油煳干青∈外伝12∈辣∋拾弐月参拾号之二 成都二日目∋糟酸麻蒜

▲武候祠錦里の三大[火包]。大人気だけどアンテナ1本。

▲同雪梨湯。老舗オーラが充満し,この写真も「撮影禁止!」と怒られたけど…アンテナは1本かゼロ。

 茶館ってとこには,実は初めて入りました。
 恥ずかしながら留学時代にも全く行ったことありませんでした。
 文殊坊という歴史的なエリアの中庭内に見つけた茶館へ。日本や欧米での喫茶店みたいな使い方は,まあできる場所です。雀荘と一体化してる見るからに濃密なとこもあるみたいだし,日本の「お茶屋」と同列もあると聞くから,ちゃんと選ばないとコワいですが。
 茶に加え,湯がポットで出る。茶葉が古くなるまでいくらでも飲んでられる。飲茶楼との違いは食い物がほぼない点。茶が中流階級以上の奢侈品だった時代からの,こちらの方が古い形だと思う。香港の田舎飲茶の風情に通じる。成都には自転車屋かと紛うばかりの半露店や,道路の路肩にテーブル並べただけの完全露店もある。
 少し寒いが屋外の席に陣取る。戸外ならタバコもOK!
 竹叶青 The Best Banboo Leaf Green Tea 28元 →写真
 全然知らない種類名です。「これがお薦め!四川のお茶よ!」(的ニュアンス)と割と可愛いチャイナドレスの女の子が示すのを選んだだけだけど――何だ?ホントに美味い!
 メニューでは「緑茶」のページに乗ってるんだが,日本の緑茶に似ても似つかない。水のせいだろうか?甘味も香りも硬く,層の深い味わい。苦味がほのかで上品というか…甘く柔らかい日本茶より遥かに分かりにくい味覚です。
 茶葉の形も特徴的で…水草みたいに膨れてる感じで,見た目,水槽の中みたいな雰囲気になる。初めての味だと思うけど,留学中に飲んだことのあった茶だったっけ?微かに,不思議なデジャヴを感じるお茶です。
 ほかの「中庭特推」として挙げられてるのは――
陳年普[シ耳]108元
観音王108
鳳凰単[木人人]48
精品竹叶青38
南江金銀花28
 日本に入ってるのは高い茶葉らしい。つまり,味わいの丸い,日本茶類似の類い。鉄観音にも名残があるような中級中国茶の「硬さ」を有する茶葉は手に入れにくくなってるらしい。

▲「張飛牛肉」の旗が翻る武候祠錦里。紀元前から奇跡的に残ってたこの肉を食うと無敵の腕力が…にしても人肉売買はマズくね?ということじゃなく,単なる牛の干肉でした。
ちなみに中国人は干肉大好き。あちこちに名物があるけど未だに何が旨いのか分からん。

 日暮れの後,宿の北側,文殊坊界隈はネオンに満たされる。
 ネオンの具合は場所がらギラギラっていうんじゃなく,赤黒く暗い雰囲気で,何となくエッチなムード。
 と言っても実際はアブナい空気はなさそうなんでウロウロしてたら,菓子屋を見つけた。インドのミターイ屋みたいにショーケースの中に何種類も中華菓子を積んだ店。
金[サ/平]果餅屋文殊院店(英語名:Aplle)
麻香[酉(ノギヘン)]2個
老婆餅 1個
計3.50元
写真
 いずれも「店長推介」表示でガラスケースの一番上に陳列されてたのをチョイス。
 それほど売れてる店にも見えなかったんだけど,「麻」の一文字に惹かれた。
 宿で口に含むと…あらら?全く痺れる感じはない。
 生地は例のカスカス中華菓子。白胡麻が外側にまぶしてある。
 アンは根菜類らしいふくよかな甘味。蓮根?砂糖っぽい甘さは全くなく,ごくナチュラルな,上品な甘味。いや…甘味とは別に,何か…華やいだ香りがあるが!?
 これか!?この菓子の「麻」とは!?
 温和なアンに,あの麻辣の辛みから花椒の華やぎだけを何らかの方法で抽出してアンに溶けこませてある?ただ,それが微妙過ぎて今ひとつ分かりにくいんだが…発想としてはあり得る。
 つまりコレは――「麻」を単なる辛みじゃなくアクセントとして使うってスタンスで――そもそも麻婆豆腐の「麻」も,四川人にはそういう位置づけで取り入れられてるんじゃないか?
 対する老婆餅。香港の老婆餅とは全く違う。外の生地はやはり中華菓子だけど中は…甘柿だろうか?熟した果実めいたアンで,砂糖はもちろん小豆の痕跡もない。やはり非常にナチュラルで上品な口触りです。
 何を今さら――と我ながら思うんだけど…中華菓子って,この辺の微妙さをちゃんと味わって理解してくと,西洋菓子どころじゃない深みある世界かもしれない。
 この夜は中国茶はなかったんだけど,思い浮かんだのはあの硬い味覚でした。いずれもお茶にピッタシの荒削りな甘味!
 この中国茶と甘味の取り合わせ,この日から1年を経た現執筆時点でも引きずってまして――毎週土曜日はコレなしには終わらないってことになっちゃってます。

▲チベッタン街で初購入した農夫山泉。ちゃんと硬いミネラルウォーターで以後お気に入り状態
(後日談)・・・街中にコイツが溢れかえってる現在,これを写真に撮ってお気に入りにしてること自体がなかなか歴史的記述である。

▲パンダのタバコ。例によって物凄い種類数の中から,四川っぽいやね,ってことでチョイス。
なお,タバコの世界シェアは今や中国が独走状態。FAO統計では,全世界の葉タバコ生産量600万トン余のうち3割以上が中国産で,直近数字ではまだまだ増加傾向。
ただ,同じ漢民族の台湾が屋内全面禁煙に踏み切ったのを横目に見てか…空港とかの公共施設では締め付けが始まってる気がします。