外伝11 獨 Bad brakes discovered at high speed.
チェスキー→プラハの途中

▲ペンションの朝ご飯

 7時前に起床。さて朝クルムロフを散策である!
 …と出発しようとしたら,ペンションの地下の窓から中が見えてしまった。地下食堂,もうやってるらしい気配だぞ?8時からと聞いてたし,そもそも使う気がなかったんだけど…いい雰囲気だぞ?宿代には一応入ってたし…。
 一階から螺旋階段を下りた場所でした。アーチ構造剥き出しの暖色の部屋で心地よさも最高な空間。
 ビュッフェ形式だったんで色々試してみました。
ライ麦パン:まあまあ。日本ではなかなかお目にかかることのない,麦香が苦々しく広がる本格派ではあるが,ヨーロッパでは平均ってとこ。
ソーセージ:日本のよりほんの少し肉肉しい。脂ぎってはおらず,赤身の肉味の迫力で食わす。
ベーコン:こっちは普通。
バテ:市販の1人用パッケージだけど,レバーのコクが素晴らしい。この日本にあまりない類,狙い目か?
オレンジのマーマレイド:これがレアで絶品!果実の酸味と芳香がそのまま生きてはじけそうな逸品。明らかにホームメイド。オレンジがチェコで採れるとは思えんから,製法の妙なんだろけど…スゴい!
コーヒー:淹れ置きなのに…旨い!コクがスゴい深み!きのうリンツで飲んだのもそうだけど…どうも思想が違うみたいです。

 9時55分には,クルムロフのバス停に立ちました。
 3時間弱の街歩きとなりました。
 スゴい街だった。
 冬は雪に埋もれるんだろう。小雨が降ったり止んだりの天気だってこともあろうが,既に今の時期に上着がないと寒い。屋根の勾配がその厳しさを物語ってます。
 固い岩盤に位置するらしく,街中のそこここに岩肌が露出してる。モルダウの急流がこの岩盤を避けたS字蛇行の上に街がある格好で,城が聳えてる一際大きな屏風状の岩盤との間をかろうじて流れがすり抜けてるわけです。
 道を間違えて,西側の新市街から入った。この辺もペンションだらけだけど,生活感は十分にあった。朝の通勤者や通学の子供,犬の散歩とすれ違う。→クルムロフの街並み写真集
 まさに開店間際,軒先を片付けてる小店があったんで,今回初のタバコ購入。
Sparta classic 75kc
 この現地ローカルのタバコ選びって作業は,いつもながら完全なる運試し。参考情緒は基本的にないわけだが…幾つかヴァージョンがある中のクラッシック。350円以上…日本より安いが,この位には物価が高いんだろか。それとも税金の違いか,ただの選択ミス?
 ただ,雰囲気としてだけど,それほどボってやろうって空気は感じられない。

 やや広めの川をアーチ橋で渡る。既にどこだか分からない。中洲の中には変わりないはずだけど,なだらかに傾斜するこちら側にもかなり広く市街が広がってます。
 にしても…いい街やねん。それぞれ個性的で全く飽きさせない。→家並み写真集
 思いのままにうろついてたら,唐突に,昨日と逆の方向から中央広場へ出た。
 この中洲エリアの街路構造は,おおまかには広場から放射状に伸びてる何本かの道を基本にしてるらしい。ただ,屋根裏を含めて3階立て位の赤屋根の建物の間の見通し悪い空間が,グニャグニャに伸びてるから,迷路のような印象をどうしても受けてしまう。
 また脇道に入る。やはり曲がりに曲がった先で,城の西側のトンネルに続く橋に出た。これをくぐって北側に出ると,すぐに新市街が広がる。
 川に沿って時計回りに回りこむと,城入り口に出た。川沿いの柳が目に鮮やか。
 城のゲートは9時からしか開かないかと思ってたけど,掃除の兄ちゃんに聞いてみたら塔に登れないだけで入るのは構わんらしい。
 荘厳な城門をくぐる。霧深し。息白濁。

▲Havelska koruraのお食事。この日のプラハで伺った名店である。ただし本文中を探しても無駄で,その正体はついに次章で明かされる!次章を待て!

 クルムロフ城は,モルダウ川添いに屏風のように建つ。
 門からの道は東西に,砦の下部を幾つもくぐるトンネルになって,うねうねと伸びてく。この時間はまだ時々人とすれ違うのみ。
 トンネルが途切れる度に,クルムロフの街が見下ろせるようになりました。

 やっぱ…とんでもない街にいるらしい。
 曙光。凝縮された赤屋根のカワラ模様が,モルダウ沿いにS字に蛇行して不規則に塗り潰してる光景は…美しい,と言うより凄絶なものがあります。
 城から出る他の道が見つからない。どん詰まりでも出れないらしい。まあ城という目的上当然と言えば当然か。
 引き返して,昨日歩いたメインストリートに出る。満喫。ゆるゆると宿へ向かう。
 このストリート沿いの店構え,やはり注意深く見れば見るほど,奇妙に面白い。何かチェコ人のセンスって…一言で言えばムチャクチャにグロい。
 どこかの芸術家のモーメントらしいが,地面や壁から生えた黒い柱に出くわした。最近老眼が進んじゃって…柵か?消防栓か?それとも自転車チェーン用の設備か?と凝視したら,人間の指でした。剥製にしてはデカいから,多分模型だけど,不気味過ぎて触る気にもならん。芸術ってゆーのか…絶対こいつらブッ飛んどる。
 このスケキヨ指を,大して広くないこの街なかで3箇所は見た。
 間違いなくブチ切れとる。
 気づいたのが昨夜だったら夢に見たかもしれん。
 この国の絵本を買ってみたいと,ふと思った。きっとムチャクチャにグロい…って,そう言えば浦沢さんの「モンスター」の絵本ってチェコの作家が書いたんじゃなかったっけ?

 チェコで初めての街としてはあまりにも至高過ぎたクルムロフを後にする。
 バス運賃はブディジョヴィチェまで32kc。今,車内暖房が入った。
 さて今日のポイントは…観光客の多いプラハで宿が見つかるかどうかです。
 ダメなら最悪ドレスデンまで突っ走る覚悟だけど,歩き方を見る限り,ドレスデンも安宿に恵まれてはいないみたいなんだがな~。
 我が道行き,未ださっぱり先行き見えず。好い旅路です。
 左手,草原に馬十数頭がゆったりと草を食む。すぐ横にキャンピングカーの群れ。

▲Ovocny svetozorで購入したケーキ2つ,MedovnicとOriando dort。プラハの人気店。次章を待て!

 プラハ行き列車は11時7分発のがあった。
 切符を購入。241kc。行き先にはPlaha hl.m.と表記してある。
 座席は予約制かどうか…よく分からん。検札マシンも見当たらんから通してないが…こんなんで許してくれるだろか?
 コンパートメントタイプ。6人掛けに4人,兄ちゃん,オバチャン,お婆さん。
 11時27分,車掌のオバチャンが検札に来る。チケット見せると,ぼそりと一言。
「憎い…」
 えッ!?ワシか!?と顔を上げると,そこには血走った眼で避けた口を開けた車掌が今まさにアイススピックを振り下ろそうと…はしてなくて,まあ特段普通な顔だし。ハンコも押してくれたから多分乗車に問題ないと思うし…ならば,なぜ憎いのか!!?
 彼女との間にワシには隠されてきた国境を越えた愛憎が…ないとすれば,何か別の意味のチェコ語だったんだろう。が,それは何だ?そっちの方が気になるぞ!!?

 考えてみたら,直前までチェコ来るつもり無かったんで…チェコ語全く知識ゼロ。挨拶も知らん。
 少々不安になってきた。チェコ2日目の列車内で,クルムロフ以外の歩き方を初めて学習する。――明日には出国予定だけどね。
 それで知ったが,プラハには2つ中央駅があって,切符に書いてある「Plaha hl.m.」ってのは「hlevni nadrazi」駅のことらしい。で?そりゃ何て読むんだ?ふれぶに…などらじ?
 とにかく,プラハ本駅みたいなとこらしい。もう一つの旧東欧発着の駅は「nadrazi holesovice」。などらじ…ほれそぶち?
 一夜漬け…どころか一晩も漬けてない状態で頭が混乱してきた12時40分,さっきの「憎い」車掌のオバチャンが「ちぇんじぶす!!!」と騒ぎ立て始めた。
 ブスに変われ!?
 お前なんかブスだからチェンジ!?
 …じゃなくて,何かプロブレムが起きて代行バスに乗れ,と言いたかったらしい――ってことに,車掌も去って,どーも車内が静かだぞ?と立ち上がるとコーチにワシ独り状態だと気付き,オロオロしてたら車掌が帰ってきて,憎しみを込めて(妄想)追い出されたんだけど。
 訳分からんままバスに乗ると,英語を喋る夫婦がエラく腹立ててます。周りに聞くとプラハ行きの人もいる。まあいーんだろ。しかしまあ,さすが旧社会主義国。
 ほどなくバスが走り出す。一面の牧場と畑の中を,それなりに快調に走り始めました。…が,高速でも何でもない普通の道路。…プラハでの散策時間は潰れるな,こりゃ。風邪がひどくなってきたし,今日も車内でゆっくりするべ。


▲Zabka a.s.で買ったMADETA JIHOCESKY EIDAM uzeny platkyとSKVELA CENA Kozel。コンビニみたいな店です。次章を待てったら待て!

 プラハで防寒着買わないとやっとられんな…という寒さになってきてます。
 にしてもココ…どの辺りなんでしょ?半分位は来とるんかいな?
 Brezniceという駅で降ろされた。ぶれづにつえ?チェコ語の語感にまだ馴染めん。さらに,地図を見てもどこなのかやっぱし分からん。駅舎はしっかりしてるし街も大きそうだし引き入れ線路もあるんだが?
 まあ,バスで連れて来たんだし,その間はプロブレムなんだから引き返すわけじゃあるまい。いつかはプラハに着くんでしょーよ。
 にしてもよくそんな都合よく列車を用意できるのか?
 様々な謎をよそに,視界の中にやや家屋の数がわずかに増えてきた。13時2分,再出発。
 今度の臨席は,乳母車みたいのを引いたお婆さん。仄かな笑みを常に湛えてる。チェコの年配者って,どうもすごく人当たりいーんだよな。
 13時20分,Pribram。一瞬プロブレムかと思ったが…もちろん違う。地図をみるとやっと確認できた。プラハ南西約50kmというところか。ここから先がプラハのある平原域になるはず。
 どうもチェコという国は,3つの盆地域から成るようです。即ち,西のプラハと東のブルノ,それから規模はずっと小さいチェスキーの3エリア。
 ブルノは正確には扇状地のトップで,スロヴァキアの首都プラチスラヴァやウィーンのある大きな盆地の一部。
 チェスキーの主流であるヴルダナ川の下流がプラハだから,この2つの盆地は1つの流域でもある。対してブルノはドナウ川の支流域。
 つまり,チェスキーの辺りは,ドナウ水系とモルダウ(ヴルダナ)水系の分水嶺に当たる地域らしい。分水嶺域がフラットな高原状態なのは,ドイツ-オーストラリア国境辺りと似てる。
 因みに,だから水がいいのか,ブディジョヴィチェはビールの産地。驚いたが,この地名がバドワイザーの語源だと言う。「ブ」と「ヴ」の辺りが似てると言われりゃそうだが…分かるかそんなん!
 といった知識を今勉強しとるいい加減さに,自分でも呆れておりますチェコ2日目の記録,まだまだ続きます。

▲Zabka a.s.で買ったブロートフェンとサラダ。だから次章を待て!
なお,待たす位なら文章と合う写真載せろよ!と思うでしょ?いやあ~ちょっと写真と文章の勢いが合わなくて,しかもそれ直す気もなくて…まあちょっとした手違いですな。こーゆーのも味があって宜しいかと。
(「かと」じゃねーよ。)

§SixWord:速度をあげたとき,ブレーキの故障に気づいた。