外伝06@猫空@(@_30_@) 再々訪・序章 (@_30_@)


 戒厳令解除から早くも20年を経た台湾である。
 ちなみに,金門島と馬祖島に敷かれていた長期戒厳令が発令から43年ぶりに解除されたのが1991年。両島以外の解除は1987年である。
 この事実にはよく留意しておいて頂きたいが,以下の記述には全く関係ない。
 わしにとっては2年ぶりの台湾。散々行ったのでかなり飽きてきてるけど,そろそろ再訪せにゃなるまい,ってことですけど,何せ飽きてきてる。
 ちょっと冒険もしたいなあ。

 広島空港ビレッジの不採算問題は,典型的な行政の空論事業として批判を集めている。ローカルだが。
 出国前日,その批判の的のお役所仕事をとっとと切り上げ,夕方7時前には西条へ向かう。まあローカルな話だ。
 広島空港は広島市街から遠い。午前の早い便で出る場合,6時前発のリムジンに乗るか,前掲空港ビレッジ内のCP度外視のバカ高ホテルに泊まるかしか選択がない。
 …と思ってたんだが,前回の成都で西条の安宿に止まって白市からのバスに乗る方法が安くて楽だと分かった。素晴らしい!流石はわしだ!…ホントにローカルな話だが。
 てわけで西条である。――とか書いてる最中で,ややダイナミックな懸念に思い至る。明日の出発地は本当に広島か?福岡じゃなかったか?
 慌てて調べたら,ちゃんと広島でした。よし,万事が順風満帆じゃ!全て問題なし!
 と思って西条駅前の某宿に入ろうとしたら「スミマセン…お客様の予約は東広島の新幹線駅前で入ってまして…」
 まあ,大体こんな感じで海外行ってます。いつか死ぬと思います。

 東広島市のメインのJR駅が西条なんだけど,東広島駅ってのはそこからかなり離れてる。新幹線しか止まらない。
 そうは言っても…と思ってとりあえずタクシーで向かったら,空港リムジンパスの発着もない模様。
 それで,当日早朝。またタクシーで西条駅まで出てきた。往復3千円強。お得感が全然なくなった状況で白市までJR,さらにパスに乗り換えて空港へ。便利感も全くない。
 なお,タクシーの運ちゃんに「昨日,白市駅近辺で事故あったみたいで,JR動いてるかどうか…」とか不気味な情報を耳に。不安感だけが残る状況になってきた。
 けど,これは結局復旧してた。7時5分,空港着。10分,発券。
 空港に出来てた喫茶「K-WING」という店で朝飯を腹に入れる。
鮭のオープンサンド(サラダ,ドリンク付き)680円
 ツナじゅないチャンと鮭をほぐした香ばしい焼き身を,これも手作りらしきマヨネーズで和えてある。キャベツのさっと茹でたものが混ぜてあるほかに,これは高菜か?わずかにアクセントとして混ぜ込んだ香菜も効いてる。
 カラムーチョとポテトのサラダと言い,なかなか野心的にひねくれた店と見えます。
 自家焙煎を謳ってるコーヒーはちょっと濁った味だったけど,スタンスは好きだなあ。今後もしばらく注目したいお店です。

 さてお次は機内食。まあ食う話ばかりが続いて何ですけど,あんまり行程自体に代わり映えはしないので端折っちゃえ。
「猪肉」と発音したはずが「鶏肉」を出されてて,自分の中国語力の低下にショック。
 というわけでチキンとポテトに丸いパン。
 なんだけどマーガリンがなぜかバカ旨。何とかのシルバーマーガリンでした。
 それに加えて,なぜか「博多の女」。
 さらにポテトサラダ,フルーツ盛り合わせ(キーウィ,パイナップル,オレンジ)。
 機内食の飲み物の恒例になってきた白ワインも飲んで満腹です。旅客機に積んでるワインってなかなかのレベルなので飲まなきゃ損ですよお姉さん!

 とかやってるうちに10時半に台湾着。荷物を待つと11時半近くになった。
 さてどうしよう。予定を何も考えてない。
 税関を通過後,高鉄の時刻表を見つけました。何と完全な日本語版。
 なるほど。この飛行場は新幹線の桃園駅に近いんだな。30分以内に行けば南行きの便に乗れるみたいだぞ。
 バスを探さずリムジンタクシーに飛び乗る。10分,290元(うち40元タックス)。
 ──ってホントにいい加減に動いてるなあ。いつか死ぬなこりゃ。
 それはともかく道行きはもちろん駅周辺もほとんど原野でした。寂しさは東広島駅に似てるけど,こちらは構内ではエアチケットも購入できる窓口がいっぱい。専ら空港接続駅としての機能の駅です。
 外でタバコを吹かしてたら俄かに大粒の雨が,バラバラと頭を叩きつけてきました。

 11時49分,高鉄桃園[立占]地下のプラットフォーム。11号車表示下に立ってます。
 自販機の前で思いついたのは台南。初回に行ったきりだから,久しぶりに面白いかなってことで。うーん,我ながらマジで出たとこまかせやなあ。
 運賃1150元。さっきの両替でのレートは1元=0.3553円だったから約3千円ってとこか。
 さっきの時刻表で確認すると到着は13時21分予定。ちなみに車番645,1136台北発,1336左営着の各駅停車。曜日指定も入れると1日に全78本もの便がある。ちなみに15日前までに購入すると3割引になる「アーリーバード」なる切符があるらしい。──要するに既にこの台湾新幹線,国内の足として日本以上に定着してるみたい。
 すぐに列車は地上に出る。12時10分,新竹。ここも周囲は野原。
 慌てて…というか考えもなく乗っちゃったもんで,飲み物を何も買ってない。車内販売のカートのお姉さんが来たんで水を買う。
Volvic500ml 35元
 支払うと,お姉さんニッコリとコインを突き返してきた。見るとコインの表には世宗の顔が…韓国ウォンやがな。前回しまった台湾マネーに,なぜか混ざってたらしい。後で調べたら2割ほどのコインがウォンでした。
 お姉さんスミマセン,こんな旅行者です。いつか捕まると思います。
 13時半頃,台南で市街駅行き列車に乗り換えます。
 バス停で探しても台南火車[立占]行きが見つからない。運ちゃんの一人に聴くと「二楼大火車」と言われた。つまり列車しかないらしい。
 あ。これがさっきポスターで見た「民国百年正月」開通の列車か!!
 30分に一本の列車便だったけどギリギリ飛び乗れました。運賃は…自販機にムチャクチャに金入れたから分からなくなったけど,30元位だったのか?
 走ったんで汗だく。フード付きのコートなんか絶対要らなかった!日本ならほとんど初夏の陽気やがな。
 それと…飛び乗った車両に「[日/辰](夜)間女性優先車[ガンダレ+相]」の文字。女性専用車やがな…。──でも実際,かなり野郎も乗ってるぞ?文字から察するに朝と夜のラッシュ時は,ってことなのか?
 ケータイのアンテナは3本バッチリ立ってます。
 対面にうら若い純朴そうな乙女。口をまん丸に空け,上方45度に顔を向けられまして大爆睡中。まあ確かに──窓外の風景には多少の雲は残りますが,うららかな陽気です。
 昼下がりの台南市街が,十数年ぶりに近づいてまいりました。

 13時54分,台南[立占]到着。
 前回泊まった記憶で駅前通りに宿を探す。前回のかどうかは分からんけども,程よく安い漢宮大飯店に入る。600元。
 さて散策開始。
 駅前でまず驚いた。初めて来た時には閑散としてた駅北西の区画が,再開発だろうか,若者向けのフードコートの集合体に。
 つまりは全然土地勘が働かない。となると,うーん,俄然面白くなってきたがや!

▲度小月の胆子麺 50元

 中正路へ,一応食っとくかと足を運んだ。
 え…ここ?
 ホントに食い物屋か?パビリオンの出店かと思った…。
 民族衣装を着たオッサンが,大層古風な建物なのにわざわざ地べたで作るパフォーマンスといい,メニューはもちろん対応も全て日本語のサービスといい…ほとんど観光地ですね,こりゃあ。
 味は…確かにバクチーと蛯粉が効いた唐辛子が酸っぱく決まった汁は,中華としては変わってるけど,ベトナムやラオスは大体こんな感じの麺ですよね?それでもって肝心の麺は,インスタントじゃないんだけどブヨブヨで,少し卵麺っぽいけど特にどうという特色ないですよね?まあ,観光地だからいーんですけどね?――といったところだな!
 いやあおいしかったなあ!(…嘘つけ)

 15時半。
 赤[山/土欠]文化園区という祭殿だらけのエリアに迷い込みました。
 今は天壇の前におります。
 路傍に設置してある観光地図を見ると,この東北に北極殿という社,西北に向かうと大天后宮を経て西門に出る。要は旧市街の呪術的中心地らしい。

▲再発号肉粽の肉[火康]40元,[湯/火]青菜30元
※後日談:間違いないだろう。この肉[火康]とは,後に莆田で発狂した炝肉の台湾名だと思う。→m035m第三波m闽星の毛虫に突かるる倭虫かなm十字街/炝肉!炝肉!炝肉!
 挽回を狙って民権路二段で入った通りすがりの小店。
 売れてる気配だった肉粽の方かなぜかどう言っても通じなかったから,転進して肉[火康]にしたんだけど──。
 すげえ!
 阿宗を優に凌駕する深みとコク!路線はあの独特の魚醤味なんだが,魚臭さの深度には目をみはるものがあった。
 けれど一番驚いたのは[湯/火]青菜。さっきの胆子麺でも感じた蛯粉の,おそらく油に香りを移した味がまろやかに効いてる。味の底にはあの魚醤味があって,これが絶妙に絡み合った味覚。
 …というと,何か広東に共通するような気も!?ひょっとしたら,台南って福建系とされる台北より広東色が強いのか?

 16時半,民権二路を延々西へ歩く。
 西門路を過ぎてさらに歩く。
 水仙宮と書かれたゲートをくぐっても,もっと歩く。
 ハアハア…。どこなんだ?宿で聞いた流動夜市は!?
「台南の夜市は,曜日毎に開催されるんですよ。今夜のは花園夜市ですから,行かれては?」というお誘いを間に受けて探しつつ,まあどこかで見かけるだろと散策してるんだけど…よく考えたら手掛かりがない。
 お?国華街という細い道に食い物屋台がずらり。花園をまた忘れて,思わず北上してみる。永楽市場というマーケットエリアらしい。通行量がもの凄い。
 民族路三段に出た角で名物らしき春巻を購入。
 店名は金得春巻。「台南美食,五十年老店」を唄う。
毎[米巻]30元 2つ
 宿で食いつく。何て微妙な旨さ!生春巻じゃなく,多少茹でてあるだけみたいで,大蒜の香が強いんだが,キャベツと豚の脂身の甘味が被さり,辛みはほとんどない。甘味とバランスを取ってるのは大蒜の硬質な香なんである。このセンスはやはり東南アジアを思わせるんだが,しかし一味東アジアの静けさも持つ。理解不能な味覚です。
 この向かいの「永楽焼肉飯」って店もえらく繁盛してるみたいでした。

 16時50分,民族路を西へ,海安路という広い道を横切る。
 お?前回だったと思うが食いそびれてた大湖の草苺というのの屋台があった!
 試し買い。一山で100元と結構高いから半量を買う。大体日本のワンパック位。

 ふうふう…。大概歩いたぞ?とりあえず飲み物欲しいぞ?
 不思議なほどコンビニがない。2軒目の「茶の魔手」を見つけたんで試しに買ってみた。
百香青茶(中)20元
「糖?」と聞かれたから「少」と言っといたのに…甘い!
 しかし?甘いお茶に何かとんでもなく複雑な香りがついてて…意外に生き返る!分析するより先に飲み干してしまう旨さ!ありがとう「魔手」!

 さて?
 民族路の突き当たり,臨安路まで来てしまったが!?
 ここに至っても,花園夜市っぽい何物も目に入って来ないのはなぜ?
 路地の店でヒマそうにテレビ観てたオバチャンを見かける。そろそろ道尋ねてみるか。
 声をかけて振り向いたお顔は,いかにも性格悪そうなオバチャン。ヤバい…と逃げかけたら,その顔のまんま5分ほども徹底的に詳しく道を教えて頂きました。人は見かけで判断しちゃいかんね。
 どうやら行き過ぎてるらしい。さっき苺を買った海安路の交差点を北へ行くべきだったらしい。
 で,今5時半。海安路と成功路の交差点,華南市場ってマーケット入り口脇のベンチで途方にくれてる。
 ええ~!?ないんですけどお?

 さらに2人に道を聴きながら,海安路を北上して,ズンズン歩く。減量前なら死に絶えてたな,こりゃあ…。
 6時を越えた。
 歩き方の地図ならページ外まで来てる。一体どこなんだここは!?
 最後に尋ねたオッサンは「七点以后熱」と言ってた。7時回ってからが熱い!…つまり活気づくってことだろから,結果的に絶好の時間帯になったとも言える。まあ,ホントに着ければだけど?てゆーか,もう着ければどーでもいーや…頼むから早く姿を見せてくるよって感じ?
 6時15分,海安路三段,緑駅Motelって豪勢なモーテルの向こうに──ついに姿を現したぞ!花園夜市!
 ついでに言えば,どこなんだココは!?

※夜市に立ってた掲示板で判明した曜日ごとの夜市
星期一(月曜日) [十/ニ]佃夜市
  ニ 五大橋夜市
    五成功夜市
  三 六国宅夜市
  四・六 花園夜市
  四 六佳里夜市
  五 本淵寮夜市
(だけど,どこなんだそれは!?)

▲七佳の[虫暇-日]仁煎 50元

 着いてからは,江戸と長崎の敵とばかりに(?)食いまくりました。
 まずはこれ,カキオコである!!
 牡蛎は小ぶりで甘辛いソース。広島や,日生のカキオコには全くない感覚です。
 お好み焼きというより卵で巻いた感じだけど,このソースがとんでもなく軽みを作り出してます。

 二軒目はカニである!!
 店名は三兄弟。
沙茶蟹肉100元
 台湾で蟹なんて日本人だけだろ?とずっと敬遠してきたんだが…殻ごと食える。うっすらと衣が付いててこれに沙茶醤の絶妙なダシと香が付着してる。これが蟹身の繊細な味とちゃんとバランスを取る。上海蟹より遥かにワイルドな料理法に見えるが,韓国に続いて蟹を旨いと思えた二度目の体験になった。

▲大腸麺線(小)30元

 3軒目,ホルモン春雨!
 麺線のまったり甘くてしっかり辛くてちゃんと酸っぱい何とも言えない味だが,ダシとしては意外にすっきりしてる。後味がすっと収まってくる上手さがある。
 ひっきりなしに人が入り,それ以上に持ち帰りの多い店でした。

▲陳記の麻辣焼酒[虫累](原味)50元

 4軒目,巻き貝!
 調子に乗って大失敗!
 ムチャクチャに泥臭い貝です。これに何か物凄い臭いかんほスパイスが絡まってて──ハマれば確かに止められんと思うけど,素直に貪れる味ではない。
 いわば難度の高い台湾小[口乞]とも言えるので,一日にして奥義に触れたと…日記には書いておこう。残したけど。