外伝08〓’Ⅶsette’Torutelini!!! トルタリーニ


▲ルッカ鉄道駅ホームの払暁

 このドミ…結局その日のうちは,ほとんど相部屋の人々帰って来なかったみたい。朝方ゴソゴソしてたから,全員朝帰りなの!?どーゆー生活してんだ?
 5時,ポケットの携帯が振動。
 宿のカウンターへ。真っ暗…で誰もおらんど?昨日確認したら居るつーたじゃん!叫んでも出て来んど!?ひええ~パスポート預けとんのにイ!
 カウンターで家捜ししてたら唐突に眠そうな男出現。出会い頭,完全にコソ泥扱いでした(当たり前だな…)。
 てな訳でかなり遅れて宿を出る。真っ暗闇の迷路の町。当然迷った。しかも完全に迷ってしまって…泣きそうでした。通行人がいないんで道も聞けないし,街灯少ないから街路表示もよく読めん。結局来た時の信号機のあるメインロードをたどって…何とか城の南側に出た頃には6時半近くなってました。
 駅の電光掲示は「Ritardo delay’5」。つまり列車が遅れてたんで何とか乗車できた。結局8分遅れで7時近くにルッカ発。
 ふ~う!
 朝焼けが美しい。今日もよく晴れそうッス!!

 昨日買ったボローニャまでの切符はε8。
 2回の乗り継ぎがあるはず。時刻表読む限り10時半には着くはずだけど…まあなるよーになるであろ。
 初のR列車(鈍行)。席はどれも自由席らしい。toiletteがliberaだと室内モニターにあるから…多分ね。
 車内放送は結構ある。中国やインドとはやっぱ全然違う。「フェルマータ」の後に言うのが駅名らしいから,駅名を視認できる左側の窓側席に座って耳をすませてりゃ何とかなりそう?
 7時35分Pistoia着。カッフェをあおって1番ホームで待つ。この駅の時刻表でも確認したから,ここから8時25分に発車する列車があるはずだけど?


▲ピストリア駅に入ってきたR列車

 8時20分,列車到着。これだよな?
 一緒に乗り込むおばあちゃんに「ペル・パレッタ・テルメ?」と確認してみたけど,発音が悪いのかよく通じない。何度か目に「si」って返事は返ってきたから…きっとこの列車に違いない!この列車…なのか?
 列車は2車両。今この車両には3人しかいません。…ってホントに大丈夫かあ?
 列車の外面はなぜか異様に落書きだらけで不安感を煽る。前面や窓にまで書いてあるのは…デコレーションなのか?にしては極端にサイケだけど?
 ただし座席はかなり上等。日本の各駅の方が貧相なほど。感性の違いかね~。

 8時27分。列車が動き出した。
 進行方向が列車の入ってきた逆方向ってことは,折り返しのピストン運行臭い。
 ピストリアを出て10分もすると,列車は既にスンゴい山あいを縫って進み始めた。トンネルと森だらけで,たま~に数軒の集落が現れるのみ。
 期待通りじゃ!!フィレンツェからESに乗るノーマルルートじゃ絶対見れない,JR三江線とか飯田線並みの超ローカルな山間線。
 15分もすると,列車はかなりの高度に至ってます。見下ろす眺望は四国祖谷山並み!
 森は雑木林。植林の形跡は見受けられない。自然林なわけだ。
 8時45分,Corbessi着。って駅しかないぞ?当然乗ってくる客もないし?
 8時55分,San momme。停車時間は20秒ほど。京阪並みの短さじゃ。
 9時ジャスト,pracchia。辺りにはAcpua Silvaってミネラルウォーターらしき工場しかない?いや駅向こうには100戸位の家並みがありました。初めての集落っぽい集落ね。
 ここを出ると渓流沿いを走る。進行方向の北に流れ下ってる。ってことはもう分水嶺を越えた?南側は険しいけど北側はなだらかな山系なの?確かに,谷は相変わらず深いけど,傾斜は緩やかになってきました。
 9時6分,Bで始まる駅名。渓流しかない。ほんの10秒ほど停車。
 9時10分,Molino del pallone。戸数30ほど。渓流を挟んだ爽やかな集落。
 ちょい焦り始めた。──確かポレッタ発ボローニャ行きは922発だったよな?そろそろギリギリじゃねえか?ちゃんと乗り継げるのか?

 9時20分,parreta terme着。
 ホームに駆け下りる。向こうのホームに止まってる車両2つ!地下道の途中に時刻表を見つけて速攻でホーム番号を確認,「ペル・ボローニャ!?」と手当たり次第のイタリア人に聞きまくりながら乗車。待ち合わせを考えてか,列車は実際は9時24分に発車。進行方向はとにかく北みたい。
 ふう~。初心者にゃキツい!
 かなりデカい街です。この地方の基幹集落みたい。駐車場には200台以上の車両有。
 列車は緩やかに下る丘陵地を走り始めた。
 初めて検札が来る。緑色ジャケットの車掌とポリスらしき2人。
 ためらいなくチケットを見せる。車掌…顔をしかめる。え…!?
 英語で説明してくれたところでは──日本人君!ダメやんコレじゃあ!「イエローマシーン」でちゃんと日付を刻印せんとあかんでえ!!じゃないと「ペナルティε44」やでえ!!
 …ルッカで一応機械を通したつもりが刻印されてなかったみたい。
 せやからな!刻印の日付と時刻,ちゃんと確認してや!じゃなきゃ怖いでえ!しゃあない,今回は見逃しといたるわ…とウインクして頂けました…。
 ごっつあんです…もっと勉強させてもらいますう!


▲ボローニャ駅にて。忘れちゃ怖い自動検札機

 9時42分,Verdoto。千戸はあるかなり大きな街。乗客もかなりの数になってきました。
 9時49分,pioppe di salvaro。アパートだらけ。ボローニャのベットタウンってとこか?
 9時46分,Morzabotto。
 10時5分,Sasso marconi。まだ辺りは自然の支配権の方が強いけど,もう普通の街になってきました。傾斜はほぼない。既にロンバルディア平原。行く手に見える丘陵はもうまばら。
 10時14分,Casalecchia di Reno。多少大きめの駅。既に町中を走ってる。ただし緑は豊かです。
 10時20分,Castel何とか。道路が3車線になった。
 10時22分,Bologna bolgo panigle。ボローニャ名が入ってきたにしては,辺りがどーも都市っぽくない?工場がポツポツ立つ郊外の景観。
 ボローニャ着は予定通り11時近く。

 デカい街!!初めて都会って感じのイタリアの街。
 ここまでの町は古いからか,あんま都市っぽくなかったのね。
 駅からマッジョーレ広場方向は,アーケードが続いてて迷いようがなかったい。アーケードってもそれ自体が中世的建造物。
 メインストリートの路地裏,ウゴ・バッシ通りのパノラマって宿に落ち着いたけど。ε50,4階(ってゆうかTとAって階の上が初めて1階),おばちゃんムチャクチャ喋り屋…。
 でも部屋はなぜか3ベッドの広々空間でセキュリティも入口+2ロックでばっちし。


▲一度入ってみたかったSSSってファーストフードチェーン店で昼飯。ハム・卵入フォカッチャ。十分食えました。

 すぐ近くにあるってことだったんで,とりあえずウゴ・バッシ市場に足を運んでみた。
 こりゃあ…とってもコテコテな市場!
 専住の屋内集合店舗型。日本の京都や大阪,高知並みの所狭しとゴッタゴタに並んでる。業者用ってより完璧に生活市場。
 なんだけど,品揃えが日本と違うから中東や中央アジアのバザールの方が近い。肉や乳製品がゴタゴタに積まれてる。中東との違いは,それでも野菜が相当量売られてる点。
 けど,ローマやフィレンツェとも違う。品揃えが圧倒的に豊富なの!特にチーズはスゴい多彩。それも1件当たりの大きさがスゴい。ほとんど樽です。
 あと,魚屋も初めて見たな。


▲ウゴ・バッシ市場の魚屋


▲同八百屋


▲同チーズ屋

 マッジョーレ広場まで路地を迷いつつ向かってみる。
 とにかく赤い!!
 晴天下,レンガの真っ赤っ赤がギラギラに目につく!なぜかカーテンや垂れ幕まで赤い!!赤過ぎじゃ!赤けりゃいいってもんじゃねーぞ!
 この赤って色,ボローニャのシンボルカラー的な位置付けらしくて…この町のジェラート屋には「ボローニャ」ってトッピングがある。一目で食欲を失わせる赤と群青のエグい色!!

 見渡す限り農地の広がるロンバルディア平原。やっぱ他と比較にならない物資の豊かさ!
 ローマやフィレンツェって,山間地ゆえに他から食料を奪うしかない土地だから軍事大国化した,中国の北方遊牧民みたいなもんなんじゃないの?
 ウーゴ・バッシ市場以外にも中央部のピアッツァの南東路地に市が出来てる。こっちは自然な感じで雰囲気がメッチャ気に入った。この後も何度となく立ち寄ったけど,値段も比較的安いみたいでした。


▲ピアッツァ脇市場の肉屋店頭


▲同八百屋店頭

 この市場界隈でトルタリーニを食わすロベルトってトラットリアを見つけたんで,昼飯にしました。ボローニャ地方特有のショートパスタ。
Tartellini panne e prosciutto ε4.50


▲トラットリアのトルタリーニ

 これ…何てゆーんだろ?
 ムチムチの,小龍包みたいなパスタの中に入った生ハム。茹でてあるにも関わらず,生クリーム系のコテコテのソースに浸かってるにも関わらず,まだ生々しさを残し,ハムの誇り高い芳香を主張してる。
 煮込みなのに瑞々しい味覚。鮮やかに香り立ちながらもホクホクの食感。
 これは確かに──他にない美味!
 何でこんな鮮烈な加工品が可能なんだろう?生きてるのは小麦の加工品のパスタ生地,それに肉の加工品の生ハム。二次製品をさらに掛け合わせてる。それだけで大して強烈な調味料もなしにこの味を作り出してるわけだ。
 何かイタリアンのイメージが初めて見透かせた気がした。
 それは──思想なんだ。素材を二転三転させて生かしきる。それによって,基本的には柔らかい,けれど個性的な味覚を生む,この構成力。
 もちろんその背景には,この土地の豊穣さがある。この日の食卓に出た酢の銘柄──Ponti GLASSA Gastronomica a bace di aceto balsamico di modena。
 一緒に頼んだインサラータにかけて食った。言葉はよく分からんが…とにかくモデナ産。ロンバルディアが生み出した加工品の地の力強さが,このレベルを生み出してる。


▲ウゴ・バッシ通り近くのコープ

 コンビニのないイタリアにもコープはあると聞いてたけど,このボローニャの宿近くで初めて見つけた。
 間口はかなり小さい。入ってみても店舗面積そんなにない。奥に長くL字に折れてて途中に段差がある,使えるとこ無理やり繋げて店にしちゃいましたパターンのスペース。
 ただし,品数は豊富。惣菜コーナーの充実度は日本以上。肉や乳製品以上の面積を占める野菜コーナーには,ズッキーニやトマトが土つきのむき出しで積まれ自分で計って値札をつける形式。コープだからか全体的に極めて質も良い。明らかに良心的なの。
 んでもってトラットリアとかと違って…恐らく非常に適正価格。ユーロ移行に伴う便乗値上げをやらなかった業界なんだろな。ε8で水2リットル,ワイン大瓶,サラダ,ヌテッラ,パスサミコ酢まで買えた…ってスミマセン,買い込み過ぎ。
 何だか。イタリアってチャンと選べばやっぱ日本より全然安い!?──トラットリアに不信感が益々増してしまう。
 買い込み過ぎたんで,その日の晩飯は成り行き上コレに。味も十分満足!


▲宿の食卓(アチェト,ヴィーネ,インサラータ)

 値段と言えば…ヴィーネ(ワイン)ってバカみたいに安いのね!!イタリアじゃミネラルウォーターみたいなもんだって聞いてはいたけど,ホントに水よりほんの少し高い程度。コープ価格なら大瓶がε1.5を切る。気取って飲むよなもんじゃない。種類も多彩で壁一面置いてある感じ。
 あと…ついに見つけた噂のヌテッラ。チョコとナッツのクリームなんだけど…CMによると複数の野菜エキスが溶けてる。魔性の深みがあってスプーンが止まらない。完全に中毒性の味覚!


▲魔の小瓶 NUTELLA