油煳干青∈外伝12∈辣辣辣辣∋貴州編@二次初日:[酉農]肥淡甘非真味 真味只是辛 [酉農]肥淡甘は真味に非ず 真味は只だ是れ辛なり 貴陽Ⅱ∋糟酸麻蒜

▲貴陽駅前。一昔前には中国のどこもこんな駅前でしたが…未だにこんなハチャメチャな駅前ってのは…いいですね。

[今期累計]
支出1800/収入1650
    /負債 150
[今期累計]
    /負債 714
§
7月16日(木)
0700蓮香楼
シエンツァイの粉
鶏肉と椎茸の[保/火]250
1800駅前 [シ相][シ相]飯店
[ロ乞]飽到12元550
1920 筑[サ/シ平]快餐店
[ロ乞]飽到12元550
VIEWSUNZIZI CAKESHOP 恵城滋知
生手[シ]包 13元250
蒙牛 伏牧之洗150
[今期累計]
支出1800/収入1750
    /負債 50
[今期累計]
    /負債 764
§
→7月17日(金)

 まずは復習に3つほどお題といきましょう。

Q1 中国のことわざにある「四川人不怕辣,湖南人辣不怕(四川人は辛さを恐れず、湖南人は辛くとも恐れず)」。では貴州人は?

Q2 世に貴州人は8つの辛さを味わい分けると言う。さてその8つとは?

Q3 辛味とは別に,貴州料理の特徴として「つけだれ」がある。その名前は?

A1「四川人不怕辣,湖南人辣不怕,貴州人怕不辣(四川人は辛さを恐れず、湖南人は辛くとも恐れず、貴州人は辛くないのを恐れる)」
 貴州人の辛いもの好きは一般のそれとは全く程度が違う。貴州の一般家庭でもトウガラシを使った料理を数品作ることは珍しいことではない。
 現在,中華料理として一番有名な貴州料理は「宮保鶏丁」。伝統料理の一つで,貴州人の清朝の名臣・丁宝楨が考案した料理とされる。

A2
①油辣(ラー油の辛さ)
②[火胡]辣(焦がし唐辛子の辛さ)
③干辣(干唐辛子の辛さ)
④青辣(青唐辛子の辛さ)
⑤糟辣(糟漬け唐辛子の辛さ)
⑥酸辣(酸っぱく辛い)
⑦麻辣(花椒でしびれるように辛い)
⑧蒜辣(にんにくで辛い)

A3 [サ/酉焦]水(中国語発音:チャンシュイ)
 主にトウガラシ,おろしニンニク,刻みショウガ,刻みネギ,花椒(サンショウ),うまみ調味料などを適量混ぜ合わせて作る。加えるトウガラシの製法によって,つけだれも数種類に分けられる。

 では。そういうことで参りましょう。

 貴陽空港,行李提取(バゲッジクレーム),14時半。
 皆さん,さっきから長らくお待ちかねなんだけど──何一つ出てきません。
 これは…前回と同じ夕方チャンスなバターンか?駅に行ければまあいーんだけど。
 机場巴士乗車には何とか15時前に乗車できました。10元。前回に同じく民航売票処まで。
 このチケット売り場に無料の地図があり,何ということもなく手に取る。この紙切れが宝の山でした。結局,この第二次では最後までこの紙をポケットに入れて使い倒すことに。
 貴陽と貴陽北の火車[立占]の位置は判明。いずれもさほど遠くはないようでやや安心。噴水池から両[立占]までほぼ等距離でした。
 同地図に漢底や7天を含む幾つかの宿も掲載あり。ただし噴水池周辺は空白地帯。──なわけないんだけど,開発中で詳細記述できないのか?
 さらに──この地図に,前回あれだけ悩んだバス路線も書き込まれてました。火車[立占]から民空を通って噴水池へ延びるメインストリート(これと,概ね東西方向でうねる南明河を覚えておけば),市内中央を南北に結ぶ尊義路―中華路のラインを通るバスは,南の火車[立占]方面へ曲がるのと曲がらないのとに分かれてる模様。火車[立占]への南行きは逆に分岐の恐れは少ない,ということになる。
 前回同様,礼儀の面で中国の一昔前だなという印象に浸る。デカい声で話す浅黒い農民顔多し。あまり悪意を感じないとこは安心だけど。バスの中,ケータイと話す声が乱れ飛ぶ。
 地図のチェックに夢中になってるとリムジンが動き出してました。15時20分。空模様は…天気は良いが霞みが濃い。

 貴陽北[立占]へ行く262路のバスとすれちがう。え? 246路貴陽[立占]行きともすれ違ったぞ?新華路にまだ出てないのに…?
 などと,やはりバス路線には頭を抱えてるうちに,程なく民航着。
 前回はここから距離感を理解できないまま延々歩いてしまったわけだけど──今回は民航前で市内バスに乗り換える。
 バスの車内の表示から読み取る限り,このバスは次南門とか中華路とかいうバス停から分岐する路線だったらしい。噴水池辺りまで乗ろう──という算段でした。でしたんですけど,川(南明河)を前回見かけた7天を目にして反射的に下車。そのままチェックインしてしました。
 まさに旅はスポーツ,という我ながら好い動きです。一瞬の反射,判断,瞬発。えーがな,えーがな。
 さてそんな自賛に浸る間もないぞ。16時過ぎ。まだ時間はありそう。
 最寄りのバス停郵電大楼(さっき下車したバス停の対面)から南行,火車[立占]へ折り返す。解放路で東に折れたてドギマギしたけど…あ,なるほど,[立占]周辺が一方通行になってるからなのね。[立占]の北東ブロックを回り込む格好で走るらしい。[立占]到着,16時半前。前回乗りこなせなかったこの南北バスが嘘のように自在な足になってくれてます。
 [立占]は予想以上に混雑してました。工事(おそらく「軌道1号線」なる地下鉄らしきものの始発駅部分)の途中ということがあってだろう,人が多いだけでなくインフラ自体が混沌としてる。バス停から目と鼻の先の駅までの移動が物凄く時間がかかる。
 窓口を探しあてるが,「現金オンリー」みたいな表示があるぞ?まだ両替を済ませてなくて,試算するとRMBの手持ちが足りそうにない。幸いすぐに閉まる気配はないから…CDか銀行はないか?
 これがない。CDは幾つかあるけどどれも引き出せない。外貨両替も「中国銀行へ行け」の一点張り。建設銀行,貴陽銀行,どれもダメ。[立占]北西ブロックに招商銀行のを見つけるまで1時間以上かかった。
 ようようにして窓口11番に折り返して並ぶ。のんびり進んだ列が,すぐ一つ前の2人でえらく時間がかかってる。覗き込むと,100枚程の身分証明書を一つ一つスキャンして発券しとるらしい。マ…マジっすか?案内所曰く,ここしか窓口はないってことだったし…待つしかないんだけど?
 窓口は30以上ある。けどどの窓口でも何かいろいろ渋滞してるみたいで皆さんイライラの極地に達してます。うーん,これも懐かしきヒトコマですねえ。

 この窓口,異例と判断された案件が全て回される「その他処理」の窓口らしい。
 しばらくすると──振り返る要なくピリピリと感じ始めました。後ろの行列の苛立ち,というか殺気が。
 百枚の発券が終わって確認作業に入っても「誰のこの票がない」と調整が続いてる。その合間を縫って,わしのが並行処理に乗せられたが,これも予約をうまく確認できないらしくいろんな人が交互に出て来ては「身分証番号はこれか?」とか同じ確認を繰り返しておられます。パスポートまでお持ちになったので,キレて離脱も出来ないし,それどころかこの管理体制で無くさないかと気が気でないので,ず~っと目で追ってないと怖い。
 その間も直接の電話や割り込みの発券が続く。ジャンジャン続く。どんどん時間だけが経つ。端末の予備もないらしか,割り込まれると初期画面からやり直しみたい。
 後方の殺気は臨界を突破。小さな怒号も聞こえだす。あ?この状況って,攻撃対象にわしも含まれちゃってる?
 これはアカン。「予約はもういいから新しいのを取ってくれ」とついに頼んだタイミングで,窓口の人がおばちゃんに替わる。
「で,どこまで行くんだ?」とそこからやり直しかい?ガクンと来たけど,ここからはそれでも何とか通常の手続きになり,ついに発券。窓口にたどり着いて1時間。既にピークに達した後方の罵声怒声の中──とにかく脱出。
 はあ~疲れた!
 でも,これは無理して今日来といて正解でした。あな恐ろしや中国鉄道!新路線は面白いんだけど…これがあるから怖い。

▲駅前 [シ相][シ相]飯店の[ロ乞]飽到

 ふらふらだけど…とにかく飯だ…。
 駅前 [シ相][シ相]飯店。駅前の目についた店に着座。18時を回った。
[ロ乞]飽到12元
 なお,[ロ乞](食べる)こと飽くに到れる,つまり「食べ放題」。実態はバイキングに近い。10~30ほどのトレイから取れる。前回,街中の店に入り浸ったけど,駅前にはこの種の店が異様に軒を連ねてることに,先のCD探索を通じて気付くかとが出来たのでした。
 安い,掘っ立て小屋のような場所が多いんですが…これがまた,料理の種類は実に多彩!レストランなどより余程種類を楽しめます。

①②③④⑤
①キュウリの漬け物
②川魚の唐揚げ
③豆の青唐辛子炒め
④コンニャクの焦がし唐辛子炒め
⑤芋と唐辛子の和え物

 ②川魚の唐揚げ。この蛋白な白身魚の素揚げは,とにかく安心して食べられました。鯖に似たしつこさも帯びてる面白い味わい。
 ③豆の青唐辛子炒め。小さな豆ですが滋味深い。噛み進むうちにその陰から青唐辛子の辛味が不気味に顔を出して,麻ではないのにピリピリと効いてきます。豆味に凄くマッチして美味。美味なんですが,その分口に残る辛味は半端ではない。
 貴州料理の辛さって,この一見安心できそうな素材の美味さを生かしたままの辛み使いを選択してる点にあるような気がします。
 ④コンニャクの焦がし唐辛子炒め。日本でも馴染みの爆弾こんにゃく…という意味でやや安心感があった唯一の品。生々しいコンニャクを使ってて蕨の代用っぽい。
 ⑤芋と唐辛子の和え物。じゃが芋の千切りをサッと揚げて唐辛子の千切りで和えたものでしょう。芋の香り付けみたく使ってる唐辛子がキレイに効いてます。ムチャクチャな辛さにもなってない。

▲駅前 [シ相][シ相]飯店の[ロ乞]飽到中,キュウリの漬け物

 ①キュウリの漬け物。
 一見何のへんてつもないこいつが,最大の曲者にして最強の攻撃力を持ってました。糟辣(発酵の辛さ)という辛さがイヤと言うほど分かりました。
 最初は全く日本の胡瓜の浅漬けと同じ。茶色がかった色に関わらず,くっきりと爽やかな胡瓜です。駐在が永い日本人なら涙しそうな懐かしの日本食なんですね。──最初の7秒間は。
 この中途半端な間隔がとことん嫌らしい。
 8秒目,突如として爽やかな酸味が一斉に仮面をかなぐり捨てるのです!スパイスのように隠れてるわけじゃない。素材の美味そのものと一緒に展開した後で,気づけば包囲網が完成してて十字放火を浴びせて来る。
 この卑劣とも言える味覚設計,孫子か何かに出てそうなとことん悪魔的な味付けなのです。

 駅から折り返す。18時50分。
 1路の二階建てバス。もうあまり迷いはなくなりました。さっきは同じ二階建ての2路に乗ったらしい。
 深夜のように疲れてきてたけど…空はまだ十分明るい。
 車窓から前方に数台のタクシー。その後部座席に,同じ電光表示が出ては消えてを繰り返す。発注元とコンテンツが限られてるんだろけど,なかなかに不気味なもの です。

▲筑[サ/シ平]快餐店の[ロ乞]飽到

 第十字で降りて北行10分,太平路を西へ折れ,前回2回訪れた筑[サ/シ平]快餐店に至る。

① ④
  ⑤ ⑥

③ ⑦⑧

①ワカメの唐辛子漬け
②胡瓜同
③蕨の寒天かんすい和え
④カリフラワー
⑤豆皮
⑥玉子豆腐
⑦白飯
⑧トウモロコシ飯
⑨瓜の汁

 ①ワカメの唐辛子漬け。これも凄かった。
 醤油煮したらしきワカメがトロリと口を和ませた直後に,おそらく漬けたものだろう,酸味を帯びた唐辛子辛さが襲って来る。この油断を誘う間合いが悪質です。
 ②胡瓜の唐辛子漬け。駅前よりさらにアッサリ爽やかに,さらにガツンと漬け唐辛子が腸をつかんできます。これを次の③と一緒の場所に入れてしまったのも敗因で──胃の中で本格的に暴徒化してます。
 ③蕨の寒天かんすい和え。暴徒と言えばやはりコレ,蕨粉。
 ムチャクチャに爽やかでふにゅふにゅの美味いものなんですが,このかんすいの複雑な辛味の融合体がやはりキレイに身を隠して後半にワッとばかりに襲ってきます。
 貴州料理ってこの「それはズルい!ヤラレタ!」感が本質なんだろか?「怕不辣」な人々にとっては素晴らしいハプニングなんでしょうが──日本人にはちょっとした暴力沙汰です。
 ④カリフラワー,⑤豆皮。これらは辛味と隔絶してて,貴州じゃなけりゃ食えない類いではありません。ですが,意外にも中華スパイスだけで本当に美味を引き出してます。
 口を洗う味として本当に有り難い!──のみならず,この辛味を帯びない旨さは何だろう?広東でも上海でもない。ごく僅かに酢を感じるような気がするが…?
 ⑥玉子豆腐。この店のこの玉子豆腐…記憶通りに頬が落ちます。まだ食べてない豆花面というのに期待が高まります。
 ⑦白米はインディカ。これはまあ普通だな。
 ⑧トウモロコシ飯。包谷飯というトウモロコシの蒸し飯と思われます。ミャオ族由来のもの(苗家菜)らしい。コーンの蒸し香がふっくらと素晴らしい。
 ⑨瓜の汁。これも貴州的ではないけれど,具だくさんの瓜が香気を放つ好い汁でした。

▲筑[サ/シ平]快餐店の[ロ乞]飽到中,蕨粉

 この後へ「VIEWSUNZIZI CAKESHOP 恵城滋知
生手[シ]包 13元」と自分で記録しているのでありますが…なぜか全く他の記録がない。
 街で見かけたら御一報頂けますと幸甚です。

「貴陽市城市軌道1号線」工場中──というメモも残してる。
 これは微かに記憶がある。合群路の南入口辺りでした。火車[立占]で工事中だったのと同じモノらしい。だとすれば,近い将来,火車[立占]から合群路を抜けて市内を南北に地下鉄に乗れるようになるものと思われます。
 大体お察しのとおり,こういう記録で終わってる手記は疲れて沈没した日です,というのを逆に最も雄弁に物語っているわけで。つまりそれだけ旅行に心身一如たる様を顕してるので──このまま初日の巻,修了とさせて頂きまする。あなかしこあなかしこ。