さてかくして夢幻の南インドから帰ったわけですけども…早いもので4か月の時が流れたのであるッ,ジャジャジャン!(三味線)。
完全に禁断症状なわけさあ!!
時折,誰もいない自室でコンビニヨーグルトをご飯にぶっかけて,深夜(…である必要はないけど)右手をネチャネチャさせてニタアッと笑ってたりと…苦労は尽きない。尽きないんだけど…
やっぱダメ!サンバルとチャツネで右手を使いたいぞおお!
こーゆー治らない重病を癒やすため,インド料理屋と見れば探したくってきました。なんだけど――幾らきら星のごとく回っても見つからない…南インド料理店!
まず,インド料理って称する看板はあっても,それが北なのか南なのか?ノンヴェジなのかヴェジなのか?そーゆーとこは食ってみないと分からん。ピュアヴェジなのか,ムスリム系なのか,ベンガリーなのかなんて細かいとこになると…まあわしにも分からんから食べても不明。
中華だって四川だ広東だってゆーのに,何であの13億人の料理を同じ「インド料理」なんて呼ぶんよ?そこは変だよ日本人!
次に,チャパティすら出す店が珍しい日本のインド料理屋じゃあ,北インド料理のターリーでもアルミ盆の上にランチが載ってる。従って,ライスだからって南インド料理と特定できん。ターリーが一見ミルスに似た形態で出てるのね。
空振り続きの日々に希望の光が消えかかったまま,年も暮れようとした12月末。
ついに――ついに我が隊は定食を「ミルス」と呼ぶ店をやっと見つけたのでありますう。オーマイガッ!阿弥陀如来はお見捨てではなかったぞよ!
けど。
これがまた,えらく辺鄙なとこ。沖縄県は読谷村の波平。
年末年始の沖縄旅行に来たとこで,今回は丁度原チャを借りてたんで――まあ目指してみる気になりました。
沖縄市から嘉手納へ広い米軍基地を横切る道路を突っ切り,読谷村役場のある半島部へ。役場のある集落では坂を登りつめたらガジュマル1本生えた袋小路だったりとか最後かなり迷ったけども…。
スーパー「かねひで」読谷店の目の前って覚えれば簡単だったみたい。嘉手納から来ると右手にかねひで,左手にこのお店。
店名はシマウマカレー。20席に満たない,いかにも沖縄だぞ!って感じの殺風景な店でした。(誉めてんのよ!)
▲シマウマカレー。このネーミングセンス好き!
迷わずミルスを注文。840円也。ライスとチャパティ(1枚)にカレーが3種(シマウマカレー,レンズ豆とチキンのカレー,フィッシュカレー)ついてくる。感激したのはこれらが,夏の南インド旅行以来,夢にまで見たあのミルス用の丸い金属盆に収まって出てくること!おお!!そこまで来るんなら,右手3本指の華麗なグチャグチャ技を見せてやってもいいぜ!!見たい?ねえ見たい?ねえってば!?
…って尋ねようとしたけど,2番目のカップル客が来店――危ないとこだったぜ‥かろうじて疼く右手を押し止めたのでした。
で肝心のお味の方は…まあまってとこ。南インド風のカレー気分をそこそこ回顧することはできます。
それでも確かに南インド的なヴェジ系カレーのテイスト。穏やかだけど何か芯の強そうな若いご夫婦が経営されてて,雰囲気もしごく良いでした。
ただ。店から出てレンタル原チャにまたがると…ちょっとクラッときます。どう帰りゃいいんだア???――やっぱりちょ~と遠過ぎるぞ!!
案の定,排気ガスに目と鼻をカピカピにされながら,メタメタに迷っちゃいましたとさ。
しかし!(ジャカジャン!)
ついに本命がその姿を現したのです!
大阪ウチナンチュを訪ねる旅行に出た正月の9日。久しぶりに関西に行くんだから…とダメ元でネットを検索してみると――え?何この店?
福島二丁目,亜州食堂チョウク。
少なくとも,南インド料理屋さんってことだけは明確に看板掲げてるみたいだぞ?
目的の大正駅周辺より先に,JR福島駅に直行しちゃいました。東西線新福島駅の南側…う~ん。チョウクは交差点ってヒンドゥー語だけど,もろ路地裏で分かりにくいッス。
例によって番地を頼りに何とかたどり着くと――外にちゃんと「MEALS READY」の表示があるじゃないか!!あるじゃないか!!
▲希望の光,チョウクがそこに!!
ついに発見!!沖縄以外じゃ西日本唯一の南インド料理店!(だと思う。これまで聞いた限りね…東京にも1店「きらら」って店があるらしいけど)
20席位のカフェ風の小店。
当然ながらミールス850円をシズシズと注文。…さあて何が出るかッ???
どんと出たのはバナナの皮をあしらった陶器の大皿。こ…これだけでも感動でッス!その上には――
ジャスミンライス。バナナ。そしてアチャール,ボリヤル,サンバル,ライタ。
か…完璧じゃないかああああ!!!完璧にミルスを再現してるぞおおお!
いや。ここまで数々の裏切り寝返り反逆のシャアを繰り返されてきたんじゃ。食べてみなきゃまだ分からんぞ…
そして一口。
南インドなんであります!!ミルスなんであります!!ちゃんとヴェジってて,ちゃんとインディカ米臭くて,ちゃんとさらさらの辛辛のタマリンド系の――救われたぞおおお!
しかもチャツネまで見事に酸っぱいスパイス系。博多のミランとどっこいどっこいの現地臭さです。――ここまでチャツネって書いてきたけど,店の人曰く漬け物一般は正しくはアチャールって呼ぶべきなんだって。素人はアカンね。
ボリヤルとサンバルはも~チェンナイで食ったアレそのもの。ライタまで…単なるヨーグルトじゃなくあの香菜の粒々(店曰くマスタードシードと何からしい)がちゃんと泳いでるのじゃ!
スプーンを置く。フ~!!最高裁判所勝訴確定的な満足感でおじゃるわオホホホホ…(?)と完全にラリッちゃいつつ。
カリーの付着したスプーンを見下ろす。唯一の画竜点睛は――コレだよ!
ここまで南インドってんならア,お願いだから…千円罰金払うから…手で食わせてエエ!
フラストレーションを溜めつつ,席を発とうとしたその瞬間!信じがたい言葉を聞いたのよ!(ジャカジャジャジャンジャン)
別の客「じゃあ…また来ますう」
店の人「ハーイ。今度は手で食べてみて下さいね!」
お?おお~!!
わし「手で食ってもいいんですか!!」
店の人,黙って後ろの壁を指差す。――手で食ってる客の写真がずらずらずらり。
店の人「手で食べていただけたら50円割引ですよ」
ば…罰金どころか割引いいい~!?
店の人「…早く言ってくれれば…」
これで引き下がれようか!?(いや引き下がれはしない:反語)
大阪ウチナンチュ料理と京都のおばんざいを食いまくった帰路,男は再び福島町に立った!(ジャジャジャンジャジャジャ~ン…ウルサい?)
店の人「今日は手で食べます?」
首を10回ほど縦に振ってました。
その後,小1時間の勝利と栄光の時は――筆舌に尽くし難い。
マスターはインド料理店で修行したんじゃなく,カルカッタの一般家庭で「スパイス使い」(って言い方がイカすぜ!)を覚えたんだって。
あの亜大陸で何億って主婦が作ってる家庭インド料理ってのは,レストランのインド料理と似て非なるもんらしい。レストランじゃあスパイスを漉したり(その他は理解できんかった…)とにかく何段もの工程を経るけど,家庭ではスパイス調合の壷のみ。でもそこにシンプルだけど繊細な意を用いる――
厨房に立つ二人はおそらくご夫婦。旅人としてもリスペクトできる敬虔さと誠実さを漂わせてる。
帰りの新幹線で,嗅ぐ度にスパイス臭いの香る右手3本指を,うっとりとくねらせたのでした。しょーこりもなく,次のドラヴィダ世界行きを夢想しながら。
▲4月になって3回目のチョウクへ行ったら,手食い写真の焼き増しを頂きました。これがまた,我ながら…恥ずかしい程の幸せ顔…。