外伝01-3மதுரை【Crazy for Meals Fase-2】Second day:マドゥライ滞留 (ミルスのお点前)写真集1

 お点前と申しましても,まあ,好きに食せばいいわけで,作法を破っても怒る人も睨む人もいません。そういうイッちゃった人の世界のお点前ってんじゃなくて,例えば立呑屋での振る舞い方みたいなものとして御参照頂ければ幸甚にて候。

▲まずバナナの葉がぽいっと置かれます。聖書的に言えば天地創造,という感があります。
 店の人がこの上にはぱっと水を撒いてくれることがあります。お清めみたいなもんみたい。
 食す人は葉っぱの葉脈部分をパンパン叩くのもよく見ます。葉脈の曲がりを折ることで,プレートを平らにして,カリーが変な方向に流れないようにしてるようです。それに,扇風機の風が凄いことが多くて,これをしとかないと葉っぱがめくれます。
 そのあと,まずは付け合わせがチョイチョイと置かれたのが写真の状態。葉っぱの重しの役もあるようです。写真のは,右がポリヤル(野菜炒蒸),左がクートゥ(ココナッツ風味の煮込)。上部の小鉢はライタ(ヨーグルト)。

▲付け合わせと言っても侮るなかれ。あまりスパイスの使われていないこれらの料理は,スパイス文化が中東から伝わる以前,つまりインダス文明期またはそれ以前の系統の料理と言われています。故に一つ一つがどれも洗練された味覚。
 写真の例ですと,カリーの種類と同じくらい並んでます。さてこれで役はそろいました。
 程なく葉っぱの真ん中にライスが来るのを待ちます。
 

▲ライスに,パーパドと呼ばれるせんべいが添えられることも多い。
 米と豆から作られたもので,そのままカレーにつけて食べることも多いけれども,少し割ってカレーに混ぜてアクセントにするのが美味しいような気がしてます。

▲カリーがかかれば,おもむろに右手で混ぜるべし!
 不浄の左手は禁じ手であるのはもちろんですが,右手は第二関節までを匙のように使うのが優雅と考えられてる模様。手のひらをぐちゃぐちゃにするのは論外で,「手で食べる」という表現では思いよらぬたおやかさで皆さん食しておられます。
 また,カリーは通常,サブジー,サンバル(カレー汁),ラッサム(酸味カレー)の3種あり,店によってはさらにライタ等がかかる。ライスは再現なく足されるので,あんまりライスの比が少ない混ぜ方にしちゃうと食べきれなくなるか,素人には指ですくえないほど汁っぽくなる。
 皆さん,その辺は経験値的にクリアしてらっしゃるのかもしれないけれど,素人的にはこの辺りがかなり難しい。

※ 特論:右手でどうカレーを掬うのか?

 実は,この点がワシも未だに自信がない。東アジアの箸と同じで,本人たちにはあまり意識されないからでしょう。「第二関節までを匙のように使う」瞬間の画像はあまりないけれど,何とか見つけたのがコレ。
▲「第二関節までを匙のように」

 ワシ自身はどうしても第三間接まで,時には手のひらの一部まで使って,お握りに近い形になってしまいがち。インド人はもっと指先に近い部分だけで掬ってるみたいで──さらに修行が求められる。(以上特論)

▲ 混ぜる量の調整は,ライスがプレートで出る場合は安全で,写真の如く三分の一量を取って混ぜれば宜し。
 ただし,カリーはそれぞれ汁気度合いが違う。ラッサム,サブジー,サンバルの順に汁気が少ないので,サンバルが最後の場合や,これをお代わりする場合などには要注意。
 けどまあ,味によってはアチャールとラッサムを混ぜてみたら美味いとか,予期せぬ面白さもあったりするのは,まさに葉中の小宇宙たる所以なんですよね。

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