油煳干青∈10長州:结束1∋糟酸麻蒜

「情報が入り次第ご案内いたしますので」

▲ホントに夢に出たら何か嫌だ。「中国夢」のお稚児さん

台蓬莱空港のチェックインの列に並んで一息つく。
 一息つきつつ,右手2階の烟台美食広場をうらめしく見上げる。烟台名小吃として「特色湯面 韓国拌飯 海鮮水餃」と挙げられてる。
──ただ後で上がってみたらえらい待たすみたいだし,韓国料理のトゥッペギは漢人の作った素人めいてるんで止めた。
 カウンター上の「双塔食品」という会社の標語──「好山東」。
 その隣に「齐齐哈尔歓迎您」とある鶴が沼地を渡る写真。烟台1615→チチハル1845という路線が出来てるらしい。
 不安になるほど外地キャラが頻出する,というこの印象は意外なほどでした。

▲烟台空港のカウンター列より

本語で登記(チェックイン)開始のアナウンス。
 福岡2列の隣3列はソウル(首尔仁川)行き。そういえばタクシーに乗った時「你是韓国人吗?」(お前,韓国人?)と訊かれた。ハッタリ上「対」と答えたけど,この路線はもう韓国人と中国人がメイン。というか見える範囲に日本人の姿がない。
──と思ったら列の目の前のおばちゃんが日本人だった。
 日本語でアナウンス
「福岡行きは詳しい情報が入り次第ご案内いたしますので」。──おい,「ので」まででアナウンスを止めるな!無茶苦茶に不安を煽る省略だぞ?

▲烟台空港周辺の山東の美しい大地

四辛都決戦・優勝者は──

ーディングゲート5番へ。1215。
 間に合った!タバコも紅塔山が買えた。小さい国際空港だからか列が短くてお得です。
 そばの喫煙所で最後の一服は南京。
 1226,DELATEのアナウンス。中国語,中国語に続きやはり「詳しい情報が入り次第ご案内いたしますので」まで日本語は止まる。本人には,それで日本語訳が完成してるらしい。それはともかく──飛ぶのか?
 1234,カウンターの男が山東人っぽく怒鳴る。始まるらしい。

▲残照の翼

いうところで四辛都決戦の旅行は終わりです。
 終わりなんですけど,決勝というからにはウィナーがいてもいい。
 これは──事前には四川の付け足しだったはずの,長沙でした。
 辛さそのものも漬け唐辛子の威力は凄まじい。でも,中華ハムの活用,中華との融合,面白い要素が多すぎる。
 なので──

Winner
長沙
変化■ 計9
辛さ■□
旨味■■■
面白■■■■

普通に見えてヌーヴォーな湯

はヒーローインタビューではないけどアンコール行ってみよう。長沙空港でのラストの蒸菜です。
 実は思い出すのが嫌なほど高かった。でも値段なりのクオリティ。湖南料理としての蒸菜ではあるようなんだけど,ローカルなのかオールチャイナなのか分からない。でもだからこその色んな味覚風景を垣間見れる一膳でした。
 それに,長沙から国内線に乗るってあまり機会はないかもですから。
(一昨日)
1510空港の蒸菜500
①②
③④
①棗,白アスパラの排骨みたいなののスープ
②揚州炒飯もどき
③臭豆腐
④腊肉の煮物赤青唐辛子和え

▲長沙空港での蒸菜

,白アスパラの排骨みたいなののスープ
 ここのチョイスには珍しくスープが充実してた。蒸菜屋ではあまり湯を見かけないものです。湯の文化は湖南のものではない…以前に,純粋な蒸菜の調理を考えたら「湯を蒸してどーする?」ということでしょう。
 少し違う感じのをと頼んでみたら──棗のやや重い,甘酸っぱさが先味に来る。その先に,おなじみの排骨の図太くまったりした肉汁が現れる。ただどちらもやや弱い。上品過ぎるかなと感じつつ舌上に転がしてると,ぬるぬるした食感の野菜味が後味にさらに待ってた。柔らかい豊かな甘味です。

れは?と碗の底を探るとすくい取られてきたのが──白アスパラ。
 一見普通に見えて,なかなかにヌーヴォーな湯です。
 アスパラは「芦笋」 (lu2 sun3) と書く。「芦笋 中華」でググるとホタテ貝とアスパラの炒め「芦笋鮮貝」などかなりヒットがあります。「笋」つまり筍として現代中華が新たに取り入れた食材みたい。
②揚州炒飯もどき
 日本的な感覚だとべとべとした感じのチャーハン。炊き込みご飯かと思ったわ,と言いたくなるけれど,「本場」を食べた後ではこれこそ揚州炒飯だと分かってます。再現されてる。好みではないけど,忠実な料理人がいる店みたいです。

唐辛子に煌めく腊肉の美景

▲臭豆腐

豆腐
「長沙と言えば!」という逸品です。
※ 每日頭條/人氣火爆的文和友老長沙臭豆腐空降衢州啦!粉絲超過1000000人!
 これだけ紙カップにあえて入ってる。確か市内にもあった有名店です。
 長沙臭豆腐もこういう商業ベースのアイテムになりつつあるわけです。
 ただ,中国で結構機会がないのは,これでご飯を頂くこと。──揚州炒飯なのが玉に傷(失礼!)でしたけど…合う!美味い!
 いつぶりでしょうかコレ。臭豆腐独特の苦臭さが白飯にビシリとキマる。豆腐にかかってるのは赤青唐辛子の微塵にピーナッツを砕いたもの,それに醤。これも当然ご飯には合う。
 豆腐の臭みと米の甘さが,マッチしそうにないのに妙に好い。そういえば台湾には臭豆腐丼みたいな料理もありました。何かの間違いで,日本で流行ったりしたらとても嬉しい。

▲腊肉唐辛子和え どアップ

肉の煮物赤青唐辛子和え
 こてこての湖南フーズ腊肉。実はこの食材,今回一番の発見だったと思ってます。
 個性も強い食材らしい。ここのは外側がガチガチに固くなってて,中身はふわふわに脂豊かな三枚肉。食感のアクセントもですけど,噛みしめる肉味が満点の豊潤さを醸します。
 煮汁は醤でもなく,極めてあっさりしてるんですけど,この肉そのものの重厚さを逆に強調してます。
 で,ここに赤青の唐辛子が極めて爽やかな辛味を効かせてます。味覚風景的には中華ハムにきらきらと煌めきを与えるような感じ。重慶的な重さとは全く対極的です。
 辛味の美を体現したような唐辛子の使い方。こういう美技がピタリと着地を決める,この反面の細やかさが湖南です。

[博多駅]牧のうどん やわ麺

▲博多駅にて「牧のうどん」やわめん。北部九州のソウルフードは,辛四都の後には非常に新鮮でした。

[前日日計]
支出1500/収入1320
     /利益 244
     /負債 36
[前日累計]
     /負債 36
§
→一月七日(一)
1115天府
A ホイコーロ 550
1203パティスリーフルール
湯田ロール250
コーヒー
1711餃子の王将(広島八丁堀)
麻婆豆腐
天津飯(ジャスト)750
[前日日計]
支出1500/収入1550
利益 14/
負債 36/
[前日累計]
利益 14/
§
→一月八日(二)



▲湯田にて。当分の間休むのは普通,臨時休業とは言わない。

くしてニッポン…なのですけど。
 予想はしてたけど,四辛都の食の衝撃はしばらく尾を引きました。優勝の栄に輝いた(?)長沙のみならず,どの辛都の味覚も比較対象としてすぐに味蕾の記憶に登ってしまう。
 これはイタリア以来です。
 その尾を引いた記録を綴りながら,ホット・チャンプの旅行,だらだらと幕を降ろして参りたいと思います。

[山口市]天府 ホイコーロ

▲山口市の天府(!)でホイコーロ定食

府」はもちろん成都の別名です。
1115天府
A ホイコーロ 550
 時々ランチのチョイスに登場する辣子鶏はなかったので,こちらに。ただし十分辛かった。
 ここの味覚は初めは物足りない。豚肉もキャベツも本来味が油でコーティングされて再起動したようないい味覚なんですけど,先味に乏しい。
 けれどラー油が実はかなり辛く,それ以上に風味豊かなものを使ってる。食材をじっくり噛み締めていると,その後ろに辛味が立ち上ってきて──

の卑劣な辛味地獄への誘導法は,貴陽や長沙のそれと同じ構造です。「唐辛子釣り野伏」とでも呼ぼうか,この手段を選ばない無茶振りは,四川──成都や重慶にはやや薄い。四川は真っ向勝負で先味から辛いんである。
 天府と掲げつつ…なるほど,ここはそういう味覚だったのか。──いやもう一つの可能性は…成都や重慶の味覚も本来,もしくは家庭で普通に食べられてるのはこういう唐辛子を後味の仕掛けに使う味覚なのか。
 あと,広東四川のあの融合が前から不思議でたまらなかった──けれど,こういう構造なら,長沙とは別の形ですけど他中華との融合は十分にありうる。先味としての伝統中華,後味としての四川と棲み分け,あるいはバトンタッチができるからです。
 それが四川菜の旧来型なのか未来型なのか,この点はよく分からない。あるいは,歴史的には全体が実はヌーボーである四川に限っては,旧来も未来もない,今此処の進化型の一類型なのかもしれません。

[湯田温泉]パティスリー・フルール 湯田ロール

▲湯田のフルールにて「湯田ロール」

違いの掲載ではありません。
1203パティスリーフルール
湯田ロール250
コーヒー
 大陸中国にもかなり甘モノは普及してきた。でも今のところないのが,端正な甘味のスイーツ。
 ここの湯田ロール──通りすぎかけて味を思い出しつい立ち寄ってしまったんだけど──はその典型だと思う。パンケーキそのもののような,ぼさぼさの,もっと言えばボロボロの生地もほとんど小麦の甘味だけ。クリームにも砂糖はあまり感じず,ミルクめいた甘味がやはり仄かに香る。
 中国でもロールケーキはよく見るようになりました。多いのは,バターの香り豊かなもっちりした生地に,クンと鼻を突くような濃いクリーム,という組み合わせ。大阪に多い味覚だろうか。
 中国に端正な甘味がないのかと言えば,ある。マントウやマーラーカオの小麦そのもののような甘味はまさにそれだし,焼きものでは焼餅はモロです。
 食べる側の舌の成熟,そのベクトルは淡味に行き着く。これは単純化し過ぎでしょうけれど,これを逆に行くと,多様で文化的成熟の始まらない段階の食文化は劇味を作りやすい。もっと単純化し過ぎでしょうけど,冒頭(首頁)に触れた清初の四川ジェノサイドと相まって,あの地方になぜ辛味文化が局所的に発展したのか,その仮説たりえるのではないでしょうか?

食事ネタを連ねてる途中で甚だ不適切な閑話ですけど──
 やはり腹が下ってる。折角の温泉だったんだけどあまり浸かれない。浸かれない割に物凄く湯効だけは効いてる。
 代謝と排出機能が異様にアップされてるというか,その機能をもて余してるというか。そんな感覚です。
 後半,特に烟台での敗因があったとすれば,30分持たない超高水準の頻尿にあったわけですけど──最終日の烟台のバス乗り遅れ,あれ,悔しくて筆が鈍ってましたけど,途中のパークソンでトイレに寄らなければ──これも明らかに,この超高濃度カプサイシン漬け状況と関係してる。
 胃薬は持って行ったんですけど,この場合,問題はそっちじゃなかった。
※ wowネタ/中国・四川省旅行の注意点~薬編~【中国】 「胃薬、頭痛薬、体のだるさ、熱中病、下痢などに効果がある「霍香正气口服液」(ホウシャンゼンチコウフイエ)を10本入り約20元、5本入り約12元ほどで購入すると、予防薬として、また体調不良の時の万能薬として有効です。」

(広島市八丁堀)餃子の王将 麻婆豆腐

▲広島「餃子の王将」の麻婆豆腐

島市中心部でキチンとした麻婆豆腐を食べるなら拍拍飯店。ちなみに広東四川なら東風でしょう。
 でもこの帰国時期には比較が興味深かったので,あえて拍拍飯店真下のこちらへ。
1711餃子の王将(広島八丁堀)
麻婆豆腐
天津飯(ジャスト)650
「山椒がピリリと」みたいなことがメニューには書いてある。書いてあるけれど,もちろんそれは全く期待してない。
 目の前に置かれた皿は,意外にも黒粒にまみれて,いかにも本場っぽい。それでもしや?という変な期待も抱きつつ,一口。

豆腐やね。やはりというか…ある意味,期待通り。
 家常豆腐ですらない。思わずテーブルのラー油をかけてしまって,それでかろうじて辛味らしきものが出たかなという感じ。
 天府のものとも違う。この十日間,辛味に見舞われ続けた味覚空間が空虚なまま埋まらない感じです。
 出汁の甘さで食べる肉豆腐。一応頼んでみた天津飯──これも天津にそんなものはないけれど──おそらくこれは,京都のけいらんの延長で片栗粉のトロミと甘味を基調にしてる。唐辛子は微かにアクセントになってるだけ。
 そう,でもこれが和食の唐辛子使いです。山椒の使い方もそう,これが和食の「ピリリと」効いた山椒です。

食の,山椒も含めた辛味調味料の使い方は──
 とにかく,辛味というものの受容感覚が四辛都と全く異なるんである。素材の旨味を出すことが目的なわけだから,それ以上の辛味は過剰でしかない。
 餃子の王将の味覚は,戦後の関西で受容されたもの。つまり,まさに日本人の辛味文化ってこういうもの,という辛味受容の料理です。
 でももう一つ言えるのは,「爽」を構成する発想がないこと。
 固い食文化だから,ということだろうか?
 朝鮮戦争以前の韓国の食文化を見てみたいと思う。辛味は遺物として残らないから根拠はないけれど…あの国も,ひょっとしたら前線が全土を覆った,あの壊滅戦争の後で本格的に「辛く」なったのではないか。
 だとしたら,突然にコンビニの棚が辛味で覆われつつある現ニッポンの食状況って──実はかなり危険な状況な…例えば精神や文化の荒涼の表出なのかもしれません。

[広島市]長安 麻婆豆腐

▲広島市中区「長安」の麻婆茄子

に油淋鶏を頼む店です。
 ここでもあえて麻婆豆腐を頼むと…店名通り,河南系の麻辣が出てきます。
 でも,よく純日本中華のトマトソースみたいな麻婆豆腐とは一線を画してる。完成度は高い。
 北方中華が無理矢理作った麻婆豆腐──というのが最初の姿だったんでしょうけど,北方中華でも辛味文化は別形態での咀嚼が始まってる…のだと思う。あまり自信はないけど。
 以前,浙江で白麻婆なる不思議な麻婆豆腐を食べた。これを上海四川と呼ぶならば,同様に河南四川や北京四川とでも言うべき新味覚が生み出されていく…のでしょうか?

[名駅]想吃担々麺 汁有り担々麺激辛

▲名古屋:想吃担々麺の汁有り担々麺激辛。辛味の重さは重慶を思わせる。ただ出汁の濃さは日本的アレンジで,総合的には堂々たる和風四川の逸品!


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