外伝09♪~θ(^1^ )マカオ漂着編

[問題]マカオって今,中国なんか?
[事実]1997年の香港の時はえらい騒ぎだったから知ってるけど…マカオはどーだったっけ??
[検証]むか~し昔,世界史の授業で習った記憶では…香港もマカオも阿片戦争直後に出来た植民地だから,返還年も同じ辺りだったんちゃうのん?きっと…。
[結論]多分もう中国
▲2009年現在:香港国際空港からの直行フェリー路線図
といった手堅い推論を重ねたのが,広島空港へ向かうリムジンバスの車内。
 つまり出発当日。
 朝,家から広島バスセンターへ歩いてた途中,「いきなりマカオ」プランをふいに思いついたわけ。
 リムジン車内でにわかにリュックを探る。取り出した,ほとんど初めてめくる地球の歩き方・香港編によると――香港空港からマカオへは船の直行便があるっぽい。
 そいで,このマカオ。単にカジノの街ってだけじゃなく,レトロな広東の空気を残した界隈もあるっぽい。
 ええやんか,9日間の旅行の振り出しには。
 はい決定。香港空港からダイレクトでマカオ入域。

▲マカオ路地裏 海鮮料理店のネオンの前で

 要するに──恥ずかしながら,ワシ香港は素人です。
 トランジットでは香港の空港は何度となく使ってます。けど,街をうろついたのは1回きり。中国からタイに渡る時に,2日ほど滞在してエアチケット購入しただけ。
 海外歴多い割に,こんなメジャーなとこに,結構行きそびれてたわけで…。
 それを,今回にわかに行ってみる気になったのは──理由はたった一つ!
 広東料理。
 わし的なイメージで言うと「薄口中華」。台湾とか神戸や柳井,倉敷で,ちょっぴりつまみ食いした広東麺の味が――何か凄かった。
 …わし,この手の中華の味を知らんのじゃないか?
 1年留学してたのは西安だから,北の中華は少しはイメージできてるつもり。その頃の旅行で,上海や武漢,長沙辺りまではまあ知ってる。でもそれより南,中世以降に漢民族が入った広東エリアには,北とは全く違う中華があるんとちゃいまんの?
 そんな弱気と期待がなってきて。
 まあ…そんだけなんですけど!たったそんだけで9日間旅行!!う~ん優雅!!

 ターボジェット。
 この会社,ジェットフォイルを利用すると香港空港からマカオまで預けた手荷物を運んでくれるんだって。
 香港空港に降りる。トランジットエリアで航空会社のカウンターに行ってみる。強面のインド系のお姉様,船会社のカウンターでチケット買う際にバゲッジ・タグを示せと言う。
「But…I don’t have that tag」
 するとインド系お姉様,思いっきり眉をしかめて「Why?」
 ホワイっつっても「Becouse she don’t give me…」
 するとインド姉さん,無言でPC叩く。カタタ…タ,タ…。調子の悪そうなプリンター,英語だらけの紙を吐き出す。お姉様,ついに途中で止まっちゃった紙をバリッと破り「Take this!」
 …んなんで大丈夫か!?ロストバゲッジの悪夢は嫌なんですけど!?
 対面のターボジェットのカウンターへ持ってくと,すんなりチケットゲット。怖いんで,荷物は?と確認する。「Pick up at Macau!!」やっぱインド系お姉様が,も少し安心感のあるニッコリ顔。
 いーのか?まあ…ええんやろな。
 15時45分にオープンゲートらしい。どこへのゲートか全く判らんけど…。
 少し時間があるんで空港内のPacific Coffeeってカフェで一休み。
シングル・エスプレッソ 14HK$
 おおッかなりイケる。苦味はキツくないのに深みがある。カフェ文化は期待できるかも?
 辺りから日本語がやたら聞こえる。やっぱ日本人多いみたい。街中に出たらどーなんだろ?まあ仕方ないかな…。GWに香港だし…。

 ゲートくぐって曲がって降りてと言われるままに進んでく。
 列車のホームみたいなとこに出た。みんな乗るので,わしも乗る。
 列車,出発。しばしトンネルを走る。
 10分もたたないうちに,アナウンスが「スカイピアに着いた」みたいなこと言ってる。中国語では何とかマートウ(馬頭)って言ってるから,つまり港に着いたんだろう。
 再び皆さんに着いてく。途中に1つ両替所があったんで,当面の香港ドルをゲット。香港空港のマップ表示だと,イミグレ内にも普通は一箇所あるようだけど,どうも工事中で営業中止してたみたい。
 さらに進むと,船の止まってる岸壁に出た。乗り込み口で「到(ダオ)マカオ?」と聞いてみると「対」って答えたから,まあマカオ行きなんだろ。
 乗る。
 自由席みたい。
 デカい。200席ほどもあるか。
 前方のスペースの床に座り込んだ野郎が20人ほど。面白そうだから,すぐ近くの窓際席に陣取る。しかしこいつら…大喜びでトランプ博打してるんですけど。いーのか?トランジットエリアでギャンブルでいーのか?ってゆーか,さっきからキツい眼を奴らの一人が投げてきとるが…この周りの席だけすいてんのは…ひょっとしてガラ悪いからなのか?
 16時10分,船が動き出す。
 香港空港の鼻先をかすめ,海原へ。水面はやや濁ってる。香港とマカオ・珠海の両半島の間の湾なわけだけど…。
 予想以上に,広い。
 そう言えば…20年以上前だけど香港にいた2日のうち,物好きにも離島へ繰り出した。瀬戸内海の離島そっくりののどかな風景が記憶に残る。
 この香港・マカオって。都市圏であるだけじゃなく,一つのエリアって捉えるのが正確だってこと?
 行く手には,まだ水平線しか見えない。

 マカオが見えてきた。香港空港から約40分。
 この島も…かなりデカい。しかもビルだらけ。2つの島の間の橋も瀬戸大橋規模に見える。
 イミグレ突破。さあ市内へ…え?
 おお!!荷物だ荷物!忘れるとこやったがな!
 係員に尋ねてみると,イミグレ後ろの「香港機場行李認領」って場所らしい。
 え?
 荷物がフリマみたくごたごたに並んでるのは…台車に積んだ荷物をおっさん2人が手作業でバンバン降ろしてんのが…それか?
 コンベアじゃないんかい!
 荷物チェックらしき人もおらず客がどんどん取ってく…。
 今んとこ荷物なし。やっぱロストかあ!どーすんのよインド系お姉様あ~!!

▲世界遺産の教会とギラギラ電飾のカジノが隣合うマカオ中心部の風景

 荷物はちゃんと出てきた。自慢じゃないが汚さには定評があるわしのリュックを,わざわざ盗む奴もいなかった。
 ただその後――いや迷った迷った!
 3番バスに乗ったはいーが,まっすぐ市内へ出るはずのルートはグニャグニャに曲がってハイウェイに登って降りて…いくら地図を睨んでも,どこをどー走っとんのか全く分からしまへん。
 何よりバス停の名前が全く読めまへん。どーも漢字表示しかないらしいんだけど…セナド広場って漢語でなんつーの?それにホテルリスボアは「葡京」らしいんだけど,北京語読みの「プージン」じゃあ全然通じない!考えてみりゃ地名ってローカルな記号だから,日常会話は北京語で通じても,地名は広東語読みじゃないと通じないわけだ。それじゃ分からしまへんがな!!
 なぜか京都弁になって泣きそうになってたら…ふいに肩をポンと叩かれた。あら,後ろの座席の可憐な感じのお姉様?
「ここですよ」
 え?もう着いたのか?そんな近いのか?
 「是[口馬]?謝謝!」と飛び降りる。
 いやあマカオの方々,親切な人が多いよなあ!こりゃあ先行き明るいぜよ!
 でもここどこだ?キョロキョロしてたら,また声をかけるお姉様有。いやあもうマカオって親切なお姉様だらけ?するとお姉様曰く
 「すみません。〇〇ホテルはどこですか?」
 って?わしが聞きたいのもそれ!
 歩きながら地図で確認すると…そこはまだホテルリスボアのはるか手前。なぜ?
 信号多いし歩道は狭い。初めての街だし,土曜日夕方だからか凄い人数が街に繰り出してて,全然距離稼げない。結局,セナド広場辺りに着いて宿探してたら1時間以上かかっちゃって,荷を降ろしたらもう夜。
 お姉様方の善意に満ちた温かい眼差しが,忘れられない旅の思い出になりました。

▲夜の黄枝記店内

 とにかく飯!飯食いにきたんじゃ飯!
 セナド広場脇の黄枝記へ直行。時はまさに食事時,歩き方にも載ってる超有名店だから待ち客もいたけど「一人なんですけど!」とかいかにも観光客っぽくオドオドと頼んでみたら相席させてくれた。
鮮蝦水餃麺 23パタカ(1パタカ≒1HK$(香港ドル)≒130円。∴マカオ内ではHK$がほぼそのまま使える)
【→File02広東麺参照】
 満喫!
 さて短いマカオだ。夜だけど歩いてみるべ。
 セナド広場から北への繁華街は,それ自体が世界遺産のエキゾチックな街並み。エキゾチックっつっても明らかにポルトガルとも違う,何か奇妙な空気の街です。気取りはあんまなくて,マックとか果物屋台とか平気で営業しとるし,裏道に回ると「小食」って看板の天ぷら小店がズラリの通りに若い衆が群れをなす。
 確かに建物は白壁の教会とか歴史的な雰囲気を醸すんだけど,壁には香港と同じ漢字のドデカい看板が突き出してるし,その向こうに深夜急行で有名なマカオのカジノ群がギラギラネオンでそびえてたりして,でもそれが互いを台無しにしてもおらず,妙な調和を取ってて――何ちゅーか,程よく節操がなくて嬉しくなる街やね!
 気を良くして,さらにバス道(亜美打利庇虜大馬路…って長いから普通「新馬路」と言うみたい)を隔ててセナドの反対側の路地裏に入ってくと――

▲夜のマカオ屋台は怪しさ満点

 最初に目指した一泊140パタカ位の不気味な宿があった,新隆新街辺り。
 ちょうど長崎の中華街みたいなこじんまりした猥雑さの石畳の小径が,意外に整然と続く。基本的に条里みたくなってるとこに,僅かに斜めに交差したり突然L字に折れたりして,かえって迷いそうなところがまた楽しい。
 夜の戸張の降りた街角に,幾つもの人だかりが出来てる。幾つか覗いてみると――
 明記 牛[イ十]美食の屋台。真ッ茶色のグツグツ煮立つ汁の中にありとあらゆる臓物が入ってるのをオジサンとオバサンがせわしなく引っ付かんではハサミでジョキジョキに切り刻んでる。
 客対応がぶっきらぼうなんで一瞬気が引けたけど,あんまり客足が多いんで様子を伺う。20パタカだと串で30ならパックにしてくれるらしい。思い切って30突き出して「パックでね!」みたいなこと怒鳴ると,大陸中国の観光客と思われたのかすんなり1パックをゲットできました。
 その旨かったこと!
【→File04肉料理参照】

 こちらはさらに不気味な街角。ほぼ闇の中,わずかに赤色灯を点す屋台を,手に手にグラスを握る群集が取り囲んで,チビチビ口に運んでる。
 怪しい。
 ってか怖い!近づいていーのか?宗教色はないのか?
 薄暗い屋台の看板をどうにか読むと「萬家安中薬茶」。「みんなハッピー漢方茶」って語感か?ホントに宗教色ないのか?
 屋台店頭には,天安門華やかなりし90年代の大陸中国でお馴染みだった薔薇柄の魔法瓶とグラスが並ぶ。グラスには黒々とした液体が…宗教色はともかく皆様飲んでるからわしも飲む。
 グロそうなネーミングは避け,一番普通そうな五花茶(5パタカ)を一杯。
 夜そのものみたいな液体,グビリ。
【→File03漢方茶参照】

▲マカオ路地裏 黄昏時

 新馬路からやはり路地に入ったセブンイレブンでパンを買ってみる。
Cream BUN 5パタカ位
 「クリームパン」だろう。ポルトガル語でブンって言うんだろか?
 ふーん。歯応えが妙に粉粉しくて甘く香る?
 ただのクリームパンかと思ったら,クリームはすんごく薄い層で入ってるだけ。その代わりに生地が甘く香る感じ?
 一番当たり前のパンだったから味見程度で購入したのに,日本人的には驚きの味でした。
 ポルトガルのパン感覚ってことか?そんなに違うもんなんか?
 初日,このことだけは分かった。この味覚世界――わしにはまだまだホントに闇。