シン・余家巷へ潜る
翠屏巷と仮に呼ぶ。
地図には全く書かれていない。
でも写真のように明らかな道で,人通りもある。
余家巷の南側の延長。それが社区の中に消えている地点というか…。
北側入口一帯には,ゴージャスではないけれど入るのを躊躇するほどではない小店が連なって,寒空に煙をあげてる。
ゆっくり南行を続ける。
猥雑な感じではない。
けれど共産的な社区,という作り物感もない。
家屋が建ち,その隙間が道になり,でもそれが公道にはなっていない。そういう原初の状態の迷路に,余家巷が融けていってる感じです。
影多きエリア
城壁との関係で言えば,余家巷が壁の内側道だったとすれば,この界隈も同じはずです。
所々に見られる段差は,道路部分が後にかさ上げされて整備され,でも路側はそれ以前のまま残ってる,そういう経緯のものでしょう。
百度地図・航空写真でこの地区を見てみる。
一見何でもなく見える。なのでうかつにも事前の沖縄X(航空写真探索)では注目し損ねてました。
けれどよく見ると,「影」が多い。
Googleマップの航空写真と違い,中国系の百度地図の航空写真は補正のかかってる度合いが高いようです。つまり,誰のどういう意図か,「見せたくない」部分が多い。
そして,それを念頭に頭の中で補正し直すとドット状の整備度の低い街並みが見えてくる。
何を「見せたくな」かったのかは推測しきれてませんが…。
貴陽離脱
南の車道に出たのは黔東社区衛生服務站という施設の辺り。
さすがにそろそろ右折西行しよう。
ICBCのCDがあったので3百入れとく。それはともかく公厠(トイレ)!
1033──公厠を追ってくと黔灵路に戻ってしまった。左折西行。
で,結局黔灵東路の初回の宿辺りに出る。重慶でハマッた沁元ベーカリーができてて驚く。
1042,タイムアップ。中華路。9路バスで大十字まで南下。
1057,荷物をピック。昨日の法院街を歩き,脱出の地下鉄駅へ。
真の辛味は爽やかで渋い
昨日見つけてた自助の小碗店に向かう。
明らかにお母さんと姉妹で店をやってるらしい。顔かたちがそっくりの3人から3菜受けとる。
1118厨娘娘 小厨家常菜500
①②③
④⑤
①トマトと卵と海苔のスープ
②青瓜と痩肉の爽やか辛味炒
③白米飯
④キラキラの麻婆豆腐
⑤ズッシリ苦い辣子鶏
①トマトと卵と海苔のスープ
まずはこれのレベルの高さに刮目する。出汁というほどじゃなく,麻辣系もないはずなのに何だこの旨さは?特に,片平しか入ってないトマトの酸味の荒々しさに打たれる。
②青瓜と痩肉の爽やか辛味炒
実は最後に選んだ品。この辺にも試してみるか,程度でしたけど──青瓜に物凄いばかりに汁が染みてて臭みがキレイに昇華されてる。ボロボロの細かい痩肉の力もあるんだけど,どうもこれが粉唐辛子か輪切りの赤唐辛子から出た爽味らしい。
辣はほとんどない。なのにこの爽味だけが痩肉の二番手のような謙虚な程度で効いてる。でもそれが単なるチキンスープからはっきり一歩踏み出す力強さを持ってる。
最後には汁をご飯にかけました。それでも沈殿物はほとんどなく,唐辛子清湯とでも言うような美しい品でした。
③大陸中国でおざなりにされがちなのに,ここのはご飯がよく炊けてました。ふっくらと,でもインディカの香り豊か。焦げには頼らず実直に甘い。
④キラキラの麻婆豆腐
定番の,という気でした。半分は当たってましたけど半分は外したようです。
豆腐にネギ(アサツキに近い?)肉ミンチに豆板醤。そのレシピは変わらず,見かけも普通に麻婆豆腐です。
なのに味覚が──花椒とラー油の香は陳麻婆と同様なんですけどその上に一味ある。似てると言えば,安物のレトルトの麻婆豆腐のケチャップみたいな酸っぱさに似てる。でもこれは漬け唐辛子の辛味です。それもコントロールしてあるらしく決して突出せず,花椒の痺れをくすぐるような微妙さ。
これ,変化球だけど絶品です。麻+辣+酸,貴州の得意分野を連合,というより原子の加速機みたいに衝突し合わせて新元素を作り出してるような。
にしても酸味を投入した麻辣って,予想したことがなく分かりませんけどどのくらい微妙さを要するもんなんでしょう。少なくともこの店の場合,それが味をキラキラさせてるのは事実なのですけど。
⑤ズッシリ苦い辣子鶏
この辣子鶏は凄かった。本来なのかどうかはわからないけれど。
辛くないんである。
もちろん体積の1/3ほどが赤唐辛子というのは他と変わらないのに。
鶏肉は昨日と同じに骨骨しい細かい肉。かなり強く硬く揚げてある。
その上に赤唐辛子が苦味を帯びるほど炒められ…てるか何かの加工を経て,辛味としては酷く鈍くなってる。けれど,調味料として劣る状態になったかというとそうではなく,苦く重い辛味という新しい調味料に転じてる。これが骨っぽい鶏肉に,無茶苦茶に合う。
味が渋過ぎる。辣子鶏やそれに似たものはかなり食べてきたけれど,こんな渋い,苦味を基調にしたのは初めてです。
この旅行の直前,松江のメルシーでグリエールを久しぶりに頂き,店主の教え通り黒焦げにして口にしました。あるいは韓国飯のお焦げ。あんな感じに唐辛子の焦げを調味に用いるのが,もしかしたら辣子鶏の本来なのかもしれません。
貴陽名物とされる焦がし唐辛子の系列,というのはそういうところでしょうか。
時間が空いたから,というより小碗の感動の余韻に浸りたくて近場のここへ。
1158ZOO COFFEE
意式珈琲
「喫煙?」「都可以!」(どこでも吸えるよ!)と応えたポニーテールのお姉さんが可愛いかったエスプレッソは酸味の強い使い込んだマシンの味。ダブルで23元,もう,一頃の中国みたいな非現実な値段でもなくなりました。
貴陽食の感想は,こんなところでしょう。
「変化□ 計7
辛さ■□
旨味■■□
面白■■■■」
さて!四辛都巡りは,最後の長沙へ!