外伝09♪~θ(^2^ )第二日

▲香港島の雑踏(蘭芳園前)

 昨日は地下しか歩かなかった香港島。今朝は今回初めて地上に上がりました。
 坂の途中の公園。見覚えはあるんだが…地図をクルクル回しながらしばらく悩む。全くこのセントラル界隈って――作ったような迷路だ。
 現在地がすぐ分からなくなる。ただ,高層化と土地の傾斜が個性的で,「ここを歩いたことがある」という記憶だけは残る。だからセントラル歩きは,過去の記憶の走馬灯みたいな不思議な気分を誘う。
 爆睡してしまったので既に10時。今回は丸々10日を香港だけに費やす予定。初日で疲れ切るわけにはいかんので,やや遅起き。
 香港の朝は飲茶。前回完全にイカレてしまったこの食慣習。そー言えば日本の中華街にはなぜかない。
 久しぶりの飲茶だし――とりあえず最高峰に!ってことで…。
 スタンレーストリート,陸羽茶室
蒸篭入りのエビの生煎みたいなの3個
ビスケット生地の杏系あん入り饅頭3個
ポーレイ茶
 店を出る頃には,完璧な朝飯に気分はふんわか浮遊状態。
 浮ついたままセントラルの細道を徘徊する。
 同じくスタンレーストリート,エスカレーター直下の角地で,春回堂薬行の佇まいに惹かれて立ち寄る。
甘四味涼茶 6HK$
 真っ黒な漢方が効いたッ!!…ような気になって,さらに気分は高揚する。
 長めの旅行の2日目ってのは,開放感が最高潮に達するもんだ。初日の違和感と緊張感の薄れと,こっからの日程の真っ白さの相乗作用。「離陸感」とも言うべきこの感じ,好きやなあ。
 昼時,満席の蘭芳園へ。ここの[女乃]茶…やっぱ香港やなあ。
 一つ山側の通りにある龍記飯店へ。
 汚い,典型的な香港大衆食堂。しかし旨い!
単隻併焼味飯 32HK$
 壁に,何度目かに見かける紙が貼ってありました。メモってみたらこんな20文字。

黄文字・黒塗り枠・一文字目青地白字大

忝喜発財
生意興隆
財源廣進
龍馬精神
和気生財

 20文字の中に3つも「財」が出てくる…出現率15%!!これこそ香港流資本主義精神の神髄たるべき深い哲学があるのではないか!?
 で,ちゃんと調べてみた。
 まず第一句は簡単に言えば「儲かるりますように」とゆー常套句。
 第二句と第三句は一緒に使われることが多くて――「生意」は商売だから「生意興隆」でおおよそ「商売繁盛」の意。「財源廣進」は文字通りで「財源が広く進む」,つまり金運が良くなる,財産がもっと膨らむってこと。
「龍馬精神」は,坂本龍馬に似てるどころか,おそらくサカモトの方がこっちの漢文句に由来してるのかも?「龍や馬のようなバイタリティをもって頑張ろう」,つまり不撓不屈の精神ってとこか。
「和気生財」と最後の句まで「財」だけど,団結すれば利益が生まれるってこと。
 てことは15%なんてもんじゃなく――「儲かりますように/商売繁盛/金運上昇/頑張りましょう/一緒に儲けようぜ」って…意味的には100%「財」じゃんか!!要は「金,金,金,うお~一緒に頑張って儲けようぜ!」…って?
 それだけ!?
 わざわざ検索したのに――とても損をした気分になりました。

▲香港島,エスカレーターの下辺り

 昼時真っ盛り。既に観光名所めいてきた蘭芳園はほぼ満席。
[糸糸][ネ蔑][女乃]茶
香[月危][女乃]油猪[イ子]包
計25HK$
 凄まじく滑らかなミルクティーともっちりパンにまたまた感激してから,やっと初日午前の食い歩きを終える気になってきた。つーか,当たり前だけど…もー食えん!
 香港島を離れる。
 尖沙[ロ且]へ帰還して,気がかりなまんまだった宿を確保。
 重慶大厦の北にある美麗都大厦にしてみた。重慶大厦,旺角電脳中心,それから今泊まってる金輪大厦のビルと同様,安ホテルその他小規模店舗が乱立する,香港独自のオモチャ箱ビル。場所柄,雰囲気は重慶大厦そっくりなんだが…最上階の「宇宙ホテル」ってのがどうにも気になって目に焼き付いて離れない。どう宇宙なんだ?
 否が応にも発散される怪しい香に少々たじろいで…ま…まずは堅実に攻めようか…と歩き方に露出してる美林賓館を回ってみた。何とかまだ空きがあった。場所は5階で250HK$――まずまずか。5~7日の3泊の宿をキープする。
 これで6泊目までは確保。宿無しの恐怖に怯えるよりは,3カ所に3泊ずつってことにした。――結果として,住むように歩けたのはこの判断のおかげだったと思ってます。

 九龍半島の西側って行ったことがない。
 今回,このエリアに予感があった。
 中国側の深[土川]から東シナ海に南に突き出たこの半島,三つ又の足に分岐する。分岐の付け根辺りが,英国領になる前にこのエリアの主ゆうだった大埔辺り。
 だから英国は,三つ叉の先端側を開発するしかなかった。突端部が平坦で,南の香港島との間を港として利用しやすい中央の足が選ばれ,まずここにほぼ南北の突っ切らせた。これがネイザンロードで,その周辺に市街地が形成される。
 結果,山がちな左右の足は最近まで開発が遅れてた。けれどこの2つの足も,中央の足と同じ位の広さがある。特に西側の足は,ネイザンロード側から一山超えるが,かなりの広さの平野部を持ってます。しかも路面電車網が迷路のように伸びてる。――観光情報の先入観がなければ断然興味深い要素が揃ってるんであります。
 そんな西の足に足を踏み入れるために,尖沙[ロ且]から再び地下に降りる。時計は14時を回った。

 地下鉄[サ/全][シ/湾]線に乗り込んで北上。
 まだ降りたことのなかった美[ノ/ツ/子](メイポ)で西鉄線に乗換。
 とりあえず最終駅近くの大きな街らしい屯門(広東語読み:TuenMun)を目指す。
 途中,美[ノ/ツ/子]駅構内の本屋に立ち寄る。香港人向けのグルメ本を購入。東西の足を含む地下鉄駅周辺まで,駅ごとにエリア編集されてる本で,パラパラめくる限り,日本のガイドブックとは全く違う内容っぽい。
 当たり前だが…郊外の町にもちゃんと香港人が生活してるわけで,美味い店は日常的にありそうなんである。だとすれば――むしろネイザンロードや香港島中心部の観光エリアを離れて歩く方が,普通の香港人とその食生活に近づけるんちゃうか!?…って気が,自信はないけどしとるわけです。今日の屯門行きはその準備体操って気分で。
 [サ/全][シ/湾]西。まだ半分以上が立ち客。列車の発車も3分位の間隔だったし,かなりの人口がこっから先の新界東部に暮らしてるっぽい。身なりを見る限り,アメリカみたいな人種や貧富の差も,香港島はともかくネイザンロードとそう違いは感じられない。
 錦上路の駅に着く前で,線路は地上に出る。
 広い谷を併走する。緑多し。
 山裾にトーチカみたいなのが点在してます。どうやら沖縄みたいな古墳的な一族墓みたい。
 ケータイのアンテナが立たなくなった。1本と圏外表示が繰り返される電波状況。
 山野の中に,次第に古いアパートが目立ち始める。高層ながら,やや年期の入ったマンションも。それらに左右の視界を埋めてきた頃,次の駅,元郎に入る。
 そこかしこで大規模な開発工事も進んでる。
 山並みがなだらかになってきた。北側の海が近い風情。
 天水[口 車窓は,かなり広い平地のになってきた。ネオンもわずかに見える。ただ,住宅など生活者の景観よりも,コンテナや工場の方が多い製造業エリアの臭い。
 兆康。再びマンションが高層化してきた。工場の制服より普段着の比率が増したように感じられる。
 アンテナ3本に復活。山裾の墓は無くなった。どうやら,同じ西の足でも,北の海側にある元郎辺りはやや古くから開けた土地で,ここから先の南側の海に連なる平野部はごく最近に開発されたエリアと見える。
 14時25分,屯門駅に着く。老婆餅2つ購入。
▲屯門の中心街辺り

 屯門の街は,新開発地の造りながら賑わいがあった。
 猥雑に薄汚れた迷路のような路地が少ない,香港らしくない賑わい。いや,観光エリアと違う香港らしさを初めて見てるのかもしれない。高層アパートの共益スペースに出来た市場が発展したような繁華街なのに,人出はスゴい。
 中心街は仁政街って通りらしい。政治臭プンプンのネーミング。さっき買ったガイド本に載ってた[土申]記で燃料を注ぐ。なかなかの食センス。
 日が傾いてきたが,ついでだから,ここから元郎辺りをウヨウヨ走ってる軽鉄というものに乗ってみる。街を通過する車体の雰囲気では,路面電車のちょっと大型ってもんみたい。
 路線が複雑でしばらく悩んだが,天逸行って列車に乗れば西鉄に乗り換えられそうだ。
 とにかく乗る。
 15時50分,屯門駅の2階から発した列車は,すぐ地表に降りて街中を進み始める。完全に路面電車です。
 澤豊。疎水の公園に沿って,おそらく北上してる。ラッシュ時に入ったか,半数は立ち客で,わしも立ってます。
 屯門医院。なぜかにわかに満員に。病院帰り客か?
 兆康。西鉄線に乗り換えられるが,開閉が京阪電鉄並みに早い。時間はそうかかりそうもないから,天水囲まで乗ることに。
 なお,この「囲」字,繁体字では「口」の中に「緯」のツクリのみが入った字。この漢字の意味は,後日思い知ることになる。
 藍地。緑豊かな空気になってきた。右手,東側に自動車道。延々翻る「陶」の三角旗は何?
 泥囲って駅。何か汚そうな地名…。さっき工場だらけに見えた辺りです。
 鐘屋村。えらく閑散としたアパート地帯。何とか「回収」と書いた場所は産廃施設か?
 洪水橋…って何ちゅー地名が続くねん!?人口密度は増してきた。
 坑尾村。かなりマンションは多いのに,なぜかまたケータイはまた圏外。
 16時10分前天水囲駅に着く。屯門から所要20分。かなり使い勝手のいい路面電車です。行き先さえ間違えんけりゃね。…路線が10以上あるから,運が良かったとしか思えない…。
 4HK$だったらしい。この軽鉄,なぜか中欧タイプで改札が駅に設置されてる型。入場用と出場用のチェッカーを通す仕組みで,貼り紙によると違反したら罰金がすごいみたい。しかしこの必罰タイプ,香港で通じるんか?例えば観光客なら,見つからなけりゃ無賃乗車し放題だぞ?
 錦上路駅到着手前。左手東方,久しぶりにどっしりした緑ある山塊を見る。

▲屯門の市場

 帰路に着く。
 まだ夕方だが,旅行前の副業勤務(つまりお役所仕事)がちょっと重めだったんで,疲れがヒドい。本日は早く引き上げよう。
 美ポ駅で地下鉄乗換。構内で健康工房を見かけ,お茶のペットを購入。
 地下鉄で太子って駅を通る。車内放送が英語名をプリンスエドワードって言ってるぞ?
 昨夜はチャールズ皇太子の結婚式をどこのテレビ局も生中継してたが…香港って,返還後も未だ英王室へのロイヤリティが残ってるみたい。大陸政府も容認せざるを得ないほど,それって根深いんだろか?

 石磨坊にて本日の締めのデザート。
椰汁芋泥西米露(熱)22HK$
 締めのつもりが,昨日の味覚がフラッシュバックしてきてしまい…の伊藤家に寄ってしまう。
黒白芝麻QQ波 6HK$(3個)
鶏尾包 4HK$
 2日目から飛ばし過ぎ…?

▲屯門中心街に「護老院」の看板。養老院も目立つ街でした。