GM.(経路)
※ 何かが根本的に違ってるルートが取れたけど，大体この辺を降りてます，ということで。
目録
固きこと黄金の湯の若し！
▲0947城門状のトンネル
南の金湯街側から登ってみよう。
「喩其易守難攻”固若金湯”，故名」とよく分からん説明板がある。まあ要するに難攻不落の意らしい。
巨石の岩盤の上に築かれてる。この岩盤は割れてるから，元々あったものではない。こんな高所まで運んだんだろうか？重慶中洲の石じゃないとすれば，西から運びこんだのか？もしそうなら少なくとも大阪城並みの土木工事です。
▲0954，城砦上部で太極拳やってる老人がた。
登ってみる。
すぐに鼓楼跡とある看板。
「鼓楼」？──それは城壁都市の真ん中に座すだろう，普通。時計塔なんだから。
ここは西の防壁であると同時に城の中心だった。そういうことになる。
そうか。城の中心が特定できずにいたんだけど，実戦型というか死守のための防壁そのものだったこの城にとっては，防御地点そのものが中心になるのか。
通遠門最高所は三重郭の天守
▲0958北側の段差。写真として上手くないけど，微かに石積のようなものが露出してる。
観景台と表示のある高所。
最高所の観測台でしょう。直下には小さな岩の古来の積み跡…らしきものが微かに認められる。
そういう場所なのに…ここにわざわざ幼稚園つくるのか？重慶市渝中区区級机関幼儿園。
▲1001重慶城図面。後でネット上を拾うと次のとおり原図らしきものがありました。
第三段郭南面傾斜：ここは一体何だったんだ？
▲再掲：重慶城図面
古図面を見入ってました。
この図の東先端，朝天門の辺りには「湖広会館」という入植者集会所らしきものがある。
百度地図にも同名が落ちてる。当面の目標地点をここにすることに決めた。
──てゆーか，そんなん決めてなかったのか？とか，西に来といて今さら東端？とか様々なお声も聞こえて来るけれど，幻聴の類いであろう。反時計回りに東端を，目指すったら目指すんである。
▲百度地図にある「湖広会館」
碑が立ってた。
「三・三一」惨案碑「重慶”三三一”惨案系一九二七年三月三十一日四川軍阀屠殺愛国群衆之大○案」とある。何回虐殺があったんだこの町は？(巻末→331惨案の作り方)
▲1015興隆街。明らかに雰囲気が濃厚
一番上に抜けたらしい。1013。もう下るしか道がなくなった。
興隆街と書いてある方に下る。方角は磁針によると…東？でもこの道しかないはず。
五福宮，続いて重慶自来水厂旧址との看板が現れる。特に跡地が残ってはいない。この時はへえ～という感じでスルーしてます。
(巻末小レポ：→通遠門付近は市民にとって何だったのか？)
南緩斜面：濃密空気の社区
▲1021東へ突き進んだ道…
そのまま東に進んでみる。1021。
Googleマップでは全然経路が取れません。写真を見ての通り，どこから私道なのか社区の中なのか分からん細道を辿っとる。
でも不自然な雰囲気です。坂だけど前後からすると緩く傾いた台地というところ。──今考えたら，五福宮を中心とする聖域のような場所だったのかも知れないな，とも思う。長崎の諏訪神社，いや故・神宮寺敷地(別稿小レポ：長崎金比羅山の掘れば掘るほど深い闇)のような地勢です。
▲1023放牛巷だと思う下り道
その細道の突き当たり路地を南へ。
至圣宮という社区だったらしい。南行してみる。
道の名は放牛巷。何じゃそりゃ？下り，やはり社区めいた地区です。
▲1028蔡家石堡とある界隈
道の名前は蔡家石堡となった。一族の城壁？ワイ？──と勘ぐるけど，至圣宮・放牛巷・蔡家石堡ともヒット皆無。おそらく五福宮と同じく，地名だけは残るけど由来は分からくなってる。
でも人口の９割が殺害されると…そういう事になるのかも知れません。
▲1032馬啼街
馬啼街という変な名の階段道に入る。1032。
概ね南方向。静かに，だらだらと下る。何があるわけでもないのにどうも空気が濃い。
▲1034馬啼街…がまだまだ続く。
毛沢東にも屈せず。中国教育界の無法者：黄炎培
重慶渝中高級職業学校校門を過ぐ。
校門すぐに金ぴかの像があったので，とりあえず写真を撮ってる。
後に調べると──重慶とは関係ないけど，中国近代教育普及の第一人者で，特に職業教育の偉業を誇る黄炎培という人らしい。
豪傑だったらしい。袁世凱，蒋介石，最後には毛沢東と対立しつつ天寿を全うしてる。
▲1036慶渝中高級職業学校の黄炎培像
※ wiki/黄炎培
(1878―1965年)
「1917年（民国6年）には、日本とフィリピンへ職業教育について視察に赴いた。
同年5月、黄炎培は、蔡元培らとともに上海で中華職業教育社（「職教社」）を設立し、職業教育の研究・提唱のための機関とした。翌年には、上海で中華職業学校を創設し、鉄工・木工などの各科を設置して、多くの学生を育てた。黄らの活動には、陳嘉庚らの南洋華僑や実業界の支持も集まっている。
▲1040社区の中を行く。
というわけでホントに分からないエリアでした。
これを過ぎるといきなり図太い車道に出た。その手前，階段が右に続く。「山城巷風貌区」とある。えらく観光客が多い。ちらっと入るけど，どうも景色がいいだけらしい。パス。
迷路で言えば行き止まり？
▲1044山城巷風貌区への坂道
もちろん全く位置が分からん。
なのでとにかく車道を左折北東行。
中興路。バス停も同名。
さあ？どう歩こう？
１052MAAN COFFEE
美式珈琲
コーヒーは不味いけど，期待通りタバコは吸えるしWifiもあり。
中興路北側に見つけたこの店の窓近くに陣取り作戦会議，というか自己救出作戦というか此処はどこよ？
百度地図と位置情報。──守备街小区の西側にいるらしい。店の前の大きな車道，中興路の高架下をくぐれるだろうか？
いや？くぐったとしてもはっきりした進路が見つからない。川沿いの一本道ではなく社区の中を通りたいんだけど…「×」マークが出てる。
つまりコレ，実質行き止まりの可能性がある。
今やってみるべき歩きは，とにかく東に進むだけ。何の作戦にもなってないけど，なってないなら目標方向だけは明確にしとこう。
窓外のその方向を見やる。「風凰佳居酒店」というビルが見えてる。あの高さなら歩いてても見えるはず。百度地図によるとあの北側辺りを目指せば，集落内経由で中洲の南側ラインを辿れるはずです。
■小レポ：「三・三一惨案」の作り方
「331虐殺」といったニュアンスです。──1927年3月，蒋介石軍の南京占領後，重慶でもこれを祝い共産党主宰の「反对英美枪击南京市民大会」が開催されたが，四川軍閥と英国が武力鎮圧し二千名が死傷。
揚州と南京以来，中国のこういう言説は，史料を追うことにしてるけど──この件はまた，追い様のないほどぼろぼろでした。
まず，百度と維基以外のヒットがない。双方，根拠として挙げてる史料はあるけれど，どれを辿ってもリンク切れ又は記述がない。
次に，唯一ある史跡「331殉难志士墓地」の場所「重庆市江北区五里店」は，七星岡から５kmも北西に離れたところ。ここに何百人も埋葬するのは不合理です。1927年に埋葬されたこの墓が，60年も経った1987年に市の「文物保护单位」になった，という流れも不自然です。
さらに経緯を追うと，集会の群衆の中に隠れてた「反动军阀刘湘阴」(反動的な軍閥・劉湘陰さん)の兵士が刀を振り初めたとあるけれど，刀は十数人斬れば刃こぼれする。第一，群衆を殺害する気なら中に隠れるような伏兵のやり方はあり得ないでしょう。
これで百度冒頭には，英国艦船が発砲して二千人死傷させたと始まってる。この記述にはそもそもディテイルとの整合性がない。
〔試行〕確認できる事実の抽出方法
──と，話をあげつらう要素には事欠かないのですけど，ここで大事なのはこの類の伝承から，確認できる事実は何なのか，ということです。
話の中核を成す①1927年の共産党集会開催中に何らかの不幸な事件があって②死者が出た，という事実は，恐らく虚構性は薄そうです。
その先で考えるべきは，どういう種類のバイアスが伝承過程に加わったかということ。誰かが悪意で完全な創作をしたのではなく，政治的に利用しやすいよう「解釈」の域のグレイが積み重ねられたと推定されます。それは，主に加害側の目的と死傷の直接原因でしょう。だから，逆にバイアスのかかりにくい分野はどこか，考えればいい。このバイアスで消されていない一次史料の記述を探せばよい。
目撃談中に③「子弹射向主席台，射向人群」(主席台と人々に向かって射撃した)という語があります。
すると，例えば，群衆の中にいた暗殺者が演壇の要人を殺害し損ね，それでパニックに陥った群衆が圧死した，といった仮説が成立します。
あとは蓋然性です。デモ隊と睨み合う治安警察，という立場でもない部外者集団が，いくら政治的に反発するからと言っても，突然射殺や砲撃を加えてくるとは考えにくい。少なくとも最初は，威嚇目的を越えたものではなかったのではないかと思えます。
史実へのバイアスとしては，分かりやすい事例です。
※ 百度百科/三・三一惨案
「1927年3月24日，北伐军攻占南京，当地民众举行庆祝集会，遭到英国军舰开炮轰击，打死打伤2000余人。」
「中共重庆地委决定于1927年3月31日在通远门打枪坝以“重庆工农商学兵反英大同盟”名义，举行“重庆各界反对英美枪击南京市民大会”。反动军阀刘湘阴蓄异心，决定乘机镇压革命。当日上午11时，大会正要宣布开始，预先化装混杂在群众中的刘湘21军所属之师3师王陵基部和7师蓝文彬部士兵，以及巴县团阀中文英、曹燮阳所属民团团丁，便开枪挥刀舞棍进行血腥大屠杀，一直持续到下午二时左右，打死137人，伤千余人。」
「据“三·三一”惨案幸存者左温曼女士在《纪念“三·三一”惨案六十周年》一文中回忆：“当我们进入会场，到指定地点整队肃立，主席台宣布大会开始时，突然一阵密集的枪声响起，子弹射向主席台，射向人群。会场顿时大乱。(略)”」
「参考资料
[1] 揭秘：北伐军占领南京后为何抢劫杀害外国人．凤凰网 [引用日期2013-09-06]」
※ 維基百科/三·三一惨案
「纪念建筑和烈士墓葬
・“331”惨案纪念碑，位于重庆市渝中区
・“331”殉难志士纪念碑，位于重庆市江北区五里店
・331殉难志士墓地，位于位于重庆市江北区五里店曹家坪」
「注释
张老侃. 探寻“三三一”惨案发生地打枪坝. 重庆晚报数字报. 2013-04-01 [2015-10-21]. （原始内容存档于2016-01-28） （简体中文）.
“永远不会忘记先烈先辈们的壮举”. 重庆日报数字报. 2014-04-01 [2015-10-21]. （原始内容存档于2016-01-29） （简体中文）.」
※ 同/331殉难志士墓地
「“三·三一”殉难志士群葬墓地位于重庆市江北区五里店※曹家坪，(略)。是1927年三·三一惨案死难者的墓葬，1987年1月23日列为重庆市第二批市级文物保护单位初定名单。」
※ GM.→重庆市江北区五里店
■小レポ：通遠門付近は市民にとって何だったのか？
興隆街を検索したらこの写真を下記サイトで見つけました。
分からない。
「七星崗興隆街口 （楊耀健供）」とキャプションが付く。「遊芸街」とあるゲートの下で中華獅子舞をやってる。
この付近は「一片荒山，地名為象鼻咀、天燈坡、田家塆、鄭家塆等」(荒山だった。象鼻咀，天燈坡，田家塆，鄭家塆などの地名があった)という。
激戦地跡に墓が建ち，霊地にされた流れで，一種の「ハレ」の場と認知されて，具体的にはパティオになってた。だから獅子舞が行われ，共産党集会もここで行われてた。そういう場所らしい。
１ 五福宮の聖・高地
問題は，そんな「特異点」になってたらしいここが何だったのか？という点です。
今回の歩きで見つけた五福宮と水源地については，下記「每日頭條」サイトが案内板の画像も含めまとめてます。ただ，これを解釈した情報は少なく，見つける事が出来た唯一の解釈は下記「母嬰」の記述でした。
ここでも「全て分かった！」という記述とは程遠く，なぜ，いつ消えたのかまるで分からない。と締めてます。けれど，
① 五福宮という道観(道教寺院)があって，少なくとも明清代に二度中興されてること
②「瘋道爺」という人が創始し「瘋道観」と呼ばれたこと
③「金湯街」に位置したこと
④ 歌詩に唄われており有名だったと思われること
は分かる。
水源地にしたのも，霊地の水を飲む，という風な呪術的指向があったのかもしれない。
ということで，ほとんど分からない。でもとにかく市民にとって永く特別な高地だったわけです。
２ 通遠門と重慶中洲の地形・再考
「渝城三山」という成句にも「母嬰」で初めて触れました。重慶の三名山，という意味ではなく，重慶中洲の三段になった台地の形状を指すらしい。
どういうことか分からかったけど，Googleマップで「地形図」に切り替えて中洲部を改めて見れば一目瞭然でした。
西端朝天門から南西方向に一段目の台地。世貿や解放碑のある江臨門辺りの繁華街から西に二段目。そして通遠門付近が三段目。
日本の戦国の山城，例えば小谷城とか箱根の山中城を思わせます。
重慶付近はカルスト地形らしいけれど，どうやったらこんな，誰か軍略家が設計したとしか思えない三段郭の地形が出来上がるんだろう？
▲後から見つけた，重慶城三段郭イメージに一番近い日本の山城構造
※ 日下野城山城（長野市中条日下野）
建物が低層でこの地表の高低が見えた時代，三段郭の最高部台地が如何に神々しくも難攻不落の場に見え，かつ実際にそうだったか，想像に余りあります。
例えば日本の三段郭の城は，下の郭から順々に落とすのが常道。でも重慶の一・二段目は三段目の東，川が三方を塞ぐ位置にあります。つまり，唯一の攻め口である西からの攻撃では三段目をいきなり攻めることになる──。
※ 每日頭條/地名故事丨農貿興盛的興隆街
「查看1925年出版的老地圖《新測重慶城全圖》，可見當年通遠門外系一片荒山，地名為象鼻咀、天燈坡、田家塆、鄭家塆等。城牆根下只有兩座孤零零的大院，一為寶三園，一為教養公所。最觸目的則是一座白骨塔。原來，通遠門外實際上是數百年來市民祖宗安息的墓地，荒墳累累，俗稱棺山坡。」
※ 母嬰/重慶這座最高樓三興三衰，最後神秘消失，被稱為傳奇 【転載厳禁】