外伝09♪~θ(^1^ )厠所恋慕編

▲香港島の街並み 寸景

「ぶっかけ飯の味が忘れられない…」
みたいな日本語が入り口に貼りだしてある。
 後から思えば,この貼り紙に惑わされた弱い心が,誤りの元だったわけで。
 香港尖沙[ロ且]楽街の広東焼味餐庁。この焼味ってのも広東名物らしいんで,やはり逃せない!朝からやってるみたいだし!ってことで2日目の朝7時過ぎ,勇んで向かったんである。
 席につくと店のおばちゃんまず一言。
「朝は焼味ないよ」
 あれ~?
 初手から撃沈!?
 といった動揺を全く顔には浮かべず,「そんな素人でもあるまいに…モーニングのDをよろしくベイベー」みたいなこと言わざるを得ない展開に追い込まれてしまったじゃあないか!しかもバレバレだし!!
早餐D 21HK$
沙[父/多]牛肉麺/餐肉炒蛋/牛油方飽/紅茶
【→File07香港早餐参照】
 思わず一句。
 香港で 続けて二食 インスタントラーメン
 そう…早餐Dのメイン沙[父/多]牛肉麺の実態は!牛肉をちょっと乗せたインスタントラーメンでした…。
 もしかして…これって素人丸出しかあ?
 しかも!食ってたら…ムショーに小便したくなってきたし!
 キャッシャーでトイレを尋ねる。鍵を渡される。「男」とでかい板切れが付いてるキー。戸惑ってたら裏口を指差される。奥の汚い通路を突き当たりまで進むと,確かに店の名前と「専用」表示のドアがあった。自動ロック式のがっちししたトイレ。
 浮浪者の住み着きを警戒してるのか?香港のトイレって一種の財産感覚らしい。
 店を出てタバコ吹かす。すると?今度は何か腹がぎゅるぎゅるぎゅる…。
 …ヤバい!今度のは大きい方だ!下痢っぽい感じで,突然ながらエマージェンシーである。
 海外のいつもの要領で,適当なホテルにアタックする。すると――フロントのお姉様がニッコリ「My Geast Only」って氷の微笑。
 ああ~も~ダメ!
 ってことで,やむなく自分の宿に戻って無事出産しました。
 うーん…宿の近くだから良かったけど!?これ出先だったらどーすりゃいーの?ホテルマンがチラッと時計を見てたから,昼時なら何とか貸してくれるんだろか?
 こうして,マイ旅行史上かつてない危機にさらされることとなった我が香港滞在である!ハードルが高いほど燃え盛るツーリスト魂!さあ来るなら来い,尿意よ!そして便意よ!
 ただ,出来ることなら来ないでほしい。来ないで下さい。生意気を言って申し訳ありません。どうぞお引き取り下さりますと幸いです。

 気を取り直して(?)広東道へ。
 しばらく目的地辺りを迷う。どうも道路が高架になってる辺りみたいなんだが,高架なんだから飲食店なんかあるわけない。じゃあ?ひょっとしてガード下なのか?
 探すと,広東道の下が市場になってた!道路の位置関係から見て,どうも市場をまたぐために高架にしてるらしい。つまり歴史のある市場。
 中は薄暗い。体育館並みの建物だけど高い屋根も壁もボロボロ。そこに人間がわんさか詰まってる。いや,市場は半分ほどしかなく人も少なくともこの時間には疎らだったけど,残り半分がフードコートになってて朝の通勤者らしき多彩な風貌の香港人が飲み食いしとる。
 その中に目的の徳発牛肉玉を見つける。メニューは牛丸,牛[月南],牛[イ十],牛根に粉・麺・米が選べる。一律20HK$。【→File04肉料理参照】
 白状すると…とにかく…怖い!ガード下の暗い空間,その一番端っこのフェンス脇!フェンスの向こうにウロウロしてる影は野犬っぽい。
 ただ,客は平気でくつろいでる。安いし,どうも庶民的な味は多そうだけど…香港2日目の新入生にはちょっとハード過ぎる空間した。

▲ガード下の屋台群

 ネイザンロードで正露丸を28HK$で売ってた。
 セブンイレブンでは40超えてたはずですけど?――ま,正露丸って腐らないだろ?香港,明らかに食い過ぎそうだし,一瓶購入。
 そのまんま地下鉄に乗る。上還で降りて,蓮華楼に…二度訪れることになるこの店に,かなり軽く,フラッと入ってしまいました。
 初飲茶体験。
 47.5HK$。スゲー食空間でした…。一発で飲茶にハマってしまった!
【→File09飲茶参照】

 中環の山手側,Wing wah Lane。
 漢語名は不明。ってゆーかまるっきりそぐわない。
 India curry clubってインド料理屋を探してきたこの辺り,完全に無国籍状態。ロシア,ベイルート,タイ,イングランド,マレーシア…なぜか「キョト ジョー」(京都のジョーらしい)って店まで。ムチャクチャで嬉しいけど,あんまり開いてる店がない。夜の街か?

▲Wing wah Lane辺りの無国籍エリア

 うしッ,トラムに乗れたぜよ!
 大人一律2HK$。オクトパスを降りる時にピコッとするだけ。中還から湾[イ子]の辺りまで乗ってみた。
 香港のトラムとバスは大抵2階建て。ある意味で香港の,と言うか恐らく英国圏の名物だから,乗り物マニアの気のあるわし的にはやっぱ乗りたかった。
 けど,停車駅のマップはおろか,停車駅そのものに駅名表示がない。車内アナウンスもない。全駅止まるのが救いだけど,土地勘がないと降りる場所がわからない。
 じゃあわしに土地勘があるんかい?…ハハハ,何を失礼な!伊達に旅行者本職にしとるわけちゃうでえ!!ちゃうけれども,昨日着いたんだから土地勘なんかあるわけがないがな。昨日歩いた雰囲気で,メインロードの雰囲気で適当に降りただけ。
 だから…?どこなんだココ!?
 昨日入ったバンヤンカフェを通過したのは確認したから…きっと湾[イ子]駅は遠くないだろう。適当に歩いてみるとしよう。とても高得点の滑り出しと評価してよい。
 すぐ近くのサッカー場みたいなとこ(修頓遊楽場)に公厠(公衆トイレ)表示を見つけた。今朝のこともあるし,「公厠を見たら立ち寄る」主義を採用することとし,とにかく放出。
 バスケやってる数人の他は,観客席で休んでる人の人数の方が圧倒的に多い。要は公園的なスペースに使われているらしい。
 分かる。確かに分かるのお。この香港,中還辺りは息もつけないよな慌ただしさ。ちょっと…普通に生活する場所じゃない。
 まあ,そーゆー非情さみたいなのが,また一種,この街の魅力でもあるんだけど。

 湾[イ子]のMTR駅前の壇島珈琲飯店で「インヨン」なる不気味な飲み物を喫す。結構気に入る。
インヨン一杯15HK$
【→File06[女乃]茶参照】
 駅前辺りには他に四川料理の店があるはずが,見つかんない。その代わり,昨日から気になってた種類の店が連なってたんで,一番客足のある海天堂という店に入ってみた。
 いわゆる亀ゼリーです。
鮮製亀[サ/令]膏 50HK$
【→File03漢方茶参照】
 九龍側へ戻り,尖沙[ロ且]から地上へ出る。
 D2出口辺り。簡易台車を持ったアラブ系っぽい若い屈強そうな男が30人ほど,路傍に横一列に並んでる。
 周りは百貨店だらけの場所。バンバン発着してるトラックを如才なくちらちらとチェックしてるみたい。
 おそらく,ポーター待合所みたいな場所なんだろう。植民地時代の英国の慣習を引き継いでるんだと思う。
 彼ら,移住直後はこーゆー仕事から出発してるんやね。
 しかし――香港ってメディアで紹介され尽くされたイメージだったけど,今日程度に細かく見て行けば,こーゆー異景を結構宿してる街みたい。香港に一週間なんて飽きるんじゃないかと心配してたけど,少なし2日目,飽きそうな予兆は全くない。
 簡単に言って,日本から見る香港のステレオタイプを遥かに超えて――面白い!

▲怪しい麻雀屋

 九龍の油麻地駅に降りてみた。
 駅の東側すぐにあった金翡翠餐庁って店がエラく流行ってたんで,気まぐれで入ってみた。
XO醤回鍋牛肉飯,老火例湯付き(珈琲,紅茶でも可) 30HK$
【→File04肉料理参照】
 どーも選択制のランチセットみたいなのを,一般的に供する定食屋があるらしい。味はかなりイケてたし,ちゃんと広東。
 当然ながら,この手の店は歩き方を含めて日本のガイドブックには掲載は皆無。
 それと。段々気付いてきた。例えば,この駅界隈に来たのは,某ガイドブックに記載されてたカフェ目当てだったんだけど…人がいない。さりげなく二度通ってみたけど,明らかに開店休業の状態。これはスルーでしょ。
 メディア上の香港情報って,かなり偏向してる。あるいは一面的みたい。生活者の目から見た香港の実像と,根本的に違う。
 恐らく,イタリアとかバリと同じ現象でしょう。虚像が独り歩きして,実態から離れちゃってる。
 …店を覗いて見極めてくしかないな。
 飲み食い探索だけじゃなく,恐らく香港は,自分で歩いて自分で見るしかない。
 ついでに一つ南の佐敦駅まで歩いてみた。
 両駅の間には屋台群みたいなエリアがあって面白い猥雑さがありました。
 ふいに想起する。確か…20年前宿泊したドミトリーがこの辺だったよーな…。
 佐敦駅前。紅茶が美味いと聞いた奥州牛[女乃]公司は休業してた。代わりに,客足だけ見た勘で大良八記[舌甘]品[黒占]心大王って小店に入ってみる。
芝麻飴湯水 10HK$
【→File05香港スイーツ参照】
 また大当たり!
 なるほど…これで行こう。ガイドに載ってる店をたちまちは目指すとして,客足を見て「浮気」する。どっちかって言うと,浮気のほうが勝率高そうだし。
 夕暮れ時になった。そのまま深水[土歩]駅まで北上。早速「浮気」作戦を実行してみた。
 紅車[ガンダレ+里]麺包西餅,英語名:RedCherry。
クロワッサン,メロンパン,葱の惣菜パン 計10HK$
【→File01パン参照】
 北河街の辺りは完全に屋台ストリート化しててすごい人の波。その人混みが引き寄せられてるパン屋だったんだが…。
 うーん…。まあウマかったんだけど,ただ大安売りしてただけっぽい。まだまだ経験不足デス…。

 深水[土歩]の屋台は概ね衣類。これが西へ伸びる。
 西側の鴨寮街まで来ると一気に電脳系だらけに。ケータイ,パソコン,USB,ルータ,PC用カメラ,無線ユニットと電子機器満載の屋台群。
 マニアックなとこではテレビのリモコンばっかしの屋台とか,接続ジャックばっか八百屋みたいに並べた店とか,イヤホンばっかとか簾みたいに垂らした店とか。
 まさに秋葉原状態!
 あちこちに叩き売りの拡声器の声がこだましてるとこなんかが違いと言えば違い。アラブ系の人の姿もやはり多い。
 帰り道の地下鉄,満員状態だった客の半分以上が太子で下車。九龍[土唐]へのジャンクションです。東側の住居エリアにそれだけ密度があるわけだ。[日王]角でまたドバッと客が乗ってきて,また満席状態に。ただこの人並みも,佐敦まででかなりが下車した。
 尖沙[ロ且]はやはり観光客エリア。明日は,[日王]角へ居を移す。

▲深水[土歩]の電気屋台群

 さて,本日最もエキサイティングだったイベントは──この夜立ち寄ってみた,香港頂好Wellcomeでの買い出し!
 香港中にあるこのスーパーマーケット,尖沙[ロ且]では漢口街にある。確かバンコクなんかでも見かけたチェーンスーパー。
 最近国内でもそうだけど,スーパーの探索はその土地の食事事情が見えて最も興奮する。功利主義だからこそ個性が薄くてサンプルとして正確に食を映す鏡。
 計500円ちょいで8品。購入品のレシート表示は──
零糸金[歩責]果昧汽水
Schweppes zero 500ml 5.80
硬豆腐 Pak Fook 340g 69.0
大木瓜 Papaya Large 8.00
蜜汁叉焼 BBQ Pork 10.00
火龍果 Dragon Fruit 3.80
葉菜類 Leaf veg.
(サラダセロリ)3.10
(葱)2.00
計 43.60HK$
 野菜の種類は日本並み。ただ野菜の加工品,中華ハーブ系の種類は多い。
 果物はさすがに多種多様で安い。ドラゴンフルーツは2つで55円!マンゴーの100円も丸1個分!
 あと,調味料は種類はともかく西欧系から中華系まで幅がスゴい。中華系だけでも,日本の中華街でも入手できそうにないのがわんさか!
 お茶の種類もすさまじい。無発酵の緑茶だけでも日本のスーパーをはるかに凌駕するのに,さらに香港人お気に入りのプーアル茶になると壁一面に数十種類。
 全体として,加工品の幅がものスゴイ!30分近くいたけど,まだまだとても咀嚼しきれてません。