閉店支度中の小[口乞]屋台を見かける。
 回頭小[口乞]という,何だか売り物が多彩そうな店。売り子は何だか欲深そうなオバチャン。
小[口乞]一篭 10元
 ウーン…高くね!?一篭つっても手のひらサイズの蒸籠だぞ?オバチャン,明らかに外人価格にぼったくってね!?――とは思いつつ,あんまり旨げだったんで散財。
 やはり宿にてお茶受けに。
 白と黒の小さいのが4つずつ。生地は何かと思ったらどちらも米。
 黒は染めてあるんじゃなく紫米みたい。米の自然な甘味を生かした蒸しもので,上にちょこんと乗っけてあるのは百合根らしい。
 白のは包子風だけど粽の中の米みたいに豚の肉汁がたっぷり染ませてある。米の甘味と豚の脂の,これを甘味と捉えればマッチする気がする。
 ちょっと慣れないが面白い小[ロ乞]です。味覚のタイプは潮州菓子に似てる気もしました。古い中国の味ってこんなんだろか?

 就寝前にリュックの整理。本日の収穫も併せて収納する。
 空港の税関チェックを考えると,今日の収穫物は多少物騒。
紅旗連鎖(中国発のコンビニ。「連鎖」はチェーンストアみたいな意らしい)312分場
新希望華西成都老酸[女乃]3.00元
牛市[土皮]漢源花椒粉7.50元
友加四川漢源花椒7.50元
川珍青花椒6.50元
 それと同じくコンビニもので
WOWO八益店
風味豆鼓軍嫂3.80元
四川光大製薬有限公司抗病毒[果頁]粒16.80元
 システムが同じなだけに,スーパーやコンビニの食のコーナーはその土地を雄弁に語ることが多い。そういう意味では中華圏とインド圏の調味料コーナーは他のどの先進国より多彩。
 そして多彩と言うことは…日本で良い子してる税関お姉さんの目には,ちょっと不気味に映るシロモノばかり。
 特に今回複数購入した花椒粉は,ビニールの小袋に砂色の粉が入ってて,見た目はイケない薬みたいだし,鼻を近づけるとビニールの質が悪いのか刺激臭が鼻をつく。「いや,これが大四川の味覚・麻辣の根源で」とか説明するほど怪しさを増すイチモツで。
 けれど,この花椒をあらゆる食物に振りかけてみる食生活が,この帰国後約3か月続いたのも事実。
▲小雨滴る重慶市街の車道路肩から
 自転車の大群がどわ~っだった一昔前が嘘のような光景。

▲小雨に霞む重慶市街
 これは中洲の際辺りの構造物風景。地面の高低差があるからコンクリートで出来た島みたいな異様さがあります。