外伝06@明潭@(@_51_@) 第二日 @ (@_51_@)

第二日の朝ご飯,永和豆[将/水]の豆[将/水]と[舌甘]餅

 ボックスに迷い込んだ蜂を,ハンドタオルで叩きまくってるヤブニラミのおっさん。
 朝飯食った後,昨日の売票所に人気を感じて駆けつけると,常に誰もいなかったボックスの中にこんな人が一人。
 大変な目に遭った蜂クンがようやく脱出した頃合いで,「ところでチケット売ってよ?日月澤まで一枚」と言ってみたら票(チケット)は買えた。
 紙面に300元とあるのが実際払ったのは150元だし,発車場所も少し離れた全然違う場所だしと不安は残る。けど,バスの行き先表示とこの客層…いかにも行楽客っぽい言動から見て,きっと間違いないでしょう。
 8時発,日月潭行始発汽車。仁友汽車客運。

 市内を巡るうち,客がどんどん乗ってきた。ほぼ満席だぞ!?皆さん日帰り狙いならいいが…。
 8時20分,周囲に水田が増えてきた辺りからハイウェイに乗る。晴天なれど霞が濃い。
 進行方向は…不思議なことに南東。──地図を確認する。台中の南方には台西(東南北と中があるんだからと思ってたけどやっぱり西もある)を中心とする大デルタがあり,この頂点部が水里,さらに源流が日月潭という位置関係らしい。
 つまり,東を頂点とするデルタの北辺添いを動いてるわけで──図式化すればこんな感じ?

   日月澤
    |
   水里
  /デルタ\
台中─台西
▲……それじゃ分からん!のでGM.に落とすとこんな感じ?

 整然たる一面の水田に椰子の木が並ぶ農村風景。
 窓外は,そんな不思議な眺望に転じた。これが三日月湖だらけのうねうねした筆だらけなら東南アジアだけど…起伏というよりデルタが本来硬い地盤を削っていった状態になっているようです。岩だらけの河原が地盤の硬質を証する。雄大な眺めです。
 これが8時35分頃になると谷合を縫う景観に。江の川や四万十川の中流域を思わせる。川を右へ左へ,何度も渡りながら上流へとタイヤは回る。
 椰子は林と言っていい群生を見せ初めた。
 9時,街に出る。道端に形成された街だけどそれなりに大きい街。魚池というのが地名か。
 9時10分,九族文化村。えっ?ワシを含め3人以外はどっと下車。行楽客っぽかった皆さんだけど…日月澤じゃなくてココ?そんなに人気なんかい!?あるいは今の日月潭が不人気なのか…!?
 道はいよいよ細く森の中を縫う。
 と!?
 いきなり視界が開ける。峠を越えた先に開ける眺望。
 日月澤です。
 位置的にはほぼ台湾の島の真ん中の人造湖。ダムを作ったら出来てしまったデカい湖をリゾート化してしまった抜け目のない観光地です。
 予想よりはるかに広々した盆地が開けてます。盆地というより見かけは平坦地なんですが,これは湖のせいでしょう。要するに水没した盆地なわけで。
▲日月潭の地形図(GM.)

 バスを降り立ったのは10時前。村という風情じゃなく,かなりの戸数と,あと観光用でしょう,ニョキニョキ立ち並ぶホテルが突如街が現れたように思わせます。
 そう長くない台湾なので,とりあえず台北行きのバスをチェック。7時40分発があったんで購入しとく。つまり正味22時間の滞在になります。
 10時,予定通り[石馬]頭休息大飯店という宿に荷を降ろす。ホテルが道の両脇を埋める坂道の中ほど。2460元,大奮発ってほどじゃないけど,ここ最近の台湾で最大の贅沢と致します。湖が見えるベランダ付きの部屋でこれならまずまずでしょう。
 この坂の上にあるスタバで一服。
 坂道界隈は茶行(お茶の専売店)だらけ。台中で買いそびれてた台湾茶は簡単に入手できそうです。

 自転車ツーリング。
 半減後に目覚めてしまってるこの趣味です。そんで湖に来たら──これは一周するしかないでしょう。レンタルサイクルの店があるらしいガイド情報も確認済。
 単純距離で20kmほど。歩き方の地図しかない状態だけど,湖畔から離れる道行きも多そうだし,地形の成り立ちを考えると起伏も易しくはなかろう。今の体力だとギリギリと踏んでたけど──さてどうなる?
 そのお話は別項にて。→日月澤一周(前編)

竹筒飯70元
 一周中に食べた,まあ観光食です。ですけれど,これも捨てたもんじゃなかった!!!ミャオ族の食文化ということで売り出されてます。

 というわけで一周しました。→日月澤一周(後編)

 予想通りのハードさで…もうお腹一杯だぞ。疲れも眠気も襲ってきますけど,ただ達成感から来る高揚で何かキレた気分に成り上がっております。
 こういう気分の時に買い物するのは,ヤバいんだけど…お茶は買わねばなるまいて。
 出発前に寄ったスタバの建物に入ってた天仁[サ/名]茶で物色してたら,日本語の片言が喋れるおば様に捕まる。試飲のお茶を淹れて頂きました。
 これは…まさに日本人観光客がオイシいネギしょってカモになってる図ですなあ。
 ただ,おば様の如何にも茶人らしいおしとやかさと,一周後のブチキレ心理が相乗されまして──ついに買ってしまいました!天仁でも最高の烏龍茶葉!!!
天梨茶 1000元
 試飲する限り,確かに究極的に美味い。通常の高山烏龍よりさらに高地で栽培される稀少種(いかにもカモ対象の口上だけど…)のアロマは,高山の硬質な香が程よく柔らかく,これと別なのか変異なのか,何とも高貴な臭みが鼻孔をくすぐる。
 帰国後しばらく繰り返し楽しむ間に加えて感じたことは,一煎目から五煎目くらいまでの味覚の変化がもの凄く楽しい茶だということ。アロマが高貴なところからどんどんコクに変化していく。言い換えれば劣化が激しいわけで,サッと淹れて飲まないとすぐクドミが出て来る。非常に移り気で,目を離すとスネてしまう難しさも持ってます。ただその分,ジャストミートで淹れた時の芳しさは半端じゃありません。
 やはり思う。台湾茶…というより台湾人の茶感覚の位置って実に面白い!普通の中国茶より明らかに日本的で優しさを求めるのに,結果として生み出された茶は日本のどこにも有り得ない味わいになってる。感覚としては,香港よりもイギリスの紅茶感覚に近いような「優しい臭み」。
 うーん,何て言えば言い足りるんだろう?考えるほどに微妙な立ち位置です。

▲TK food(経営:老楊食品股[イ分]有限公司)の方塊[酉ノ木](プラスチックパック) 50元

 ブチキレ購入第二段,発動!
 利用した自転車屋の対面,通り沿いにあった雰囲気いいお店。お茶うけがどうしても欲しかったんだけど,ばら売りがないから「では箱で頼むよ」と買ってしまいました。
 味はビスケット。アメリカめいた麦麦しさがメインの味わいなんだけども,焼餅めいたパサパサの食感も伴ってます。そんな面白い位置関係の味覚でした。台湾人が咀嚼したアメリカンビスケットなんだろうか?
 嘉義市に5店。古坑店(雲林県古坑郷[山/土欠][月谷耳]村)が出自っぽい。
 この日月潭の食環境は,各地の名産展示場みたいな色も帯びてるらしい。

▲温州大饅頭の菜肉大饅頭湯

 ブチギレ第三弾!
 おなじみ…と言ってもしばらくご無沙汰してました温州大饅頭。というか,台湾のあちこちで見るこの店名は,チェーンなんだろうか,それとも単に商品名なんだろうか?
 とにかく日月澤で食べた晩飯,かつ唯一の店内食はコレ。
菜肉大饅頭湯 70元
 この饅頭湯にも一時ハマってたよなあ。何だかんだと言ってやっぱり美味しいです。
 台湾のは,意外なことに大陸中国の東北地方の粉モンの味に近い。具というより皮がぶ厚くて粉粉っぽい穀物味が濃ゆい。
 なんだけど?じゃあ東北餃子と同じかと言えば,強い調味料が原則使ってなく,代わりにスープの出汁が強く,かつ海苔の風味が効かせてある。確証はないけど…ひょっとしたらこれも台湾風東北餃子みたいな現地化食なんだろうか?
 考えてみたら,台湾の食の由来っていうのは,現住少数民族のものを除いて,歴史的に大陸を中心にした「外来食」しか考えらんないわけで。その意味ではここは現地化食の宝庫と言える。台湾中華が持つ柔軟な創造性は,この辺に根源があるのかもです。
 柔軟と言えば,ついでにもう一点。それは台湾移住してきた漢民族の主流が福建料理圏の人々で,広義の福建料理に含まれる位置に立ってること。福建や広東の淡味中華は,それゆえに外来食の許容度が高いのではないかと思うわけです。つまり,強い味覚の舌を持つ食文化は異種の味覚を入れても効果が実感しにくいのではないか?個人にとっての淡味の舌が磨かれやすい理由と同じく。

▲セブンイレブンの関東煮(5買送1)70元

 ブチキレ第四発目!!もうこれで最後です。
 日本のコンビニのおでんと同じく…というか台湾人はおでんだと思って売ってるっぽいけど,一度買ってみよう!!という企画。
 まあ,これは日月澤じゃなくても台湾ならどこでも食えるんだけどね。
 厚揚げ…まあふつうか。
 ジャガイモ…じゃなくてこれは台湾ソーセージだったのか?まんまるだからわからねー。けど,街頭で食っても珍妙なあのツミレじみた味わいが滷味っぽく仕上がってるのは…さらに不気味です。
 ハンバーグ…に見えたのは何かツミレの塊みたいなのでした。これもまた不気味な味がいいですねえ。
 油揚げ…は油揚げだな。なんだけど,もーむっちゃ麻辣が染みて,これでもかと辛い辛い!
 猪血…だよな,やっぱりこのコンニャクみたいなの。辛さには合うけど,これは日本の関東で売ったら苦情の嵐だぞ!?
 黒いブツブツ餅…はなかなか美味い!これがわし的には一番ヒットでした。でも,これも東京で売ったらキレる奴が日に百人は下るまい。
 是非,何かの間違いで日本で売り出してほしい。企画者は袋叩きに遭うだろけど。
 といった品々を,夜の湖を眺めながらベランダで食した日月澤だったんでした。